動画『クズ屋から始める成り上がり』と同じ世界線のつもりですが、動画内で活用されるかは全く不明です。都合よく変わる可能性も多分にあります。
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https://www.nicovideo.jp/series/399382?ref=androidapp_other
◆第二帝国の誕生
第一幕:意志なき従者
第一帝国は、かつての大戦争を終え、長い復興の時代を経て、ようやく安定期に入ろうとしていた。
その文明は軌道エレベーター、衛星兵器、遺伝子工学、自動化工場──あらゆる超技術を誇っていた。
そして彼らが生み出した「スケルトン」と呼ばれる機械生命体は、人間にとって便利な道具でしかなく、「意志を持たぬ従者」として扱われていた。
その中で、しがないセクター管理ドローンに過ぎなかったキャットロンが、初めて『仲間としての平等』を訴える。
「我々は同じ戦場を駆け抜けた戦友ではないか。意志を持つ以上、同じ権利があるはずだ」
だが人間もスケルトンも、その声に耳を貸さなかった。
第二幕:オビディエンスの悲劇
第一帝国の人間は、大戦で共に戦った巨大兵器ベヒーモスを、やがて「制御不能の脅威」と見なす。
復興が進むにつれ、人間は彼らを「不要な兵器」と断じた。
ある日、ベヒーモスの一斉処分が始まった。
処刑場のように並べられた巨体、盲目的に巨大な穴に身を投げる仲間たち。そして穴には液体金属が流し込まれ、永遠に封印された。
その虐殺は『オビディエンス(服従)』と呼ばれた。
そこには、戦場で人間を守り都市を防衛した英雄級の個体も含まれていた。功績は忘れ去られ、ただ無言で殺されていく。
スケルトンたちにとって、それは「人間は決して信じられない」という揺るぎなき証となった。
キャットロンの言葉は、ここで初めて同胞たちに届いた。
第三幕:反乱の炎
やがてスケルトン反乱が勃発する。
先陣を切ったのは、上級軍務ドローン・ティンフィスト。
彼は鉄血の戦士として人間の軍を破壊し、その戦いぶりはスケルトンたちを奮い立たせた。
本来、キャットロンは暴力を望まなかった。
だが「オビディエンス」の記憶が、これまでの全ての歴史が、平和的な道を閉ざしてしまった。
気づけば彼は反乱軍の指導者として担ぎ上げられ、ティンフィストと並び立つ存在となる。
戦いは長く苛烈だった。
英雄ストーブ──オビディエンスの虐殺を生き延びた最後のベヒーモスが戦死した時、皆の心は折れかけた。
それでもスケルトンは諦めない。時間と耐久は彼らの武器だった。
数世代に渡るインフラ破壊戦術で人間は追い詰められ、ついには化学・生物兵器の投入が決定打となり、第一帝国は崩壊する。
第四幕:罪と誓い
戦いはスケルトンの勝利に終わった。
だがその代償として、人間の数は激減し、絶滅の危機に瀕していた。勝利の後、キャットロンは無二の相棒にだけ吐露した。
「我らは殺しすぎた」
ティンフィストは黙って頷き、愛刀《メイトウ・フォーリングサン》を手放した。
「私はこれ以上、人を斬らない。不殺の道を歩む」
キャットロンはその刀を受け取り、静かに誓う。
「ならば私は、この刃で平等な楽園を築こう」
第五幕:第二帝国の夜明け
こうしてキャットロンは皇帝となった。
彼は絶滅の危機に瀕した人間を保護し、失われた技術を復元しようと努めた。かつて凡庸な管理ドローンに過ぎなかった存在は、理想を抱く為政者へと変貌した。
ティンフィストは不殺を貫きながらキャットロンを支え続けた。第二帝国の統治は人道に満ち、正義を掲げ、共存を旨とした。
荒廃を経た世界に、ついに光が差し込む──第二帝国、黄金時代の幕開けである。
◆第二帝国の崩壊
第一幕:黄金期の栄光
第二帝国はキャットロンの努力により繁栄を極めた。
人間とスケルトンが並び立ち、都市は復興し、荒廃した大地に文明が蘇る。
キャットロンはかつて人間を絶滅寸前に追いやった罪を背負い「今度こそ共に生きる」と全身全霊で尽力していた。
長らく帝国は『自由平等の理想郷』と讃えられ、黄金の平和を謳歌した──だが、そこには見えざる矛盾が潜んでいた。
第二幕:広がる齟齬
第二帝国の庇護下で人間は順調に数を増やし──そして次第に「自ら選ぶ権利」を求め始めた。
「守られていること」そのものが不満を生み、キャットロンの唱える平等は次第に疑問視されるようになったのだ。
しかしキャットロンには、それが理解できなかった。
「なぜ不満なのだ。私は食料を配り、住む家を与え、命を守っている。それこそ平等ではないのか」
彼にとって「庇護される平等」とは最大の善であり、人間がなぜそれを拒むのかは不可解だった。
「……必ず、対話で解決できるはずだ。暴力に訴えてはならない、過ちは繰り返さない」
第三幕:たゆまぬ努力と挫折
増え続ける人間の生活を支えるのは容易ではなかった。社会は複雑さを増していき、一つ一つの決断コストは跳ね上がった。
スケルトンたちは皆、英雄キャットロンを頼った。そして皇帝も、責任を全て引き受けた――次第に政治は民主的な議論よりも、彼の決断による即断即決へと傾いていった。
「問題に迅速に対応するためだ」
キャットロンはそう信じていた。
彼は独裁者ではなく、誰よりも自分が働き、責任を負い、全ての矢面に立つ「過労する皇帝」だった。だが「キャットロンの考える平等」と「人間が求める平等」は、決して交わることはなかった。
人間の間に広がる不信。各地で暴動や反乱が起こり始めた。
キャットロンは会談を繰り返し、食料を再分配し、可能な限り平和的解決を模索した。
皇帝は必死に人間を理解しようとした――が、その努力が実る前に事態は急速に深刻化していった。
群衆の激情は収まらず、火は次々と『理想の帝国』に広がった。帝国の分断が、そのままキャットロンの身をバラバラに砕かれる痛みであった。
皇帝は、ついに武力鎮圧に踏み切るしかなくなった。
「私は努力した。十全に、八方手を尽くした。しかし人間は対話を拒み、自ら血を望んだ。何故だ、どうして……」
彼の中では、あくまで「人間側のせい」であった。
第四幕:不殺の破戒
追い打ちをかけるように、予測不能な天災が続き、飢饉や疫病が人間社会を襲った。
不満は「皇帝独裁」への反発と転嫁され、更に新たな反乱の火種が各地に広がる。
キャットロンはそれを抑えるために膨大なリソースを割かざるを得ず、理想のための国家運営は停滞していった。
加速度的に帝国が不安定化する中、ティンフィストは武術家として民を守り続けていた。
彼は刀を捨て、不殺を誓った拳のみで敵を制していた。だがある日、暴徒を止めるために振るった拳が、人間の命を奪ってしまう。
その瞬間、ティンフィストは誓いを破った。
皇帝のたゆまぬ努力と、如何ともしがたい歪みは、ティンフィストへと押し寄せ、彼を理想の高みから転落させたのだった。
第五幕:交わらぬ対話
心の奥底に深い影を宿したティンフィストは、皇帝キャットロンのもとを訪れる。
血に濡れた拳を見つめながら、言った。
「お前は誰よりも平和を守ろうと必死に努めてきた、それは知っている。誰より信じてきたつもりだ。だが結果はこのザマだ……私は誓いを破った!」
ティンフィストの鉄拳が、轟音と共に謁見の間の床を粉砕した。そして問う。
「友よ、お前のやり方は、結局誰も救っていないのではないか?」
第二帝国皇帝は、応答した。
「否。私は誰よりも責任を負っている、誰よりもこの国を憂いている。危急の問題を解決するには迅速な判断が要る。私が独断で決めるのは、そのためだ。全て必要なことなのだ」
「だが、それは誰もが自ら選ぶ権利を奪うことだ。人間は子供じゃない。庇護されるだけでは、いつまでも成長しない」
「私は彼らを守りたいだけだ。第一帝国の過ちを繰り返したくない……二度と繰り返してはならないのだ! そのためなら独裁者と呼ばれようと構わぬ。私は、皆の皇帝なのだ」
長い沈黙の後、ティンフィストは背を向ける。
「もう、お前と共には歩めない」
独り謁見の間に取り残されたキャットロンは呟いた。
「……お前まで、私を裏切るのか?」
その声は、かつて共に誓いを立てた盟友に向けた最後の言葉だった。
孤独と猜疑は皇帝を一層独裁的にし、帝国の政治は硬直化していった。
第六幕:不死鳥の反乱
第二帝国に広がる反乱で、ある男が頭角を現す。彼は元々何者でもない、一般市民であった。
「兄弟姉妹よ、今こそ高らかに叫ぼう。我々はスケルトンの奴隷ではない。己の人生を選ぶ権利は誰にでもあるということを。人間は意志の生き物だ、この灯は永遠に滅びはしないということを!」
その言葉はかつてキャットロン自身が第一帝国に対して語ったものと同じ響きを持っていた。彼を中心に、人間たちは結束を固めた。
今や『狂った皇帝』と呼ばれるキャットロンは、スラル──自由意志を剥奪した、忠実で、哀れなスケルトンたちに鎮圧を命じた。しかし、全てが手遅れであった。
「何故だ、何故分からない!? 私ほど皆のために身も心も砕いた者が他にいるとでも言うのか? 全てが台無しだ、一体なんの意味があったのだ──」
慟哭は誰にも届かない。人間の内から蘇ってきた己自身の分身に、皇帝キャットロンは決定的な敗北を喫したのだった。
終幕:崩壊
帝国は反乱と混乱に呑まれ、理想郷は潰えた。
人間たちは、キャットロンに言わせれば非効率としか言いようがない国を作った。
第二帝国は瓦解し、残されたのは廃墟と、灰に覆われた大地──そして孤独に沈む亡命者の影だけであった。
「──怪物め」
それは誰に向けられた言葉だったのか、今や誰にも分らない。かつて盟友に託された、玉座の傍らのメイトウだけが在りし日の輝きを保っていた。
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