東方怪異譚ーLegend of vampireー 作:根無草
幻想郷に住まう者はその多くが人外であり、その人外の多くが独自の特化した能力の持ち主である。
その能力の種類たるや千差万別で、極めて平凡に見えるものや、聞いただけで震え上がるようなチート染みたものまで多彩なものだ。
さて、そんな能力の持ち主達が群雄割拠するこの幻想郷でたった今二人の能力者が火花を散らそうとしている…
マッチングは
『フランドール・スカーレット vs 射命丸文』
何故こんなカードが実現したかと言えば、それは一重に僕の責任とも言えなくはない。
そんな事の一部始終を思い返すとすれば数分前のフランの一言に行き当たる。
「ねぇ、暦お兄様と魔理沙。待ってる間に私と遊ぼう?」
待ってる間にとは吸血鬼である忍野忍とフランの姉であるレミリア・スカーレット、それとこの幻想郷の巫女である博麗霊夢の話し合いをという意味だ。
そして遊ぼうとは…残念ながら遊びではない。
これがトランプやおままごとなら付き合う事も吝かではないのだけど、このフランの言う遊ぼうとは残念ながら弾幕ごっこに他ならない。
ちょっと遊ぶつもりのフランに対してこちらは命懸けのお遊戯会になりうるのだ。
「い、いやぁ…私はあれだなぁ…今日は少し調子が良くないんだった!暦に遊んでもらう方が楽しいと思うぜ!」
「僕を売りやがったな霧雨さん⁉︎え、えーっと…なあフラン?フランは何をして遊びたいんだ?」
何の躊躇もなく僕に全てを丸投げした霧雨さんのおかげで頼れるところは自分自身だけになってしまった…
「もちろん弾幕ごっこよ?」
当たり前と言わんばかりに笑顔で答えるフラン…
でも僕にはこの弾幕ごっこという答えにだけは切り返しの切り札があった。
「そっか…残念だけどフラン、僕はまだ幻想郷に来たばかりで弾幕ごっこのやり方がわからないんだ。いや、正確には弾幕の出し方がわからない。いやー、フランと遊びたかったのに残念だなあ!あ、そういえばさっきあのお姉さんが遊びたがってたなあ…ねえ霧雨さん!」
「ん⁉︎あ、あぁ!そういやそうだったぜ!フラン、遊んでもらうなら文に遊んでもらえ!文は天狗だし強いし退屈しないと思うぜ?」
この場にいる人間二人が結託した瞬間だった。
例えるならば霧雨さんが上げたセンターリングを僕がシュート、射命丸さんの守るゴールに突き刺さった形になる。
そしてその言葉を聞いてずっとカメラのシャッターをきっていた射命丸さんの動きが止まった。
「わ、私ですかっ⁉︎」
予想もしていなかった白羽の矢が立ったことで顔面蒼白の射命丸さんがそこにはいた。
「天狗のお姉さんが私と遊んでくれるの⁉︎やったー!」
「あややや…すっかりその気じゃないですか…お二人とも、恨みますよ…」
ジト目でこちらを見る射命丸さんだったが、時すでに遅し。
フランの興味関心はとっくに射命丸さんに集中していた。
「はぁ…仕方ありませんね。ではフランさん、私と遊びますか?」
「うん!じゃあさっそくーーー」
「おっと待って下さい!!!」
今にも飛び掛らんとするフランを制止する射命丸さん。
「どうしたの天狗のお姉さん?」
「ほら、三日後には強敵が攻めてくるというのにここで弾幕ごっこをして怪我をするわけにはいかいでしょう?なのでフランさん、ここは少し形式を変えてみませんか?」
「弾幕ごっこ以外で何かするの?」
「そうです。具体的には…そうだ!ここから博麗神社までを往復してその時間で競争しましょう!フランさんが勝てば満足するまで弾幕ごっこに付き合いますよ」
「競争…私は構わないけど随分と自信有り気に言うのね天狗のお姉さん?吸血鬼が力だけの種族だと思ったら大間違いよ?」
よっぽど弾幕ごっこが楽しみだったのか少し不機嫌にすら見えるフラン。
しかし元の性格が勝負好きなのか渋々と納得したようだ。
「もちろんです、鬼の名を冠する吸血鬼を安く見る訳がないじゃないですか。では、さっそく行きますか?暦さん、すいませんがスタートの合図をお願いします」
「え?あ、ああ…じゃあいきますよ?フランも大丈夫だな?」
「いつでも良いわ暦お兄様」
不本意とはいえ勝負は勝負。
負ける気が全くないと言わんばかりにやる気満々なフラン、そして今だに飄々としている射命丸さん。
「じゃあいきます!三、二、一…スタート!!!」
僕の発声で地面を蹴って夜空に飛び出したフラン。
そしてその場でそれを眺めている射命丸さんーーー
「って何をしているんですか射命丸さん⁉︎フラン行っちゃいましたよ!」
「ん?いやぁ、少しは場を盛り上げないと良い記事になりませんからねぇ…さて、そろそろ私も行きますか」
「行きますかって、フランもう見えなくなっちゃいましたけど?貴方勝つ気がありませんよね⁉︎」
限りなく満月に近いこの夜は吸血鬼の力を存分に発揮させる。
出鱈目な力を持つ吸血鬼のフランにしてもそれは同じで、信じられないスピードで飛んで行った。
それを目にした僕としては追いつくのは無理だろうと予想したし、最早勝負にもならないというのが率直な感想である。
その時、その場に激しい突風が吹き荒れたーーー
「わっぷ!なんだよこの風は?…って、あれ?射命丸さん⁉︎」
「とっくに行っちまったぜ?」
「行っちまったぜって…えぇ⁉︎」
確かに周りを見渡すけどそこに射命丸さんの姿はなかったーーー
「ったく、相変わらず人を食ったようなやり方をする奴だぜ…本気でやったら弾幕ごっこでも結果はわからないだろうに…」
不満とゆうか納得いかないという、か…どうにも煮え切らない態度の霧雨さんに疑問を覚える。
「あの霧雨さん、本気でやったらってどういう意味ですか?射命丸さんが本気じゃないみたいに聞こえたんですが」
「ん?いや、説明するのは難しいんだけど…文は自分が強いとか出来る奴みたいに見られるのを嫌う節があるんだよ。だからいつでもやる気がないっていうか…私には何を考えてるかわからないぜ」
「実力を隠しているって事ですか?」
確かにそれは意味がわからない。
いや、思い当たることがない訳ではないけど…
確かに初めて会った時の事を思い返してみればどこか抜けているというか、無智無能を装ってる風にも見えた…
にしても霧雨さんのした評価は少々高過ぎる気がする。
「それにこの勝負にしたってそうだ、幻想郷には出鱈目な移動手段を持った奴がゴロゴロいるけど単純なスピードなら文は幻想郷最速だからな。認めたくないけど私よりも速いし…」
「幻想郷最速って…」
それが意味するところがどういう事なのか今ならわかる。
少なくとも世界最速とか、そんなレベルの話ではないだろう事は簡単に予想できた。
妖精や妖怪、果ては神様まで住んでいるこの幻想郷の中で最速の名を持つのであればそれはスピードがどうこうの次元を超えていると言ってもいいだろう。
そしてそれが事実ならばこの勝負を持ち掛けた射命丸さんはとんだ昼行灯…
その狡猾さは鴉さながらといったところだ。
「だから文はそういう奴なんだよ。勝負の勝ち負けなんてまるで考えてない…なんなら負けても良いと思ってる部分すらあるぜ?」
「ますますわからない人なんですね…」
いや、言いながらもそれがまるっきりわからない訳ではなかった。
大きすぎる力を持つ者は、本人の意思に関係なく様々な問題や、押し付けとも言えるイメージを持たれる。
そしてその大半は面倒事に繋がるのだ。
そう、僕の親友である羽川翼のようにーーー
ならばそれを隠したいと思っても不思議ではないのかもしれない。
「まぁ、そんな文が今回の異変には自ら首を突っ込んできてるんだ…それだけ仲間をやられたのは文にとって頭にきたんだろうな」
「そうですね…」
確かにそれは射命丸さんらしくはないのかもしれない。
それでも間違ってはいないだろう。
そしてその責任がある僕としては只々申し訳ない気持ちになるのだ。
「おや?どうしたんですかお二人とも、お通夜の帰りみたいな顔をして」
「うわぁ!びっくりしたぁ…いくらなんでも早すぎだぜ文」
そこには相変わらずヘラヘラした射命丸さんが立っていた。
「えっ!射命丸さん、本当に博麗神社まで行ってきたんですか⁉︎余りにも早すぎるでしょ!」
時間にして五分も経っただろうか?
僕も実際に行った事があるからこそ理解できない。
僕は走りだったとはいえ、こんな短時間で往復できるような距離ではないはずなのだ。
「あやや、これでもゆっくり行ったつもりなんですけどねぇ…ま、証拠はあるんでどうぞ」
そう言って差し出されたのは一本の木の棒で先端には白い紙のような物がついている。
「それ…霊夢のお祓い棒じゃないか!って事は本当に博麗神社まで行ってきたんだな」
もはや驚きを通り越して呆れている様子の霧雨さん…
それを見ているだけで射命丸さんの言っている事が虚言ではないという事がわかる。
「ただいまー!って、天狗のお姉さん⁉︎」
丁度良く戻って来たフランも射命丸さんの姿を見て驚きの声を上げている。
「いつの間に…私より早く帰ってきてたの?いえ…それよりも本当に神社まで行ったの?」
やはり僕達と同じ疑問を覚えたフラン、それに答えたのは霧雨さんだった。
「どうやら本当に行ったみたいだぜフラン、その証拠にほら、霊夢のお祓い棒を持ってきたらしいぞ?」
そう言うと証拠物品を提示する。
「そんな…天狗ってどんなスピードで飛んでるの?」
もう目が点なフラン。
しかし認めざるを得ない現実を受け入れて呆然としているといった感じだ。
「ふふ、フランさんも充分速かったですよ?ですが今回は私の勝ちなので弾幕ごっこはまたの機会ということで」
こうしてヘラヘラとフランの弾幕ごっこをかわした射命丸さん。
やっぱりこの人は実はとんでもない人なのかもしれない…
「わかったわ…今回は私の負けだし、でも今度はちゃんと弾幕で遊んでね!」
フランも泣く泣く負けを認めたようで今回は引き下がる事を認めた。
「ちょっと、私のお祓い棒がどうしてここにあるのよ?」
外に出てきて声を掛けてきたのは霊夢さんだった。
「おっ霊夢、話し合いは終わったのか?」
「えぇ、おかげさまで色々と詳しい話も聞けたしね。それよりも魔理沙、私のお祓い棒を返しなさいよ」
「あぁ、悪い悪い…って私が持ってきた訳じゃないぞ⁉︎いや、それよりも話し合いはどうなったんだ?」
この異変をどうするかの話し合い…
その結果次第では戦闘要員が増えるかわりに僕達の問題に巻き込む人も増えるということだ。
その結果が気にならない訳がない。
「結果から言えば今回の異変には私達は関与しない、紅魔館だけで解決してもらう事になったわ」
どうも渋々といった感じではあるが話は吸血鬼側の言い分が通る形で決着したらしい。
「ちょっと待って下さい霊夢さん!それはどういう事ですか⁉︎」
「落ち着きなさいよ文、あんたには後でちゃんと説明するから。それと外来人のあんた、そっちはそっちでレミリア達から聞いてちょうだい」
「わかりました…あの霊夢さん、忍とレミリアは?」
「あいつらは中で待ってるわ、私達はこれで帰るから後の事はそっちで頑張ってね」
何処と無く機嫌が悪く見える霊夢さん達はその後は台風一過の如く言葉そこそこに去って行った。
「どうなってんだこれは…とりあえず皆の所に戻るかフラン」
「そうね、あのメンバーがすんなり引き下がるのも腑に落ちないしお姉様の話が聞きたいわ」
こうしてレミリア達のもとへと向かう。
バトルに発展したような感じには見えなかったけど霊夢さんの機嫌の悪さから穏便に解決したとも思えない…
あのプライドの塊みたいな二人の事だから今頃烈火の如く怒り狂っていても不思議じゃないのだ。
パンドラの箱とまでは行かないけどあの二人がいる部屋のドアを開けるのに少し恐怖を覚える。
ただ、そこにいたのは僕が恐れていたのとは全く違う光景だったのだったーーー
少し空いての更新になりました。
さて、この更新の遅さにはいくつか理由とゆう名の言い訳がございまして…
まず、今回の話が区切りが悪く、どこで終わらそうかと悩みまくったあげくの中途半端な形にしか落ち着かななった的なオチです。
そして次に、イメージ画像として描いていたイラストに色を入れていたらとんでもない重労働になりやがって結局のところ更新に間に合わなかったとゆう感じです…
その問題作がこちら
【挿絵表示】
これ…背景までやろうか悩んでるんですけど…どうしましょwww
まぁそれはさておき、ここからは良いペースで更新していく予定なので興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!