東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第7話ー忍とレミリアの過去ー

忍野忍は過去を語らない。

 

故に僕は彼女の過去をほとんど知らない。

 

吸血鬼をこの身に宿した僕が、この先どれだけの時を生きていくかはわからないけれど、忍に話す気がない以上は僕から聞く事はないだろう。

 

 

いや

 

 

そのはずだった…今この瞬間までは…

 

「おい忍!お前この…えっと…レミリアさんと知り合いなのか⁉︎」

 

とんでもない事実の発覚だ。

 

そもそも僕が忍の過去を聞く気がないというのも、五百年以上の時を生きている忍の過去なんて僕が関与する余地がないからだ。

 

共通の知り合いなんている筈もなく、いたとしてもそれは教科書の中の人物とかになるだろう。

 

あくまでも僕が直接の関係を持つ事はありえない。

 

そんな忍に対して僕が生まれる前の事を聞いても野暮だし、僕が生まれてからの僅かな時間など忍にとっては無いような瞬間的なものでしかない。

 

だから聞く気がなかった…

 

なのに今はそれがいるのだ!

忍の過去を知る者として僕と直接の関係が発生する者が目の前に!

 

 

 

「なんじゃなんじゃお前様よ、そうがなるでないわ見苦しい。知り合いというか儂とレミリアは仲間じゃよ、種族的にも友好的にもの」

 

「当たり前みたいに言ってんじゃねえよ!わかるように説明しろ!洗いざらい全て!!」

 

「やかましいのう…儂に旧知の者がおるのがそんなに不思議かお前様?」

 

「当たり前だ!お前にそんな社交性は存在しない!お前と友情は対局にして対義語だ!!」

 

「儂をなんだと思っておるのじゃお前様⁉︎さすがの儂も傷付くぞ!」

 

僕の方が傷付くわ!

 

そもそも僕以外の人間や怪異に対して友好的な忍を見た事はない。

 

それは過去に一人だけいたとされる初代眷属の男を相手にしてもそうだった筈だ。

 

その男の時だって友好的だったのでは無く、あくまでも敵意がなかっただけ…つまりは興味が無かっただけだったのだ。

 

常に高慢で威圧的で高圧的…それが僕の知る忍野忍だから。

 

自身が語っていた二つ名

 

熱血にして鉄血にして冷血の吸血鬼

 

そんな人物が過去とはいえ交友関係を築いた相手がいるなんて目から鱗、青天の霹靂である!

 

「あの…ハートアンダーブレードお姉様?さっきから言いたい放題のこの人間はなんなの?」

 

横槍から質問を浴びせてきたのは渦中のレミリア・スカーレットその人だった。

 

お姉様と呼ぶ以上、忍の事を慕っているのは良くわかる。

 

だからだろう…僕を見る目がものすごく怖い…

 

「これは説明が遅れたのう、此奴は儂の眷属にして従僕にして主人にあたる人間じゃよ。関係の説明はややこしい故ここでは控えるが…まあ互いにペアリングされた運命共同体のようなものじゃ。そんなに構えんでも良い」

 

「ハートアンダーブレードお姉様に眷属⁉︎…それは驚きね…もう二度と無いと思っていたわ…」

 

「どうも…阿良々木暦です」

 

「ハートアンダーブレードお姉様の大切な人なら、たとえ人間でも態度は改めないといけないわね、よろしく暦。私のことはレミリアで良いわ」

 

「よ、よろしく…レミリア」

 

「でもハートアンダーブレードお姉様が人間とつがいになるなんて…やっぱり信じられないわね…」

 

「かかっ、儂も色々あったという事じゃ。時に妹御はあれからどうなんじゃ?」

 

「フランは相変わらず…いえ、あれからは大分良くなったのかしら?そうね、少なくとも今では普通に出歩くようにはなってるわ」

 

「ふむ、まあ、あれから久しいからのう。お互いに変化があったという事じゃな」

 

「変化といえばハートアンダーブレードお姉様、その姿はどうしたの?それに暦が呼んでいた呼び名も聞いたものじゃなかったけど」

 

「ふむ…これもさっき言ったペアリングに関係するものでのう…後々説明するわい。じゃが名前だけは改めようかの、察しの通り儂の今の名はレミリアの呼ぶそれではない。不本意じゃがのう…今は忍野忍という名を名乗っておる。まあ、好きに呼ぶが良い」

 

「理由がありそうね…後でお茶でも飲みながら聞かせてもらいましょう。では忍お姉様と呼ばせてもらうわ」

 

 

昔話に花を咲かせる二人を前にして、僕と十六夜さんは動けないままでいた。

 

それどころか十六夜さんはナイフを構えたまま、完全にフリーズしていた。

 

せめてナイフくらいはしまって頂きたい…

 

それにしても話の流れのままに色々と聞き逃してしまった事がある。

 

「話の腰を折るようで悪いんだが忍、そろそろ本当に聞かせてくれないか?二人がどういう関係なのかを」

 

「そうじゃな…余りに突然な事じゃがこれは説明せねばなるまい。少し長い話になるが良いかの?」

 

「どれだけ長くなってもかまわないさ、それを知っておかない事には物語が進まない」

 

「それなら立ち話という訳にもいかないわね、お茶でも用意させるわ。ちょっと咲夜、咲夜ってば!あんたいつまで固まってるのよ、お茶の用意をしてちょうだいな」

 

「…はっ!す、すいませんお嬢様!只今お持ちします」

 

 

 

 

こうして、囲むテーブルに揺れる紅茶の湯気を前に忍野忍の昔語りが幕を開けたーーーー

 

 

「さて、何から話した物かのう…まあ何を話した所でレミリアにとっては思い出話にしかならんからどこでも良いか」

 

では、まずはレミリアとの出会いから話して行こうかのう」

 

そもそも儂が最初の眷属を作った所までは話してあるよなお前様よ、レミリアに出会ったのはそれ以降の話じゃ」

 

最初の眷属が自殺してからの儂は放浪の日々じゃった、その中でバンパイアハンターと戦ったりしながらの」

 

主にふらふらと観光しながら色んな国を渡っておった。勿論ハンターに追われておる身じゃから敵の情報を探りながらの観光じゃ」

 

何?追われてる奴が観光なんぞしとる場合か、とな?見くびるでないわ、ハンターがどれだけ襲ってこようがそれでコソコソする儂ではない!その辺の小物と同列にされたら儂の名誉に関わる!」

 

兎も角、そんな時じゃった。儂の耳に儂以外の吸血鬼の噂が入ってきたのは」

 

興味が湧いた。バンパイアハンターの中にはハンターでありながら自身が吸血鬼という輩も珍しくない、お前様が戦ったあの三人の中にもおったじゃろ?じゃが、その吸血鬼の噂は違った」

 

噂ではその吸血鬼は最強として恐れられておった。ハンターを返り討ちにしただの、多くの部下を従えているだの、その吸血鬼の住む屋敷に近寄ったら命の保証はないだの…中にはスカーレットデビルなんてゆう通り名まであったのう」

 

当時、定住する事も無く各地を旅しておった儂は屋敷まで構える最強の吸血鬼とやらに会ってみたくなったのじゃ。暇だったしのう」

 

そこで現れたのがこのレミリア・スカーレットじゃ。最初は呆気に取られたものじゃよ、最強と恐れられた吸血鬼がまさか幼子の姿をしているとは思わんかったからのう。後から聞けばスカーレット家の吸血鬼は成長の遅い種族でどの吸血鬼よりも寿命が長いらしいぞ。しかし儂はどちらかといえば伯爵的な吸血鬼を想像しとった。屋敷の規模も考えれば当然じゃな」

 

じゃが人は見た目によらぬとはまさにこの事じゃった。ん?人じゃなくて吸血鬼だ、じゃと?そんな小さい事を気にしとるからいつまで経っても背が伸びんのじゃお前様は」

 

話を戻すぞ?お前様は勘違いしとったようじゃが、そもそも儂とレミリアは最初から友好的じゃった訳ではない。むしろその逆じゃ」

 

考えてもみよお前様、互いが互いに最強を謳っておるのじゃ、衝突するに決まっておろう?」

 

決着はすぐにはつかなかった…レミリアは強かったぞ?少なくとも儂の知る吸血鬼の中では間違いなく最強クラスじゃったな。いや…強いのは今でも一緒か、兎に角でたらめな強さじゃった」

 

なんじゃ?儂が負けたと思っておるのかお前様よ?安心せい、勿論儂が勝ったわい。じゃが戦いは壮絶を極めて三日に及んだ」

 

太陽が登れば休戦し、沈めば再戦を繰り返してのう。そして三日目にして決着がついた」

 

さすがに三日も戦えば相手の事もわかってくる、命のやりとりはどんな言葉よりも雄弁じゃ。儂とレミリアはそこで始めて意気投合した」

 

儂の方が若干じゃが年上でのう、そらからのレミリアはお姉様と儂に懐いてくれよって儂も柄にもなく自分の妹御ができたようで嬉しかったわい」

 

そして、しばらくはこの紅魔館に世話になっておった、懐かしいのう。いや、ここまで巨大な館だったかのう…?まあよい!そうして儂とレミリアは儂の影響で集まる妖怪を退治したり時には人間を襲ったりして生活しとった」

 

じゃがそれも長くは続かんかった…」

 

そんな生活をして二年程経ったある日、三人の男が尋ねてきたのじゃ」

 

奴らいわくバンパイアハンターの宗教のような物を立ち上げた三人らしく、儂らを成敗しに来たと告げてきよった」

 

しかしこちらは最強クラスのレミリアと掛け値なく最強な儂がおった、高々三人のハンターなぞ晩飯が自分からやってきたのと変わりないとしか思わんかった」

 

そしてそれが大きな間違いじゃった」

 

三人は今までのハンターとは違ったんじゃよ。弱点をついてくる戦い方ではなくスキルを無効化するとゆう特殊な術を使っておった」

 

闇夜において最強と恐れられる吸血鬼二人が揃いも揃って打つ手無しじゃ…さすがにあれは困ったわい」

 

そんな中でレミリアが重症を負った。相手の銀弾に打たれてしまったのじゃ…銀の弾丸はいくらレミリアの力を持ってしてもそう簡単に治癒できるものではなかった」

 

そして弱っていくレミリアを見て儂は…キレてしもうた。そもそも、その時の儂は全盛期じゃからのう、少なからず周りに影響が出ないよう手加減して戦っておったのじゃ。じゃが…レミリアを傷付けられてその手加減をやめた」

 

そこからは早かったぞ?とは言っても儂も覚えておらんから何とも言えんがのう…気がついたら三人のハンターは二人は死亡、一人は重症の有り様じゃった」

 

其奴にはここに二度と近付くなと告げて人里に打ち捨ててやったわ」

 

そしてこれからが別れの話じゃよ。レミリアにさえ告げて行かなかった最後の話じゃ」

 

そもそも当時の儂はただそこにいるだけで悪いものを集めてしまう力があった。故に一箇所にとどまらず世界を飛び回っていたのじゃ」

 

じゃが、レミリアに会ってからはそれが楽しくてつい定住してしまった…それにレミリア程の実力者がおったらどんな妖が現れても二人でどうにかできると思っておったしの。いや…思い上がっておった…」

 

その結果、レミリアにいらない怪我を負わせた儂は自分がしてきた過ちに気付いたんじゃ。…じゃから出て行こうと思った」

 

月の無い夜に儂は館をあとにした。レミリアを思うと名残り惜しかったがその時の儂にできることはそれだけじゃった…すまんのうレミリア」

 

ま、これが儂とレミリアにおける物語じゃ。しかしなんじゃろなあ…」

 

 

「儂が創って置いていった帽子、まだ使っているとは思わんかったぞ」

 

話を終えたところでレミリアは忍に抱きついて泣いていた…

 

この二人にもあったのだ。

 

その昔、何よりも大切な守るべき相手を失う経験が。

 

それがこうして時を経て再開できた。

 

そう思えば散々な目にあってるこの旅だけど…これは一つの僥倖。

 

用を終えた雑兵は去るのみ、まだ月の時間だ…二人の再開に水をさす太陽も起きてはこないだろ。

 

気の利く化物はそろそろ去る時分である。

 




忍とレミリアの過去解きパートでした!
補足としてこのレミリアは忍に対して忠誠を誓っているとかじゃなくて単純にLOVEですwwwまあ百合展開はないですけどね!
次回からは紅魔館メンバー達との絡みを出していきます、、
ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!

※ご意見、ご感想お待ちしてまーす!
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