東方怪異譚ーLegend of vampireー 作:根無草
「無事でよかったよ椛ー!あんたがいないと将棋の相手もいなくて暇でしょうがないんだ!早く元気になって山に戻ってきてよ!」
「痛い!痛い!!ちょっとにとり!抱きつかないで!私まだ骨が…って尻尾をモフモフしないでー!!!!」
萃香さんに連れられて病棟と思われる建物に入ってみると、一足先にお見舞いのために永遠亭に入っていったにとりちゃんの声が聞こえてきた。
声から察するににとりちゃんと会話しているのが話していた友達の天狗という人だろう。
それにしても…
「なんだい?さっきから浮かない顔をしてるねぇ?こういう所は苦手かい?」
僕の顔を覗き込むように覗き込む萃香さんが訪ねてきた。
「いや、確かに病院はあまり好きじゃないんですけど…それよりもここに入院している天狗の皆さんが僕のせいかと思うとやっぱり…」
この通路にある全ての病室が恐らくは先日あの三人組の被害にあったであろう天狗達が入院していたのだ。
全てを見た訳ではないが通り過ぎざまに見た室内の様子は、痛々しく包帯を巻いて点滴を受けながら苦しそうにしている天狗の姿だけだった。
「ふーん…病院とか入院ってのは良くわからないけど随分と抱え込むのが好きみたいだね。ま、私にはどうでもいい事だけど。そんな小さな事に悩まされるってのも弱い人間らしくて様になってるよ」
返された返事はあまりにも我関せずな無感情なものだった。
「…そりゃ確かに萃香さんには関係のない事かもしれないですけど…僕は張本人なんです。責任だってとらなきゃならないしとても小さな事だなんて思えないですよ…」
反抗心なんかではなかった。
その言葉はほとんど自分に対して放たれた言葉のようにすら思う。
しかし、それを聞いた萃香さんの反応は違ったーーー
「随分と立派な口をきくねぇ。じゃあ何かい?あんたはこの責任をどう取るってのさ?それにね、私を無関係のように言ってたけど、それは聞き捨てならないよ?いくら過ぎた昔の事とはいえ天狗は私の配下であり腹心だったんだ。私だって腹に据えかねてるのは同じなんだよ」
その姿はさっきまでの酔っ払い幼女とは程遠いーーー
目の前に立たれるだけで畏怖してしまうほどの圧倒的な存在感を持った…鬼だった。
「す、すいません…考え無しに言いすぎました…でもーーー」
あまりの存在感にとっさに謝罪をしてしまうあたり、僕の弱さは折り紙付きだと我ながら思う。
しかし、そんな僕にだって譲れない物の一つくらいは持っているのだ。
「でも…なんだい?」
まるで僕の価値を品定めでもするように目を逸らさずに僕の返答を待つ萃香さん。
今思えばこの時の返答次第では、僕は何をされていたことやらである。
「責任だけは…ちゃんととりますよ」
僕は一瞬たりとも萃香さんから目を逸らさずに答えた。
果たしてそれが責任を果たす事になりうるのかは別として、この時の僕の頭には一つの事しかなかった。
「だからさ…責任なんてどうやってーーー」
「あの三人組は僕達が必ず倒します!」
それは責任なのか…僕にはわからない。
ただ、これだけの被害が出たこの事件譚において僕の存在が全く関係していないなんて事はないのだ。
実行犯ではないにしても僕の浅はかさが招いた被害がこれであり、現実。
ならば事の元凶として、せめてあの三人組は僕達でなんとかするのが責任だろう。
「ぷっ…はははははは!!!」
突然笑い出した萃香さん。
ここが病院とゆう事を考えればあまりにも非常識である。
まあ、鬼なんて存在がそもそも常識の範囲外なのだから気にもならないけど。
「あんたはつくづく面白い人間だねぇ!弱くなってみたり強くなってみたり…全く見てて飽きないよ!」
そこにいたのは先程までの存在するだけで全ての存在を脅えさせるような鬼ではなく、あっけらかんと笑う酔っ払い幼女の萃香さんだった。
「いや!そんなに笑うところですか!?それにさっきまでの威圧感もーーー」
「いや、悪かった悪かった!私達みたいな強い妖怪ってのは普段は周囲に余計な影響が出ないように力を抑えてるもんなのさ、ただたまに感情が高まるとどーしてもね?まぁ、あんたがそういう奴で良かったよ!」
もはや過ぎた事をどうこう言うつもりもないのか、全くと言って良いほどにいつも通りの萃香さんはそのまま通路を進み始める。
ただ、二、三歩進んだところで振り返って僕に言ったのだーーー
「ついでに言っておくけどね、誰もあんたに責任を求めたりはしてないよ?幻想郷の為にそこまで悩んでくれるのはありがたいけど戦うなら自分の為に戦いな。喧嘩なんてシンプルが一番さ」
そう笑いながら告げた萃香さんはとても神々しく見えた。
さて、そんなやり取りがあったのがおよそ三十分程前の話。
そして現在、僕の前には顔を真っ赤にした兎耳のセーラー服を身に纏った少女と、赤十字のマークが入った帽子を被る長い銀髪を一本の三つ編みに纏めた昔の羽川のような髪型の女性が座っている。
「…だから嫌だって言ったんですよお師匠様!もし誰かに見られたらどうするんですかってあれ程言ったじゃないですか!!!」
「過ぎた事を言ってもしょうがないわよウドンゲ。それに長生きするとあの程度を恥だなんて思わなくなるものよ、あなたもまだまだ修行がたりないわね」
こんな会話をするこの二人、いったい何があったかといえば
以下回想
萃香さんが僕を会わせたいという人物を探して建物内を歩き回っていると、小さな人影が視界に入った。
「おや、兎のお嬢ちゃんじゃないか。ちょっと用事があるんだ、永琳の所へ案内しとくれ」
あちこちの病院を慌ただしく行ったり来たりしている少女に向かって萃香さんが話しかける。
「この忙しい時に何の用?言っておくけど私はお嬢ちゃんなんて歳じゃないんだ!」
驚く事にこの少女、頭に兎のような耳がついていた。
この幻想郷では驚くような事でもないんだろうけど少女にウサ耳とはなんたる桃源郷だろう。
いや、本人の発言とここが幻想郷という事を含めて考えたら恐らく少女なんて歳ではないだろうけど…
「ん?そっちの怪しい顔した男は?」
この世界の人は初対面での礼儀はないのだろうか?
開口一番、怪しい呼ばわりは大変遺憾である。
「あぁ、用事ってのはまさにこいつの事さ。ちょっと変わった外来人でね、永琳に紹介って訳でもないんだが幻想郷を案内して回ってるのさ」
「二人して言われ方が酷い!?」
僕の扱いが段々と雑になってる気がするぞ…
「ふーん、鬼でもそんな事をしたりするんだねぇ…お師匠様は午前の診察が終わったら鈴仙とどっか行っちゃったよ。おかげでわたしゃ悪戯もできずに仕事に追われてる有様だよ」
「悪戯兎が真面目に仕事とはある意味異変だねぇ。まぁわかったよ、ならその辺を適当に探すさ。仕事の邪魔したね」
こうして建物をあとにしたのだけど…
その後に遭遇したものがとてつもなく壮絶だった。
ある程度建物の周辺を散策し、別々に捜索したが人影すらなく、さすがの萃香さんもお手上げ状態になった時ーーー
「ちょっと気配を殺してこっちにおいで!」
とても良い笑顔で萃香さんが手招きをしている。
「いや、気配を殺せって言われても僕にはやり方が…」
「良いから!とにかく静かにこっちに来な!」
意味もわからないまま、言われる通りにして萃香さんに近寄ると物陰に人影がーーー
「…良いですかお師匠様?」
「ええ、いつでも良いわよ」
物陰から見れば、そこには二人の女性が…
「では…流派永遠亭は!」
「王者の風よ!」
「全新系列!」
「天破侠乱!」
「「見よ!東方は赤く燃えている!!!」」
ガッツリ決めポーズをしていた。
「はははははははははは!!こりゃ珍しい物を見たよ!まさか真面目一辺倒の永琳がこんな事をしてるとはねぇ」
たまらず笑いだす萃香さん。
その声に気付いてか、銀髪の女性がこちらに向き直る。
「あら?萃香じゃない、永遠亭に来るなんて珍しいわね?どうしたの?」
さっきの決めポーズが嘘のように知的な振る舞いだった。
「いや、用っちゃ用なんだけど私の用事じゃないよ。この外来人を紹介したくてさ」
「ど、どうも阿良々木暦といいます!さっきはすいません!隠れて見るつもりはなかったんですが…」
何故か見られた側ではなく、見てしまった僕の方が気まずい。
それ程までに凛としたこの女性の態度に気圧されていた。
「良いのよ別に、たまには息抜きも必要だし。私は八意永琳、この永遠亭の責任者よ。それより貴方…人間よね?」
「流石は永琳、薄々は勘付いてるみたいだねぇ」
「診察で人里には良く行くのよ、でもこの人からは違う気配がするの。どうやら萃香の用事ってのは訳ありのようね。中で話しましょうか」
どこまでを察してなのか、優しい笑顔を浮かべたこの女性は僕達を再び永遠亭の中へ誘う。
「その前に永琳、『アレ』は良いのかい?」
悪戯な笑顔で萃香さんが指差す先にはーーー
謎の決めポーズのまま固まった少女の姿があった。
回想終わり
「それに二人もこっそり覗くなんてあんまりです!声を掛けてくれたら良かったじゃないですか!!」
怒り心頭の兎耳少女の矛先は僕と萃香さんに向く。
「だから悪かったって、鬼は面白いものが好きなんだ。あんな楽しそうな物を見過ごせるはずないだろ?」
相変わらず酒を煽りながら話半分に受け答える萃香さん。
これにはこの兎耳少女も諦めたのか、残る標的は僕一人だ。
真っ赤な眼に涙を浮かべて僕を睨んでいる。
「僕!?ちょっと萃香さん!この逃げ場の無さはなんですか!明らかに僕が主犯のような雰囲気なんですけど!?」
「逃げ場?鬼が逃げ場なんて考えるんじゃないよ!いつでも真っ向勝負が鬼の矜持だ!」
「そもそも僕は鬼じゃない!!」
鬼はどちらかと言えば僕の周りの人間だ!
「ふふ、仲が良いのね二人共。ウドンゲもそろそろ落ち着きなさい?」
「言い出したのはお師匠様じゃないですか!!!」
こうして兎耳少女の泣き寝入り的な形でなんとか事態は収束した。
「さて、じゃあ本題に入りましょうか。ウドンゲ、悪いんだけどお二人にお茶をお出しして」
「わかりました」
こうしてギャグパートを終え、シリアスな雰囲気の中、話が始まる。
「貴方が外来人なのはわかったけど、その人間なのに人間離れした気配はどういう事かしら?」
その物腰は柔らかで、成る程どうして医者であるということが得心いく雰囲気だ。
髪型どころか存在そのものに羽川のような気配を思わせる。
そして僕は語らねばなるまい。
ここに入院して、今もこのハ意永琳さんのお世話になっている天狗の事を含めて全ての異変ついて。
「僕は…吸血鬼を宿していますーーー」
永琳さんの聞き上手なのか、そこから僕はこの異変のあれこれを余すことなく語った。
時に永琳さんが、萃香さんが質問を挟む中
その話はウドンゲさんが出してくれたお茶の湯気が消えるまで続いた。
「成る程ね…貴方の世界で貴方も色々な経験をしたのはわかったわ。さぞ辛かったでしょう」
全てを聞き終えた永琳さんは柔らかな笑顔で僕を労ってくれた。
「いえ…思い返せば僕の不徳の至る所なのも事実ですし…それに辛かった事もあるけど良い事も沢山あった数ヶ月です、今では周りの人に感謝が尽きません」
「ふふ、貴方は良い仲間に恵まれたのね。大丈夫、貴方は天狗の事を気にしているようだけどそれは貴方の責任じゃないわ。勿論、吸血鬼のせいでもね?その三人組の復讐心もわからないでは無いけど今回はやり方を間違えてる。それだけよ。貴方は優しい人だけどそこまで抱え込むべきじゃないわ」
それは決して皮肉ではないだろう。
心から僕を気遣ってくれているのが伝わってくる。
萃香さんのように猛々しい強さではないけど、まるで羽川のような芯の強さを感じる不思議な人だ。
「それにしても鬼がここまで人間に入れ込むなんて博麗の巫女くらいだったのに…これも貴方の人柄かしらね?」
少し悪戯な笑みで萃香さんに微笑みかける永琳さん。
「言ったろう?鬼は面白いものが好きなのさ。こんな面白い人間そういないから少し付き合ってやりたくなっただけさね」
「素直じゃないのね?鬼が喧嘩を我慢するなんて聞いた事もないわよ?」
「誇りと聞いたらそれもしょうがないよ。だからこそあんたは余計な事を考えずに勝つ事だけを考えな」
二人は僕を真っ直ぐに見つめる。
ここに来ていくらか肩の荷がおりたのか、はたまた話を聞いて貰えて、そして許されて安心したのかーーー
「…はい、ありがとうございます!」
僕にはこう答えるしかなかった。
「ところで永琳、ここのお姫様はどうしたんだい?またお昼寝かい?」
話も終え、そろそろ御暇しようかという時、不意に萃香さんが永琳さんに尋ねる。
「あぁ、姫なら部屋にいるはずだけど…姫にも何か用事があったの?」
すると萃香さん、先程の決めポーズ事件の時のような悪い笑顔で続ける。
「なに、こっちの用事はおまけさね。ただ、面白ろそうだからねぇ…どうやらこいつのいた世界ではお姫様の伝説があるみたいだよ?」
この一言が始まりだった。
それを聞いただけで永琳さんも何かに気付いたらしく
「成る程ね…なら少し会っていったらどう?貴方も会って損はないわよ?」
と、とても良い笑顔で僕を誘うのだった。
で、その結果はというとーーー
「か、か、か、かぐや姫!?」
当然こうなる訳で、阿呆丸出しの僕がそこにはいた。
そんな僕のリアクションが余りに予想通りで面白かったのか、萃香さんは大爆笑、永琳さんも口元を押さえて笑っている。
そして目の前の美しい女性すら笑っていた。
「そうよ、私は貴方の言う竹取物語のかぐや姫本人。名を蓬莱山輝夜というわ、よろしくね」
様々な怪異を目撃してきた。
果ては自分が吸血鬼にもなった。
挙句、妖怪だらけの幻想郷にまで来てしまった。
だけどだ…
かぐや姫本人に会った高校生なんて僕をおいて他にいないだろう!?
「待ってください!えっ!?本人!?あのかぐや姫本人!?」
日本人ならば誰もが知ってると言っても過言ではない一般教養の一つ。
竹取物語。
確か平安時代あたりに生まれた日本最古の物語だった筈でかぐや姫は月に帰った筈では?
「それは貴方の世界の人が勝手に伝えた歴史でしょ?私はあの後も永琳達とずっとここで暮らしてるわよ?」
「未だに信じられませんけど、それが事実なら月からの使者は来なかったんですか!?」
まさかの歴史的生き証人の衝撃発言に日本の歴史が大きく変わるのを感じながら目の前の姫に質問すると
「使者?あぁ、それならそこにいるじゃない」
かぐや姫が指差す先には永琳さんが微笑んでいる。
って事はまさか…
「えっと…もしかして月の方ですか?」
「そういえば言ってなかったわね、私もウドンゲも、勿論姫だって元は月の住人よ?」
当たり前のように答える永琳さんだった。
「月に兎ってあまりにベタすぎる!?いや、そもそも僕の世界では何年も前に月面着陸を成功させていてそこに生物は確認されてなかった筈ですよ!?」
月の住人が兎耳の時点で出来過ぎ感は否めないが、それではアポロを始めとする人類科学の発展に説明がつかない。
「そんなの月の科学力を持ってすれば簡単よ。地球人が月に来たところで私達と一切の接触が持てないようにするなんて造作もないわ」
さも当たり前のように、例えるなら名探偵が単純すぎるトリックを暴くかのように応える輝夜さん。
答えは単純に地球の科学より月の科学が発展しているだけのようだ。
「でも人類の科学力で月にまで行けたのは確かに驚くべき発展ね。幻想郷に住んで久しいけど外界の人間も進歩してるといったところかしら」
永琳さんは素直に感心しているようだけど、この人達が生きてきた年月を思えば人類の歩みなどさして気にもならない些細なものなのかもしれない。
「確かに私がお爺様とお婆様に育てて貰った時代にそんな科学力があったなら少しは歴史も変わったかもね…ま、過去は無限。過ぎた事より今が大事よ」
お爺様とお婆様とは恐らく竹取物語に登場するあの二人の事だろう。
一瞬、昔を懐かしむような表情を見せた輝夜さんだったが、言い終える頃には普通の顔に戻っていた。
「さて、あんたの良いリアクションも見れた事だしそろそろ行くとするか。今日だけで幻想郷を回るんだから時間は無駄にできないよ!」
一通りのやりとりを見て満足したのか、萃香さんは一口酒を飲んで立ち上がる。
どうやら彼女の中での永遠亭での用事は済んだらしい。
「もう行くのね。萃香が言ってた面白い人間って言葉の意味が少しわかった気がするわ、機会があればまた永遠亭に遊びにいらしてね」
見送ってくれるのか、僕達と一緒に部屋を出る永琳さん。
輝夜さんは出不精なのか手をヒラヒラと振ってそのまま部屋に残った。
「突然押しかけて色々とすいませんでした、できたらウドンゲさんにも誤っておいて下さい。ではーーー」
永遠亭の外門まで来た所で僕は永琳さんに別れの挨拶を告げる。
本音ではこの羽川に似た雰囲気を持つ永琳さんに、もっと色んなことを聞いたりしたかったがその時間はない。
そしてお言葉に甘えて再び永遠亭に遊びに来る事もないだろう。
それゆえに僕はこう告げる。
あのアロハのおっさんが嫌うであろう別れの言葉を
「さようなら」
萃香さんは珍しく何も口を挟まなかった。
黙ってまた分身を作り出し、僕を連れて空に飛び立とうとする。
と、その時ーーー
「待って」
不意に永琳さんに呼び止められた。
「なんでしょうか?」
「二日後の戦い、役に立つかはわからないけどこれを渡しておくわ」
そう言って手渡されたのは小さな和紙袋。
「中身は活力剤よ。言ってなかったけど私の能力は『あらゆる薬を作る程度の能力』、誇りをかけた戦いにドーピング紛いの薬は渡せないけど、これは私からのせめてもの気持ちよ。戦いの前夜に飲んでちょうだい」
とても優しい笑顔でそう告げる永琳さん。
ただ僕には一つだけ気がかりがあった。
「ありがとうございます、でも…なんでここまでしてくれるんですか?正直、僕達は幻想郷に迷惑んかけている立場で、ましてや永琳さんは吸血鬼に縁も所縁もないのに…」
引っかかったのはそこだ。
優しく僕の責任ではないと諭してくれた永琳さんの人柄を思えば不思議ではないのかもしれないが、それにしても良くしてくれすぎてる感じがしてならないーーー
つまりは永琳さんの真意が見えなかった。
「実はね…私達、月の住人も以前に幻想郷で異変を起こした事があるのよ…」
その口から語られたのはこの永琳さんからはとても信じられない事実。
「えっ!?永琳さんが異変を!?」
「えぇ、その時は正直身の回りのことしか見えずに幻想郷に多大な迷惑をかけたわ…でも貴方は違う。結果的に異変は起きてしまったけど貴方は常に幻想郷を、私達の世界の事を気にかけてくれている。普通は自分の事で頭がいっぱいになるはずなのにね…」
「それは…」
買い被りすぎですと僕は言えなかった。
僕は永琳さんが思ってくれているほど、善良でもなければ正しくもない…
ただ、自分に責任を求めるのが一番楽だと思っていて、常に楽な方へと逃げているだけのような気がしてならないのだ。
「だからこの薬はせめてものお礼よ。どうしても飲みたくなければ捨ててもらって構わないわ。ただ、無事に勝ってちょうだい」
それだけ言うと永琳さんは萃香さんにアイコンタクトを送る。
受け取った萃香さんも無言のまま空へと飛び立った。
どんどん小さくなっていく永琳さん、僕は身の丈に合わない高評価に戸惑いながらもこれだけは言わねばなるまいと声を張り上げるーーー
「ありがとうございます永琳さん!『また』いつか!!」
成る程…
忍野が別れの言葉を嫌う理由が少しだけわかる気がする。
接した時間は短くても、僕は永琳さんに救われたのだ。
そして力を貰った。
突拍子もなく始まった萃香さんの幻想郷案内ツアーだけど、これは僕にとって僥倖と言わざるを得ない。
眼下に目をやれば、僕達が見えなくなるまで手を振ってくれている永琳さんだった。
「さて、永遠亭の次はどこにしようかね?あと何箇所か行きたい所があるんだけどねぇ…」
ある程度飛んだ所で萃香さんは次の行き先を決めようとしていた。
「そんなに時間がある訳でもないですし、近いところからで良いですよ?もしそれでも時間が足りないようなら重要な所とか」
「何を言ってるのさ!鬼が行くと言ったら全部行くよ!そうさね…なら次は肝試しでもしてみるかい?」
「肝試し!?お化け屋敷でも行くんですか!?」
「ん?お化け屋敷とは言い得て妙だ!ま、そんな感じの所だよ。じゃ、急ぐから舌噛むんじゃないよ!」
こうして僕達は次なる目的地を目指して幻想郷の大空を駆け抜ける。
次なる観光地はーーー白玉楼
たまに当方MMDなんかで永琳とウドンゲのこのネタを見かけるとニヤニヤしてしまう僕です!
さて、こんな感じで暦の幻想郷ツアーをやっていく予定なんですが…
流石に長くなりすぎそうな気がしますので何箇所か、そして東北キャラも何人か端折る可能性がありますσ(^_^;)
一応はストーリーも決めてあるのですが参考までに希望の登場キャラとかあったらコメントお願いします!
ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
ps
物語キャラと絡んでない時の暦って果てしなく一般人だなぁ…w