冒険に行けなかった巨人の物語。
※原作のネタバレ注意!
「ゲギャギャギャ‼︎そう落ち込むな、パーシー‼︎」
「ガバババ‼︎そうだ、お前ならやれる‼︎」
「……うん」
一隻の船が出発の時を迎えようとしていた。
誇りある航海に赴く彼らは、選ばれなかった友を励ましていた。
「ゲギャギャギャ、じゃあな‼︎土産を山ほど持って帰るからな‼︎」
「ガバババ、土産話もな‼︎」
「うん、いってらっしゃい。ドリー。ブロギー」
やがて、船は征く。
広き、広き、大海原へと。
広き、広き、世界へと。
「……………………」
……見送る者を、置いていって。
船は征く。
「(…………なんで着いていけないんだろう)」
「……なんで船に乗れないんだろう」
船も、虹も、見えなくなり、他の見送りが居なくなっても、雲の水平を眺め続けていた。
「……なんで船に耐えられないんだろう」
……やがて、とぼとぼと歩き出した。
「……なんで戦い続けられないんだろう」
村には戻らず、村外れの森を進む。
「……なんで走り通せないんだろう」
やがて吊り橋に至る──、──
「……なんで遊び回れないんだろう」
吊り橋の先は、雪の降り積もる極寒の世界。
「……なんでみんなと違うんだろう」
白き世界を行く人影は黒い髪に、二本の角。
「……………………」
やがて、世界の
ここは“新世界”、世界で最も名高き巨人の国“エルバフ”。
ちっぽけな人間ではその全容を知り得ないこの国の
『グルル……』
『グオー……』
“宝樹アダム”。
その規格外の超巨大樹に分けられる領域に、エルバフの巨人達は三つの『世界』の名を付けた。
──大樹の根付く地表、雪に覆われた死の世界、“冥界”。
「わははははは、巨兵海賊団に乾ぱ〜い!」
「「「かんぱ〜い‼︎」」」
──大樹の枝の上、緑生い茂り巨人が村を築く世界、“陽界”。
──大樹の天辺、アダムの頂上たる世界、“天界”。
──故に、轟音によってその二つ名は付けられた。
「うおっ⁈なんだぁ⁉︎」
「アダムが揺れたぞ‼︎」
「地震⁈」
「こんなに揺れねぇだろ⁉︎」
──激震がアダムを揺らす。
豪胆な巨人達でさえ慄かずにはいられない震動。
『ギャオ〜⁉︎』
『グホッ、グホッ……‼︎』
──それは根を伝い、地表も揺らした。
アダムの木陰の山々では雪崩が起き、“冥界”に住まう猛獣は泡を食って逃げ惑う。
──“天界”すらも、その震動にざわめき、揺れ動いたという。
「……………………ハァ、…………ハァ」
──故に、“三界揺らし”。
「……ハァ、……ハァ、……ハァ」
──後に“三界揺らしのパーシー”と、そう人は呼んだ。
「……………………僕が、女の子だからかな……?」
──……規格外の力を持ち、エルバフの王と同じ古の巨人の特徴を宿しながら、船の揺れに耐え続ける事も、武器を取って戦う事も、走り回る事さえままならぬ程に体力の無い
『そう落ち込むな、パーシー‼︎』
『お前ならやれる‼︎』
「…………うん、ここで諦めちゃったら、ドリーとブロギーに悪いよね……‼︎」
──彼女が“エルバフの戦士”として立ち上がり、“青鬼のドリー”、“赤鬼のブロギー”、“光輝の王ハラルド”とその名を並べ、世界に名を轟かすのに
──それは、300年を生きる巨人にとって、そう長くはない物語である。
「──なーお前の後ろにあるでっけー
「──ドガハハハ‼︎これはエルバフ史上最高の怪力の持ち主がアダムを殴り付けた
「跡ォ⁈アダムってへこむのかぁ⁈」
「これでもずいぶん小さくなったんだぜ⁈アダムの生命力が押し返しちまったが、俺がガキの頃は深さもデカさも今の五倍はあったもんだ‼︎」
「昔はもっとデカかったのかァ〜⁈すっげェ〜……‼︎」
パーシー
…エルバフの巨人。
女。
黒髪ショートカットでボーイッシュ。
古代巨人族の血を引いており背丈は普通の巨人の倍以上、額には角が二本緩く斜め上に曲がりながら前へと伸びて生えている。
王子様タイプっぽい僕っ子。
くいな族みがある。
アダムをも揺るがす途方も無いパワーを持っているが体力がパワーに合わずそれを全く活かせない。
パンチ一発、武器一振りで息切れ。
……ただしその一発で巨人は森を巻き込みながら陽界の外まで吹き飛ばされ、剣の一振りは村の地面を真っ二つにしアダムの枝に深く切れ込みを入れる。
ドリー・ブロギーとは親友。
ハラルドとは……。