僕は切り札を光らせたい   作:名無しの骸骨

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第五話 カードの使用には基本的にコストが必要である

 や、やばい。状況が非常に悪い。

 並んでる打点はあの恐竜軍団より低いけれど他の状況が深刻極まっている。

 

 切腹加速やメガリスによる使用コストの差や<収穫祭>によるドローの差。

 こっちのアーティファクト、クリーチャーを除去しながら展開という動きがぶっ刺さって、ほぼ何も出来ちゃいない。

 

 盤面は更地で、何よりこの状況を打開できる全体除去をまだ引けていない。

 <黙示録の光>を引ければそれが最も確実性が高いが、<忌み人の王>でも問題はない。

 

 【果実武者】は殴り合いは強いが、キーワード能力のせいか素のパワーは低め。殆どのクリーチャーが<忌み人の王>のパワー5以下破壊という条件に引っ掛かる。なのでどちらかを引いて、妨害を踏み越えられたら盤面の再構築は可能な範疇。

 

 それらを引く為に二枚目の<収穫祭>は場に残した。

 <幽体の接触>をあそこで切るのは本当に正しかったのか?という疑問は残るが、僕としては希望は残ってほしかった。

 

「僕のターン!」

 

 レディ・アップキープ。土地を置いて、カードを引く……駄目だ、全体除去を引けていない。

 展開して、ドローを重ねなければ。

 

「1コスト<濁る儀式>、クリーチャー限定のコストを3生成。それでコスト3<人参騎士>を召喚し、野菜トークンを生成。<収穫祭>の効果で1ドロー!」

 

 全体除去は……引けてない。

 このまま横展開で凌ぐとして、耐えられるかは分からない。

 並ぶとして1/1が複数体。だが、現状の手札だと方法はそれしかない。

 次ターンに賭けるしかないとはね。

 

「……3コストで<胞子ゴブリン>、ゴブリントークンを2体生成します。終わりで」

 

「ではターンを頂きます」

 

 カードを引かれ、土地が置かれる。

 これで土地は8枚。最上級クラスを展開するに申し分ないコスト量。

 何を出すかによって対応も変わってくるけど……

 

「メインに入ります。6コスト<朱備えの苺武者(サムライストロベリー)>を召喚します」

 

 一番即効性のある厄介なのを出された!

 【速攻】【威迫】のある2/6で、自ターン限定の全体パワー強化+1があるから実質は3/6。攻撃時にトークンも呼び出せるのも含めて【果実武者】でトップクラスに攻撃性能に優れたクリーチャー!

 

 イチゴって果実的野菜だから全然うちのデッキに組み込んでフィニッシャー運用できるんだけど引けてない。持ってるの羨ましい。

  

 どちらにせよ、それは通せないんだけど!

 

「対応して、1コスト<献身の証明>を発動。人参騎士を生贄に捧げて、苺武者を無効化します。人参騎士が死亡した事によって野菜トークン生成し、<収穫祭>で1ドロー!」

 

 此処で引けるか、【黙示録の光】(全体除去)

 

「では、さらに重ねます。【防災】、代用コストでの使用です。コストゾーンの使用済みの土地3枚を墓地に送り、献身を無効化します」

 

「……苺武者は通るよ」

 

「苺武者が召喚された事によって、スイカの能力が発動。メガリスをレディ状態にします」

 

 防災、握られていたか。何か一つはあると思ってたけど。

 だが、これ以上のメインでの展開はない。

 速攻クリーチャーがもう居ない? それとも戦闘強化を握っている?

 出せるカードがないとは考え辛い……メガリスも含めれば何かまだ出せそうな物だが

 

 ともあれ、そうであるならリーサルにはやや届かないかもしれない。

 此方のライフデッキの落ちにもよるが……生き残れる目が出てきた。

 

「戦闘フェイズへ移行します。全てのクリーチャーで貴方に攻撃します。この際、攻撃時の誘発効果が複数発生します。まず、<朱揃えの苺武者>の効果発動。攻撃時に1/1の果実(野菜)トークンを生み出し、それを攻撃状態で生成します」

 

「生成されたクリーチャーはそのターンの終了ステップで生贄に捧げられる。イチゴの全体パワー強化も乗るから打点は2/1……」

 

「ですね。対応なさそうなので、次の処理へ移行。<果実武者軍の御旗>の効果を発動。植物・武者クリーチャーが攻撃する度に1点のダメージを相手プレイヤーに与えます」

 

「イチゴ・スイカ・ベリー・レモン×2・トークン×4……9体。9体!?」

 

「1点×9となります。1枚ずつライフデッキを落としてチェック、どうぞ」

 

「まだ戦闘始まってないのにこの始末かぁ」

 

 攻撃前にライフが半分以上削れるのは一体全体どういう事なのか。

 一枚ずつライフカード落として……土地、土地、土地、土地、天地返し、土地、ファーム……よし、<焼畑>が落ちた。

 

「墓地に落ちた<焼畑>の効果を発動。コストゾーンより土地を3枚、ライフデッキに戻す!」

 

「では残ライフは8点ですね」

 

 まだリーサルだぞ?みたいな顔してくるのやめてほしいな。

 本当にギリだけど何とかなるかもだから。

 

「胞子ゴブリンでスイカ。野菜トークン×2でレモン×2を。ベリーとトークン1体をゴブリントークン2体で止めるよ!」

 

「イチゴ、トークン3体の攻撃が通ります。何かありますか?」

 

「何もない! かかってこい!」

 

「此方に何もありません。ダメージ処理の順番を決定します。トークン→トークン→トークン→イチゴです」

 

「2点→2点→2点→3点の順で処理開始するよ。ライフデッキをまず2枚墓地へ」

 

 ダメージ量としては8点を削り切れる。だが、僕のデッキには<焼畑>がもう1枚存在する。

 ライフが0になればその時点で敗北。<焼畑>が落ちたとしても回復は行われずに敗北する。

 だから、少なくともこの場を凌ぐにはイチゴの3点が通る以前に<焼畑>が落ちる必要がある。

 

「土地2枚! 残り6点!」

 

 次!

 

「土地・呪言<天地返し>! <天地返し>の発動はしない! 残り4点!」

 

 次! これがラストチャンス!

 

「土地と……呪言<焼畑>! 発動して、コストゾーンの3枚の土地をデッキに戻す! 残り5点!」

 

「二枚目、入ってましたか。成程」

 

「イチゴの攻撃も受ける。3点受けて……全部土地。残りライフは2」

 

 凌いだ……? いや、死んだも同然なんだけどね。

 ライフ2点なら次ターンは生きるけど次の次のターンでドローして死ぬのよ。

 ライフ回復……確か2枚投入してたかな? あれば生きるけどなければ終わり。

 

 後、バーンで焼かれたりしても終わり。次ターンに全体除去が通らなくても終わり……この時点でやっぱりほぼ負けてるなぁ

 

「メイン2へ移行します。削り切れるかは5割程度と考えていましたが外れましたね。ですが……」

 

 どうしよう。すっごい嫌な予感する

 

「君が使える土地(コスト)はない。<母なる大地、ファーム>を使っているなら<防災>は積めて1~2枚。苺武者を打ち消せなかった以上、手札には存在しないでしょう」

 

「ど、どうだろうねぇ」

 

 死刑宣告はじまった? コストあるけど此処から殺しに来れる?

 でも、バーンだったら別にこのタイミングじゃなくていいしな……

 

「メガリスを起動し、3コスト生成。土地からもコストを捻出し、発動……4コスト<神々の黄昏(ラグナロク)>」

 

「あっ」

 

「効果で全ての土地を破壊します。クリーチャーには干渉しないので盤面は維持されます」

 

「はい……」

 

 引けた<黙示録の光>がこの瞬間腐ったねぇ。

 というかあらゆる手札が腐ったねぇ。

 これで何を引いても完全に負ける事が決定した。

 土地がなければコストを引き出せない。

 代用コスト持ちを除いて、土地0枚では何も出来はしないのだ。

 そして、この状況を覆せる対応が、僕のデッキには存在しない。

 

「対応は?」

 

「ありません」

 

「続けますか?」

 

「投了で御願いします。対戦、ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

 


 

 

 クッソー!!!惨敗ー!!!!!!!

 嫌な予感、ぜんぶ当たったよ!

 どうしたら巻き返せるのか分かんなかった。

 

「敗因、知りたいなって……」

 

「一番は初期手札の噛み合いと相性ですね。君は<収穫祭>を使ってアドバンテージを稼ぎ、トークンで時間を稼ぎつつ対応札を探そうとしていた訳ですが此方はその全てを排除する手段があった」

 

「<呪滅>と<和弓の檸檬武者>だね。どっちも初期手札?」

 

「それぞれの2枚目は途中のドローですね。メガリスとスイカもありましたから、今回は此方の手札が良すぎたのでしょう。そして、順当に殴り合うなら武者は騎士より強い。御旗も収穫祭も引けましたからね」

 

「トークン生成力が劣るって言っても御旗があればあんまり関係ないしねぇ。となるとほぼ最適解が手札に来てたって事かな」

 

「ええ、本来ならもっといい勝負になった筈です。初手の切腹加速で三枚土地が落ちたのも効いたでしょうから」

 

「ビートダウンに盤面操作されるコントロールになっちゃったからね……」

 

「まぁ運が悪かったと思ってください。探していたのは全体除去だと思うんですが、引けましたか?」

 

「引いた途端に土地が全部ふっ飛ばされました。<神々の黄昏>とか相当入手難しいカード……ってのは置いとくけど、なんでビートダウンで積んでるの?」

 

「殴った後のコスト増加対策で試しに。メガリスとスイカで此方はある程度補えますし、除去・妨害を土地がなくて撃てなくするという意味では盤面保護にも繋がります。今回は駄目押しに使いましたがね」

 

「ただ条件が難しいよね……まぁ盤面に戦力整ってるならスイカ&メガリスなくても通用するんだろうけどさ」

 

「ええ、ですのでこれからまた調整していく予定です」

 

 お兄さんの構築は【果実武者】軸のビートダウンだけど、メガリスやラグナロクの存在も踏まえれば長期戦も出来るバランス型なんだと思う。

 

 果実武者ならべて、バーンや効果で除去、何なら自身にバーンでランプしてもいいし、攻勢の準備が整ったらぶん殴り。必要に応じて呪滅でアーティファクト・魔石を破壊、ラグナロクで土地を流して、メガリスとスイカでコスト基盤を支えながら継続的に殴るか、ワンショットで落とし切る構成だ。

 

 幅広く対応できるけど、だからこそ最適な動きが難しい。少なくとも強い動きを押し付ける様なデッキじゃない。相手の動きを上手く透かしながら、勝ち筋通すって意味じゃ僕の理想に近い。そういう風に出来るようもっとプレイングも構築も練らないと。

 

「後、審議の余地あるとしたら<幽体の接触>の発動タイミング?」

 

「二枚目の<収穫祭>に対する<呪滅>に対して打つべきだったか、という事ですね。全体除去を探すという明確な理由があった訳ですが……私ならあそこで撃ちません」

 

「コスト2支払えば無効化できるから大抵のカードは通せちゃうと思ったんだよね。そっちの土地は多かったし。なら今後の展開も見据えて、対応札が引ける可能性のある<収穫祭>を残す為に使った訳だけど」

 

「【野菜騎士】は純構築なら打ち消しはあまり積める類ではありません。君が打ち消しを積めているのもデッキを混成向けにチューンしているからできた事で、私でもそれがある前提で展開は出来ない。妨害・除去はあると判断していても打ち消しまで断定は難しい」

 

「あー……うん」

 

「なのであの場面で使ってしまった事で打ち消しを積んでいるのが把握&コスト0になった時点で次ターンの展開は凡そフリーで行えるのが確定し、その結果があれです。代用コストでの打ち消しはあまり多くありません。最も汎用的と言える<防災>は少なくとも序盤に使えば大幅ロス確定ですし」

 

「打ち消し抱えてたならメガリス辺りを消せて、少なくとも此処まで盤面に並ぶことはなかった。そっちがあんまり打ち消しを警戒してなかったならそうなるもんね」

 

「ええ、勝ちの目を残すというのは大事ですが、目先の脅威を取り除いて常に一定の安全を確保するというのはコントロールにおいて重要です。2枚目の<収穫祭>を残したいという気持ちは分かりますがね」

 

「うん、その通りだ。もっと考えてプレイしなきゃ駄目だね。色々答えてくれてありがとう、お兄さん」

 

「いえ、私も勉強になりました。ありがとうございます」

 

 話していて、分かる。

 この人は僕よりカードと向き合って、努力してきたんだなって。

 

 今までで戦ったファイターの中でも一番強くも感じられた。

 負けてはしまったけど、今のデッキがまだまだなのも僕自身の不出来も理解した。

 

 もっと多くの知識を身に着け、正しい判断を下せるようにならなければならない。

 僕みたいな弱い奴が強くなるにはそれしかない。

 

「次どこで会えるかは分からないけど、その時はリベンジしたいな」

 

「私はこの辺にはあまり来ません、が……もし機会があれば是非」

 

 赤髪のお兄さんの手が差し伸ばされた。

 応える様にその手を握り、彼の蒼瞳を見上げる。

 

「次は勝つよ、赤髪のお兄さん」

 

「来須です。呼び方は任せます。君の名も聞かせてください」

 

「佐藤 ミノル」

 

「ではミノルくん、またその時が来るまでお元気で」

 

 


 

 

 その後、程なくして今日の大会は終わりを迎えた。

 賞品を獲得できなかったのは残念ではあるものの龍崎さん、来須さんといった強豪とぶつかり合って勝利と敗北を重ねられたのは確かな収穫だ。

 

 【植物同盟】の構築もまた練り直し、プレイングやその他諸々も改めなきゃならない。【果実武者】のカードがもっとあれば色々捗るか? でも取り入れるカードはちゃんと考えなくっちゃ不味いね……

 

「どうしたもんかなぁ……って、もう日が落ち始めてるし」 

 

 大会が終わって直ぐから隣町から結構かっ飛ばしてきたが、思ったより暗くなるのが速い。もしかしたら遅くなるかも、とは連絡しているがあんまりにも遅れたら姉さんにどやされてしまう。近道でも使って、ショートカットするかな。

 

「よっ、と……!」

 

 そうして工場街の裏道を自転車でかっ飛ばし始めた。

 視界に入るのは無機質な灰色の工場ばかりで、日夜問わずに稼働し続けいる。この辺は色んな会社が色んな目的で工場乱立させてるもんだから何が何だか分からない。ある意味で無秩序とも思える此処を不気味に思う人も多い。

 

 とはいえ僕の家もこの先にあるから、さっさと通り抜け……

 

「うん、何だ。この音……!?」

 

 ガン、キィン、ガァアン。鈍い金属音と何かがぶつかり合う音、それに足音が複数。工場から発せられた音じゃない。

 

 近寄るべきではないと理性は判断している。

 門限も近いし、音の発生源がギャングの抗争だとか良からぬ事である可能性もある。逃げるのが得策、ってか最善?

 

 だが僕はそうできなかった。決して好奇心じゃない。

 具体的な感情では表せないが、無視は出来なかった。

 

「……二人か」

 

 音の居場所へ、足音を殺しながら近づいて覗き込む。 

 路地裏で二人の人間が向かい合っている。

 

 一人は後ろ姿で分かり辛いが、体格がごつくてデカいから男。片手に装着されたのは形状から察するにバトルボード。腰にあるホルダーには拳銃らしき物がある。

 

 もう一人は遠目で確認した限り、僕と同年代かそれより上の少女。

 ざっくらばんな長い黒髪に淀んだ黒目が特徴的だ。患者衣に酷似した服を纏っている。

 

 状況として巨漢が少女を路地裏の袋小路に追い詰めながら、バトルボードを構えている。ファイトを仕掛けようとしているのか?

 

「鬼ごっこは終わりだ、化物。チャカが効かねぇテメェでもコイツなら問答無用だ!」

 

 男が薄ら笑いを浮かべ、一枚のカードを取り出した?

 酷く、嫌な雰囲気のカードだった。ドブ沼で浸からせた、異臭を放つ危険物。

 カードを掲げた影響か、周囲の空気が歪んでいくような感触。

 それを見ているだけで悪感と動悸が――――

 

「闇のファイトで死「ふんッ!」

 

 そう、思った時点で僕は駆けていた。

 近くにあった鉄パイプを拾い、カードを持つ手に狙い定めて振り下ろしていた。

 

「ぁ゛あぁ゛ッ!? なんだ、てめぇ!?」

 

 殴打は命中。カードは叩き落として、嫌な空気も払拭できた。

 後は……いや、此処から本当にどうしようか。流石に衝動的に動きすぎた。

 

 目の前の男の人、滅茶苦茶切れながらぶん殴ろうとして来てるし。バレない様に無茶な態勢からパイプぶん回したもんだから避けられそうもないし。ごついメリケンサックもつけてて、ゴリラみたいな顔と体格してるもんだからワンパンで骨まで逝きそう。

 

 とはいえ、女の子は逃げられそうかな? ならそう悪くないか

 

「良いスイングだったわ」

 

「えっ」

 

 刹那、遠くにいた筈の女の子が男の腹を蹴り飛ばした。壁に男の身体が叩き付けられ、ぐちゃりと何かが砕ける音が響く。男は声も発せぬまま口から泡を吹いていた。

 

「うわ、えぐっ……生きてる、これ?」

 

「さぁ? でも、もう時間ないかもね」

 

「……良くない足音は聞こえるなぁ」

 

 路地裏の外より複数。そう、遠くはない。此処は袋小路だから入り口を塞がれたら打つ手なしだ。さっさと退散するのが吉だろう。

 

「この辺りは迷路みたいになってる。安全を確保するなら大通りに出るべきだね」

 

「ふぅん……じゃ、道案内宜しく。強行突破するわ」

 

「うん?」

 

 僕の身体が浮く……というか、女の子に御姫様抱っこされる。

 同時に女の子が路地の外へ駆け、その先に複数の人影と銃口が垣間見えた。

 

「ちょっ!?」

 

「舌、噛まない様に」

 

BANG!BANG!BANG!BANG!BANG!

 

 先端に付随した消音器(サイレンサー)が音を殺し、僕達に一切の容赦もなく幾多もの銃弾が迫る。それを越える様に女の子が跳び、追手の一人を踏み台にさらに宙へ。

 

「この先は?」

 

「右! 10M先を左!」

 

BANG!BANG!BANG!BANG!

 

 背後から押し寄せる銃弾を女の子は壁を蹴って、縦横無尽に動きながら避けていた。

 それでも捌き切れない弾丸が僕の頬を掠めて、ヒュッと心臓が縮み上がる。後一歩ズレてたら頭イってたよ……!

 

「暫く直進して、右行けば勝ち! 大通り!」

 

「オーケー」

 

BANG!BANG!BANG!

 

 乱射は止まらず、しかし数は減っている。

 百数十m先に確かな灯りも、往来する通行人も見えた。女の子も……明らかに弾丸が命中していながら、何食わぬ顔している。それを追求する余裕は今ないけれど。

 

「よし! ついた!」

 

 そして、危機的な状況は呆気なく終わりを迎えて僕達は大通りへと着地する。

 あれだけ執拗に迫って来た弾丸と追手は闇の中へ消えて、姿形も最早見えない。

 

「完全に撒けた、訳じゃないけど此処で手出しは流石にしないか」

 

「此処で銃ブッパしたらマジの重犯罪者かテロリストだからねぇ……取り敢えず降ろしてくれる?」

 

「ああ、はいはい」

 

 緊急時だから許容したけどお姫様抱っこがデフォルトになるのは男として嫌だ。

 まぁもう? 通行人にすげー不審な視線向けられたから手遅れっちゃ手遅れだけど?

 

「んじゃ、どうする? 交番にでも駆け込む?」

 

「コウバン……警察ね? 今は彼らには頼りたくないわ」

 

「警察も頼れない程って事? 訳アリなのは知ってるけどさ……」

 

「ごめんなさい」

 

「君が謝る必要はないよ」

 

 今時、この日本で銃火器持った連中に追い掛け回されてるってだけでとんでもない厄ネタなのは世間知らずの僕でも理解できる。其処に銃弾を明らかに弾いてたり? 異常な身体能力だったり? あのゴリラ男が化物って言ってたのも含めて気になる事は山ほどある。

 

「行く宛がないなら取り敢えず家に来る?」

 

「……助けて貰ったのは感謝してる。だけど、其処までして貰う理由があたしにはない。あたしを助けた所からも含めてだけどね。ねぇ、どうしてあんな事したの?」

 

「なんか衝動的に動いちゃっただけ……」

 

「馬鹿ね」

 

「それに、此処から放置しても後味悪いし……」

 

 心なしか、女の子の視線が冷たい。

 なんだろう、一応助けたのだからもっと暖かい対応があっていい筈なんだけどな。

 行き当たりばったり過ぎるのが悪いって? 仰る通りで何も言えないネ……。

 

「それはそれとして、行って良いなら付いていくわ。困ってるのは本当だし。細かい話も此処よりは其処でするべきでしょう」

 

「やっべ、姉さんへの言い訳考えてないや」

 

「待って、他の人いるの?」

 

「じ、自転車も置いて行っちゃった……回収も出来ないだろうし、確実に怒られる!!!」

 

「はぁぁ~……言い訳は一緒に考えてあげるわ」

 

 すっかり真っ暗に染まった空を見上げながら、僕達は帰路に着いた。

 此処から先をどうするんだ、と仲良く頭を抱えながら。

 


 

朱備えの苺武者(サムライストロベリー)

コスト6/クリーチャー/2/6

【速攻】【威迫】

自ターン中、全ての植物・クリーチャーのパワーに+1する。

攻撃時、1/1の果実(野菜)トークンをステイ状態&攻撃状態で2体生成する。

自ターンの終了ステップ時にそれらのトークンは生贄に捧げられる。

――――――――――――――――――――

傾注! 朱染めたる武者達よ!

一点を貫くが如く、突撃を開始する! 我に続け!

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