東方怪異譚ーLegend of vampireー 作:根無草
今欲しい物はなんですか?
そう聞かれた時、思い浮かべるものは人それぞれだろう。
斯く言う僕もパッと思い浮かぶものは様々ある。
少しだけ話を具体化しよう。
さながらクリスマスの夜、サンタクロースにプレゼントをお願いするかのように、寝る前に欲しい物を願って眠りについたーーー
そしてその翌朝、目を覚ました自分の目の前に願った通りの物があったとしたらどうだろうか?
それこそクリスマスの朝を迎えた幼くも純粋な子供のように喜びはしゃぎ回るだろうか?
ある程度の年齢を重ねた人ならば呆気にとられて身動きすらとれなくなるのだろうか?
兎に角、僕が言いたいのはそういう事。
深い眠りから目を覚ましてみたら望んだ物が手に入る、けど余りに突拍子もない目の前の現実にあらゆる感情が付いてこない。
僕は今まさに、そんな状態に置かれているのだ。
いや、『望んだ物』なんて言い方をすれば些か語弊がある。
だってそれはーーー物ではないのだから。
八九寺真宵
迷子の女の子
母の日に交通事故で命を落とした小学五年生の女の子
それから十年、道に迷い続けた迷子
迷子の蝸牛
そしてーーーー
忘れもしない今年の八月二十二日、僕の前から姿を消した僕の親友ーーー
目を覚ました僕が見たのは、もう二度と会うことが出来ないと思っていたあの後姿。
いつでも突然に僕の目の前に現れたあの頃のように、
大きなピンク色の何かの動物をモチーフにしたようなリュックも
そのリュックから生えているかのよつなトレードマークのツインテールも
全てがあの時の八九寺のままだった。
にとりちゃんを見て八九寺がフラッシュバックした僕が言えば説得力に欠けるというものだが、僕をしてあの八九寺を見間違える筈がない。
八九寺マイスターを自負するこの僕ならば、第一期の八九寺オープニングからでも本物の八九寺を見つけられるとまで断言できる。
そんな僕が僕に対して言うのだ、あれはーーー
八九寺真宵だと。
あれ程までに…自分の命すら投げ出しても構わないと思うまでに再会を望んだ八九寺が目の前にいる。
その事実は僕に様々な感情を巻き起こさせては混乱の中へと猛スピードで引っ張り混んでいった。
しかし人は理解を超えた現実を目の当たりにすると、どこら冷静になっていく生き物なのだろうか。
僕はあらゆる混乱の中で疑問に思う点を幾つか見つける。
それはまずこの場所だ。
確か僕が眠りに落ちる前、正確に言うなら眠らされる前にいたのは是非曲直庁であり、国会議事堂を思わせるような荘厳な建物の中だった筈だ。(言った手前ではあるが国会議事堂に行った事は無い)
それがどうだろうか
今僕がいるのは川の畔。
それもついさっき小野塚さんに会った河原とも違い、花はおろか植物も人工物もない砂利や石で一杯の殺風景な場所だった。
そして次の疑問が天気。
これも正確に言うなら天気とは言えないのだろう。
何故なら空は光を失い、まるで漆黒の闇夜のように暗いのだ。
しかしそれでいて辺りまで暗い訳ではなく、薄暗くはあるけど真っ暗闇とまではいかい不思議な黒のコントラスト。
有り体に言えば薄気味悪い。
そして最後の疑問。
それは他でもない八九寺だ。
これまでの僕の記憶にある八九寺はいつでも突然現れてーーーいつでも歩いていた。
目的地もなく気ままなお散歩と本人が言っていた事があるけど、彼女はいつでも歩き続けていた筈だ。
そんな八九寺はさっきから僕に背を向けたまま動かない。
いや、それよりも座り込んだままなのだ。
他の誰かが河原で座り込んでいるだけなら気にしないが、あの八九寺が歩きもせずに座り込んでいるなんてあまりにも不自然な光景でこれはこれで薄気味悪いと言えば薄気味悪い。
いや、相手は女の子だしそりゃ座りもするだろうけど何かが不自然だった。
しかしこんなところでいつまでもあれやこれやと考えていても拉致があかない。
少なくとも僕にはするべき事があって時間は有限なのだなら。
目をやると八九寺はまだ僕の存在には気付いていない様子で背を向けて座り込んだままだ。
と、なれば兎にも角にも話しかけなければ話しは始まらない。
しかしなぁ…
ここが何処であれ今更ながら気恥ずかしい部分は否めない。
それでなくても細やかな勘違いでにとりちゃんに同じような過ちを犯してしまっている僕としては同じ失態は犯せないし。
いや、冷静になって考えてみれば同じ過ちを犯しす必要なんて無いじゃないか!
いつしか習慣とゆうかお約束というか、八九寺に会えば僕が喜び勇んで飛びつくという一連の流れが恒例行事のようになっていたけれど、それこそが大きな間違いなのだ。
確かに八九寺との再会は喜ばしい事だけど、だからといって毎度毎度襲い掛かっていては僕の成長も危ぶまれる。
これも丁度良い機会だと思って久々に会った時に大人へと成長していた僕の姿を八九寺に見せてやるのもまた一興ではなかろうか?
だとすれば、だとすればだよ?
未だ背後にいる僕の存在に気付きもしないあの少女に飛びつくのはいかがなものだろう?
そう、僕は成長したのだ。
確かに八九寺の事は大好きだし今も泣き出しそうな位嬉しくはあるけど大人になった僕ならばもっと豊かな感情表現だってできる筈だ。
背後からなんて卑怯卑劣な真似はもうすまい!
大人らしく紳士らしく男らしく、今こそ僕は八九寺と真正面から再開を果たす!!!
「八九寺ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
もう止まるもんか!
止まってなんかやるもんか!
幸か不幸かここには僕を止める物騒な弾幕使いの巫女も鬼も河童もいないのだ!!
そして背後からだから問題なのだろう?
ならその反論にだって応えてみせるさ!!
後指を刺されても正面から立ち向かう男、それが大人の阿良々木暦です!
僕は上がりに上がった吸血鬼性をフルに発揮して爆発的なダッシュをしーーーー
背を向ける八九寺に触りもせずにその横を通り過ぎる。
そして五メートル程通り過ぎた所で急ブレーキ、及び急ハンドルーーー
人間にはおよそ耐えられないであろう足にかかる負荷を気にもしないで八九寺に向き直る!
さあ!これで真正面だ!
今日こそ僕は…八九寺を抱く!!!
「逢いたかったぞこの野郎ーーー!!!」
「ぎゃー!」
「お前がいない街なんて麺の無いラーメンみたいで僕がどれだけ寂しかった事か!ああ!でもこの抱き心地、肌触り、香り、味!やっぱり生の八九寺は最高だ!!もう離さないぞ!離れないぞ!!このままずっと僕の腕の中に監禁してやりたいくらいだ!!!ああクソ!お前を感じるのに空気すら邪魔に感じる!!!!」
「ぎゃー!ぎゃー!!」
「こら、暴れるな!■■■できないだろうが!!!」
「ぎゃー!ぎゃー!!ぎゃー!!!」
「がうっ!」
「いってー!何すんだこのガキ!!」
「がうっ!がうっ!!」
野生に還った獣のように僕の腕にあらん限りの力で噛み付く八九寺。
何すんだもこのガキもーーーやっぱり今でも僕だった。
そして…
やっぱりこいつは八九寺真宵だったーーーー
時を同じくして人里近くの森ーーー
藤原妹紅は白上沢慧音に会うべく人里を目指して飛んでいた。
「しかし不思議な男だったな…阿良々木暦って言ってたっけ」
つい先程、迷いの竹林で出会った外来人である阿良々木暦を思い出して感慨深い気持ちを抱く妹紅。
「人が人でなくなる理由なんて人の数だけあるのかな…いつかまた会ったらゆっくり話してみたいもんだ」
珍しく独り言を呟いた妹紅、目指す人里までは後僅かの所だった。
そこで思わぬ足止めをされなければ。
「そこの鳥のお姉やん。ちいと訊きたいことがあるんやけど、かめへんかな?」
いつか…とある少年から立てば暴力座れば破壊歩く姿はテロリズムとまで言われた女性の姿がそこにはあったーーー
さらに同時刻、場所はとある墓場にてーーー
「入ってこれたは良いけどお姉ちゃんはどこだろう?ともあれ任務優先がお姉ちゃんのやり方だからね、僕は僕で探すとしよう」
墓地とゆう背景にはおよそ不釣り合いな少女は呟いた。
不釣り合いというのならその表情こそ不釣り合いのそれだ。
本来ならば感情豊かな年頃でありそうな少女の顔は無表情そのもので、それは無表情というより無感情、無機質のそれだった。
「お前はだーれだー?」
そこにこれまた墓地には似合わないやけにテンションの高い声がかかる。
「…その姿、そのお札。まさかとは思うけどあなたはキョンシーかい?」
声をかけてきたのは両腕を前方に伸ばし、顔にお札を貼り付けた血色の悪い少女の姿。
それこそ万人がイメージするであろうキョンシーの姿があった。
しかし驚くべきはそこではない、真に驚くべきは墓場とゆう場所でキョンシーなんていう非現実なものを目の当たりにしながら、それでも尚無表情のままのその少女の方だ。
「私かー?私はキョンシーだー」
「やれやれ、初めてこの世界の人間に会ったかと思えばまさか
「わからないけどここは通さないぞー!」
「なるほどね、この世界の式神はろくに会話もできないようだ。どんな式を使っているにせよ僕みたいな可愛い死体人形と同ジャンルだと思うと悲しくなるよ」
相対するそれぞれの異質な組み合わせ。
物語は大きく動くーーーーー
少し短めですが投稿させていただきました!
無事かどうかはわかりませんが八九寺と再会を果たした暦、彼は地獄で自分の黒を禊ぐ事ができるのか?
そして新たな幻想入り…まぁあの人とあの子のツーマンセルですねw
ある意味でバンパイヤハンターよりも危険な二人が幻想入りしたんですがこの後の物語の行方は如何に!
ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
PS
おかげさまで通算観覧数が10,000件突破しました!
感謝の極みでございます!
重ねてお礼と今後の応援をよろしくお願いします!