東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第38話ー目覚めたら目覚めてるー

阿良々木暦の魂が地獄へと旅立ったのと同時刻、場所は紅魔館にて。

 

 

 

 

 

「な、なんじゃこれはぁぁぁあああああああ!!!!!」

 

 

 

 

館内に響き渡る女性の叫び。

 

 

 

 

それは他でもないこの紅魔館の主である、レミリア・スカーレットの自室から聞こえてきた。

 

 

 

 

誰が聞いても明らかな異常事態を連想させるような絶叫に、主人の身に何かあったのかと紅魔館のメンバーが駆け付けて来る。

 

 

 

 

「どうかされましたかお嬢様!?」

 

 

 

最初に駆け付けたのは時を操るメイド、十六夜咲夜。

 

 

その能力を行使したのだろう、彼女は悲鳴が聞こえた次の瞬間にはそこに現れていた。

 

 

 

 

そしてそんな彼女の目に飛び込んできたのはベッドの上の棺桶から上半身を覗かせているレミリアとーーーー

 

 

 

 

 

「えっと…どちら様でしょうか?」

 

 

 

 

 

金髪金眼、血も氷るような美しいドレス姿の女性の姿だった。

 

 

 

 

 

「し、忍お姉様?その姿は…」

 

 

 

 

昼間という事で恐らくは眠りについていたのであろう、レミリアも未だに現状が理解できていない様子だ。

 

 

 

いや、仮にそれが寝起きでなかったとしても理解はできなかっただろう、何故ならーーーー

 

 

 

 

 

「儂…復活しちゃったみたい」

 

 

 

 

その姿は紛れもなく全盛期の鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだったのだから。

 

 

 

 

「お嬢様!ご無事ですか!?」

 

 

「レミィ!どうしたの!?」

 

 

「お姉様!何があったの!?」

 

 

 

咲夜に引き続き紅魔館の主要メンバーが続々と駆け付けてくる。

 

 

その後ろ、ドアの影からは小悪魔を筆頭にメイド妖精達がザワザワと部屋の中を覗いていた。

 

 

 

「復活って…ではこちらの美しい女性が忍様の本来のお姿なのですか!?」

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

 

咲夜の問い掛けに駆け付けた一同は狐につままれたような素っ頓狂な声をあげた。

 

 

 

それもその筈、目の前にいる忍野忍であった一人の吸血鬼は、もはや説明もいらない程に伝説とまで謳われた吸血鬼としての貫禄をありありと宿しており、一目見たならば目をそらす事すらできない程に完璧な存在だったのだから。

 

 

現に同じ吸血鬼である筈のフランドールですら、そのあまりの美しさ、神々しさ、カリスマ性に言葉を無くしている有様である。

 

 

 

 

「しっかし驚いたわい、まさか寝て起きたら復活しとるとは…これも幻想郷という世界の影響なのか?幻想郷ぱないの!」

 

 

 

その美しく完璧な見た目とは完璧に不釣り合いな台詞に、一同はカクッと気を抜かれた。

 

 

 

内心は「ぱないの」って何だ?である。

 

 

 

しかしそれで冷静さを取り戻した一同はある疑問点にぶち当たる。

 

 

 

「ねぇレミィ、幻想郷にはそんな出鱈目な効果効能なんてあったかしら?少なくとも私はそんな文献は知らないわ」

 

 

 

 

「奇遇ねパチェ、私も丁度それについて疑問を覚えた所よ。これは幻想郷とはまた違うものが原因としか思えないわ。一種の異変とも言えるのかも…」

 

 

 

早くも思考をフル回転させたのは大図書館とまで呼ばれる知識人のパチュリーと、最強の呼び声高い紅魔館の主レミリアだった。

 

 

 

「えっ?なら忍お姉様はなんで復活したの?」

 

 

「うむ…儂にもわからん。しかしこれは完全に復活しとるしの…ペアリングの縛りも感じない…ん?ペアリング?」

 

 

 

あらゆる可能性をあれでもないこれでもないと討論を交わす紅魔館メンバーを他所に、フランドールに問われて自問自答をしていた忍の様子が変わった。

 

 

見てハッキリとわかる程に顔色が青くなっていく。

 

 

 

「ん?どうしたの忍お姉様!?」

 

 

 

「ぺ、ぺぺ、ぺ…」

 

 

 

「「「「ぺ?」」」」

 

 

 

 

「ペアリングが切れとるーーー!!!」

 

 

 

ここまで気付かなかった忍も忍だが、その様子に他の一同もやっと現状を理解する。

 

 

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて忍お姉様!つまりそれって暦の身に何かが起きて封印が解けたって事な

の!?」

 

 

 

 

「いや、正確なところは儂にもわからんがそれが一番有力じゃろ!ペアリングが切れるなんて我が主様が死ぬか異世界にでも飛ばされるかせんとありえん事じゃ!」

 

 

 

 

「暦お兄様が死んじゃったの!?そんな…そんな…ソンナソンナソンナ…」

 

 

 

「お、落ち着いて下さい妹様!気を確かに!!!」

 

 

 

 

「と、兎に角、ペアリングとやらが切れた今、暦の安否を確認しなくちゃならないわ!美鈴!すぐに外出の準備を!」

 

 

 

「は、はいっ!」

 

 

 

「パチュリー様!お嬢様!妹様をなんとかしてください!!!」

 

 

 

「イャダイャダイヤダイヤダ殺す殺すコロス…」

 

 

 

「ああもうっ!こんな時に!パチェ!水の魔法を!忍お姉様は離れてて!」

 

 

 

「まかせて!水符……」

 

 

 

「ええい!時間がないんじゃ!フラン、許せ!」

 

 

 

 

ゴキッ!

 

 

 

「……」

 

 

 

「フラァァァアアアアァン!!!???」

 

 

 

勿論、忍を含めた紅魔館の住人達は、阿良々木暦が絶賛地獄で八九寺との逢瀬を満喫中だなんて知る由もない。

 

 

故に検討もつかない突然の事態に、フランドール以外の全ての住人が慌てふためく結果になったのだった。

 

 

 

 

そして数分の後、太陽の下でも外出できるだけの準備を整えた美鈴が部屋に戻ってきた。

 

 

 

 

「お待たせしました!外出の準備は万端です、いつでも出れます!」

 

 

 

一同の視線は美鈴に集められた。

 

 

特に忍に至っては今すぐにでも飛び出していきそうな形相を浮かべている。

 

 

 

確かにペアリングが切れた現状を見て、暦の安否が定かではない以上、忍としてはいてもたってもいられないのだろう。

 

 

 

厳密に言えば、完全復活した忍にとって弱点は弱点にすらならない。

 

 

その気になれば太陽の下でも活動はできるだろう。

 

 

 

しかしここは幻想郷。

 

 

如何に忍が無敵の吸血鬼に戻ったとはいえ、知らない土地での人探しとなれば人手があるに越したことはない。

 

 

ましてやそれが地の利がある者達ともなれば尚更だ。

 

 

 

そんな理由から取り敢えずは飛び出さずに我慢していた忍だったが、出発の準備も整ったのなら話は早い。

 

 

 

 

「良し!時は一刻を争う!急ぐぞレミリア!」

 

 

 

待ってましたと言わんばかりに忍が声をあげた。

 

 

 

と同時に全員の視線は再び忍に集中するーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

 

 

それは数分前の出来事を再現するかのような見事なハモりっぷりだった。

 

 

 

 

「し、忍お姉様…?」

 

 

 

「ん?なんじゃレミリア?惚けた顔しよって、急いで出発をーー」

 

 

 

 

「姿…戻ってるわよ?」

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

そう、一同が再び視線を向けた先にいたのは、昨日までと何も変わらない齢598歳の元気な忍ちゃんだった。

 

 

 

 

「ど、どうなっとるんじゃこれは!?ペアリングも戻っとる…我が主様はいったい何をしとるんじゃ?」

 

 

 

 

重ね重ね説明すると、この瞬間に阿良々木暦が地獄から無事生還した事は誰も知らない。

 

 

 

切れたというよりも一時的に消失していたペアリングは暦が目を覚ましたと同時に戻っていた。

 

 

 

 

「戻ったという事は暦様は少なくとも無事ではあると?」

 

 

 

 

「決めつけるのは早いわよ咲夜、まあ少なくとも死んではいなそうだけど…」

 

 

 

「いよいよ意味がわからないわね…まあ、一応暦には幻想郷で最強種の鬼が付いてるはずだし大丈夫だとは思うけど…」

 

 

 

「うむ…これは帰ってきたらきっちりと問いただす必要がありそうじゃの」

 

 

 

「って、ええ!?妹様ぁあああ!!!」

 

 

 

 

「美鈴うるさい!」

 

 

 

 

 

こうして珍しく陽の高いうちから大騒ぎだった紅魔館の忍復活異変は無事(?)解決したのだった。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は再び戻って地底入り口の大穴。

 

 

 

「ひっ!」

 

 

 

「なんだよ突然?怖じ気付いたのかい?」

 

 

 

「いや、確かにこれには僕も怖じ気付いてますけど今のはもっと別の悪寒な気が…凄まじく嫌な予感がする…」

 

 

 

四季映姫さんのもとを飛び立ってしばらくの後、僕と萃香さんは次の目的地の入り口へとやって来ていた。

 

 

謎の悪寒の正体は以前として不明ではあるけれど、なかなかどうして。

 

 

 

この光景には些か悪寒とも呼べる感情を禁じ得ないというのが正直なところだろう。

 

 

 

それはまるで見る者全てを飲み込むかのような、例えるならば某自殺の名所の断崖絶壁のような、問答無用で立ち入る事を許さないと言わんばかりの雰囲気ーーー

 

 

 

僕個人に限っての最悪な例えをあげるとすれば…まるでそれは、あの『くらやみ』の様であった。

 

 

 

そう、僕の目の前には文字通り、底の見えないただ深く、暗く、禍々しい大穴が口を開いていたのだから。

 

 

 

 

「ここからが次の目的地、行き先は地底さ!私も帰ってくるのは久しぶりだから楽しみだねぇ」

 

 

 

この先にどんな世界が待ち受けているかは定かではないが、萃香さんの様子から察するに…

 

 

 

危険度はこの幻想郷でもトップクラスなのだろうという事は容易に想像できる。

 

 

 

 

鬼が楽しみだなんて言う場所には酒か危険しかないという事実も、ここまで来ると些か学ぶというものだ。

 

 

 

 

「この下に地底が…って、もう僕の想像力じゃついてけねえよ。散々幻想郷のとんでもなさを目の当たりにしておきながら未だに目の前に地底の入り口が広がってるだなんて理解が追いつかない…」

 

 

 

 

学んだといえば、仮に僕がこの場で地底への侵入を断固拒否したところで、この小さな鬼、伊吹萃香さんはそれを許しはしないだろうという事もわかっている。

 

 

 

 

それにしたってスケールが規格外すぎて恐怖の念すら湧いてこない僕なのだった。

 

 

 

 

「安心しな、こっから先は私の庭みたいなもんさね。多少のスリルはあったとしても安全は保障するよ」

 

 

 

 

「僕みたいな(のみ)の心臓の持ち主が萃香さんの言う『多少のスリル』に耐えられれば良いんですけどね!」

 

 

 

 

うっかりショック死するくらいの事はありそうだ。

 

 

 

 

 

「さ、時間も惜しい!さっさと行くよ!」

 

 

 

「え?行くよって萃香さん、いったい何をしてるんですか?」

 

 

 

 

掛け声と共にこれまで僕を運んでくれていた小さな萃香さんの分身は消え、かわりに僕の目の前には背中を向けてしゃがみ込む萃香さんがいた。

 

 

 

 

「いや、こっから地底までは割と距離もあるし道中面倒臭い奴も多いんだよ。だからここは私が背中を貸してやる!多少急ぐしありがたく思いな」

 

 

 

 

「萃香さんが面倒に思う程の相手って相当に危険でしょ!急激に行きたくないわ!」

 

 

 

「あぁ、違う違う。勝てる勝てないの面倒じゃなくて、いちいち相手してると面倒臭いって事さ。口を開けば妬ましいとか言ってくる奴とか…って、そんな事より早く乗りなよ?」

 

 

 

「え?乗れって?」

 

 

 

「だから、私があんたを背負ってくって言ってるじゃないか。それとも真っ逆さまに落ちて行きたい?」

 

 

 

 

なんたる僥倖。

 

 

 

こんな右も左もわからない、妖怪変化が群雄割拠する世界にやってきて、あげく命懸けの闘いまで始まるような波乱万丈なここでの出来事の中…

 

 

 

幼女におんぶされるイベントが発生するとは!

 

 

 

「…何を間抜けな顔してんのさ?やっぱり落としてやろうかね?」

 

 

 

「ふっ、何を言ってるんですか萃香さん…是非おんぶでお願いします!」

 

 

 

幼女相手におんぶを哀願する男の姿がそこにあった。

 

 

 

というか僕だった。

 

 

 

今、この瞬間、この場に忍を連れて来ていない自分の采配を声を大にして褒めてあげたい気分だ。

 

 

 

「では失礼して…」

 

 

 

恐る恐る萃香さんの小さな身体に自分の身体を重ね、その全体重を預ける。

 

 

 

…正直驚いた。

 

 

見た目幼女とはいえ、相手はれっきとした鬼である。

 

 

やはりその細くて白い四肢の内は、岩の様な筋肉にで構成されているのかと思ってはいたけれど…

 

 

 

何この子!柔らかい!そしてなんか良い匂いがする!髪なんてさらっさらのフワッフワだし!!!

 

 

 

いつぞやでっかい方の妹である火憐ちゃんに肩車された時とは大違いだ。

 

 

 

抱きごごちとしては八九寺には及ばないが、それにしても今僕が身を置くこの場所こそが地上に残された唯一のシャングリラだと言われれば僕は疑う事をしないだろう。

 

 

 

「なんだか妙にあんたをこのまま背負い投げしたい気がする…ま、良いや!ちゃんと乗ったね?なら行くとするか!」

 

 

 

危うくおんぶからの一本背負に移行しそうだったが、幸いにもそこは鬼の豪快さ、気にもとめずにこの体勢を良しとしてくれたようだ。

 

 

 

「お願いします、絶対に僕の事を離さないで下さいね」

 

 

 

「いや、人間の男としてその台詞は立場が逆だろうに…じゃ、行くよ!」

 

 

 

 

こうして今日限定の頼れる相棒こと、鬼の伊吹萃香さんは、僕をその背中に背負ったままーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、飛ばないんですかああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

真っ逆さまに穴へと落ちていったのだった。




お久しぶりです、僕です。


大変ながらくスランプ中でしたが、なんとか更新できました。


なんのスランプだったか…まあ本職ではないのでスランプと言うのもなんだか烏滸がましくはありますが、兎に角スランプ!書けないもんは書けない状態だったのです!

で、原因がはっきりしました…


自分は恐らくネタを挟まないと生きていけない病気だったのです。

うん、何を言ってやがるかと思われるかもしれませんが安心して下さい、自覚はあります。

でも冗談抜きにずーーーーっとシリアスが続くとモチベーションがもたないんですよ…


ってなわけで今回は少しギャグに走りました!
リフレッシュもできたのでこれからはなるべくスムーズな更新を心がけます!


ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
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