ノリで秘密結社立ち上げたら入ってくるやつ全員秘密しかなかった   作:恋狸

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昨年はお世話になりました。
お陰様で書籍化が決まったり、ハーメルンで夢だったお気に入り1万を突破したりなど嬉しいことがこの作品を通して色々ありました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

はい、そんなわけで久しぶりのゴンさん登場です。


シャルミナ調査ファイル:ゴン

Side シャルミナ

 

「……さて、ではシャルミナ。君に任務を言い渡す。最近、ここから車で二時間ほどの西十字辺りで異能犯罪の形跡アリ、とのことだ。どうやら組織立った動きではなく個人の活動の可能性が高いとされている。君にはその異能犯罪者の調査、及びヤツへの手掛かりを発見して欲しい。──いつも通り、非常時以外は戦闘禁止だが……まあ、これは最悪どうとでもなるから良しとしようか」

 

 

 ──これが今回の任務。

 どうやら特異も手を焼いている異能犯罪者のようだから、"ヤツ"の手掛かりを握っていても不思議ではない重要な任務だ。

 

 ……ふふふ、無事に終わらせて収穫を持ち帰ったらボスは褒めてくれるかしら。

 ボスは一々キザったらしい口上で褒めてくれるけれど、どれも嘘なんかじゃなくて本心から言ってくれているというのをあたしは知っている。

 

 だからこそ遠慮せずに頭とか撫でてくれないかなー、とか思うのだけれど……ううん、これ以上を望むのは良くないわね。

 

 あくまであたしとボスは同じ志を持った仲間…………。

 

 ……仲間だったらもっと気安くしてくれてもいいのに。

 

「いけない。最近雑念が酷いわね。これもボスのせいよ」

 

 サラッとボスに責任を押し付けつつ、あたしは今回の任務の難易度を振り返りながら簡単な計画を立てる。

 

「組織立っているわけでなく、単体で事に及んでいるなら闇雲に探すだけ無駄……か。複数のセーフハウスだってあるでしょうし、あたしには人海戦術が使えない。よって虱潰しの捜索も不可能」

 

 ……少しあたし個人で今回の事件について調べてみたところ、異能犯罪者は一般人を襲うことはなく異能者ばかり襲っているとのこと。

 理由として考えられるのは、何らかの目的があって異能者の数を減らしたい……だとか、単に自分が強くなるためだけに片っ端から異能者を襲っているだとか。

 

 ……そうね、だとしたら目撃情報のある場所の近くで異能を使用することで案外簡単におびき寄せることができたりしないかしら? 

 

 罠だと気づいていたとしても、あれだけ執拗に異能者ばかりを狙っているのだとしたら関係なく襲ってくる可能性もある。

 あとは返り討ちにしておしまい……といきたいところだけれど、特異の実力者も大怪我を負わされたとも聞くし油断はできないわ。

 

「そもそも戦闘で油断なんかしないけれど」

 

 命のやり取りは常に平等だ。

 勝った者だけが敗者の生殺与奪の権を握る。

 勝者と敗者しかそこには存在せず、時としてそれは実力に関係なく搦め手や卑怯な手段でも位置が決定づけられる。

 

 別に公正な決闘をしているわけでもないのだから、戦いに卑怯も卑劣も無いけれどね。まあ、さすがに人質を取られたりでもしたらあたしも卑怯と叫ばざるを得ないけれど。

 

「《感知》。……二人? 一般人かしら」

 

 犯人の目撃情報があった西十字に辿り着いたあたしは、早速《感知》の異能で人の気配を確認する。

 特異が手を焼いているということは、犯人は何らかの気配を隠す異能を持っている可能性が高いとされているわ。

 

 だとしたらあたしの《感知》には引っ掛からない……。

 

 

「こんな夜更けの治安の悪い場所に二人……」

 

 一般人である可能性も十分に考えられる。

 けれど警戒するに越したことはない。

 

 あたしは身を隠しながら《感知》の反応があった場所まで移動していく。

 工業地帯である西十字は街灯の灯りもほの暗く、廃工場が立ち並んでいてどこか不気味な雰囲気すらある。

 ますますこんな場所に一般人がいるのか? という疑問があたしの脳裏をよぎった。

 

「……ここね」

 

 あたしは反応があったこじんまりとした廃工場の中に立ち入る。

 ……どこか煙の匂いがするわね。タバコの匂いかしら。

 

 

 ……間違いなく人の気配がする。

 これは気配を隠す気がないと言ったほうが正しい。

 

 そしてあたしは物陰から人の気配する方向を覗き見ると、衝撃の光景が視界に写った。

 

「……っ!!」

 

 そこには、椅子の背もたれに身を委ねながら煙草を咥える金髪赤目の青年がいた。

 見目は非常に整っていて、10代後半のようにも見えるし、その落ち着きから20代後半のようにも見える。若いことは確かだと思う。

 

「ふぅーーー……」

 

 問題は、その青年の足元に気絶している男がいることだ。

 30代後半の中年男性……茶髪に小太り……間違いない。

 青年の足元に倒れている男こそが、今回の任務の目的だった異能犯罪者の男だ。あたしが集めた情報とも差異は無い。

 

 ……彼は一体何者なの。

 敵か味方か……。

 

 

「──やあ! そこに隠れてる君、出ておいでよ」

 

 

 ──気づかれた……っ!

 足音も痕跡も消していたはずなのに……!!

 もしかしたら《感知》系統の異能を持っているのかしら……。

 

 ──虎穴にはいらずんば虎子を得ず。

 どのみちターゲットは気絶しているし、このまま手ぶらで帰ることはあたしにはできない。

 敵意も無いように見えるし、少なくともこの青年の情報だけでも持ち帰らないとボスに顔向けできないわ。

 

 

「気づかれていたのね。あなたは何者なの?」

 

 青年は懐から何かの袋を取り出すと、煙草の吸殻を中に入れてから立ち上がり、まるで王侯貴族と相対しているかと錯覚してしまうほど優雅な礼をした。

 

「──どーもどーもはじめまして! 僕の名前は石園権三郎!! 気楽にゴンさんでもゴンくんでも何でも好きに呼んでよ!」

「姿勢が台無しになったわね……」

 

 目を見張るほど優雅な礼をした人間とは思えないくらい、粗雑にフレンドリーにあたしに声をかけてきた青年に思わず呆れた笑いをしてしまう。

 ……それにしても、ハーフかもしくは外国人かと思ったのだけれど純日本人のネーミングしてるわね……思ったより古風の。

 

「いやー! まいったよね。適当にここらをぶらついてたらさ、いきなり変なおじさんに襲われるんだもの! 日本の治安もここまで堕ちたかと思ったけど異能犯罪者なら納得かな」

 

 あっははー! と軽く笑い飛ばす青年……石園はやれやれと大仰に困り顔を披露する。どうやら自身が異能者だということを隠す気は無いみたいね。

 

 ……本当に彼の話が真実ならばただの被害者に違いないけれど。

 

「こんな夜更けに、街からも遠いこの場所をたまたまぶらつくなんてことはあるのかしら? あなたもこの異能犯罪者に用があったと推測するのが正しい気がするわ」

 

 石園に疑問をぶつけると、彼は不意に目を見開いたかと思えばあたしの全身を注意深く観察し始めた。

 

「うーん……んんん、んー、あー、なるほどねぇ……そういうことか」

 

 一人で納得したようにうんうんと頷く石園に、あたしは何かの異能を使ったのかと警戒から刀を抜き放つ。

 ……油断はできない。

 このフレンドリーな態度も、誰かを騙すためだと言われたほうが至極自然よ。

 

 それに──立ち姿から一切実力が分からない……!!!

 

 あたしがこの青年を警戒する理由はこれにある。

 普通は立ち方、歩き方には一般人には分からないクセがある。

 

 特に異能者はこれが顕著で、遠距離系統の異能を持つ人間には独特の間合いの取り方があったり、近距離の異能を持つ人間はそれこそ立ち姿で何となく相手の実力を把握することができる。

 

 あたしは観察眼には自信がある。

 ある程度パッと見ただけで相手がどれくらいの実力を秘めているかを看破することができるのに、石園と名乗るこの青年の実力だけは一切読むことができなかった。

 

 あまりにも自然体で、クセがない。

 だからこそ、あたしは長年の勘から彼が途轍もない実力を秘めているのではないかと疑っていた。

 

 

「おおっと、不躾に見ちゃってごめんね。別に僕は()()()と敵対したいわけじゃないんだ。……うーん、というかしようと思っても()()()()と言ったほうが正しいかな? まあ、そんなことはどうでも良いんだけども」

「その言葉が正しい証拠はどこにあるのかしら? 疑わしきは罰せよ。……別に罰するほどあなたのことを知らないけれど、初対面で乙女の体を不躾に見た罰は受けるべきじゃなくて?」

「うーん、謝って済むなら警察はいらないとかアキラが言ってたなぁ……」

 

 アキラ? 知らない名前が出てきた。

 石園の仲間か何かかしら?

 

 それにしても、やっぱり変ね。

 刀を向けられているというのに、彼からは恐れも怒りも感じない。ただ困ったように笑っているだけだ。

 

 ……仕方ないわ。

 一旦気絶させて取り調べることにしましょう。

 戦闘行為は避けるべきだけれど、あたしとしてはこの男を今ここで見逃すことのほうが避けるべきだと思っている。

 

 そう判断してあたしは異能を唱え──

 

「《コネ──》」

「ああ、そうだ。君のとこのボスは元気でやってるかい? なかなか忙しくて喫茶店にも行けていないんだ」

「なっ……!!?」

 

 ボスの知り合い……!?

 っ、しまっ……異能が途切れて──!

 

「──《瓦落多(がらくた)》」

「かはっ……っ!!」

 

 ──刹那、体が押し潰されそうなほどの()()()()()()()()

 床に叩きつけられた衝撃から肺の息が漏れ、あたしは地べたに体を押しつけられたまま異能を発した青年を睨みつける。

 だが、青年は困ったように笑うとパチンッ! と指を鳴らす。

 

「げほっ、げほっ!! どういうつもりかしら……!」

 

 異能が解除され、あたしは重力から逃れることができた。

 ……あのままだとあたしは死んでいた。

 殺すならどうして殺さないの、という意味合いを込めて石園を見ると、彼はハァとため息を吐いて言った。

 

「だから、敵対したいわけじゃないと言っただろう? 手荒な真似をしたのは、あのままだと君が僕に斬り掛かってきたからね。自衛というやつさ。……で、君のとこのボスと僕が知り合いなのは嘘じゃなくて本当。帰った後に僕の名前を出すといいよ」

 

 あまりこういうマネはしたくないんだけどねぇ、と再びため息を吐く石園に、あたしはようやく彼の言葉が本当だという確信を得た。

 そうね……もしも敵だったなら、さっきあたしを殺せたのに見逃したのはおかしいし、わざわざボスに確認を取れと言ってくる辺り本当のことなのは間違いないわ。

 

「……ごめんなさい。早とちりしたようね」

「うん、良いよ。僕も手荒な真似してごめんねー。手持ちの異能に力加減できるものが意外と無くてさ。ここは両者痛み分けにしようじゃないか! ね?」

「ええ、分かったわ」

 

 警戒することは悪いことではないと思うけれど、誰彼構わず話を聞かずに疑うのは良くないわね。反省しないといけないわ。

 

☆☆☆

 

 それから少しだけ彼と情報交換をして別れた。

 けれど、去り際のあの言葉はなんだったのかしら?

 

 

 

「それにしても……君、良い刀を持ってるじゃない。大事にすると良いよ。()()が君のもとにあるということは、確かな因果の導きに他ならないのだから」




全然系統は違うけど新作を書き始めました。
既存作の息抜きに新作を出すのは作家あるあるなので許してください。

もし良ければこっちも読んでお気に入りなどなどしてくれるとありがたいです。

「種付け奴隷剣闘士として売られた僕が貞操逆転世界で地位を得るには」
https://syosetu.org/novel/397706/
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