使い捨て上等強化人間兵士は生き延びれるのか? 作:⚫︎物干竿⚫︎
金田が鉛玉を浴びせ俺が短刀でワダツミを斬り付けるが、ワダツミ側は堪えた様子は無い。執拗に左側に回り込まれるのを鬱陶しそうにはしているが俺達よりも森野の方が奴にとっての優先度が高いのは変わらない。
あえて金田がワダツミの右側に回り込んで距離を詰める。それに対してワダツミが爪を振るう。それをギリギリで引き付けて、
「森野ォ!」
金田が吠えるが、今森野が狙撃重砲に装填された炸裂榴弾を撃ち込めば間違いなく金田も爆発に巻き込まれる。装甲が万全ならまだしも今の金田は左腕がもがれた分剥き出しになっている部分があるからどうなるかわかった物じゃない。が、
「先に逝って待ってなよ。どうせ、僕と枢木もすぐにそっち逝くだろうからね」
言って、森野が狙撃重砲を撃つ。吐き出された炸裂榴弾が狙いを外す事は無くワダツミの胴体に命中し、金田ごと爆炎が包み込む。
「さてさて、効きのほどはどんなもんかな?」
「アレで装甲が剥げてれば御の字だな」
言い合った瞬間、煙の向こうからワダツミが飛び出して来た。森野の当てが当たったようで左胸部の一部装甲が脱落していて、その下の生物と機械が混ざったような皮下構造が露出している。
「損害甚大………対象危険度低?サレド当機ノ破壊可能?対象測定ヲ中断。機体保護ヲ優先」
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと海の底に帰りやがれ!鉄屑野郎!」
吠えながら突進して、露出した皮下構造目掛けて短刀を突き立てる。流石に皮下構造は大した防御力も無いようで面白いように深く短刀が突き刺さる。そして、そのまま左の脇下に向けて一気に切り裂く。
「オマケも持っていきなよ!」
体液が噴き出す左胸部目掛けて森野の追撃の鉛玉がぶち込まれる。ワダツミの体が大きくよろめくが、地面に居るかのように海上で踏ん張ってワダツミが堪える。
「緊急コマンド実行、出力制限解除、リアクターオーバードライブ」
そう言ったワダツミの左胸部から更に大量の体液が噴き出し、頭部のエラのように見える部分から赤熱化した放熱版のような物が飛び出し、更に全身に淡い緑色の光のラインが走り、瞳の色が赤からオレンジに変わる。
「なんか強化された臭いね」
「そうだな。でも、やる事は変わらない。狙うのはあの左胸一択」
短くそう言い合い俺は前に出る。それに反応するようにワダツミが動く。文字通り動作を早送りしたような速さでステップを踏むように俺の突進を回避すると右腕を振り下ろして来る。あ、これ死んだわ。
「ドコ行ってンダヨお前ぇぇぇえええッ!!!」
まだ生きていたらしい金田がボロボロになった機動甲冑から部品を落としながらワダツミに特攻を仕掛けて左胸部に機動甲冑の鋭く尖ったマニピュレーターで手刀をぶち込む。そのまま肘あたりまで腕を捩じ込むと、
「先逝ってるゼ!オ前らァ!」
言った金田の体が文字通り爆弾として吹っ飛ぶ。俺も爆風で吹っ飛ばされてなんとか転倒しないように堪えて海上に着水する。
「マジかよ」
「流石に冗談キツいよコレ」
超至近距離で実質的に内部で霊脈炉を吹っ飛ばしたようなもんなのにワダツミは未だに生きている。
「こうなったら一か八かバーサーカー状態に賭けるっきゃないな。覚悟は良いか?森野」
「今更だね」
「じゃまぁ、全液投薬」
指揮権が東少佐から俺に移ってるから機動甲冑の薬を全部ぶっ込む。
「突撃ィ!」
森野と同時にワダツミに向かって突っ込む。もうここからは捨て身以外は俺達には無い。森野が照準もそこそこに狙撃重砲を乱発するが、外れる事なく全弾がワダツミに命中する。
「ヒ、ヒヒヒ!良く当たルじゃなイカぁ⁈モット避けてみなヨぉ⁈」
「汚い血をぶちマけてけェぇぇぇえええッ!!!苦しいカ⁈痛イのか⁈喋れルんだから言ってミロぉおおおッ⁈」
回避もまともに考えずに特攻している俺達に向けてワダツミが爪を振るうがそのくらいで止まるようならキチってない。爪なんて知った事じゃないとばかりにそのまま前に出る。
森野が目を目掛けて狙撃重砲を投げつける。それを咄嗟にワダツミが払いのけようとしたところに森野が懐に飛び込んで、
「一緒ニ行けバ寂しく無イよねぇ⁈」
炸裂榴弾の残り1発を左胸部に突き立てながら同時に最終装置による自爆をお見舞いする。コレで残りは俺1人。ダメだった時の後の事は知らない。どうせどこぞの水上機動歩兵を捨て駒にしてコイツ殺すだろうし。
他人事みたいにそう考えながら距離を詰める。振るわれた爪によって機動甲冑の頭部装甲が剥ぎ取られたがまだ俺は死んでない。なら良い。
ワダツミの目が光る。おいおいビーム砲まであるとか聞いてないぞ?左腕を前に出した瞬間、俺の左腕と左脚が消し飛んだ。が、もう良い。十分だ。
「枢木、殲滅目標撃破ァァァアアア!」
吠えながら金田が開けたワダツミの左胸部の風穴に右腕と短刀を深く深く突き立てる。
「リアクターニ深刻ナ損傷ヲ確認、活動、フカ、ノウ………」
そんな声を聞きながら俺はそこで意識を手放した。
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「見覚えのある天井だ」
グッタリと動けない体で目を覚ますとそこは忘れたくとも忘れられないこの世界で最初に目を覚ました部屋だった。目だけを動かすとどうやら個室らしい事だけはわかった。妙な特別待遇だなぁ。
引き戸が開く音がして部屋に誰かが入って来た。
「ほう、まさか意識が覚醒するとはな。貴重な資材を無駄にしなくて済んだようで何よりだ。それにしても随分と悪運が強いなお前」
ベッドに横になった俺を物を見るような目で見下ろしながら年若いはずなのに白髪だらけのオールバックに眼鏡を掛けた白衣の男がそう言う。
「一応説明しておこうか。お前が例の新種のワダツミと交戦してから1月が過ぎている。そして、司令部からはなんとしてもお前を目覚めさせろと俺達に命令があったから今お前はそこに居る。まぁ、ちょっと手は加えさせて貰ったがな」
「また改造かよ。今度は何したんだよ」
「第9世代型の霊脈炉を追加して、義足と義手を付けて左目の代わりのカメラを付けただけさ。第10世代型の試験炉を試したかったんだがな」
「いや、俺生かせって言われたんじゃないのかよアンタ」
何、霊脈炉の2個積みとかこれまでやった事ない事やってんだよ。
「知った事か。現行の水上機動歩兵の兵装ではまともに通用しなかった相手だぞ?なら、それより更に強化する必要があると言うのに覚醒するかすらわからんほぼ死人に手間と時間を掛けている時間などあるものか」
「まぁ、それはわかるけどさ。ところで俺は誰が回収したんだ?あの時俺達の母艦はさっさと尻尾巻いて逃げてたんだが」
「どうやら通信回線自体は繋がっていたらしい。それでお前の撃破報告を受けて、新種の死骸の回収ついでに拾って来たらしい」
マジかよあいつら。美味しいとこ取りしやがった。
「まぁ良い。とにかくお前にはこれからもワダツミとは戦ってもらう事になるだろうさ」
「クソが」
「ああ、クソみたいな世界だ。だが、それが俺達の生きている世界だ。受け入れろ」
その後、部屋に軍のお偉いさんやらがやって来て、あのデク人形の事を根掘り葉掘り聞くともう用は無いとばかりに去って行った。わかっちゃいたが労いの言葉をひとつありやしなかった。
マジでクソみたいな世界である。