東方怪異譚ーLegend of vampireー 作:根無草
余りにも強欲な発言と共に登場した博麗神社の巫女こと博麗霊夢。
それは一言で言えば…巫女らしくなかった。
巫女というだけあって見た目は綺麗というか可愛い感じの少女だった。
年齢は霧雨さんと変わらないくらいだろうか…
そして巫女らしくないというのは色合いこそ巫女服のそれなのだけど、余りにも布面積が足りてない。
肩とか腋とか出ちゃってるし、下の履物なんか一見して袴に見えなくもないけど恐らくスカートじゃないか?
神事に殉ずる者として肌の露出がいけない事のような気がするのは僕が素人で学が足りてないからだろうか…?
そして何より言葉使い。
これがあまりにもイメージと違う。
決して口が悪いとか霧雨さんのような男勝りという訳では無いのだけど、なんというか巫女のする会話では無かった。
そもそも巫女が賽銭入れてけなんて言わないだろ…
兎に角、ツッコミ所が多すぎる第一印象にいろんな意味で言葉を失ってしまった。
「あんたに言われなくても私は毎日仕事してるわよ魔理沙。で、そこのあなたは?」
まるでいつもの事のように霧雨さんに返事をする巫女様、やはり二人は顔見知りのようだ。
そしてその言葉の矛先は突然僕の方に振られた。
「ど、どうもはじめまして…僕はついさっき森で襲われているところを霧雨さんに助けてもらって、その経緯でここを紹介してもらったんですが…」
まあ突然に事情の説明をしようとしても正直なところ僕にだって現状が把握できている訳でもない。
詰まるところ何を言って良いやらわからないのだ。
「やっぱり外来人なのね…はあ…ここの所多いわね。何かの異変なのかしら?それともあのスキマがサボってるとか?まあ良いわ、詳しい話は後で聞くとしてとりあえず名前を教えてちょうだい」
心底めんどくさそうに溜息をつく巫女様。
しかしここでも出てきた『外来人』とゆう単語、そしてここの所多いというのは僕達以外にもここに迷い込んだ者がいるという事だろうか?
「僕は阿良々木暦といいます、呼び方は…好きに呼んで下さい」
「そう、私は博麗霊夢。霊夢で良いわよ」
こうして互いに自己紹介を終えたところで本題に入ろうと思う。
因みに先に断っておくが、僕は基本的に女の人を下の名前で呼ぶ事をしない。
特に明確な理由がある訳ではないんだけど、何か気恥ずかしいというか…
詰まるところ気まずいのだ。
恐らく僕が名前で呼ぶのは今の所、妹の火憐ちゃんと月火ちゃんだけじゃないだろうか?
そしてこの博麗霊夢さんなのだけど…
僕は彼女を下の名前で呼ぶ事になる。
これは彼女を特別視してとかではなく、この神社の名前がそのまま苗字な彼女を博麗さんと呼ぶのは違和感が凄まじいのだ。
…僕はいったい誰に対して何の言い訳をしているのだろう?
「あの霊夢さん、単刀直入にお聞きしますが『外来人』というのはどういう意味ですか?まるでここが何処かの異国のように聞こえるんですが」
これは避けられない疑問だった。
そもそもここが僕の良く知る日本という国ならそんな呼び方はしない筈である。
「それはあんたがこの幻想郷以外の場所から来たからそう呼ばれるのよ。ここはあんたがいた世界と同じ大地にあって違う世界なのよ」
幻想郷…確かあの大蜘蛛も同じような事を言っていた気がする…
「まあ平たく言えばここは外界とは結界によって隔離された世界であり独立した世界…妖怪と人間が共存する場所よ」
それは僕がこれまで数々の怪異を経験していなければ聞いてて理解のできる内容じゃなかった。
日本の中で隔離して独立した妖怪と人間が共存する世界…
それは余りにも壮大すぎてリアクションもできない。
それからある程度の幻想郷についての説明を霊夢さんから聞いたのだけど、衝撃は上乗せの一途を辿る結果だった。
「…わかりました、もうしのごの言ってられないので無理矢理にでも納得します。で、これが一番重大な事なんですが…僕は元の世界には帰れるんでしょうか?」
「あら、ものわかりが良いのね。まあこっちとしてもその方が面倒が無くて助かるわ。で、帰れるかどうかなんだけど…その前にここに来た経緯を話してちょうだい」
この人は根っから他人に興味が無いか、めんどくさい事が嫌いか、あるいはその両方なのだろう。
僕の抱える危機感と霊夢さんから感じる倦怠感との温度差が半端のそれではなかった…
しかし苦言を呈してはいられない。
今の僕にとってこの巫女様が唯一の救いで希望なのだから。
こうして僕は事の次第を事細かに説明した。
それこそ僕の体質から忍の事まで全てを説明したのだったーーー
「半人半鬼ねえ…あんた本当に外来人なの?よっぽど幻想郷の住人らしいじゃない」
「ははは!霊夢の言う通りだぜ、なんか不思議な奴だとは思ったけどそういう事だったのか」
苦笑いの巫女様と爆笑する魔法使いがそこにはいた。
「いや、笑い事じゃないんですよ!軽い気持ちでここまで来た事は勿論悪いと思ってるんですけど流石に帰れないのは困るんです」
もう必死である。
なんならこの時の僕は、泣けと言われれば秒で泣けた自信があったくらいだ。
「それにしても理想の主人公になるためにって…傑作だ!お前面白すぎるぜ!」
もうほとんど泣いてたかもしれない。
何気なく言ってはいたけど、ある意味『友達はいらない、人間強度が下がるから』に匹敵する恥ずかしさだった…
だけど爆笑する霧雨さんとは反対に、あまりにも真面目な顔で霊夢さんは告げる。
「それについて即答はできないわね、少なくとも幻想郷はそんな空間移動で来れるような場所じゃないのよ。詳しい原因を探ってみないとなんとも言えないわ。それにあのスキマにも話を聞かないと」
「空間移動?時空移動とは違うんですか?」
「おいおい何言ってんだ?時空移動ってそりゃタイムスリップじゃねえか、ははははは」
…忍さん、あなたのおかげで僕はまた一つ恥をかきましたよ。
「兎に角、結論は急がないことね。まあちゃんと調査してあげるから安心しなさい」
「あ、ありがとございます…」
何に安心すれば良いのかは全くわからなかったけど絶対帰れないという訳ではなさそうなので、この場でこれ以上の問答はやめにしておく。
それにしても僕達が帰れるかどうか以外で気になる事はまだあった…
「因みになんですけど…その調査が終わるまでの間どこか泊まれるような場所はないですか?本来なら野宿でも良いんですけど流石に妖怪に襲われる危険があると知った上ではそれも厳しいんですが…」
恐らくは時間のかかるであろう展開に僕がまず困ったのはそこだ。
いくら神社とはいえ若い女性が暮らす場所に図々しくも泊めてくれとは言えない。
僕にだってそれくらいの常識はあるのだ。
かと言ってそれは霧雨さんの家も同じだろう…
せめてあの学習塾跡の廃墟みたいな建物でもあれば良いんだけどーーー
「あんた吸血鬼なのよね?それならうってつけがあるわ。ねえ魔理沙、あんた後で紅魔館まで案内してあげなさいよ」
「えー!なんで私が行かなきゃならないんだよ⁉︎発案者なんだし霊夢が案内してやりゃ良いだろ?」
「つべこべ言わない!あんたどうせ暇でしょ?ついでにパチュリーの本でも借りてくれば良いじゃない。はい決定!」
「ほんと無茶苦茶な巫女だな!そんなんだから賽銭が集まらないんだぜ?」
「今…なんか言った…?」
「いえ…なんでもありません…有難く案内役をやらせていただきます」
僕の身柄を押し付け合う二名の少女の姿がそこにはあった。
もはや居づらさ指数が右肩上がりである。
結局どこの世界でも僕って孤立する運命なのかな…ああ死にたい。
「本当はうちでも良かったんだけどね、生憎今は他の外来人が泊まってるのよ」
霊夢さんのその言葉に反応せずにはいられなかった。
他の外来人という事はさっき言ってた人物だろう。
参考になるかはわからないけど、是非その人の話を聞きたかった。
「あの、霊夢さん!その外来人の人ってどんな人なんですか⁉︎」
「ん?なんならなら呼んでくる?なんか神社での仕事とか詳しくて私は助かってるんだけど、どうも不思議な感じの人なのよね」
「助かってるってゆうか霊夢がサボりまくってるだけだろ?」
「あんたいい加減にしないとお尻に夢想封印ぶち込むわよ?」
「それは勘弁してくれ!」
「是非会わせて下さい!霧雨さんのお尻は霊夢さんに捧げるんで!」
「おい!私は生贄か⁉︎あんまふざけてると尻にマスパぶち込むぞ!」
「あんた達、なんか似てるわね…じゃあ呼んでくるからちょっと待ってなさいな」
マスパが何かはわからないけどこれで何かしらの発展が望める!
その人だってここに来た事はまったく理解の範囲外だろうけど、その人と僕の話を照らし合われば何かが見えるかもしれない!
よっこらせ、と立ち上がった霊夢さんを見ながら僕はそんな淡い期待を抱かずにはいられなかった。
が
そんな期待は一瞬で驚愕へと姿を変えるのだった。
「呼びに来る必要はないよ、僕はここにいるからね」
その場に男の声が聞こえて一同は同時に視線を向けた。
そしてそこに立っていたのはーーー
「まったく、こんな所まで来ちゃうなんて相変わらず君は元気が良いな阿良々木君ーーーーー」
かつて僕を救ってくれた怪異の専門家、中立にしてバランサーを名乗るあの男
「何か良い事でもあったのかい?」
アロハ野郎こと忍野メメだった。
さて、予想外な人物が登場です!
実はこの物語を書くに当たってタグに忍野メメを加えるか悩んだのですが、ここでのサプライズ感を出したくてそれをしなかったとゆうのがプチ裏話ですw
ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
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