それは人類の歴史そのものと呼べる文化であり、同時にこの世界で最も普遍的な
必要なのはメインデッキ40枚、ライフデッキ20枚。
そして、ファイターと呼ばれる人間が二人。
二つのデッキよりカードを引き、ライフカードをコストゾーンへ、コストを使用してカードを発動する。
カードを引く度、ライフは擦り減る。カードを使用する度に盤面は変化する。
互いの命を燃やし、戦いを激化させて、最終的に片方の
過激な表現だけどやっている事に概ね間違いはない。
何はともあれ大半の人々は日常的にこのゲームに触れている。
僕、佐藤 ミノルもLifeに熱中する人間の一人だ。
何か実績がある訳でもないし、お金もないからカードもそこまで集められてない。
でもお小遣いでパックを剥いて、それを元にデッキを構築して、実際に対戦してみて。
勝てたら勝因を、負ければ敗因を分析してデッキの再構築。
プレイングに磨きをかけて、少しずつだけど強くなっていく。
そんな感覚が溜まらなく好きだった。
可能なら一緒にやれる友達も欲しかったけど
見た目のせいで学校でも浮いてるし、僕のプレイスタイルは人とはちょっと違うみたいだから。
寂しいけど仕方ないと受け入れた。対戦相手はカードショップに行けば困んないし。
一期一会というのもそう悪くはないだろう。
「調整は、こんなもんでいいかな」
だから今日もカードショップへと向かう。
隣町だから少し遠いけど、大会があるから腕試しに丁度良い。
賞品も獲得できたらおこずかいも少し余裕ができる。
できたら勝ちたいな。姉さんも大変そうだし、金銭的な負担は掛けたくない。
「よし、行こう」
ま、一番は楽しいんでやる事だね。ゲームなんだからさ。
自転車と僕の足を酷使して、数十分。
やっとのこさで着いたカードショップには人がごった返していた。
受付も混んでるようなのでさっさと近場の駐輪場に自転車を置き、店内で受付の列へと並んだ。
結構前に来た時より内装も変わって、店員さんも見慣れない顔ばかりだ。
常連客の話を盗み聞けば、一カ月前ほどにメガバベル社に買収されたとかなんとか。
他人事とは言え、世知辛い話である。
「はぁ!? 今回、バトルフィールドじゃねぇの!?」
開催受付の方で声が聞こえた。
とんがりヘアーのパンクなお兄さんが問い詰め、それに対してペコペコと受付のお姉さんが頭を下げている。
「大変申し訳ありません。
「チッ……折角バトルボードも持って来たってのによ」
「本当に申し訳ありません!」
悪態をつきながらとんがりのお兄さんが去っていく。
今回の大会はバトルボード前提だったらしいけど何かがあったらしい。
思いつくとすれば……昨日起きたっていうメガバベル日本支社ビルの倒壊事件。
経緯も原因も不明。大企業のビル、それもピンポイントに其処だけが崩落というのは中々起こり得る事ではなく、現在最もホットなニュースといっても良い
情報は殆ど封鎖されて、ニュースでも抽象的な内容ばかり。
メガバベルは色々悪評もあるもんだから、良くない噂が飛び交っている。
日本内での株価もダダ下がり。海外はどうか知らんけど
ともあれ、その影響を受けているのか様々なトラブルが各所で発生している。
なんとなく此処もそれっぽい。
「こんちゃーす。受付、良いですか?」
「あ……どうぞ……」
「大丈夫?」
「どう、ですかねぇ?」
「いや、僕に聞かれても困るよ」
受付のお姉さんは半泣きになりながら対応をしている。
多分、あのとんがり兄さん以外にも問い合わせが多かったのだろう。
バトルフィールドで派手にやりたい!って層は意外と多いのだ。
此処は関西でも有数の大規模店舗だし、バトルフィールドでの大会を誇大に宣言していた。
それがいざ本番になって駄目となればクレームの一つや二つ、発生するのは自明だろう。
とはいえ、ほぼ受付のお姉さん一人に負担集中してるのは可哀そう。
他のスタッフさんも心なしか少ないし、顔色が良くない。
「ええと、お名前と身分証の提示、指定の参加費とデッキ名を御願いします」
「はーい」
名前書いて、身分証みせて、参加費払って……デッキ、デッキはどうしようか。
僕は今、3つのデッキを構築中である。
一つ目はほぼ完成形、大会優勝経験もある
二つ目はパーツ不足だが最低限は整ってる。
三つ目はパーツはそれなり、けど構築で迷走中。
フリープレイでデッキ調整するのが基本だけど大会で試す事で見えてくる問題点もある。
悩ましい所だけど……今回、商品欲しいし遊びはナシで行くかな。
「書きましたー」
「確認しますね……ん、【
「【
どっちもトークンテーマだから相性良いんだよね、この二つ。
何でか知らんけど巷じゃどっちもあんまり見ない。便利なのに何で?。
「テーマ混合なんて珍しい……あ、すみません。店内でお待ちになってください」
「あざーっす!」
受付もとい第0回戦は突破。開始まで時間があるので店内をブラつき始める。
大規模店舗だけあって中は広く、シングルからパック販売まで幅広い。
中にコンビニが併設されてるのはとても助かる。適当に軽食を買ってくかな
「塩羊羹あるじゃん、ラッキー」
品揃えもカードショップらしいというべきか、糖分・エネルギーを楽に摂取できる物が多い。
色々買いたい所だけど参加費もそれなりに重いから緑茶と羊羹で妥協する。
チョイスが渋い? 好きなんだからいいじゃん。
「ロリータ、海パン、馬頭、モヒカン、モヒカン、モヒカン?……コスプレ大会もやってる?」
飲食可能スペースで休憩しながら、参加者の確認もしておく。
大体が普通の身なりだが、特異的な恰好をする連中も多い。
魔法少女みてぇなゴッテゴテのロリータに身を包む成人女性
それ寒くないか?と問いたくなる上半身裸の海パン男。
果ては馬頭マスクを被る怪人。穴がなさそうなので多分視界真っ黒。試合どうすんのそれ
なんか逆に没個性側なんじゃと思えてきたとんがり兄さんもそうだし、なんか遠くでオラついてるモヒカン三人衆もそうだ。
何故そのような恰好をしているかは単純な趣味、という可能性もあるがもう一つある。
“恰好をつける事による共鳴率の上昇”。そう、“共鳴率”だ
曰く、ファイターには“共鳴”するデッキタイプ、テーマが存在する。
“共鳴”するデッキタイプ、テーマはデッキが回り易くなるし、カードも集めやすくなる。
オカルトと切り捨てるにはファイターの多くはそれを実感している。
都市伝説扱いされながらも“共鳴率”はほぼ確実に存在する概念として受け入れられていた。
もっとも僕にはその実感は薄い。デッキの回転もカードの集めやすさもテーマ・デッキタイプで違いを感じた事はない。
お陰で何を回せばいいかに悩むし、カードも幅広く集まるもんだからシングル買いに頼らざるを得ない場面もあった。
「対戦表、張り出しましたー。参加者の皆さんは確認を御願いしますー」
物思いに耽っていれば、対戦表が張り出されていた。
トーナメント形式はスイス式。
負けても何度か出来るし、全勝なら商品券が貰える。
頑張ってそれを狙いたい所だけど……
「一回戦は……げっ」
僕の相手、あの騒いでたとんがり兄さんじゃん。
姿を探せばもうテーブルについていた。反抗的な態度とは裏腹にやる気満々だった。
一回戦までの猶予も残り僅か。
最後にカード、スリーブ、デッキ内容の確認を行って、僕も試合の席に着く。
「こんにちは。第一回戦、宜しく御願いしますー」
「けっ、なんだよ。ガキかよ。しかも女か?」
「男ですけど」
女扱いは心外である。というか態度悪ぅっ。
テーブルには店が用意したと思われるプレイマットに自動シャッフル装置もついてる。
これ結構高いのに流石大型店舗というべきか。
「あ? お前なんでシャッフルなんかしてんだ?」
「さっきデッキ見てたら枚数毎に纏めちゃってたんで、一度バラそうかと」
「どうせ試合直前に自動シャッフルするからいいだろ。めんどくせぇ」
「あー……確かに? ま、時間までには終わりますから。大丈夫ですよ」
「そうかよ……おまえ、シャッフル上手いな」
「どうも」
まだご機嫌斜めではあるものの、そこまで悪い人ではなさそうだ。
『第一回戦、開始3分前です。参加者の方々は装置にデッキをセットしてください』
アナウンスと共にテーブルにやってくるジャッジ。
僕もとんがり兄さんも自動シャッフル装置にデッキを入れ込んだ。
シャラシャラとデッキが混ぜられる中、ジャッジがやってくる。
今回の大会はコイントスで先行後攻を決めるらしい。
「表だ」
「裏でー」
コインが投げられる。ジャッジの手の甲に出された結果は裏。
僕は先攻を選択し、とんがり兄さんは後攻となった。
『全テーブルでコイントス終了。これより第一回戦を開始します』
『レディ……ファイト!』
開始の宣告に伴い、互いのメインデッキより5枚、ライフデッキより2枚のカードが引かれる。
「僕の先行。レディ・アップキープ。先攻なのでドローフェイズは飛ばしてー……」
手札を見て、思わず手が止まった。
動揺はきっと悟られていない。そう不自然に言葉を止めていない筈。
しかし、
<初期メインカード>
5コスト・クリーチャー<
6コスト・クリーチャー<
7コスト・クリーチャー<亜人の忌み王>
7コスト・クリーチャー<亜人の忌み王>
3コスト・瞬間魔法<剪定>
<初期ライフカード>
2コスト・呪言<焼畑>
2コスト・呪言<天地返し>
ないじゃん! 初動も土地も何もないじゃん!!!
なんで大会初戦で『
<剪定>:コスト3/瞬間魔法
自身のクリーチャー1体を生贄に捧げる。
そうしたら、相手クリーチャー1体のパワー/タフネスを
生贄に捧げられたクリーチャーのパワー+2分だけ減少させる。
その後、あなたの場に存在するクリーチャー1体に+1/+1カウンターを二つ乗せる。
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強くなる為には何かを切り捨てなければならない
失われるのが例え、家族・友人だったとしても