僕は切り札を光らせたい   作:名無しの骸骨

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第四話 ライフ回復には代用ライフを用いる物がある

前回、とんがり兄さんが幼体4枚目を出していましたが

LIFEは四枚制限ではなく、三枚制限でした! 以後、間違えないように気を付けます!

 


 

 とんがり兄さん……龍崎さんとの対戦が終わってから幾つか対戦を繰り広げ、大会も最終盤に差し掛かった。

 

 二回戦、三回戦、四回戦、何とか勝利を重ねている。龍崎さんクラスは居なかったがこのショップのレベルはかなり高めに感じられた。

 

 龍崎さんが常連トップらしいし、大会以外でのファイトもかなり白熱してそうだ。対戦相手に飢えてる僕としては羨ましい。もっと近所にあったら通う選択肢もあったんだけど

 

『第五回戦、五分前となりました。参加者の方々は指定のテーブルにお付きください』

 

 合図と共に参加者が一斉に動き出す。此処まで全勝を重ねた面々となれば、強者揃いなのは予想できるけど……

 

「こんにちはー。対戦よろしくお願いしますー」

 

「ええ、御願いします」

 

 一番強そうな人に当たってしまった。

 眼鏡を掛けた赤髪のお兄さん。常連っぽい感じじゃないから恐らく僕と同じで外様組。

 雰囲気としては……龍崎さんより強そう? 

 

「……おや」

 

「?」

 

「ああいえ、失礼。お気になさらず」

 

 一瞬だけお兄さんの視線に違和感を感じた……が、それを気にする時間はない。

 五度目のジャッジのコイントス。結果、お兄さんは先攻で僕は後攻。

 

『それでは第五回戦を開始します! 本日最後のファイト、皆さま奮って楽しんでください! レディ、ファイト!』

 

 アナウンスと共にゲームが始まり、互いに手札を引く。

 今度はそう悪い手札ではない。初動は確保できている。

 

「先攻ターンなのでドローは省きます。私は土地を置き、終了」

 

「僕のターン、レディ・アップキープ。各デッキからドロー。コスト1で受粉ゴブリンを召喚して、こっちもエンド」

 

 だけども妙に胸騒ぎがする。

 あんなに酷い手札だった一戦目より嫌な感じだ。

 

「土地を置き、2コスト<渦巻く雷光>を発動。対象に3点ダメージを与え、私は3点のライフを得ます。自身に適用し、ライフデッキを確認……土地が3枚落ち、コストゾーンへ」

 

「対応なし。切腹加速してるようで実質ライフロスがないのズルくない……?」

 

「まぁそういうカードですから。このカードの回復は代用ライフを用います。代用ライフカードを3枚、ライフデッキのボトムへ置きます。エンドで御願いします」

 

 これで早々に相手の土地は5.こっちは受粉ゴブで1コス加速はできるが、序盤に相当動かれてしまうのは止められない。

 

「僕のターン。レディ・アップキープ。デッキからそれぞれ1ドロー。最初に魔石<母なる大地、ファーム>をコストゾーンへ」

 

「土地のようにコスト生成も出来る魔石ですね。死亡する度に作物カウンターを乗せ、条件を満たし、生贄に捧げる事で大型のクリーチャートークンを生み出す」

 

「ま、ステイ状態で置かれちゃうからコスト生成は次ターンから……なんでまぁ、受粉ゴブで1コスト生成して土地も含めて2コスト<収穫祭>を配置」

 

「ふむ、<収穫祭>ですか……」

 

「エンドだよ」

 

 だが、此方も最短で<収穫祭>を置けた。低コスでトークンを生成できるカードもあるし、此処から手札枚数で差をつけていけば

 

「では私のターン。レディ・アップキープ。両デッキよりドロー。土地をコストゾーンへ……何もなければメインへ移行」

 

「なんもないです」

 

「ではメインにて2コスト<呪滅>を発動。アーティファクトか魔石のどれか1つを破壊します。対象は貴方の<収穫祭>。対応がなければ対象を破壊します」

 

 <収穫祭>が最序盤から破壊された。雲行きが一気に怪しくなってきたな……!

 

「な、なんにもないです」

 

「続いて、3コスト<和弓の檸檬武者(サムライレモン)>を召喚します」

 

「なんにもないですぅ……」

 

「場に出た効果によりクリーチャー1体にX点ダメージ。Xは此方の場に居る植物・武者クリーチャーの数を参照。よって1点ダメージとなります。これを受粉ゴブリンに適用し、ダメージにて破壊します」

 

 コスト生成持ちも死んだ。これ駄目な流れじゃない?

 というか、さぁ!

 

「【果実武者(サムライフルーツ)】かぁ……」

 

「その反応なら君は【野菜騎士(ベジタブルナイト)】でしょうか……中々見る機会はありませんが、私としては好ましい対戦カードだ」

 

 <和弓の檸檬武者(サムライレモン)>のイラストにはレモンの家紋を宿した鎧甲冑の武者が矢を放ち、その先には<人参騎士(キャロットナイト)>が居た。

 

 LIFEのカードに明確なストーリーはなく、イラストしかないけれど……【野菜騎士(ベジタブルナイト)】と【果実武者(サムライフルーツ)】は互いのカードイラストにて敵対を示す関係にあった。

 

 野菜と果実、騎士と武者……相反しながらも似通った存在が争い合う姿はまさしく宿敵。

 何が理由でそうなったかは分からないものの因縁深いテーマ同士であるのは間違いないだろう。  

 

「では、農河分け目の決戦とでもいきましょうか」

 

「初動を完全に挫きながら吐くセリフじゃないよねぇ!?」

 

 何処か楽し気にニヤりと笑うお兄さん。

 僕は初動を砕かれながら、次の手を模索し始めた。  

 

 


 

 

 【野菜騎士】、【果実武者】。少なくとも今現在での使用者はあまり多くない。この二つはかなり古いテーマで、最近出たテーマより排出率は必然的に低くなる。共鳴していれば、話は違うかもしれないが。

 

 この二つのテーマは共に植物・クリーチャーであり、トークンを利用するという点で似通っている。但し野菜が騎士で果実が武者でサブタイプが異なり、戦法に関しても違う。

 

 【野菜騎士】は純粋な数の暴力と連携。

 原則としてキーワード能力を持たない個体が多く、その代わりにトークン生成力が群を抜いている。殆どのカードに搭載されたトークン生成は継続的にトークンを呼び込み、<収穫祭>との相性は此方の方が高い。

 

 其処に+1/+1修正といった全体強化が加わり、最終的に強化された軍団にて一気にワンショットを狙うのがフィニッシュとして多い。

 

 対して【果実武者】はキーワード能力を重視している。

 先制攻撃、双撃、速攻、威迫、貫通……攻撃に特化した構成で殴り合いに強く、継続的なビートダウンがフィニッシュプラン。

 

 【野菜騎士】程ではないがトークン生成も苦手ではない。<収穫祭>との噛み合いも悪くなく、両者が戦うのであればキーワード能力で上を取れる【果実武者】の方が有利だろう。

 

 とはいえ油断はできない。彼は【植物戦鬼(ゴブリンプラント)】をデッキに混ぜている。

 <収穫祭>の存在から【野菜騎士】がメインなんだろうが……そうであるなら、より相性が良い一部の【果実武者】を混ぜていてもおかしくはない。

 

 野菜と果実の区分けは曖昧な物で、果実的野菜という区分が実際に存在する。

 それに伴い、互いの陣営の一部のクリーチャーは双方の特徴を有している。

 

 <蕃茄騎士長(トマトナイト)>は植物かつ騎士・武者クリーチャーであり、生み出すトークンも野菜であり果実。

 

 <朱備えの苺武者(サムライストロベリー)>も二つのタイプ(騎士かつ武者)を持ち、キーワード能力・トークン生成が行え、全体強化を持っている。

 

 それらは野菜と果実、どちらを軸に据えていようと入れる余地がある。

 純テーマで組むよりも汎用性・対応力は格段に上がるからだ。

 彼が混ぜているのは二重血統等によって共鳴率を維持しているか、共鳴率を度外視しているのか。

 どちらにせよ混成デッキは純テーマより動きが読み辛い。厄介だ。

 

 閑話休題。

 

 バーンによる切腹加速は通った。

 アドの要となる<収穫祭>は砕いた。

 厄介な<受粉ゴブリン(コスト生成持ち)>は焼いた。

 流れは此方にある。手札も良い。例のプランも試せそうだ。

 

「1コストで<大根騎士(ラディッシュナイト)>を召喚」

 

「続きをどうぞ」

 

「2コストで<土壌作り>を発動。<大根騎士>を生贄に捧げて、2ドロー! トークン以外の植物・クリーチャーを生贄に捧げた為、1/1の野菜(果実)トークンを僕の場に生成!。植物・クリーチャーが死んだので魔石にカウンターを一つ乗っけて、通らば終わりで!」

 

「何もありません。ではターンを頂きます」

 

 <収穫祭>を破壊してなければ追加で1ドローか。ぞっとするな。

 純粋な展開よりドローを優先したのは除去か妨害を探しているか。

 此方の展開が伸びるのを予測しているなら、全体除去だな。

 

「土地を置き、2コスト<収穫祭>……対応なしを確認。続いて<長槍の液果武者(サムライベリー)>を召喚。追加コストを支払い、1/1の果実トークンを生成。<収穫祭>によりカードを1枚ドロー」

 

「僕のやりたい動きを目の前でされている(´・ω・`)」

 

「悪いね。だが、容赦はしない。ターンを渡します」

 

 土地は7枚。残コスト2.代替ライフを含めてライフには余裕がある。

 とはいえ時間を掛ければ徐々に盤面を返されるだろう。

 攻勢を整えた上で残り数ターンでリーサルを目指したい。

 

「2コストで再び<収穫祭>を配置!」

 

「着地後、対応します。再び<呪滅>を発動。対象は其方の<収穫祭>」

 

「ッ……2コストで<幽体の接触>。2コスト支払えなければ<呪滅>を打ち消す!」

 

「では<呪滅>は通らない。しかし、良かったのかな」

 

「ジリ貧で負けるよりこっちの方が勝算は残る筈だよ」

 

「なるほど。まだ他にやる事は?」

 

「なし。エンドで」

 

「では私のターン」

 

 2枚目の<収穫祭>を通された。

 <植物戦鬼>をどれ程混ぜているかにもよるが……打消しまで入っているならスロットの枠はそうない筈。

 

 <収穫祭>の着地を優先した事からも継続的なドローによって妨害・除去を引きたい意図は見透かせる。トークン生成を重視し、<胞子爆裂><胞子ゴブリン>……全体除去&種族統一で<亜人の忌み王>。メインを野菜騎士&関連ドロソ、サブに植物戦鬼を採用。残枠を妨害や除去を埋めるコントロール寄り、組み合わせとしてしっくりくるのはこれだな

 

「4コストで秘宝<果実武者軍の御旗>を設置」

 

「今出せるカードないので対応確認はスキップでいいよ」

 

 その言葉がブラフの可能性もあるのが……

 

「3コスト、秘宝<安山岩のメガリス>を設置」

 

「メガリス……? なんで、【果実武者】がそんなカード……いや、まさかスイカ?」

 

 この子、勘が良いな。推測も合っている。 

 

「察しの通りです。メガリスを起動し、3コストを生成。其処から4コストで<参謀の西瓜武者(サムライスイカ)>を召喚」

 

 スイカは果実的野菜に分類され、カードの効果においても両テーマの特性が適用されている

 ライフロス型の【護法】(対象とするばライフを失う)による対象指定への耐性。植物・クリーチャー全般のタフネスを+1する効果。

 だが、これらに加えてスイカの効果には続きが存在する。

 

「<果実武者の御旗>の効果により<参謀の西瓜武者>の召喚に便乗し、1コスト消費で1/1の果実トークンを生成。さらに<収穫祭>の効果で1ドロー」

 

「スイカの効果も発動しちゃうよ、ね?」

 

「ええ、<参謀の西瓜武者>の効果発動。植物クリーチャーが場に出た事により、1ターンに1度まで自身の場にある任意のカード1枚をレデイ状態にできる。私が選ぶのは<安山岩のメガリス>」 

 

 通常、<参謀の西瓜武者>のこの効果はステイ状態のクリーチャーをレディへと戻して防御を整える目的で使われるが……効果対象がクリーチャーに限定されてない為に想定外の動きを熟せてしまう。

 

「メガリスの起動にターン制限はない。起動し、3コストを生成した後に二体目の<和弓の檸檬武者>を召喚。召喚時効果で君の野菜トークンをダメージで破壊しましょう」

 

「うっそ~……」

 

 不必要に殴る必要はない。むざむざ土地を落とし、コストをくれてやる義理はない。

 盤面にはレモン×2・スイカ・ベリー・トークン×2。

 次ターンの彼の展開にもよるが、リーサルも可能な範囲だ。

 

 状況は此方が圧倒している。しかし、勝負というのは最後の最後まで分からない。

 どれほどアドバンテージに差があろうと、完全なる詰みまで相手が勝てないという訳ではないのだから。

 

 たった一枚のドローで全てが覆される。たった一つのミスが完全なる盤面を崩壊させる。

 

 互いの構築を、思考を、戦術を、運をぶつけ合って得られる勝利と敗北。ファイターは自身の全てを持って、それを目指すのだ。 

 

「これでエンド……さぁ、カードを引いてください」

 

 故にどんな状況でも真剣勝負であるなら手は抜けない。

 自らの最善を示し続ける、それが娯楽としての勝負でも命を懸けた死闘でも変わりなく。

 さらなる高みを目指す為に全力で駆け抜けるだけだ。

 


 

・拡張パック『農河分け目の決戦! 野菜騎士vs果実武者!』

始まりに母なる大地、ファームがあった。其処より二種の植物が生まれ落ちた。

野菜と果実、そのように名付けられた二種は共に国を創り上げて

豊かな緑、命溢れる植物達の楽園を作った。

だが、彼らの差異は時が経つにつれて差別へと変わり果て

些細ないざこざが原因で袂は分たれた。

果実は武者を名乗り上げ、反乱を起こした。

野菜は騎士を掲げて、鎮圧を図ろうとした。

両者の激突による戦火は易々とは収まらず、今や国そのものが引き裂かれている。

領土は幾度となく塗り替えられ、悲哀と憎悪が戦場を満たした。

この戦いに終わりはあるのか? 終わらせると騎士王と大将軍は宣言した。

『いざ、農河分け目の決戦へ! 全ての決着をつけよう!』

野菜と果実、騎士と武者。生き残るのは片方のみと謳い、両者は衝突する。

背後に迫る侵略者達を意にも返さないまま。     

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