僕は切り札を光らせたい   作:名無しの骸骨

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第二話 ダメージはクリーチャーのパワーを参照する

 おおおお、落ち着け。まだ慌てる時間じゃない。

 ちょっと手札のカードのコスト帯が死んでて、とどめに土地が置けないだけ。

 はぁー終わりです終わり。こんなカスの極みみたいな手札事故の前に僕はあまりに無力だ

 今回の大会ルールだとなんかマリガンできねぇしー?

 昔、店舗大会で余程のトラブルあったりとか大会の円滑進行の為だとかで

 早々に事故なんて起きないって他の人は受け入れてたみたいだけど

 僕はかなぁり困る!

 

 とはいえ、やりようがない訳ではない。

 不幸にも高コスカードの大半が手札にあるので山札にあるカードは凡そ低コス、中コス。

 低コスの方が比率が高い為、此処から先は有効打を引ける可能性が高い

 

 そして、土地に関しても此処から先は毎ターン引ける可能性が高い。

 残りの呪言は2枚だけだからね!

 もう2枚来る事は確率的にないだろう。確率的に!

 

「……エンドでーす」

 

「あ゛?」

 

 そうして、僕は土地も置けないカスのドローゴーを行う。

 とんがりの彼が訝し気に僕を見ている。やめてくれ、その目で見られるのは辛い

 

「俺のターンだ、ドロー。コストゾーンに土地置くぜ。さらに魔石<古代暴竜の卵>を設置し、生贄に捧げる!」

 

 使用デッキが割れた……<古代暴竜(ダイナラント)>か。厄介なのを握られている。

 初心者でも扱いやすいランプ&ビートダウン。

 低コスクリーチャーはコスト補助を行い、高クリーチャーはアホみたいなステータスで殴ってくる

 

 シンプルで分かりやすい破壊力は人気が高い。

 少なくともステータスの高さならコレに並ぶテーマは多くない。

 まさしく“恐竜”、まさしく“暴君”。

 

 そして、彼が置いた魔石の効果は……

 

「この魔石は二つの効果を選択できるが、俺はデッキから2コス以下の恐竜・クリーチャーを場に出す効果を選ぶ!」

 

「はーい。通しますー」

 

「その盤面状況で出せる妨害有ったらビックリだぜ」

 

 くっそ!!! 土地も初動も確保してる奴がほざきやがる!!!

 普通はどっちもある!? ああ、そうですね!

 僕の引き運が全部悪いんでございますよ!!!

 

「召喚するのはコスト2<古代暴竜の盗っ人>だ。」

 

「カード効果の確認、いいですか?」

 

「いいぜ、ほらよ。何もなかったらそのままエンドだ」

 

 【潜伏】……自身よりパワーの高いクリーチャーにブロックされない1/3のクリーチャー。

 さらに攻撃でプレイヤーにダメージを与えれば次のターンの最初の恐竜・クリーチャーの召喚コストを2軽減できる。

 

 コスト軽減は大きく、効果を発揮しやすいステータス・能力を持っている。

 だが殴ってくれるなら好都合。土地が欲しい。

 わざわざ魔石を経由して出したならポン出しというのもないだろう。

 僕を殴る理由あるよね? 殴ってくれ。殴ってください。御願いします。

 

「僕のターン。レディ・アップキープ。ドローフェイズでメイン、ライフより1ドロー」

 

 土地が引けた。しかもドロソの<収穫祭>も確保できた。

 問題はこの<収穫祭>、トークンを置かなければドローが出来ない代物。

 【野菜騎士】でトークンを敵味方ターンに展開し続ける事で絶え間なくリソースを確保可能だが……今はそれが出来ない、ただの置物だ。

 

 これを次に置けるだけまだマシだが序盤に展開できなかったのは本当に苦しい。

 ランプ相手にこれが何処まで響くか。

 

「土地をコストゾーンへ。エンドです」

 

「俺のターン。ドロー。土地を置いて、2コス<古代暴竜の探求者>だ。効果でライフデッキから土地をコストゾーンへ置く。これで土地は3枚だ」

 

「何もないです」

 

「ならバトルだ。<盗っ人>で攻撃!」

 

「何もないです。1点受けたのでライフデッキを確認します」

 

 捲れたのは……よし、土地だ。コストゾーンへセット。

 土地ってだけで酷く安心する。手札事故の傷は深い。

 

「エンドだ」

 

「じゃ、ターンを貰いまーす」

 

 宣言の後にそれぞれ1ドロー。引けたのは土地と【野菜騎士】の主力、3コスト<人参騎士(キャロットナイト)>。

 召喚時にトークンを展開し、死亡時にもトークンを展開、さらに本体のステータスも悪くない優秀なクリーチャー。<収穫祭>でのドローもこいつが居れば行える

 

 アドを取るなら<収穫祭>先置き、防御を重視するなら<人参騎士>。

 <古代暴竜>との対戦は過去に数回行ったが、本番となるのは大抵4ターン目以降。

 手札事故が起きたとしても相手のテンポに影響が出る訳ではない。

 僕の動きがただ遅くなるだけ、相手が速くなる訳じゃない。

 

 但し、5ターン目を過ぎた場合は死が見えてくる事になるかな。

 大型がどのペースで出てくるかにもよるけど……基本的に真っ向勝負では勝ち目はない。

 

「2コスト<収穫祭>を置きます。通らばエンド」

 

「<収穫祭>……【野菜騎士(ベジタブルナイト)】か。ターン、貰うぜ。ドロー……まずコスト3で秘宝(アーティファクト)<太古の足跡>を設置する」

 

 【古代暴竜】のドローソース、性質としては置き型で<収穫祭>と酷似している。

 1ドローの条件はこれを出した時にパワー4以上のクリーチャーがいるか。

 或いはその逆のこれを出している時にパワー4以上のクリーチャーが出たらである。

 

 パワー4も【古代暴竜】にとっては大半が満たしている数値だ。

 これがあるだけで凶悪なクリーチャーの後続が確保され続ける。

 シンプル故にとても厄介な秘宝(アーティファクト)

 

「そして、<盗っ人>のコスト軽減2を適用。俺は1コスト支払って<古代暴竜の幼体>を召喚! こいつが場に居る時、恐竜・クリーチャーの召喚コストが1軽減される! さらにこいつのステータスは4/2。<太古の足跡>の条件を満たす為、1ドローだ!」

 

 理想的な展開だ。完全にエンジンに火が入っている。

 今の手札では止められない。

 

 これが打開できるかは……次のドロー次第だな。

 

 


 

 

 悪くねぇ調子だ。手札にパーツも揃っている。

 7……いや、6ターン目には決めに行ける感覚はあるが、妙なのはこいつだ

 

 【野菜騎士】を扱う、男か女か分かんねぇサングラス付けた白髪のガキ。

 俺のより幾つか下、中学生くらいか? その割には場慣れしている。

 雰囲気も独特だ。こういう奴は大抵強い。

 

 だが……奴は手札事故を起こしている。

 1ターン目に土地を置かなかった。置かない理由はない。

 何故なら土地が、コストがなければ何もできない。

 事故と断定すべきだろう。

 

 攻勢を整えるなら今しかない。

 手を抜けばあっという間にトークンが出て来て面倒臭くなる。

 

「何にもねぇならバトルだ。<盗っ人>で攻撃!」

 

 ガキの宣言は何もねぇ。コストもないから当たり前だ。

 ダメージが通り、次のターンのコスト軽減が確約される。

 <幼体>も含めればコスト軽減量は3.

 デカブツを出して、ぶっ潰しにいくか

 

「ターン、貰います。レディ・アップキープ。各デッキから1ドロー。土地をコストゾーンへ」

 

 奴のターン。これで土地は5枚。

 蕃茄(トマト)辺りが出てきたら厄介だが、無視して殴り切れる自信はある。

 

「コスト1で通常魔法<濁る儀式>を発動。クリーチャーのみに適用できるコスト3点を捻出し……」

 

 コスト増加! 引いてたなら既に使ってる筈、今引きか?

 展開が一気の伸びるか。なら攻め方を変えなくちゃならねぇが……

 

全てのコストを使用し、7コスト<亜人の忌み王>を召喚します

 

「あ゛ぁ゛!?」

 

「何か対応あります?」

 

「……ねぇよ。妨害はねぇ」

 

 忌み王だと!? 【植物戦鬼(ゴブリンプラント)】のカードも混じってんのか!?

 “混じり”としては確かに【野菜騎士】との組み合わせは悪くない。

 だが種族が違うから、かなりのノイズもある。

 【野菜騎士】は単体でも十分に持久力も火力もある。解せねぇな。 

 なら噂に聞く二重血統(デュアルブラッド)? いいや、それもねぇな。

 共鳴率がある程度あるなら、土地が1枚もねぇクソみてぇな土地事故は起きねぇ。

 あー……考えれば考えるだけノイズだな。思考を閉じておくか。

 

「ではパワー5以下のクリーチャーを全て破壊。二つ目の効果として忌み王は手札・場のクリーチャーの種族の統一が可能、僕は“ゴブリン”を選びます。通らばエンド」

 

 これで盤面は一掃され、忌み王が立ち塞がる。

 【植物戦鬼】の中でもこいつは別格だ。俺のデッキでもそう容易くは乗り越えられねぇ。

 ならもっと強い力でねじ伏せてやる!

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 此処で来るか、暴竜の王。

 丁度、土地も5枚だ。暴れて貰うぜ。

 

「土地をコストゾーンへ <盗っ人>の2コスト軽減を適用し、7コスト<古代暴竜王(ダイナレックス)レルムス>を召喚! 効果で2/2の恐竜トークンを2体場に出す! ついでに<太古の足跡>の効果で1ドローだ!」

 

「……!」

 

 流石に動揺するか。こいつはトークンを2体場に出すが、それがメインじゃねぇ

 

「こいつは場に存在する自身以外の恐竜・クリーチャーに【速攻】を付与する! 恐竜が出れば、即座にてめぇを殴り抜けるぜ」

 

「攻撃とかしてくれたり?」

 

「する訳ねぇだろ。エンドだ」

 

「だよね。じゃ、僕のターン。レディ・アップキープ。それぞれのデッキからドロー」

 

 こいつ自体に【速攻】は付与されない。

 ついでに5/7だから忌み王は超えられない。トークン2体も同様。

 攻勢に入るにはまだ早い。切り札は揃っちゃいない。

 

「土地をコストゾーンへ、これで6枚。メインで3コスト<人参騎士>を召喚、1/1の野菜トークンを生成。<収穫祭>の効果でトークン生成時に1ドローする。通らばエンドで」

 

 3コストを残したか。とはいえ妨害、除去へのカウンターはねぇ。やれるだけやるか

 

「俺のターン、ドロー。土地をコストゾーンへ。コスト5<古代暴竜コルチオ>を召喚!」

 

「対応いいかな? コスト2<幽体の接触>。コスト2支払えなければ打ち消しで」

 

「……じゃあ打消しだ。知らねぇカードなんで見せて貰っていいか?」

 

「いいですよー」

 

 コスト2と安い代わりにコスト支払い式の不確定カウンター。

 だが、追加コスト支払う事で飛行トークン生成する……成程、噛み合ってるな。

 そういうのもある訳だ。

 

「サンキュー、返すぜ。これでエンドだ」

 

「よっし、ターン貰います。レディ・アップキープ。メイン、ライフよりドロー。土地置いて、コスト5<蕃茄騎士長(トマトナイト)>を召喚します。通らばエンド」

 

「ターンを貰う。ドロー」

 

「其方のターン開始時に<蕃茄騎士長(トマトナイト)>の効果で1/1の野菜トークンが生成。<収穫祭>で1ドローします」

 

 クソッ、失速した隙に回り始めちまった。

 こっちにも<太古>のドローはあるが……それでも手数に差は付けられるだろう。

 だが、瞬間的になら詰められる。質も、量もな。

 

「土地を置き、3コスト<古代暴竜の幼体>を召喚……妨害はねぇな? なら<太古の足跡>の効果で1ドロー。さらに<幼体>の1コス軽減を適用し、5コスト<古代暴竜 グランド>を召喚! これもパワー4以上、ドローするぜ」

 

「召喚した<幼体>、<グランド>にはレルムスによって【速攻】が付与される」

 

「そうだ……グランドで攻撃する!」

 

 古代暴竜 グランド、5コストでありながら規格外のステータスを持つ古代暴竜の主力の一体。

 

 ステータスは11/9.能力を持たねぇバニラの代わりに与えられた力がそれだ。

 手札からコイツを捨ててコスト2消費する事で1ドロー、恐竜・クリーチャー1体に【貫通】を付与できる。中々便利な奴だ。

 

「先程生成された野菜トークンでブロック」

 

「ならそいつを潰す」

 

「ブロックが確定した時に2コスト<土壌作り>を発動します。トークンを生贄に捧げて2ドロー」

 

「……グランドは【貫通】を持ってねぇ。攻撃は止まる。エンドだ」

 

 まだ手札を増やすか。妨害をまた握られているか?

 盤面は整ってきたが、ペースは奪われてきている。

 

 俺のデッキに妨害、除去はあまり積めていない。

 単純な殴り合いなら負ける気はしねぇが、ボロが出るのも時間の問題だろう。

 

「僕のターン。レディ・アップキープ。メイン、ライフより1ドロー。再びトークンが生成され、<収穫祭>で1ドロー。土地をコストゾーンへ置き、これで8枚。さらに4コスト<自植林職人アッキー>を召喚。通らばエンドで」

 

 こいつも俺が何をしたいのか……<古代暴竜>の勝ち方を分かっている。

 防御を固めて、常に妨害のコストを残しているのがその証拠だ。

 リソース勝負に付き合ってもいいが、このデッキでやるのは好きじゃねぇ。

 

「前のめりに行くかぁ! 俺のターン、ドロー!」

 

「<蕃茄騎士長>により野菜トークンを生成。<収穫祭>の効果で1枚ドローします」

 

「好きにしろ。俺も準備は出来た」

 

 盤面にはレルムス・グランド・幼体・恐竜トークン×2が揃っている。

 ()()()()()()。このターンでケリをつける

 

「土地は置かねぇ! 俺は1コスト<濁る儀式>を発動!コスト3を生成。<幼体>で1コスト軽減しながら生成された2コストで<古代暴竜の幼体>を召喚!」

 

「何もないです」

 

「<太古の足跡>で1ドロー! でもって<幼体>2体で2コスト軽減、儀式で生成された残り1コストも使いながら5コストの<古代暴竜 コルチオ>を2コストで召喚!」

 

「何もないです」

 

「じゃ、<太古の足跡>で1ドロー! 2コストの<古代暴竜の盗っ人>を<幼体>2軽減を適用し、0コストで場に出す!」

 

「同様に、何もなし」

 

 儀式で1コスト、生成されたコスト3と土地を使って幼体・コルチオ・盗っ人を場に出す。

 妨害を出さなかったのが気掛かりだが……まぁいい。

 これで使用コストは3。<濁る儀式>は使い切り、土地の残コスト4.

 妨害・除去警戒の為にコストはこれ以上使えねぇ。

 だが、俺には最後の切り札がまだ残っている!

 

「魔石<古代暴竜の卵>を設置し、生贄へ捧げる! 俺は二つ目の効果! 次に召喚する恐竜・クリーチャーの召喚コストを2軽減し、打ち消されないを発動!」

 

 やっぱりバトルフィールドでやりたかったな。

 これだけの展開ぶん回せるなら、さぞ壮観な恐竜共が見れただろう。

 まぁいい。こいつで終わらせられるんならな

 

「このクリーチャーは召喚時、場に居る恐竜・クリーチャー1体のパワー分だけコスト軽減が行える。俺はグランドを選択し、11コスト軽減。<幼体>の2コスト軽減に、<卵>の2コスト軽減も重ねるぜ!」

 

 お得意の妨害はさせねぇ。

 こいつはとびっきりだ。一撃でてめぇを屠れる!

 

「俺はコスト15<超古代暴竜(メガダイナラント) バルフェノ>を0コストで召喚! <太古の足跡>で1ドロー!」

 

「うっわ、エグ……確かまだあったよね、バルフェノの効果」

 

「ああ、こいつは場に居る恐竜・クリーチャー全てのパワーの合計が20以上の場合にパワーに+5され、【速攻】を持つ」

 

「いや、過剰だって……!」

 

 盤面にクリーチャーは出揃った。

 2/2の恐竜トークン×2。

 1/3の<古代暴竜の盗っ人>。

 4/2の<古代暴竜の幼体>×2。

 7/10【貫通】の<古代暴竜コルチオ>。

 11/9の<古代暴竜グランド>。

 5/7の<古代暴竜王レルムス>。

 20/12【貫通】【速攻】の<超古代暴竜 バルフェノ>。

 

 このターンに出したクリーチャーにも【速攻】が付与されている。

 もう全てを出し切った。後は殴り切るだけ

 

「バトル。全てのクリーチャーでお前を殴り抜く」

 

 対面にはトークンが2体。アッキー・忌み王・トマト騎士・人参騎士。

 防御としては悪くないが、相手が悪すぎる。

 奴が妨害用に残したのは4コスト。だが、こっちも残り4コスト。

 何を握っているかにもよるが条件は五分五分。

 だが、確実に盤面は圧倒している。

 集団を止めればバルフェノが止められず、バルフェノを止めれば他が止められない。

 勝負は決したと、俺でも確信できる状況。

 

「どうぞ」

 

 それでも、奴の目は死んでいない。

 燃え盛る勝利への渇望は消えないままに、その瞳の奥が七色に輝いていた。

 


 

超古代暴竜(メガダイナラント) バルフェノ>

コスト15/ユニーク・クリーチャー/15/12

【貫通】

自身の場に存在する恐竜・クリーチャー1体のパワー分だけコスト軽減を行える。

召喚時、これ以外の恐竜・クリーチャー全てのパワーの合計が

20以上の時にターン終了時までこれはパワーが+5され、【速攻】を持つ。

――――――――――――――――――――――――――――――――

暴威は満たされた。さぁ、君臨しろ先史時代の覇者よ

かつてと同様に踏み潰せ。文字通り、全てを!

 

 

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