東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第6話ーいざ紅魔館へー

「僕はしばらくここにいるからさ、さっきの話以外でわからないことがあればまたおいで」

 

忍野はそう言うと見送りに出ようともせずに僕と霊夢さんを見送った。

 

「あ、あの…待たせちゃってすいませんでした」

 

さっきの様子から察するに痺れを切らしてご立腹のようだ、ここは先に謝るのが正着だろう。

 

「んー?ああ別に良いのよ、こっちも話し込んでたとこだし言う程待ってなかったわ」

 

…ガハラさんと月火ちゃんを足したら霊夢さんになりそうだな。

 

とりあえず怒らせてた訳ではなさそうなので安心した。

 

そしてそのまま神社の境内に戻ってきた僕は信じられないものを目にするーーー

 

「ちくしょー!霊夢!私を解放しろー!!!」

 

何故かお札のような物で鳥居に縛り付けられた霧雨さんの姿がそこにはあった。

 

「え?どうなってんのこれ⁉︎ちょっと霊夢さん?霧雨さんがとんでもない事になってるんですけど⁉︎⁉︎」

 

「あれは夜が嫌いだとか何とかわけのわからない事を言って逃げようとしたからああなったのよ」

 

夏休み、戦場ヶ原に監禁された時の事がフラッシュバックした…

 

そういや霊夢さんにも僕達が似てるとかって言われたっけ。

 

霊夢さんが手をかざすと霧雨さんを拘束していたお札がパラパラと剥がれ落ちた。

 

「ここの人達はみんなこんな風に魔法じみた事ができるんですね…」

 

もう驚きもしなかったけど改めてここの出鱈目っぷりを思い知る。

 

「勘違いしてるみたいだけど、魔法を使う人間は私と魔理沙を含めても幻想郷ではごく一部よ?里にいる人間はみんな普通の人達だしーーー」

 

これは以外な事実だった。

 

僕の勝手な早とちりだけどここに住む人はみんな魔法が使えるものだと思っていた。

 

「それにこれから行く紅魔館にも人間がいるしね」

 

 

こうして僕と悲観的な顔をした霧雨さんは博麗神社をあとにした。

 

 

そういえば、博麗神社に来る時は歩いて来た僕と霧雨さんだったけど…

 

現在、箒に跨ってタンデム中である。

 

 

 

「あんた達…まさか紅魔館まで歩いて行くの?」

 

「あん?だってこいつ空飛べないしなあ…」

 

「あんたが箒に乗せて飛んでけば良いじゃない…」

 

「…確かにっ!!それは盲点だったぜ!」

 

確かこんなやりとりだった気がする…

 

どうやら霧雨さんは僕を乗せる気が無かったんじゃなくて、乗せて飛んだ方が早いって発想が本当に無かったようだった。

 

そして僕も僕で最初こそ初体験の魔女飛行にワクワクしたり、公然と少女に抱き付ける事に内心ドキドキしました、ええ、しましたとも。

 

けどそれはあくまでも最初はという話だ…

 

「ちょっと霧雨さん!高いです!早いです!!」

 

そこには魔女っ子のようなメルヘンさのかけらもない断末魔を上げて大空を駆け抜ける高校生の姿があった。

 

てゆーか僕だった。

 

「大丈夫だって!もうすぐ着くから!この湖を越えたら紅魔館だ!」

 

「なんの大丈夫ですか⁉︎いや本当降ろして下さい!降ろしてええええええええ!」

 

 

いつもこうなのか、よっぽど早く帰りたいのか、さっきの鬱憤を晴らしているのか…

 

そこから紅魔館に着くまで加速こそすれど、全く手加減なしにぶっ飛ばす霧雨さんだった…

 

 

閑話休題

 

 

「あらー…こんな時間だからかな?門番不在かあ…寝てるのか?いや、あいつはいつでも寝てるか」

 

目を回しながらも無事に館に着いた僕達はとても大きな門扉の前に立っていた。

 

紅魔館と呼ばれていたこの館に目をやる…

 

それはとても大きな洋館で全体的に紅く、極端に窓の少ないーーー

 

大きな時計台が目立つ、余りにもまわりの景色とは不釣り合いな存在の浮いた建物だった。

 

「ったく、しょうがねえなあ…おい、中に入るぜ」

 

いつもそうしてると言わんばかりにズカズカと敷地の中に侵入していく霧雨さん

 

「ちょ、ちょっと霧雨さん!さすがに知り合いの家でも不法侵入は駄目ですよ!こんな時間だし家主の方も寝てるんじゃないですか⁉︎」

 

右手に巻いた腕時計を見れば時刻はとっくに夜の十一時を回っていた、常識的に考えて他人の家を訪問して良い時間ではない。

 

「ん?何を言ってんだ?こんな時間なんてあいつにとっちゃ朝みたいなもんだろ。それに咲夜かパチュリーが起きてるかもしれないしな」

 

この館の住人の名前だろうか?

 

知り合いだって事はわかるけど余り気が進まない…

 

宿泊するのは僕なんだし第一印象が最悪ってのは居ずらくなるだけなんだけどな…

 

しかし、ここでも例のごとく選択肢のない僕は霧雨さんの後をついていくしかないのだった。

 

 

「いやー、正面玄関から入るのはいつ以来だったかなあ…私でもさすがに緊張するぜ」

 

「いや、あなた玄関から入らずにいつも何処から入ってるんですか…」

 

館の敷地をしばらく歩くと、玄関と思われる扉に辿り着いた。

 

そして霧雨さんのこの発言…

 

僕と霧雨さんが似ているという発言は前言撤回してもらいたかった。

 

ん?でも僕も羽川の家に不法侵入した事があったっけ…

 

 

「おーい!誰かいないかー⁉︎」

 

玄関を開けるなり博麗神社を訪れた時のように声を張り上げる霧雨さん。

 

きっとこの人はいつもこうなんだろうな…忍野の言葉を借りるならきっと何か良い事でもあったんだろう。

 

すると奥から一人の女性が現れた。

 

「こんな時間に珍しいお客様ね、何か用なの魔理沙?パチュリー様なら図書館よ」

 

…信じられるだろうか?

 

僕が言いたいのはこんな時間に人が起きている事を指して言っているのではない。

 

彼女の服装を指して僕は信じられるかと問いたかった。

 

目の前の女性…

 

メイド服である!

 

「今日はパチュリーに用があって来たわけじゃなくてな、ちょっとこの人間の事で頼みがあって来たんだ」

 

「そうなの、で、そちらの方は?」

 

「はじめまして!僕は阿良々木暦といいます!以後、お見知り置きを!」

 

「おい、お前私や霊夢の時と比べてやけにテンション高くないか?」

 

「ん?何の事ですか?僕にはさっぱりわかりませんね」

 

「それ明らかにとぼけてる時の口調だろ!」

 

「やめて下さいよ霧雨さん、良いじゃないですかメイド服の話は」

 

「そんな話はしてない!!!」

 

「自己紹介ありがとうございます、私は十六夜咲夜、ここのメイド長です。…で、貴方達は漫才を見せに来たという事で良いのかしら?それなら私はもう寝るけど…」

 

「違う!待ってくれ咲夜!」

 

必死に引き止める霧雨さん…

 

それにしても危ないところだった。

 

危うくメイド服のせいで我を忘れて大失態をさらすところだったぜ。

 

「実はこいつ外来人なんだよ、それで身柄を預かってほしくて尋ねて来たんだ。レミリアはいないのか?」

 

「そういう事なら博麗神社に行くべきじゃない?ここは紅魔館なのよ?」

 

「だからこそ来たんだよ。それに神社には今、他の外来人がいるんだ。あっ、それと言い忘れてたけどな…こいつ」

 

吸血鬼らしいぞーーー

 

霧雨さんがそう告げるとメイド服の女性は途端に目付きを変えた。

 

「それ…本当なの?」

 

「ああ本当さ。もっとも中途半端な吸血鬼らしいけどな」

 

僕を見ながら鑑定でもするように唸る十六夜さん…そしてそこから何かを考えるかのように黙ってしまった。

 

「あ、あの…迷惑でしたら結構ですんでーーー」

 

もうその場の空気に耐えきれなくなって声を出した瞬間だった。

 

「わかりました、お嬢様にお繋ぎしますわ。着いて来て下さい。」

 

それは意外にして驚きの返事だった。

 

我ながらこんな怪しい男を繋いでくれるとは思わなかったし、まさかメイドさんが繋いでくれる先がご主人様ではなくお嬢様というのも驚きだ。

 

兎に角、こうして館の中に無事、招き入れてもらう事ができたーーー

 

僕だけは。

 

「なら後は任せたぞ咲夜、私は帰るから宿泊拒否なら神社に送り返してくれ!」

 

言うなり霧雨さんは闇夜に向かって飛び去ってしまったのだ…

 

「マジかよ…」

 

突如取り残されてしまった僕は只々絶句である。

 

これで本当に野宿になったらどうしよう…

 

とりあえず次に霧雨さんに会ったらあの箒を折ってやろう…

 

「大丈夫、取って食べたりしないわ。今晩はちゃんと泊めてあげるからおとなしくついてきなさい」

 

まるで霧雨さんの行動がわかっていたかのように冷静なまま先を歩く十六夜さん…

 

なんか今日の僕は振り回されてばっかりだな…

 

こうして会話という会話もないまま、広い館内を歩いていく。

 

それにしても広い屋敷だな…外から見た時はここまで広く見えなかったけど…

 

なにより全てが紅いのが異様だった。

 

まるで鮮血のような…空間の全てが紅い色で統一されているのは何か落ち着かない雰囲気がある。

 

「ところで貴方、本当に吸血鬼なの?」

 

突然の質問だった。

 

元いた世界で考えればありえない筈の質問に一瞬言葉を迷ってしまう。

 

「そう…ですね。いや、ベースは人間のままなんですよ。ただある事件をきっかけに半分だけ吸血鬼になったというか…吸血鬼を宿したってところです」

 

「そう…貴方も色々とあったのね。まあ深くは詮索しない、全てはお嬢様の決める事だから」

 

そしてまた無言の空間がその場を支配した。

 

この人は恐らく人間なんだろうけど…どうしてだろうか、同じ人間を心良く思ってないような気がする。

 

人の過去や価値観に踏み込むのは関心できたことではないけど、この人も過去に何かあったのだろうか?

 

「ここよ」

 

前方を歩く十六夜さんが足を止めた。

 

そこにはやはり真っ赤な木製の扉があった。

 

それに向かった十六夜さんはノックをして

 

「失礼しますお嬢様、魔理沙の紹介でお客様がお見えですがお通ししても宜しいでしょうか?」

 

と呼びかけた。

 

メイド長というだけあって言葉使いも立派なものだ。

 

しかしここまで仕事のできるメイド長が言うお嬢様とはどんな人物なのか…

 

格式高いお姫様のような人だったら…きっと僕には会話もできないだろうな。

 

「構わないわ、通しなさい」

 

女性の声でその返事はすぐに返ってきた。

 

失礼します、と、ドアを開ける十六夜さんと共に入室する。

 

そこにいたのは…

 

「はじめまして人間、貴方が魔理沙の連れてきた客人ね?」

 

いかにも高級そうな椅子に腰掛けて、威厳たっぷりに足を組んだーーー

 

 

 

幼女だった。

 

「この子が…お嬢様?」

 

「口を慎みなさい!この方こそこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットお嬢様よ!」

 

より一層鋭い目で僕を睨みつけながら叱責する十六夜さん…

 

だがその無礼も許して頂きたい。

 

だって想像できないだろ?

こんな見た目が十歳くらいの女の子がこんな大きい屋敷の主だなんて。

 

 

「無理もないわ、気にしなくて良い。咲夜もそんな事でいちいち声を荒げないでちょうだい。…ねえ人間、私は見た目は子供だけどこれでも五百年以上生きているのよ?」

 

…これは本日何回目の衝撃だろうか?

 

目の前のこの幼女が齢五百を超える高齢だって?

 

にわかには信じがたい…

 

でも…本当に信じられない発言はこの後こそだった。

 

 

「そんな驚かないでちょうだいよ、だって私はーーーー」

 

 

『吸血鬼なのだから』

 

 

「今…何て言いましたか⁉︎」

 

 

「だから私は吸血鬼だと言ったのよ。聞こえなかった?」

 

 

「そんな…まさか…ここにも吸血鬼が…」

 

ダメだ、これはもう僕の小さなキャパシティに収まる話じゃない。

 

これまで何とか持ち堪えたきた僕のメンタルは今まさに崩壊しようとしていた。

 

そして、それにトドメを指したのは他でもない…まさかの味方だったのだから笑い話にもならない。

 

「かかっ、長生きはするもんじゃ。これは珍しくも懐かしい顔に会うたもんじゃわい。のう?レミリアよ」

 

振り向けば忍が僕の影から出てきていた。

 

いや、そんな事よりも今忍はとんでもない事を言わなかったか?

 

「お、おい忍…お前まさかとは思うがーーー」

 

「無礼者!初対面の分際でお嬢様を呼び捨てとは!」

 

叫んだのは十六夜さんだった。

 

見ればその手にはナイフが握られている!

 

しかしそれでも忍は余裕の表情を崩さない、それどころか凄惨な笑みを浮かべてこう続けたーーー

 

「こう言っておるがどうなんじゃ、レミリアよ?」

 

どうやら僕は大きな間違いをしていたようだ。

 

確かに死ぬ程の衝撃を受けたしなんなら十六夜さんに殺されるかとも思った…

 

でもそれ以上に、この場には大きな衝撃を受けている人物がいたのだ。

 

それはーーー

 

 

「まさか…ハートアンダーブレードお姉様⁉︎」

 

 

 

今日はまだまだ長い夜になりそうであるーーー

 

 

 

 

 

 

 

 




とうとう忍とレミリアが絡みました。この設定は絶対にやりたかったある意味での作者の念願ですw
この二人の繋がりは次回明らかに!

ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
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