東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第24話ー鬼と吸血鬼ー

阿良々木暦という人物を語るとすれば愚か者であり、何も知らない奴であり、半人半鬼でありと、あらゆる非常識を一身に背負うような人物であると形容されるのかもしれない。

 

それに関しては、あらゆる物語を語ってきた、語り尽くしてきた僕自身としても否定しつくす事はできないというのが正直なところであったりもする。

 

しかしながら少しだけ視点をズラしてもらいたい。

 

そもそも高校入学以前は、これでも優等生として通っていた訳で、過去の栄光に縋り付くようで情けない感は否めなくもあるけれど、少なくとも当時の僕にはおよそ否定的なレッテルが貼られる事はなかったのだ。

 

いや、一つだけ訂正をするならーーーさせて頂けるなら

 

 

僕には友達がいなかった。

 

およそくだらない理由ではあるのだけれど、僕の座右の銘とでもいうのだろうか、友達という存在に一家言あったというのも偽らざる事実である。

 

『友達はいらない、友達を作ると人間強度が下がるから』

 

 

今にして思えばあまりの恥ずかしさに死ぬまで死にたい思いになるような程度の低い持論だと我ながらそう思う。

 

しかしそんな僕も変わる時が来るのだ。

 

それはあの春休みーーー

 

僕が吸血鬼としての人生を歩むことになった時の事。

 

あの地獄のような春休みの中でもそれは正に地獄に仏というか不幸中の幸いというか…この僕に友達ができたのである。

 

羽川翼。

 

僕とは正反対と言っても差し支えない程の品行方正で頭脳明晰な友達ができた。

 

僕の中では友人というよりは恩人としての認識が高くはあるのだけれどこんな僕を友人として見てくれるありがたい存在だ。

 

そしてそれからの僕は数々の艱難辛苦を乗り越えながらも劇的な人間関係の発展を遂げていく。

 

数々の友人やパートナーや愛すべき恋人に恵まれた。

 

それまでの僕からは想像もできないような人に囲まれた生活の中で僕は人間関係がもたらす成長というものを学んだようにも思える。

 

さて、話が些か脱線してきたので少し軌道修正を図ろう。

 

そんな僕を取り巻く素晴らしい人々の中でもこの話において思い出して頂きたい人物が数名ーーー

 

 

少女、幼女、童女、である。

 

 

八九寺真宵

 

 

忍野忍

 

 

斧ノ木余接

 

 

いずれの人物も人間ではないが僕にとって大切な存在である事に変わりない。

 

さて、話は遡り冒頭に帰るのだけれどもーーー

 

 

 

阿良々木暦という人間を語る上でかかせない要素…それは

 

 

幼い女の子に縁があるという事だ。

 

 

誤解を招かないように明言しておくけど、ここまで長い前振りをしてからこんなカミングアウトをするのは決して僕がロリコンと呼ばれる属性の人間ではないという事を理解していただきたいからである。

 

そう、僕は不思議とそういった幼い女の子に縁があるというだけで決して僕自身がそれを好むというわけではないのだから。

 

どちらかと言えば苦手だ。

 

うん、そうなのだ。

 

 

僕の個人的な好みで言うならば恋人である戦場ヶ原ひたぎや、恩人にして親友の羽川翼のような大人の魅力を宿した女性が好みな訳で、確かに大切な存在ではあるけれど忍や八九寺が僕のストライクかと言えばそうではない。

 

むしろ会話や接し方だって幼いなりの内容になるし、主張する意見だって成長した高校生である僕とはギャップを感じる事だって少なくない。

 

だから僕は縁があるだけでロリコンではないのだ。

 

そりゃ勿論彼女達の事は大好きだよ?

 

でもそれはあくまでも友人としてであって、女性としてではないのだという所を誤解しないでもらいたい。

 

幼女ゆえの浮いたアバラや話をする時の自然な上目使いにときめいたりなんかしないのが僕こと阿良々木暦なのだ。

 

 

「なあ霊夢…さっきから私の事を怪しげな目で見つめているこいつは誰なんだ?」

 

「この人がさっき話した外来人の阿良々木暦よ…ってゆーかあんたもそのゆるみきった顔をなんとかしなさいよ!」

 

 

 

 

怪しむような目で僕を見ていた二人の女の子が口を開いたーーー

 

 

「いや、ゆるみきった顔は言い過ぎです!むしろこんな可愛い女の子が突然現れたら誰だってゆるみますよ!」

 

 

「はっはー、相変わらず阿良々木君はそういう趣味の持ち主なままなんだね、変わってなくて、いや、変わらなすぎてて安心だよ」

 

「うるさいぞ忍野!僕の必死な前説を台無しにするような発言はやめてくれ!」

 

 

そう、僕がこんな長い前説を唱えるのも訳がある。

 

忍野と話し込んでいるところに帰宅した霊夢さんが連れてきたであろうもう一人の女の子の事だ。

 

頭の両サイドに角のようなものを生やした幼くも凄まじく可愛い女の子がそこには立っていた。

 

「そんなジロジロ見られるような覚えはないんだけどねぇ?私の顔に何かついてるのかい?それとも酒でも欲しがってるとか?」

 

およそ見た目に不釣り合いな貫禄のある喋り、そしてお酒とゆうワード、さすがにそれをスルーできる程のスキルは僕にはない。

 

 

「いや、そういう事じゃなくて!っていうか霊夢さん⁉︎こんな小さな女の子にお酒とか与えちゃダメでしょ⁉︎」

 

「はあ?いや、あんたがどんな盛大な勘違いしてるかはわからないけど

萃香は私達より遥かに年上よ?見た目こそこんなだけど強さなら幻想郷でもトップクラスのーーー」

 

 

 

鬼なんだからーーー

 

 

 

 

言葉が出てこない。

 

「私は伊吹萃香、可愛いってのは褒め言葉として受け取っとくけどこれでも誇り高い鬼なんだ。次からは軽々しく可愛いだなんて言うもんじゃないよ?」

 

 

ケラケラと笑いながら手持ちの瓢箪を持ち上げて中身を飲み込む目の前の少女ーーー

 

 

漂う香りから察するにアルコールであることは明白だ。

 

確かに実年齢が数百歳を超える幼女を身近に知る僕としては普通の人よりは理解も早いのだろうけど、それでも目の前の鬼と名乗る少女に対して衝撃は隠しきれなかった。

 

「ふーん、鬼で伊吹…そして酒か。こいつは思わぬ大物に出会ったもんだ、まさかこんな所であの有名な鬼にお目見得できるだなんてね」

 

 

火のついていない煙草を咥えた忍野が関心したような面持ちで口を開いた。

 

「なんだい?あんたはわかる側の人間かい?ましてや私の事も少しは知ってそうだねぇ、どうだい?話がわかるようなら一杯付き合わないか?」

 

萃香と名乗る鬼の少女も意外と言わんばかりのリアクションだが、それはどこか嬉しそうにも見える笑顔で忍野に反応した。

 

「はっはー、僕みたいな男と酒を飲み交わしても退屈なだけだよ。それに僕が知ってる通りの鬼なら恐れ多くて同じ酒を飲むなんてできないさ」

 

「なんだい、つれないねぇ。たまには昔話を肴に飲むのも悪くないと思ったんだけどねぇ」

 

 

 

残念そうではあるけども素直に引くあたりは鬼の風格とでも言うのだろうか?

 

兎に角、話が全く飲み込めない僕はたまらず口を挟む。

 

「ちょっとまて忍野、お前はこの…伊吹さんの事を知っているのか?」

 

幼女にして年上というのはただ名前を呼ぶのにも苦労するな…

 

 

「おいおい阿良々木君、それでも大学受験を志す学生さんかい?史実を学んでいれば知っていてもおかしくないはずの知識だぜ?それとも歴史は専攻科目じゃないのかな?」

 

「あいにく僕の専攻科目は理数系なんだよ!で、お前が知ってるってどういう事なんだ⁉︎」

 

 

相変わらずの忍野節に早くも語気が強くなりがちな僕だった。

 

そしてそんな僕に声をかけたのは他でもない鬼本人だったのだ。

 

「私の事は萃香でいいよ、そしてあんたも私に聞きたいことがみたいだけどね…私もあんたに話がある」

 

 

視線を送った先の彼女は、やはり見た目は幼い女の子だったけどーーー

 

 

その雰囲気は間違いなく鬼だった。




短いですが閑話だと思って下さいσ(^_^;)
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