東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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本作品内で各キャラ同士の関係は、ある程度作者の都合で変えています!
じゃないと繋がらない部分とか出てきちゃうのでσ(^_^;)
そこだけご理解の上でお読み下さい(=゚ω゚)ノ


第28話ー永遠亭・全編ー

「しっかしこんな奴もいるんだねぇ…幻想郷で人間とはいえ鬼の名を冠する奴がまさか飛べないとは」

 

 

 

「僕から見れば普通に飛べてる二人の方が不思議ですよ…吸血鬼はともかくとして僕の知る限りで空を飛ぶ鬼も、空を飛ぶ河童も存在しない筈なのに…」

 

 

 

「ふーん、外の世界では随分と偏ったイメージが主流なんだ」

 

 

 

 

もはや驚く事でもなくなってきたのだけど僕は現在、幻想郷の空を飛んでいる。

 

 

いや、実際には飛んでるのは萃香さんとにとりちゃんだけであって、僕はというとーーー

 

 

「に、しても萃香さん…こんな事もできるなんて本当に鬼って種族はなんでもありなんですね…」

 

 

数人の小さな萃香さんの分身のような者に持たれて空を飛んでいた。

 

 

…良く考えたらこれって飛行じゃなくて空輸ではないだろうか?

 

 

「んー?はは、この程度の事は造作もないよ。なんせ私は小さな百鬼夜行とまで呼ばれた鬼だからね。その気になれば私だけで百を超える鬼が作れるよ」

 

 

瓢箪の酒を飲みながらユラユラと飛ぶ萃香さんのとんでも発言に度肝を抜かれる。

 

 

「もうここまでくるといちいち驚くのが疲れますよ…鬼と名の付く者は出鱈目なんですね」

 

 

 

いよいよ感心する事しかできない。

 

 

種族の違いはあるけど、そんな事は全盛期の忍にだってできやしないだろう。

 

この伊吹萃香という鬼が本気になったらと思うと想像もできない。

 

 

「いやいや、あんたは外来人だからわからないだろうけど鬼は本当に規格外だよ?私達が暮らしてるあの山に鬼がいた頃は本当にすごかったんだから…」

 

 

隣を飛ぶにとりちゃんが遠い目をしながら話しかけてきた。

 

 

過去のあれこれを思い返しているのか、どこか苦い笑みを浮かべている。

 

 

「なんだい、河童は鬼に文句でもあるのかい?それなら鬼を代表して私が聞こうじゃないか」

 

 

にとりちゃんに対して悪戯な視線を向けながら萃香さんが問いかける。

 

 

この人はこの人で思い当たる節でもあるのだろう、吸血鬼とはまた違った雰囲気の凄惨な笑みを浮かべていた。

 

 

「と、と、とんでもない!!!鬼が地底に篭ってからというもの山が寂しくてしょうがないですよ!いやー!あの頃は賑やかで楽しかったなー!!!!」

 

 

目を泳がせまくりながら、額に冷や汗を浮かべたにとりちゃんが必死に弁明する。

 

もし今、ここで泳げと言ったなら河童とはいえ溺れるんではないかという程の動揺っぷりだ。

 

 

これでこの子のトラウマの原因は鬼で決定的だろう。

 

その昔に、あの山では鬼よる独裁政権でもあったのだろうか?

 

 

「ははは!まぁそんなに心配しなくても鬼が山に戻る事はないなら安心しな。なんだかんだで他の鬼達も地底の暮らしに満足してるみたいだしねぇ」

 

 

「あの、さっきから気になってたんですけど昔は鬼がいたとか地底とかってなんの事なんですか?」

 

河童の抱えるトラウマは一時置いておいて、あまりにも気になるワードが飛び交っていたのでついつい問い掛ける。

 

 

「あぁ、私を含める鬼達は元々天狗が住んでる山にいたのさ。そして山の妖怪達を統括してたんだけどある事がきっかけで山を去った。で、今はこの幻想郷の地下に位置する地底ってところで暮らしてるんだよ。まぁ、私はしょっちゅう地上に遊びに出てくるんだけどね」

 

 

なるほど、妖怪が群雄割拠していて人間と共存しているだけでも驚きなのに、ここにはさらに地底世界まであると…

 

 

今更ながら本当にここは日本なのか?

 

 

 

「もっとも私以外の鬼は今でも地底に篭りっきりで地上には出てこないよ。まぁ、今日は地底も案内するから楽しみにしときなよ!」

 

 

「えっ!?その地底って場所は人間が行っても平気な所なんですか!?」

 

 

さも当たり前のように言い放った萃香さんの言葉に思わず冷や汗を浮かべて聞き返す。

 

それでなくてもいつ妖怪に襲われるかもわからないこの幻想郷の中で、最強の呼び声も高い鬼が住んでいる場所だ…

 

例えるなら百獣の王ライオンが住む場所に人間が迷い込めば身の安全が保障されないように、半人半鬼とはいえ普通の人間である僕が鬼達の住処に足を踏み入れた場合の保障はどこにもないように思える。

 

 

 

「そりゃ普通の人間が入ってくれば命の保障はないさ、地底は幻想郷の中でも屈指の危険地帯だからねぇ。妖怪のレベルも地上とは桁が違うよ」

 

 

 

「やっぱりー!!ちょっと萃香さん!?そんな場所に当たり前のように案内されても困ります!僕にはまだやり残した事とか山程あるんです!ちょっとにとりちゃんも黙ってないで何か言ってくれ!!」

 

 

「えっ!?いや、私は鬼の決定には基本的に逆らえない立場だから!!」

 

 

 

一瞬で恐怖のバロメーターが振り切った。

 

それもそうだろう、元いた僕の街ですら怪異との異能バトルで何度となく死にかけた僕なのだ。(中には人間相手のバトルもあったけど…)

 

 

こうゆう時の危機察知能力に関しては長けていると自負している。

 

 

そんな僕の全感覚が危険信号を発しているのだから慌てっぷりは半端のそれではない。

 

そこにきて全くという程に戦力外なにとりちゃんも手伝って逃げ出したい指数はうなぎ登りだ。

 

 

 

「何を慌ててるんだい?そりゃ確かに普通の人間が足を踏み入れたら危険には違いないけどねぇ、今回は私が案内役なんだよ?そこが地底だろうが地獄だろうがあんたの安全は私が保障するさ、約束するよ」

 

 

こんな幼い見た目からは想像もつかないほどの説得力がある言葉だった。

 

 

「ほ、本当ですか?自慢じゃないですけど僕のひ弱さって言ったら萃香さんの予想なんて遥か斜め上をいく弱さですよ!?」

 

 

「はは!自分の弱さを自身満々に話してどうするんだい?安心しなって、鬼は約束を破らない」

 

 

そこまで言い切られるともはや反論の余地もなさそうだ。

 

実際のところ今でも行きたくはないのだけど、それ以上にもし今更断ったりしたらの伊吹萃香という鬼の方がよっぽど怖いだろうという思いもないわけではない。

 

 

「あっ、見えてきましたよ!」

 

 

ここで声を上げたのは控えめについて来てたにとりちゃんだ。

 

その声を元に前方に目を凝らせばこれまでに見た森とは違う緑の林が広がっていた。

 

 

「あれは…竹林ですか?」

 

 

「そうさ、あの竹林が幻想郷では迷いの竹林と呼ばれる場所でその奥に進んだところにあるのが永遠亭だよ」

 

 

そう返事をすると飛行の高度を徐々に落としていく萃香さん、それにつられるように僕達も地上へと降りていく。

 

 

「これは…圧巻ですね…」

 

 

僕達が降り立ったのは竹林の入り口。

 

 

どこまでも常識からかけ離れたこの幻想郷で、ここが本当に日本なのかすら疑わしかった僕にとって、ここまで日本的な風景はどこか安心できるものでもあった。

 

 

 

が、その反面、空から見たその姿とは違い、目の前に広がる竹林はまさに一度入れば抜け出せない迷宮の入り口のような雰囲気が漂っていた。

 

 

「さぁ行こうか」

 

 

一言つぶやくと、萃香さんは何の迷いもなく竹林に入っていく。

 

そしてそれに続くようににとりちゃんも続いた。

 

 

「って、ちょっと待って下さい!二人ともさっさと歩いて行こうとしてますけど道はわかるんですか!?というか、空から行った方が良いんじゃないですか!?」

 

 

危うく取り残されるかのようなタイミングで僕は二人の後姿に声をかける。

 

右も左も同じような景色の中に、何の目印もなく歩いて入っていく意味がわからなかったのだ。

 

 

「あぁ、今から行く永遠亭は空からじゃ行けないよ。竹ってのは成長が早いからね、空からの景色は毎日変わっていくのさ。だからここからは歩いて行かなきゃならない、でもまぁ心配はいらないよ。ここには案内役がいるから」

 

 

少しこちらを振り返った萃香さんは薄く笑ってそう答えた。

 

そしてピクニックにでもいくかのような雰囲気で一口瓢箪の酒を煽り再び竹林の中へ進んでいく。

 

 

「なぁにとりちゃん、萃香さんてもしかして計画性とか全くないタイプじゃないのか?」

 

 

前を進む萃香さんに聞こえないようにこっそりとにとりちゃんに話しかける。

 

 

「私の口からは何も言えないけど…くれぐれも期待はするなとだけ言っておくよ」

 

 

全てを悟らせるには充分な返しだ。

 

こうして僕とにとりちゃんはハモるように溜息をついて前方の萃香さんについてくいく。

 

 

 

しかしこの竹林、迷いの竹林とは良く言ったもので歩けど歩けど景色が変わらないせいなのか、方向感覚が全くと言って良い程にきかない。

 

 

入り口から離れてしまえば、ひとたびその中へと入ってしまえば、余程の強運の持ち主でなければ二度と出てこれないかもしれない。

 

 

そんな中を五分ほど歩いた時だろうか?

 

 

突然に僕達に声がかかった。

 

 

「やけに強い気配がすると思えば迷いの竹林に迷い込んだのは鬼と河童か。随分と珍しい組み合わせだな」

 

 

声のした方向に目を向けるとそこには長くしなやかな白髪を小さな赤いリボンで複数にとめて、白いワイシャツに赤のズボンというシンプルでありながら派手な格好をした女性が立っていた。

 

 

「なんだ、てっきり竹林の案内は小さい兎のお嬢ちゃんが来るもんだと思ってたけど妹紅が出てくるとは意外だねぇ」

 

 

どうやらこの女性と面識があるらしく、真っ先に女性へと声をかけたのは萃香さんだった。

 

 

「私は今から慧音の所に行くところだったんだよ、萃香こそどうしたのさ?いつもならこんな所には来ないじゃないか」

 

 

 

「なに、河童が永遠亭に友の見舞いがしたいっていうからね。それと今日はこの外来人の幻想郷案内も兼ねてるのさ」

 

 

 

「天狗の入院があったはずなんだけどその中に私の友達がいるのよ」

 

 

 

「そういえば最近、天狗の入院があったね。にとりは天狗の山に住んでるし仲も良かったんだろ、見舞ってやれば天狗も喜ぶだろうね。…で、そっちのが?」

 

 

気さくに一言二言会話を交わした後、話題のタネとして話を振られた僕はここで初めて目の前の女性と目をあわせる。

 

 

「ど、どうも。僕は阿良々木暦です」

 

 

「あんた外来人なのか?私は藤原妹紅、まぁ…ここの案内やらボランティアをやってる者だよ」

 

 

愛想が良い訳ではないけどボランティアなんてやっている辺りから考えるに根は優しい人なのだろう、きちんと名前まで名乗ってくれたし見た目も普通に人間だ、なんだか安心できる印象を持てた。

 

 

 

「なぁ萃香、この外来人は人間なのか?」

 

 

どこか引っかかる所でもあったのか、不思議そうな顔で萃香さんに向き直って妹紅さんが訪ねる。

 

 

「気付いたのかい?まぁ元は人間らしいんだけどね、縁あって今は半分吸血鬼らしいよ」

 

 

「気付いたっていうか…昔から妖怪退治なんてやってるせいかなんとなくわかるんだよ。…にしても」

 

 

そして再び僕と目を合わせた妹紅さんは少しだけ鋭い目付きで続ける。

 

 

 

「あんたに何があってそんな身体になってるのかは知らないけどね、人であれるなら滅多な事はしない方が良いよ?人として生きて人として死ぬのが人らしさだ」

 

 

「…はい、わかってます」

 

 

初対面の人にここまでのべつまくなしに言われたなら、普通は理解しがい部分もあるだろう。

 

 

人によっては業腹に思う人もいるかもしれない。

 

しかしあくまでも僕は違ったーーー

 

 

この時の妹紅さんの目は真剣そのもので、一見して言葉は乱暴に聞こえるけど真意はあくまでも僕を心配しての言葉に聞こえたのだ。

 

 

「まぁまぁ、妹紅も人間相手になると入れ込みたくなるのもわかるけどね、今日は予定も押してるんだ。悪いけど永遠亭までの案内を頼むよ」

 

 

気まずいわけではないけど少なくとも穏やかではない空気を察してか、萃香さんが間に入ってくれた。

 

にとりちゃんに至っては後ろで気まずそうにしている。

 

 

「ん?あぁ、そうだったね…じゃあ行こうか。まぁ私はあいつに会ったりはできないから永遠亭の入り口までだけどね」

 

 

「相変わらずバチバチやってるみたいだねぇ?喧嘩は私も好きだけどあんた達のはさすがの私も呆れるよ」

 

 

「ほっとけ。今ではそれも生きてる実感なんだよ」

 

 

これだけ交わすと後は無言のまま妹紅さんは歩き出した。

 

 

今のやり取りからは何もわからなかったけど妹紅さんにも色々ありそうだ。

 

 

こうして歩くこと時間にしておよそ三十分程になっただろうか?

 

 

相変わらず景色は変わらないからどれだけの距離を歩いたかはわかないけどある地点で先頭を歩く妹紅さんの足が止まった。

 

 

 

「さ、着いたよ。ここが永遠亭だ」

 

 

そこには竹林の中に佇む日本庭園のような建物が建っていて随分と立派な庭もあった。

 

 

「ありがとね妹紅」

 

「余計な手間をかけたね、お礼に今度酒でも振舞うよ」

 

 

「天狗によろしくなにとり。あと萃香、あんたの酒は私には強すぎだよ。お礼はいいからあんたも少しは酒を控えな」

 

 

「ははっ、私から酒をとったら何が残るってんだい?生き甲斐を奪われたら鬼とはいえ生きてけないよ」

 

 

 

「鬼の酒好きも難儀だね…まぁ良いよ。あと外来人のあんた、さっきの言葉…くれぐれも忘れないでね」

 

 

「わかりました…ありがとうございます妹紅さん」

 

 

こんなやりとりの後、妹紅さんは少し微笑みそのまま去って行った。

 

 

 

「さ、ボーっと突っ立ってないで中に入るよ。河童も見舞いに来たんだからさっさと行ってきな」

 

 

「は、はい!じゃあお先に失礼します!」

 

 

にとりちゃんは萃香さんの一声で逃げるように走って行った。

 

 

いや、実際半分は逃げたのかもしれないけど…

 

 

「ここが永遠亭ですか萃香さん?もっと病院みたいな建物を想像してたんですけど」

 

 

「病院?なんだいそりゃ?とりあえずここが永遠亭だよ、怪我人や病人が運ばれて来る場所さ。ようするに鬼には縁も御用もない場所さ」

 

 

確かに最強の呼び声高い鬼ならばよっぽどの事がない限り医者に頼るような怪我はしないだろう、病気なんてさらに無縁に違いない。

 

 

強いて萃香さんが医者の世話になりそうな理由を挙げるとするならアルコール中毒とかだろうか?

 

 

「そしてこの永遠亭にはあんたを紹介したい奴もいるんだ。まぁ会った時にまた説明するけどきっとあんたも知ってる奴だよ」

 

 

「僕が知ってる?って萃香さん、僕は幻想郷に知り合いなんて…」

 

「良いから良いから!しのごの言わずに行くよ!」

 

 

こうしてにとりちゃんに遅れながらも、僕と萃香さんは永遠亭に入っていく。

 

 

この後の衝撃的な出会いも知らずに。




長くなりそうなので全編後編に分けさせて頂きましたσ(^_^;)
ここからの幻想郷案内ツアーは少し長めの尺で書いて行こうと思ってます!
サクサクとテンポ良くストーリーが進む作品が好きな方には大変申し訳ないのですが、書きたいネタが多すぎてこうなってしまいました(。-_-。)
ご了承下さい!

ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
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