東方怪異譚ーLegend of vampireー 作:根無草
そしてーーー
「石を積み上げてる?」
「そうです、とは言っても積みきれませんがね…不毛な罪償いとでもいいますか。わたしがここで出来る事はそれだけですよ」
ひたすら石を積み上げる。
八九寺から語られた地獄での日常はたったそれだけの事で、僕にはたったそれだけの事が理解できずにいた。
「いや、地獄と言うからには刑罰とかがあるんじゃないのか?針の山は言い過ぎだとしても何かしらの苦行があるものだと思ってたけど?」
石を積むって…そんな事ならその辺の子供だって普通にやってるだろうに。
逆説的に言えば、僕の八九寺がそんな拷問に身を窶していないだけ僥倖ではあるのだけれど。
「わたしは阿良々木さんの私物になった覚えはありませんよ?しかし…ふむ、苦行ですか…確かに苦行と言えば苦行ですね。なんと言ってもこの石積みにはーーー」
終わりがないのですから、と八九寺。
終わりが存在しない石積み、果たしてそれが何を意味するのか。
こと、八九寺に関してはハッキリとわかる…
十一年の長きにわたり、たった独りで彷徨っていた八九寺だ。
それがやっとその宿命から解放されたのにも関わらず、こんな川と石しか無い場所で独り終わらない石積み…これが苦行じゃなくて何だというのだ。
しかしそれは同時に新たな疑問が生じる内容でもあった。
苦痛とはいえ、実質は石を積むだけ。
地獄の業火に身を焼かれる事も、剣山のような針の山に突き刺される事も、血の滴る池で溺れる事もない。
つまりはその身は傷つかない苦行のどこに罪滅ぼしの真価、真意があるのか?
その一点が測りかねる。
するとそんな僕を見ていた八九寺が何かを察したのか、おもむろに僕に促す。
「百聞は一見に如かずとも言いますしここは証明した方が話も早そうですね。いいですか阿良々木さん、足元にある石の中から好きな物を選んでそれを他の石の上に積んでみて下さい」
「あ?石を?」
「そうです、そうすれば阿良々木さんが抱かれている疑問の答えが視えます」
シリアスパートにおいて、決していい加減な事を言わない八九寺が真剣に言うのだからそうなんだろう。
それに相手は小学生とはいえ、僕の知る人間の中でもこういう時の八九寺は信用できる。
言の葉の信憑性で言えば羽川あたりと比較すればそこは劣る部分もあるだろうが、その真意という意味では八九寺は僕に間違ったことは言わないとまで断言できるのだ。
ならばこの場所、賽の河原において石を積むという事の意味する所はきっと八九寺の言う通り、石を積む事で見えるはず。
足元に目をやれば、そこには一見して何の変哲もない無機質な石ころが無造作に落ちている。
常日頃から石を選別するなんて機会はないだけに、いざこの中から石を選べと言われれば困惑しないとは言えない。
ここは無難に丸くて積みやすい石を選ぶとするか…
僕は八九寺に言われた通りに足元の石の中から積み上げやすそうな平たくて丸みのある大き目な石を選別した。
「で、これを積み上げれば良いんだな?」
「そうです、好きな場所に好きなように積んで下さい。それで全ては理解できる筈です」
この行為のどこに贖罪の意味があるのかは皆目見当も付かないけど、とりあえずは八九寺の言う通りに石を置くことにする。
そして、その瞬間ーーーはっきりと見えた。いや、視えたのだった。
「っぶはぁ!っはぁ…はぁ…はぁ…」
驚きのあまり、後ろに飛び退き尻餅まで付いてしまった。
石を置くだけの作業だったはずなのに呼吸は乱れ、額をつたう汗が止まらない…
それもそうだろう。
石を置いてその手を離すまでの時間にしてほんの一秒たらずの刹那に僕は観たのだ。
目の前にいるはずの八九寺真宵が…青信号の横断歩道を渡っている最中、トラックに跳ね飛ばされる瞬間をーーーーーー
「どうやら阿良々木さんにも視えたようですね?果たして何を見たかは見当もつきませんが…つまりはそういう事です…って、うわぁ!?」
八九寺の声を聞き、その姿を確認した僕は思わず八九寺を抱き締めてしまった。
決していつもの軽いノリでやってるセクハラなんかじゃない。
本当にそうせずにはいられなかった、今だって身体の震えが止まらないくらいだ。
これは何だ?
僕は…怯えているのか?
確かに僕が観た映像は八九寺がトラックに跳ね飛ばされる瞬間だった。
しかし、それも正確には解釈が違う…
そう、僕が目にしたあの光景は…明らかに八九寺の視点から観た映像だったのだ。
換言するなら、まるで僕自身がトラックに轢かれたかのような錯覚さえ感じた。
「な、なんだよこれは!?なんだってあんなにも鮮明にあんな映像が観えるんだ!ますます意味がわからないぞ八九寺!!!」
あきらかに異常な僕の状態を見て察したのか、僕に抱きつかれる事をいつもなら暴れて拒否するはずの八九寺が全く拒否せずに僕の背中に手を置いて諭してくる。
「何を観たのかはわかりませんが阿良々木さんの様子を見る限りだと、恐らくそういう事でしょうね…変なものを観せてしまい申し訳ありません。どうか落ち着いて下さい」
まるで泣き止まない赤子をあやすように優しく僕の背中を叩き続ける八九寺。
前にも確かこんな経験をしたような…
あぁ、あの時は確か羽川の家に侵入して取り乱した僕を月火ちゃんがなだめてくれたんだっけ…
「…ごめん、ちょっと驚いただけだからもう大丈夫」
とてもこのまま抱きついた勢いでいつものスキンシップをはかる気にはなれずに、僕は八九寺から手を離しその場を二、三歩離れる。
そしてーーー
何を観たかなんて言える筈がなかった。
疑似体験とはいえ、あの瞬間の恐怖は例えようのないものがある。
振り返れば目の前にせまるトラック
確実に目の前に迫る死という現実
避けようのない終わりの運命ーーー
観たというだけでこれだけ心を揺らされているのに、実際にそれを体験した八九寺に対してその内容を伝えるなんて僕にはできない。
まあ、そのおかげで随分と落ち着きを取り戻す事ができたんだけど。
「なあ八九寺、これはどういう事なんだ?」
「つまりですね阿良々木さん、ここは『わたし』の地獄という事です」
八九寺の地獄。
端的な説明すぎて理解が追いつかない…
そもそも地獄とは個別に振り分けられるものなのか?
「その通りですよ阿良々木さん、ここはわたしの罪を償うわたしの地獄、いわば八九寺地獄とでもいいますか」
「それだとまるでお前だらけの、例えるなら第一期八九寺オープニングみたいな絵面を想像してしまうぞ!」
「確かに、それでは阿良々木さんのようなロリコンにとっては地獄ではなく天国です」
「僕はロリコンじゃない!」
確かに八九寺だらけの世界があるなら行ってはみたいけど。
しかし、八九寺だけの地獄という点については納得がいく。
そもそも、毎日のように色んな場所で色んな命が終わりを迎えるというのに、この場所に至っては八九寺以外の人間が誰もいない。
いや、人間どころか動物も植物もありはしないのだ。
つまり、ここに存在する魂は僕みたいな例外を除けば八九寺のみという事になる。
そして何よりもこの石…
「なあ八九寺…もしかしてこの石…」
「…お察しの通りです。この石の一つ一つがわたしの記憶であり、わたしの積むべき責です。いわゆる九十九神というやつでしょうかね、物には想いがこもるっていうあの理屈の最終系とでも思って下さい」
無造作に敷き詰められた無数の石ーーー
その一つ一つが八九寺の生きた記憶であり、その痕跡。
わずか十年の生きた証が僕達の足元にはあった。
「わたしはですね阿良々木さん、この石を積みながら生前にあった嫌な事、嬉しい事、苦しい事、楽しい事、その全てを思い出して石を積み続けているのですよ」
「ですよって…それってつまりは罪償いどころか嫌がらせに近いだろ!そんな事をさせてどうするっていうんだよ!?閻魔様ってのは何を考えてるんだ!?」
激昂といえば激昂だ。
こんな事を延々と繰り返していれば、嫌でも生前の事を思い出して未練を募らせる事になる…
特に八九寺のような死にたくて死んだ訳でもない奴にとっては確かに拷問だろう…地獄以外の何物でもない。
しかも、そこに罪を償うというコンセプトが全く当てはまらないのだから業腹である。
親より先に死ぬとゆう罪はベクトルさえ無視された挙句に、こんな小さな女の子にここまで酷な事を強いるべき重罪なのか?
これでは余りにもーーー救いが無さ過ぎる。
「そうですね、確かに贖罪といえば少し違います。これは正確に言えば…儀式ですかね?」
「儀式…?なんの?」
儀式なんて言葉から連想するものといえば忍野が戦場ヶ原の蟹を説得する時に用いたあの儀式が思い出される。
つまりは、祭壇を用いて、場を清め、祈りを捧げ、許しを請うーーー
そんな禍々しくも、神々しいものこそが儀式と呼ぶに相応しいものではないのか?
これも一つの先入観なのだろうか?
「非日常な言葉ですが、あえて使い古された言葉を挙げるとすれば…転生の儀式となるのではないでしょうか」
言うが早いか動くが早いか、八九寺はその場に座り込むと再び石を積み始めた。
僕がここに来た時にそうしていたように。
「お、おい八九寺。そんな普通の事みたいに積んでるけど平気なのか!?」
先程のショッキング映像が未だに瞼の裏に焼き付いて離れない僕としては、ついさっきまで石遊びにしか見えてなかった八九寺の行動がとても危なっかしく見えてしまう。
しかし当人であるところの八九寺は、そんな僕の言葉も意に介さず黙々と、コツリコツリと石を積んでいく。
固く目を閉じ、その昔の思い出を噛みしめるように一つ一つ丁寧に。
「平気ですよ阿良々木さん。先程はどんな映像を観たのかはわかりませんが、観えるものが全て悪いものではありませんから。良い事も悪い事もひっくるめてわたしの生きた証です。中には当然楽しかった映像を見せてくれる石だってありますよ」
ある程度まで石を積み上げた八九寺は僕に向き直って儚げな笑顔で告げた。
「それに…最初に言った通り、この石積みは終わらないのですよ」
失念していた。
確かに八九寺は終わらない不毛な石積みだと言っていたのだ。
それの意味するところがどういう事かはわからない。
もしかすると、この河原に点在する全ての石を積み上げなければならないという事かもしれない。
確かにそれならばほとんど終わりなんて見えないに等しいだろう。
しかし、八九寺の様子からはもっと深刻な何かを感じるーーー
と、その時。
突然、辺りに轟音が鳴り響くーーー
この音は…ついさっき聞いたばかりの音ーーーー
振り返れば僕が石を積んだ時に見たのと全く同じトラックが、全く同じ勢いでこちらに突っ込んで来ていた!
「は、八九寺!逃げろ!!!」
咄嗟の事に身体が反応できない僕が唯一できる事は、ただ叫ぶ事だけだった。
そしてそんな叫びも虚しく、トラックは八九寺の元へブレーキもなく突っ込んで行くーーー
さっき観たのは八九寺の記憶の一部だったが、今回は違う。
本当に僕の目の前で八九寺が轢かれようとしているのだ。
しかし、幸運なのかそうではないのか…
トラックが八九寺に接触する事はなかった。
八九寺に向かって突撃していったトラックは八九寺には触れず、八九寺が積んでいた石の山を弾き飛ばしたのだ。
そしてーーー
そのトラックは最初から存在しなかったかのようにそのまま消えた。
「な、なんだったんだ今のは…」
呆然と立ち尽くす僕が正常な思考を取り戻すのに、ほんの数秒の時間を要した。
そして、その正常な思考を取り戻した事で、やはり今起きた出来事が危険だった事に気付く。
トラックに体当たりされる程では無いにしろ、目の前であれだけの数の石が弾き飛ばされたのだ。
その内の幾つかが八九寺に被弾していてもおかしくない。
あんな至近距離で文字通りの
さすがにこの時は言葉よりも先に身体が動く。
「無事か八九寺!?」
慌てて八九寺に駆け寄り、その顔を覗き込む。
するとそこには意外な事に、怪我どころか一切取り乱した様子もない八九寺の顔があった。
いや、それこそ大きな間違いだ。
その顔は、驚いているでも怯えているでもなく…ただ無表情で、どこか虚しさと悲しさを宿した眼をしていたのだから。
「これが…終わらない罪償いの理由です」
物悲しそうな八九寺は、散らばった石を見つめながら一言だけそう呟いた。
「これが理由って…」
「これは転生のための儀式だと言いましたよね?罪償いだとも言った筈です…つまり、わたしは此処で記憶の石を積みながらそれを壊されるという単純な作業を繰り返します」
それは遺してきた両親に貰った愛情を思い返して、先に死んでしまった事を詫びるためです」
そして積み終わる頃に、どこからともなく先程のトラックが現れて壊していく…」
するとですね、消えていくんですよ…」
語る八九寺の言葉にどんどん悲しみの色が滲んでいく。
いつものあの快活な笑顔をふりまき、天真爛漫を絵に描いたような八九寺の面影はそこには無かった。
「消えていくって…何がだよ…」
自他共に鈍さを認めている僕にでも、この先の展開はわかってしまった…
それ故に、八九寺に聞き返す僕の声までもが覇気を失っていく。
「消えていくのは、わたしの記憶です…あのトラックに積み重ねた記憶を轢き潰される度に、わたしの中から生前の記憶が薄れていくんです」
些細な部分から始め、中にはもう思い出せなくなってしまった記憶まであるように思います」
「それってつまり……」
「来世にまで生前の記憶は持ち越せませんからね、ここで全てを思い出しては消していく…そして全ての記憶をリセットして次の人生へと転生、それが賽の河原の正体です」
話を纏めよう。
つまり八九寺は、僕とあの夏の日に別れてからずっと、この賽の河原で一人ぼっちで石を積んでいた、
そして、その石には八九寺の生前の記憶がつまっている、石を積む事でその映像を見る事ができるわけだ、
しかし、それを積み上げようとすると八九寺を轢いたあのトラックが現れて、石と共に生前の記憶を轢いていくーーー
弾き飛ばし、轢き潰し…殺していくーーーー
「なあ、八九寺」
「なんですか阿良々木さん?」
「確認しておくけど、お前はそれで構わないんだな?生前の記憶を失ってでも転生したいんだな?」
これが酷な質問だというのはわかっている、わかりきっている。
しかし、そんな酷な事をしなければならないのは他でもない、八九寺自身なのだ。
ならば親友たる僕にできる事はーーー
「正直なところ、お母さんやお父さんの事を忘れてしまうのは寂しくないと言えば嘘になりますね…もっとも、石を積む中で怪異になってからの映像を観た事はないので阿良々木さんの事は覚えてるかもしれませんが…」
「しかし、どちらにせよお母さんもお父さんもわたしがこんな所で未練に縛られて地獄に永住する事を望んではいないと思います」
「わたしはお母さんもお父さんも大好きです。だからせめて、あのお二人に心配をかけないように、綺麗にここを去ろうと思ってますよ」
やはり八九寺は…八九寺真宵はどうしようもないくらい八九寺真宵だった。
僕の誇るべき親友…
生きたのは僅か十年だけど、お前は本当に呆れるくらいに強い奴だよーーー
僕の心は固まった。
こんな理不尽な地獄のくそルールに付き合うのは些か業腹だけど、それも八九寺のためだと思えば吝かではない。
「わかったよ八九寺…僕が…僕がお前を解放してやる!」
こんな僕をここまで助けて支え続けてきてくれた数少ない友人達、
猫に魅せられた羽川
蟹に挟まれた戦場ヶ原
猿に憑かれた神原
蛇に巻きつかれた千石
そして、蝸牛に行き合った八九寺
こいつらのために動けないなら、僕は僕じゃない。
「突き詰めた話、お前を邪魔するあのトラックさえいなければ良いんだ。僕があれを何とかしてみせる!
だから八九寺、お前はその間に石を積み上げるんだ!」
「阿良々木さん…」
八九寺はそれこそ眼を真っ赤にして、今にも泣き出しそうな顔で僕を見ていた。
まったく…これじゃ僕が少女を泣かしたみたいじゃないか。
「お気持ちはありがたいですが阿良々木さん、それは無理だと思いますよ…」
今にも消えてしまいそうなくらいのか細い声で八九寺は呟いた。
「無理?どうして?」
確かにトラックを真正面から受け止めようとすれば無理もあるだろうけど、吸血鬼性が飛び抜けて上がっている今の僕ならば他にもやりようはありそうなものだ。
例えば激突する前にトラックに飛び乗ってブレーキを踏むなりハンドルを操作するとか。
高校生の身分なので運転の仕方は良くわからないけど、それ位の事ならばできなくはないだろう。
「あれは只のトラックでは無いからですよ阿良々木さん」
「あ?どうゆう意味だよ八九寺?あのトラックは何か特別な仕掛けでもしてあるのか?」
「特別な仕掛けといえばそうなんですが…事実のみを言えばあのトラックもわたしだけのものなんです。わたしだけの…鬼です」
そこからの八九寺の説明は余りにも単純だった。
単なるトラックだと思っていたあれの正体は地獄の鬼。
その姿は人によって違う形をとっていて、なんでも生前で一番強く、怖く、絶対的な力の対象として認識した姿で現れるらしい。
つまり、トラックに轢かれた八九寺にとっての鬼の姿は、自身の命を奪ったあのトラックになるとの事で…
僕にとっての鬼がどんな姿かは想像もつかないのだ。
それでも僕が石崩しを妨害しようとすれば、その想像もつかない姿の鬼が現れて僕を退けようとするらしい。
「本当に何でもありなんだな…地獄」
「あれだけ数々の怪異譚に出会っていれば何でもありも今更感は否めませんがね」
「ごもっともだ、でもな八九寺」
数々の怪異譚を経験して、その全てにおいて逃げて、誤魔化し、切り上げて、ぎりぎりの所で生き延びてきた僕だ。
危険な行為といえばそれこそ今更である、だから僕の答えはーーー
「それはお前を見捨てる理由にはならないな。鬼が出ようが蛇が出ようが僕は少女の味方だ!」
「ロリかっけー!」
「だからお前は黙って石を積むことに集中しろ、僕がいつまでここにいれるかわからない以上、そんなに時間はないぞ」
「で、ですが阿良々木さん…」
「いいんだよ、これは僕が勝手にやりたい事をやってるだけだ。あのアロハ野郎風に言うならお前は勝手に助かるだけなんだから気にするな」
そう、これは僕の身勝手な自己満足だ。
その後も多少の押し問答はあったものの、結局は八九寺が折れる形で決着はついた。
「念を押しますが阿良々木さん、無理だけはしないで下さいね?」
「わかってるよ、僕はそこまで強い奴じゃないんだ。いざとなったら逃げ出すさ」
無論、逃げ出す算段なんて最初から計画には入れてないけどな。
こうして再び八九寺は石を積み始める。
僕はそんな八九寺の傍に立って急場に備える、いつでも八九寺を守れるような心構えで。
地獄において鬼と決闘だなんて、これでいよいよ僕の地獄行きは決定だな…
でも、八九寺の為に地獄に行くなら悪くないと思ってしまうのだから僕もいよいよ成長しないんだろう。
それに、八九寺が地獄にいるのに僕が天国に行っていいわけがある筈もない。
こいつが地獄にいる状況で天国行きを享受できるほど僕の器は巨大じゃないのだ。
コツリ…コツリ…
八九寺が石を積み上げる音だけが鳴り響く。
それがどれくらい続いただろうか?
見れば石の山は座り込んだ八九寺の目線程の高さまで積み上がっていた。
「そろそろか…来るなら来い!」
自分を鼓舞するように声を挙げたその時ーーー
八九寺が石を積み上げる音以外の音が響いた。
「はは!「ははは!「ははははははは!!」はは!」ははははは!」はは!!」
何が出るか想像もつかないだなんてとんでもない。
少し考えればわかりそうなものなのに…
僕と八九寺の前に現れたのは勿論トラックではない。
猫でも
猿でも
蛇でもない
それは、凄惨に笑うーーーーー
鉄血にして熱血にして冷血の
伝説の吸血鬼だった。
少し時間が空きましたが投稿です!
思いの外長くなってしまったので読みにくいと思われた方には本当に申し訳ありません…これでもだいぶ削ったんですが(。-_-。)
それでも尺が足りずにまさかの外伝・上・中・下に分ける結果になってしまいました…
さて、それでは本編に触れていきますが、まず最初に
賽の河原の設定はあくまでも作者の勝手な創作であり、実際の伝承にある賽の河原とは異なります!
石にまつわる記憶を詰むだとか、鬼の姿云々はあくまでも作者の脳内で出来た中二脳の産物なので許して下さい!
そして、今回出てきたキスショットですが…これについては次話で!
質問などがあれば全て答えますが、キスショットについての質問だけはご容赦下さいw
ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!