Dendrogram Record   作:貴司崎

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リザルト/帰還

 □<トーラス廃鉱山>最深部

 

「……ぬおおおおおおお!!! アダマンタイト鉱石が取り放題じゃい!」

「他にも希少鉱石が沢山あるぞ!宝石の原石も!」

「これで新しい武器も作れる!」

「よし全員《採掘》スキル持ちツルハシは持ったな。行くぞぉ!」

「「「「「おー!」」」」」

 

 つい先程まで竜王との激戦が繰り広げられていた廃鉱山の最深部だったが、今はツルハシとヘルメット装備でやたらハイテンションな<プロデュース・ビルド>メンバーによる希少鉱石採掘祭りが開かれていた。

 鉱山を占拠していた【メタル・モール・ドラゴン】の群れは彼等と鉱山のエレメンタル達によって多くが討伐され、残りも【ドラグディグ】が倒された事を知って逃げ出したので廃鉱山をめぐる争いは終結している。

 

「面倒なクエストだったが報酬の採掘し放題は美味しいぜ」

「一番大変だったのはダヴィーデとドラキル達だと思うがな」

「鉱山内のドラゴン達の相手はエレメンタル達が多く請け負ってましたからね」

「戦闘型のアルテミシアかエルザぐらいだろ他に活躍したの」

「俺らも少しは戦力になったから……多分」

「クエストは達成出来たんだからそれでヨシ!」

 

 それはつまりエレメンタル達から受注した【掘竜王 ドラグディグ】の討伐、及び<トーラス廃鉱山>から【メタル・モール・ドラゴン】の群れを排除するクエストを達成したという事なので、生産ギルドの彼等としては本番である報酬の採掘作業が許可されたのだ。

 彼等は基本的にゲーマーなので何だかんだ言っても大変なクエストをクリアした達成感、そして高品質鉱石の採掘し放題というクエスト報酬の豪華さに盛り上がりを見せている訳である。

 

「ゴリゴリ採掘しているがエレメンタル達の反応は大丈夫なのか? アイテムボックス3箱分ぐらいは取っても問題ないとは聞いているが」

「私達はエレメンタルと会話出来ないもんね。翻訳人形はあるけど」

「まあ大丈夫じゃろう、この人数で採掘出来る程度の量で周囲の地脈に影響が出る事はそうないじゃろうし」

 

 最も自然ダンジョンそのものに影響を与えない様にエレメンタル達が見張っているし、クランオーナーとして採掘を指揮しているエドワードとその手伝いをしているエルザは気にして通訳が出来るネリルに確認を取っていたりもしているが。

 エレメンタル達としても自分達に敵対した上で棲家を過剰に荒らしたからドラゴン達と敵対したのであって、今は棲家の奪還を手伝った報酬である事と上位のエレメンタルであるネリルが監督している事から納得している。

 

「【ドラグディグ】に流砂にされた地面も直したし、ついでに地脈の簡単な調整も済ませたからエレメンタル達は喜んでおるしの。ワシが指定した希少金属が出る範囲内で採掘しているなら文句もなかろうよ。……やはりワシ今回ちょっと働き過ぎじゃないかのう」

「鉱山という環境でお前が便利すぎるのが悪いモグ」

 

 まあ、元は以前の自分(グランワーム)が作った自然ダンジョンだから仕方ないとは思いつつも酷使されてる事には少し文句があるネリルだったが、ジト目を向けてくる彼女に対して灰色のモグラ型着ぐるみを着たレントはスルーの構え。

 ちなみにこの着ぐるみは【ドラグディグ】を倒した時に得られた伝説級特典武具【はいぱーきぐるみしりーず どらぐでぃぐ】であるのだが、何故かいきなり着ぐるみを着て語尾を変え始めたレントに他の者は胡乱な視線を向けている。

 

「あーレント、何で着ぐるみを着ているんだ? いやそれが特典武具だってのは聞いたが。それと語尾」

「装備スキルに採掘で役に立ちそうなものがあったから着てみただけモグ。使い所は限られるけど有用そうだから試運転も必要だったしなモグ。それと語尾は着ぐるみを着た王国<マスター>は語尾を付けるローカルルールがあるからモグ。以前会った着ぐるみ【破壊者(デストロイヤー)】がやってたモグ」

 

 尚、着ぐるみ着た<マスター>に会った事があるのは本当でもローカルルール云々は適当言ってるだけであるのだが、余りにも自然に言うのでエドワードも一瞬信じそうになった。

 まあ《真偽判定》が反応するので直ぐに冗談だと分かったし、よくよく考えると変な格好の<マスター>とか珍しくも何ともないので次第に生産職として特典武具の性能の方に興味が移っていた。

 

「着ぐるみの特典武具とか初めて見るね。装備枠アクセサリー以外全部潰すから着ぐるみなんて基本的にネタ装備枠だし」

「と言うか倒したのは竜王なのにモグラ型の着ぐるみなの?」

「いやよく見たら頭部とか尻尾とかにドラゴンっぽい衣装があるぞ」

「でも九割以上はモグラだよね、語尾もモグだし?

 」装備防御力が+1065(ドラゴン)ってなってるから一応ドラゴンモチーフだと思うモグ。ただ装備スキルが《もぐもぐセンサー》《もぐもぐハンド》だから大分モグラ要素も強いモグ。後語尾に関してはこっちのが語呂がいいからだモグ」

 

 特にエルザを始めとする布系装備生産担当のメンバーは余り金属素材が必要でない事もあり、採掘もほどほどにして興味深い視線で特典武具着ぐるみを見ながらレントに質問して実は割とノリが良い彼も普通に答えていた。

 

「レントって割と面白い人だったんだね、ノリが良いっていうか」

「それよりもヤケにファンシーなスキル名称が気になる。どういう装備スキルなんだ?」

「《もぐもぐセンサー》は地中で装備者が使う探知系スキルの効果を合計レベルの十分の一の数値%だけ強化するパッシブ、《もぐもぐハンド》は自由に物を掴める上に土石を掘り進める行動に補正が付く腕部だなモグ」

 

 この【どらくでぃぐ】はネタ装備にしか思えない見た目やスキル名をしているが、実際には土石の掘削・土中での移動・土中での生存を可能にする複合パッシブスキル《土中行動》を中心に地中で活動する事に特化した装備スキルを複数有する“地中行動用の特殊作業服”と言える伝説級特典武具なのだ。

 上述の他にも土中にいる時限定の暗視能力《もぐもぐアイ》、物理攻撃による被ダメージを−696(モグラ)する《もぐもぐスキン》、 MPを消費して手で触れた鉱物の強度を合計レベルの10倍の数値まで減少させる《もぐもぐクロー》と言ったスキルもある。

 

「普段使い出来る装備ではないが地中に潜る必要がある時には便利な装備だモグ。今回みたいな採掘作業にも使えそうだしなモグ」

「見た目と違って割と有用そうな装備で草」

「着ぐるみって複数装備枠を使う分だけ装備スキルモリモリに出来るのかね」

「装備枠を使う程に性能を盛れるのは知ってたけど、それなら作ってみる価値はあるかも?」

「でもやっぱりモグラ要素多くない? 伝説級竜王の特典武具なのに」

 

 生産職達に【どらぐでぃぐ】に対する感想は総じて『状況を選べば使えはするネタ装備』と言った感じであり、特典武具を取ったレントを羨ましがっていた者達も出たのがネタアイテムだと知ってユニークなアイテムが強いとは限らないんだなぁと思い直していた。

 最もレント本人は着ぐるみである事とか外見に関しては兎も角、確かに今現在“地中に生息する神話級<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>の捜索”を行なっている自分に必要な性能としてアジャストされていると思っていたが。

 

「ふむ、どうも地下深くにより高純度のアダマンタイト鉱床がありそうじゃな。他にも色々と希少金属があるそうじゃから採掘しに行くぞい」

「……いいだろう、この特典武具の試験運用もしたかったしなモグ。じゃあちょっと地下に潜って“作業”して来るモグー」

 

 魔法で地中を探っていたネリルはそう言ったが実際には採掘ではなくこの廃鉱山に来た本来の目的である神話級<UBM>【大地蟲 グランワーム】の捜索が目的であり、それに気付いているレントも《真偽判定》が反応しない程度の誤魔化しをしながら地中を掘り始めたのだった。

 

 

 ◇

 

 

「モグモグモグモグー……流石に伝説級特典武具だけあって高性能だなモグ。穴掘り初心者の俺でも楽に地中を掘り進めるモグ」

 

 土中行動に特化した伝説級特典武具はその力を遺憾なく発揮して容易く硬い鉱石が多分に含まれる鉱山の地面を掘り進め、更にネリルの地属性魔法の支援もあってレントは凄まじい速度で地中へと潜行していく。

 

「装備スキルによる補正のお陰ですいすい進めるモグ。硬い地面は適時《もぐもぐクロー》を使うとして、暗視があるとはいえ土が邪魔で視界は大して効かないモグね」

「気配を読む様なスキルは土石に阻まれるモノが多いから地属性の探知系魔法を上手く使え。後は振動探知や生命反応を直接探る手段が有れば楽だがの」

 

 とは言え、彼としてもリアルやデンドロ内で地中を掘り進んで移動する経験はこれまでなかったので掘削による移動には手間取り、周りが全て地面なので視界不良や自分の位置情報の把握は困難だったがそこは同行したネリルがフォローする。

 元が地中に生息する神話級<UBM>が作り上げた異質な“精霊にしてエレメンタル”である彼女は当然地中での行動方法も熟知しており、そのアドバイスは的確でありレントは本人のセンスもあって短時間である程度の地中行動技術を身に付けた。

 

「どうにか動ける様にはなったが戦闘するにはもっと訓練が必要だモグ。地属性魔法の上手い使い方も習熟しないといかんかモグ」

「まあその辺りはワシがフォローするわい。とりあえず本来の目的を果たそうぞ、その特典武具のスキルからしてワシとの連携が前提で能力が設定されておる様じゃしな」

「クールタイムも終わってるから大丈夫だ。《ポゼッション・アドベント》」

 

 今彼が行使したこの【降霊術師(インヴォーカー)】の奥義たる精霊憑依スキルによって合体している状態だとレントが装備している装備品の効果をネリルも受けられる、つまり【どらぐでぃぐ】の《もぐもぐセンサー》による合計レベル基準の探知スキル効果がネリルの探知魔法にも乗るのだ。

 そして合計レベル3000オーバーのレントが装備した場合《もぐもぐセンサー》の強化倍率は300%以上、つまりネリルが有する大陸でも最高峰の探知魔法スキルの効果が4倍以上に跳ね上がる。

 

「……ふむふむ、まあ予想通りではあるがこの鉱山の地下から【グランワーム】は既に移動しておる様じゃな。影も形も見当たらん」

「何か痕跡とかはないのか?」

「とりあえずもう少し地下深くまで潜ってくれ。ついでに上手い潜り方も教えてやるわい」

 

 そう言われて更に地中深くまで掘り進めていくレント、伝説級特典武具のスキルたる《土中行動》はどれだけ地中深くであっても着ぐるみ内部の彼には呼吸などの生命維持に関する異常は起きず、硬い鉱石も《もぐもぐハンド》と《もぐもぐクロー》の恩恵で容易く掘削する。

 並行してネリルが地属性魔法を使って周囲の鉱物の操作する事で地中掘削の補助を行いつつ、ついでに一体化している事を利用して地中での魔法行使を憑依中の身体を使って文字通り“身を持って”レントに教え込みもしていた。

 

「それで、何か【グランワーム】についての痕跡などは見つかったか?」

『嘗てのワシである【グランワーム】は土壌を改善する【ミネラルワーム】の頂点、故に地中にいる間にも周囲の土壌を改善して自然魔力を整えるのが日課になっておる。じゃから周囲の土壌や地脈の状態からどれぐらい前に【グランワーム】が此処にいたかを逆算するぐらいは出来る』

 

 元より彼女にとって土壌の改造は二千年以上繰り返し続けた作業、故に土壌や鉱石や地脈の状況からその土地がいつ何処をどうやって改造されたかを割り出す程度の事は容易く、エレメンタルとなった今でも特典武具の力があれば十分程度で周囲の調査を終了させられる。

 

『……ふぅむ、恐らく【グランワーム】がこの場にいたのは約8ヶ月から10ヶ月前、大体ワシと【グランワーム】のリンクが切れた時期と一致する。恐らく何かに襲われた後に何処かへと行ったんじゃろう』

「倒されて消滅したのではなく?」

『それなら地中で内包していたい膨大なリソースが解放されるはずじゃ。モンスターが倒された時には内包していたリソースが解放され、獲得する経験値以外のは自然魔力として還元される理じゃからな。もし倒されたなら大量のリソースが自然魔力として周囲の土地に注ぎ込まれた痕跡が見つかる筈』

 

 だがこの場所にその痕跡がない以上は【グランワーム】が倒されていない可能性が高いとネリルは判断、つまり事前に想定していた“何か”によって侵食されて肉体を乗っ取られたという仮説が補強されたのだ。

 

『特に大規模魔法が使われた痕跡はないから切り札である蓄積魔力は使わなかった……使えなかったのかのう。確証はまだじゃが神話級が抵抗出来ずに乗っ取られた可能性が高いか』

「その『乗っ取った何か』に関する痕跡や【グランワーム】が何処かに行ったかの痕跡はないのか?」

『その“何か”についての痕跡は不自然なぐらい何もないのう。……寄生であれ憑依であれ他者の内部に入り込んで乗っ取るのは相応に面倒な条件や制限が付き纏う筈なんじゃが、そもそも何かが肉体に入り込んで【グランワーム】が気付かない時点で異常じゃな』

 

 初めは金属を捕食する【ハイ・メタル・ドラグワーム】を倒した時に同じ鉱石食である【グランワーム】が乗っ取られた以上、鉱石を媒体にする寄生か憑依かとも考えていたがそれらしき痕跡は見つからなかった。

 それ以前に仮にも【グランワーム】は神話級、しかも二千年以上生きて来た最高位の土壌改良能力と経験を持つ<UBM>なので鉱石や土石の異常やそれらを媒体の寄生や憑依や呪縛などには確実に対処出来る筈であるとネリルは言う。

 

『最後の記録や“カン”を踏まえると物理的な寄生や魔法的な手段とは別の、特異極まりない手段で【グランワーム】の体内に潜入して肉体を乗っ取ったと見るべきかの。手段に関する仮説は幾つか思い付くが確証は得られん』

「それじゃあ乗っ取られた【グランワーム】がどこに居るかは分かるか?」

『少々時間が経ち過ぎたから痕跡は薄れているが、残留した魔力や土壌の状態から恐らく西、王国の方向に進んだっぽいの』

 

 とは言え地中を密かに移動するのは二千年以上アバターによる遊びを行っていた【グランワーム】にとって得意とする事であり、移動した方角は分かっても途中で痕跡は途切れていたので詳細な位置は分からなかったが。

 

『うーむ、これ以上は調べても分からんか。今後は王国近辺で怪しい場所の地下を調べていく事になりそうじゃな』

「調べる範囲が広過ぎて気が遠くなるな。個人で調べる様なものじゃないだろ」

『所詮ワシの個人的なやり残しじゃから仕方あるまい。……それに神話級<UBM>が操られるという『イレギュラー』なのじゃから、これから何も起きないと言う事はなかろうて』

 

 つまり最悪だと何か異常事態が起きてから対処せざるを得ないという事であり、それまでは地道に調査するしかないと言う結論だと理解してレントはこのクエストは長引きそうだと溜息を吐いた。

 

『さて、此処での調査は終わったからの。高純度アダマンタイト及びその他諸々の採掘に移るぞい。クルエランの躯体の強化もしたかったからのう』

「俺も壊れた【ブラックオーダー】の代わりの武具を<プロデュース・ビルド>に頼みたいしな。原材料として高品質の素材は欲しい」

 

 そんな訳で調査を終えた彼等はそのまま高純度アダマンタイト鉱床がある場所へと到着、消耗が激しい融合スキルは解除してから特典武具と地属性魔法を使った鉱石採掘に取り掛かるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「……そういう訳で地下深くから採掘して来た高純度アダマンタイト鉱石がコチラになるモグ。他にも色々と希少鉱石を採掘して来たモグ」

「地脈や自然魔力に影響が出ない範囲じゃから大した量ではないがな。合わせて個人用アイテムボックス一個分ぐらいかの」

「「「「「おおー!」」」」」

 

 自分達が採掘した物よりも純度が高いアダマンタイト鉱石を持ったレント(モグラ)、及びそこそこ性能が高いアイテムボックスを手に持ったネリルを見て歓声を上げる<プロデュース・ビルド>の面々。

 勿論【グランワーム】に関する事は今は面倒になるので吹聴する必要はないとして意図的に話さず、地下に潜ったもう一つの目的である鉱石採掘の成果をアピールしてそちら側を隠すやり方だが。

 

「ところでそれを売って貰えたりとかは……」

「相応の代金を支払えば別に良いぞ。それと今の戦いでメインウェポンがロストしたから、新しいヤツを作ってくれるなら代金代わりに譲ってもいい」

「ふむ……ロストしたのは合計レベル基準で装備攻撃力を上げる呪いの剣ね。音闇」

「はぁい」

 

 エドワードが呼んだのは<プロデュース・ビルド>における呪いの装備生産を担当している女性【高位呪術師(ハイ・ソーサラー)】の音闇、自らが作った呪われた装備品を身に付けた彼女は呪いの装備を始めとするデメリット付きの装備品の生産を得意としている<マスター>だ。

 

「ふふふ、イイ呪いの武器だねぇ、柄しか残ってないのが残念だけど。ペロペロ」

「……舐めてもらう為に渡した訳じゃないんだがモグ」

「ふヒヒ、こうすると呪い武器の能力が分かるスキルが……」

「《真偽判定》」

 

 レントから受け取った柄だけ残った【ブラック・オーダー】の残骸を手に取る音闇は色々な角度から眺めたり、更には何故か舐めたりして彼から突っ込まれたが、その中でもちゃんと《鑑定眼》及び呪いの解析スキルなどを使って調べてはいる。

 

「それと同じ効果の武器の新造を頼みたいモグ」

「【ブラック・オーダー】って武器自体のレシピはないけど、その辺りはドワガールとマキアに頼めばいけそうかな。この残骸も呪いだけを新しい武器に移すジョブスキルもあるから素材としては使えそう」

「久しぶりにクラン総出での武器作成になるかね。今回のクエスト報酬は旨かったから、エレメンタルとの交渉と斡旋の御礼も兼ねて」

 

 それからの交渉の結果として幾らかの高純度鉱石を報酬、及び持ち込み素材とする事でレントは新しいメインウェポンの新造を<プロデュース・ビルド>に依頼すると言う形で話はついた。

 

「それとエレメンタル達に今後も此処で採掘出来るか聞いてくれないか? 正直言って採掘ポイントとして美味し過ぎて定期的に来たい」

「めっちゃ図々しいお願いだねぇオーナー」

「いや俺もそう思うんだが、何か対価を支払ってでもいいから利用したい場所ではあるからダメ元でも聞きたいんだよ」

「ふむ……ネリル」

「はいはい……かくかくじかじか」

『まるまるうまうま〜』

 

 そんなエドワードの要望に対してレントから頼まれたネリルが廃鉱山のエレメンタルの代表に対して交渉を始め、暫くすると『この鉱山は自然魔力の影響でレアメタルが定期的に生えるから、半年に一度くらいのペースで今回の三分の一ぐらいの量までなら構わない』と言う交渉を取り付けてみせた。

 ただし、その際の供物として何かエレメンタルでも使えて暇つぶしになりそうな魔力が籠った希少金属による装具を要求されたが、その程度であれば<プロデュース・ビルド>であれば要望の品物さえ分かれば作れなくはない。

 

「半年に一度か……まあ再び利用出来る様になるだけでも十分過ぎるから、これ以上文句を言うとバチが当たるな」

「ところで供物にする装具ってどんな物がいいの? 大抵の物は作れる自信はあるけど」

「魔力が籠った遊び道具、ゴーレムとかの人形辺りで良いと思うぞ。此処のエレメンタルは情動自体は幼いし、自分達に捧げられた供物であるなら満足するじゃろ」

 

 そもそもエレメンタル自体に物欲などは薄く廃鉱山の彼等も基本は環境調整をしながら地脈からの自然魔力をエネルギー源にして普段は過ごしており、生存するだけであれば特に何かする必要が実はない。

 ただ彼等を生み出したのが凝り性で暇つぶしに人生ならぬ蟲生を掛けてきた【グランワーム】だからなのか防衛用のゴーレムなどを暇つぶしに作って遊ぶ事も多く、試しにエドワードがその場で作ったオモチャみたいなゴーレムを渡したら楽しそうに遊んで満足していた。

 

「この交渉の結果含めて武器代に含めてくれ。交渉したのはネリルだが」

「ソレだとこっちが貰いすぎだな。今回の依頼も素材は持ち込みで元となる武器の残骸もあるからそこまで新造に掛かるコストも高く付かないし」

「それなら代金の鉱石の量を減らすが」

「いや高純度の鉱石は欲しい(強欲)……そうだな、他に何か欲しい武器とか装備はないか? 可能な限り融通するぞ」

 

 そんなエドワードの提案に少し考え込むレントだったが防具はまだ使えるし、ゴーレムに関してはネリルに一任しているから必要ないので予備の武器かアクセサリー辺りを幾つか頼むかと思い付く。

 

「とりあえず合計レベル基準のステータスアップ系スキルが使えるアクセサリー、後武器は最近馬上戦闘が増えたから馬上槍や弓とかが有れば貰えるか? 普段使いではなく必要な時に使う装備が欲しかったし」

「分かった、そのぐらいなら幾らでも作れるし在庫も幾つかあった筈だ」

 

 騎士系統ジョブスキルを使う為に剣をメインウェポンにしていたレントではあるが、リアルでの経験からそこそこ器用なのでやろうと思えばジョブによるサポートなしでも色々な武器が使えたりする。

 流石にリアルの現代では経験のない乗馬中の戦闘で使うなら訓練も必要だろうが、それこそ騎士系統や乗馬師系統のジョブスキルで補正すれば多少の調整で十分使い物になるだろうと彼は考えていた。

 

「さて地上に戻ったら早速生産に取り掛からないとな。……その為にも全力で質の高い鉱石を採掘するんだ!」

「アイテムボックス一杯と言う量の制限があるなら中身の質を上げれば良いって事ね」

「ところでレントさんや、ちょっと地下にある高品質の鉱石を採掘して来てはくれませんかね。勿論お礼はしますぜゲヘヘ」

「……まあ、そのぐらいなら別に良いけどな」

 

 そうしてレントはコイツら人使い荒いなと思いつつ、追加報酬として更に幾つか装備品を発注した上で再び地面に潜って鉱石の採掘を行うのだった。

 ちなみに持っていく鉱石は高品質な物を厳選したという事はそうでない鉱石も多数採掘したという事であり、その結果てして鉱山を荒らされたエレメンタル達が文句を言ったりもしたが、そこはネリルが鉱石を元に戻して鉱山内を整えた事でどうにかなった。

 

「……流石にこっちの都合だけでやり過ぎたな。俺のゴーレム幾つか渡せば機嫌直してくれるか?」

「それよりもお前達ワシに何か言う事はないか?」

「「「「「……本当にご苦労様です」」」」」」

 

 尚、エレメンタル達はエドワードから譲られたゴーレムが変わった金属で出来ていると興味を惹かれて機嫌を直し、ネリルに関しては王国へと帰った後にレントが高級スイーツを好きなだけ奢る(お金は<プロデュース・ビルド>と割り勘)という事で話はついたそうな。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □アルター王国南部・<ニッサ辺境伯領>

 

「……いやー、久しぶりの王国だね。リアルだと一ヶ月程度離れていただけなのに随分と懐かしい気もするよ」

「レジェンダリアにいる間は中々濃い日々を味わっていましたからね」

「主に魔法少女とかロリショタとかだね。マスター達はモロに守備範囲内で大人気だったから」

 

 レントが鉱山でモグモグ言いながら採掘しているのと同じ時刻、アルター王国最南部のレジェンダリアとの国境に位置する<ニッサ辺境伯領>に3人の少女が訪れていた。

 その内訳は小中学生ぐらいの少女が2名と高校生ぐらいに見える少女が1人と言った形で、彼女達の左手にある紋章から<マスター>である事が伺えた。

 

「まあ格好とか行動はともかく彼等はLSさんを始めとしてこっちに害意とかはないし、むしろ色々と手助けしてくれた良い人達だったけどね」

「悪意がなくて他者に迷惑を掛けないのであれば性癖がどうあれ大して気にする事もないと思いますよ」

「いや君ら程に割り切っていける人は少数派だと思うよ。僕とか『生まれてから1年未満のメイデンであれば守備範囲内ですな』とか言われたんだけど」

 

 ただしその内の1人である高校生ぐらいの少女は《紋章偽装》によって<マスター>に扮したTYPE:メイデンの<エンブリオ>であり、自らのマスターである茶髪セミロングの少女にげんなりした視線を向けていた。

 

「そう言われただけで特に何かセクハラされた訳ではないので良いのでは? ねえ姉様?」

「まあレジェンダリアの空気は合う合わないは激しそうだからねぇ。……あそこ結構ティアン側がかなりキナくさいというか面倒な感じがしたし」

 

 自分の<エンブリオ>を適当に宥めていた少女から“姉様”と呼ばれた白髪ロングヘアーの少女は苦笑しつつも、少し考え込む様な雰囲気でレジェンダリアがある方角の虚空を見ながら呟いた。

 

「……とにかく、まずはさっさとお兄ちゃんと合流しようか。確か今は王都にいるとか言ってたっけ?」

「はい、兄様はあっち(リアル)でそう言ってました。何故か先に王国に帰っちゃったのでこっち(デンドロ)で会うのは久しぶりですね」

「うん、レントは君らが言う『レジェンダリアの空気に合わなかった人』だからね」

 

 そうして彼女達──戦士系統戦鬼派生超級職【戦姫(バトル・プリンセス)】ミカ・ウィステリア、付与術師系統強化術師派生超級職【超強化術師(オーヴァー・ブースター)】ミュウ・ウィステリアとその<エンブリオ>【模倣転姐 ミメーシス】は王都へと向けて足を進める。

 そのアバター名が示す通り彼女達はレントの妹達であり、今現在の<Infinite Dendrogram>の世界では数少ない準<超級>と呼ばれる<マスター>が王国へと戻って来たのだった。




あとがき・各種設定解説

【はいぱーきぐるみしりーず どらぐでぃぐ】:伝説級特典武具
・ネタっぽい着ぐるみだが実際には【グランワーム】の捜索を行なっているレントとネリルの能力に合わせてアジャストされた特典武具であり、高い性能を持つ地中行動用作業服。
・見た目はファンシーなドラゴン要素のあるモグラ着ぐるみだが元が高いENDを持つ【ドラグディグ】だったので強度は高く、物理ダメージ軽減もあって防御面では結構優秀な装備。
・ただし着ぐるみ故に普段装備している合計レベル基準のステータス強化装備一式を外す必要があり、ステータスへの補正がアクセサリーである【ヴァルシオン】のみになるので装備中はレント自身のステータスは実質半減する。
・なので戦闘に使う事はまずない土中作業用の装備品であり、全身装備枠を使う着ぐるみになったのは使い分け前提でアジャストされたからという理由もある。

<プロデュース・ビルド>:報酬美味すぎヒャッハー!
・たっぷりとアダマンタイト鉱石含めた希少金属を手に入れて定期的な採掘可能ダンジョンまでゲットしたので、今回の一件の為の準備費を差し引いても収支は大幅にプラス。
・帰還した後はレントからの発注された武器生産をクラン総出で行いつつ、アダマンタイト鉱石を直接卸したりそれで武器を作って売り出しながら資金を貯めてギデオンの新拠点を購入を購入する予定で動く。

妹達:帰還
・彼女達のメインジョブである超級職は現在だとロストしていたが、過去2000年の活動帰還を持つネリルが転職条件を知っていたので教えてもらって条件を満たして就いたモノ。


読了ありがとうございました。
妹達も前の作品とはジョブや<エンブリオ>が結構変更されています、本人達の能力とか特性などの基本的な設定部分は変わっていません。
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総合評価:20981/評価:8.89/連載:59話/更新日時:2026年05月27日(水) 00:00 小説情報

ハスターなオリ主とジョジョ3部(作者:ラムセス_)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

旧支配者ハスターになった転生者が、ジョジョ3部世界をクルセイダーズ入りして人間のふりしながら頑張って抜け出そうとする話。▼拙作「ハスターなオリ主と米花町」のスピンオフ。▼なるべく本編を読まなくても読めるようにするつもり。▼本編「ハスターなオリ主と米花町」▼https://syosetu.org/novel/384972/


総合評価:11658/評価:8.69/完結:39話/更新日時:2026年03月27日(金) 10:22 小説情報


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