今回は「ミレニアム・ピンクアーカイブ」と合作しました。
是非ご覧あれ。
素敵な「ミレニアム・ピンクアーカイブ」はこちら。
https://syosetu.org/novel/392823/
二人の少年少女が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。
少女は星を観た。
少年は社会の窓が開いていた。
「レイナさん」
午後9時半、ミレニアムの生徒である鷹目ネライはロープに縛られていた。
対面には彼を睨む生徒がいた。
「何よ」
睨む生徒は西条レイナ、シャーレの生徒。
重い空気が漂う雨の夜のオフィスで聞こえる音は彼らの声と蛍光灯の音、そして雨の音だけだった。
「なんだ、間違って風呂場を見てしまったのは謝る。だから───」
「だから?」
重い空気はさらに重くなり、ネライは言葉を詰まらせながら言う。
「─────だから、縄を解いてくれないか」
「それじゃあ私寝るから、おやすみ」
その言葉を聞いた瞬間、レイナはロープに縛られたネライを放置してすたすたとスリッパの音を立て自分の部屋に行こうとする。
「…………待て」
「何?」
「今の俺を、このままにするつもりか」
「どういう意味?」
「今日は朝から、随分と紅茶を飲んでいてな」
「……何が言いたいのか、よくわからないのだけれど」
「─────今の俺の膀胱は、もう我慢の限界だぞ……っ!」
「ならここで殺っておくべきか」
「やめろ……っ!」
━━━━━
─レポート
○月✕日(△)
鷹目ネライ。
ミレニアムサイエンススクール1年生。
年齢は15歳、身長185cm。
ゲーム開発部所属兼C&Cの予備戦力。
キヴォトスで唯一の男子生徒且つキヴォトスでもトップクラスの高身長生徒。
全体的にかしこまった話し方と落ち着き方はキヴォトスでも珍しく、このキヴォトスでいう『理性派』と言われるものだろう。
たまーにゲーム開発部の生徒からゲームに誘われた時に会うくらい。
しかし、キヴォトス唯一の男性という事はやはり……噂のようなものが出来る。
彼女がいるとかいないとか実はすごいスケベな人だったりとか。
無論噂は噂だ、彼は丁寧でそういったものとは縁が無さそうだが───それでも少し真意が気になる。
それと彼自身の強さについても書いておこう。
彼はミレニアムの中でもかなりの強さを持っているらしい。
だからC&Cの生徒達は戦力の為にも鷹目ネライを欲しがっている……のだが、彼はゲーム開発部から離れようとしない。
このキヴォトスで規格外の存在、それが鷹目ネライである。
そんな彼を研究者肌の私が気にならないはずもなく、私は少し彼について調べようと思う。
…………いや、当たり前だが私が彼の事を異性的な目で見ている訳ではない事を明記しておこう。
誰かに見せる訳でもないが、一応………………
━━━━━
「…………」
機会というのは待てば訪れるものだ。
今、鷹目ネライは私の手の中にある、生かすも殺すも私次第だ。
蛍光灯と雨の音だけが響く中、私は縄で縛られた鷹目ネライの前に立ち塞がる。
「……頼む。トイレに行かせてくれ」
「そんなに行きたい?」
「先っちょで耐えてるだけだぞ……!」
「そう」
必死の嘆願を、私は少し笑って答えた。
「そうね、今から私の質問に答えたら考えてあげる」
「質問、か」
「簡単な質問よ、まず名前と性別を」
紙束を見ながら知っていて当然とも言える質問をする私に困惑する鷹目ネライは不思議そうな顔を向けた。
「……先生より先に、ボケが─────」
「死にたいの?社会的に」
「……鷹目ネライ、男です」
私はその問いに脅しで返す。
彼に拒否権と黙秘権は無い。
「年齢と身長」
「16になる15歳で、身長は185cm」
「去年が確か182だったからまだまだ伸びそうね」
「……なんで、レイナさんがそんな事を」
「当然でしょ、貴方悪い意味で話題になりやすいもの」
「…………むぅ」
腕が使えれば頭を抱えてそうな表情をして鷹目ネライは黙り込む。
「所属部活は?」
「ゲーム開発部だ……あと、一応C&Cの予備戦力にも」
「はあ……なんかつまらないわね」
「レイナさんが始めたんだろ……?つまらないと言われると、流石に傷つくぞ……」
ヴァルキューレの連中は毎日不良生徒にこんな事をしていると考えると、少し同情してしまう。
「うるさいわね、趣味は?」
「一人旅と、温泉だな」
「ええ、そうみたいね」
「……知っていたのか」
「知ってる」
「………まさか、俺のことが気になってこっそりと調べてたり─────」
「いいえ、ビッグシスターが作成した資料を盗んだだけよ」
「……む」
持っている紙束をちらちらと振りながら語る。
流石ビッグシスター、彼の事を問題児なだけあってよく調べてある。
「次、戦闘能力にはどれくらい自信がある?」
「そこそこ強い、とは思う、そこいらの不良には負けないし、ネル先輩抜きのC&Cになら勝つ自信があるからな」
「確かに資料にも脅威的な戦闘能力があると書かれてるわ」
資料にも『かなり脅威的な戦闘能力を持っている、潜在的な力を秘めているだろう』と細かく分析されている辺り、間違いなく事実なのだろう。
「まだ続けるのか……いいのか、漏らすぞ?16歳目前の少年が目の前で漏らすぞ……っ!」
「あんまりやかましいとそのまま外に放り投げるわよ」
「外でするのはノーセンキュー……っ!」
彼もこのやり取りに疲れたのかため息を吐く。
私も疲れた、そろそろ終わらせよう。
「次が最後の質問、『西条レイナ』についてどう思う?」
「どう、か。難しいことを聞くな」
「答えて」
「先生と一緒にきて、部室で一緒にゲームする先輩、か。……あとは、目のやり場に困るというか白い髪が綺麗だなとか。そのくらいだな」
「不純ね、それ以外は無いの?」
「……そんなところだ」
「そう」
資料による情報と大体一致している、いくら特異的な存在といえど彼はただの人間か───
資料をペラペラと読み進めていると、ある情報が目に入り、その情報を頭で処理するよりも早く言葉を紡いだ。
「まだ最後の質問が残ってた」
「……手短に頼むぞ」
「簡単なことよ。脱いで」
ネライに巻き付けられたロープを切り落とし、彼を自由の身にする。
因みに逃げ出したら私が脱がせるつもりだ。
「……見たいのか?」
「黙って脱いで」
「わかった」
しかし彼は平然と受け入れそのまま脱ぎ始めた……ズボンから。
「真っ先にパンツを脱ごうとするな……ズボンは履いたままでいいから」
「……さてはチキったな、普段は素知らぬ顔して、本当は俺の身体に興味があったという訳だ」
そんなネライの軽口に、私は彼の資料を見つめながら否定した。
「違う、貴方の体脂肪率を確かめるの」
「……死亡率?まだ死ぬ気は毛頭ないぞ」
「漢字が違う……今からどのくらい貴方のその身体に筋肉が詰め込まれているか調べる、それだけ」
ガタン、と床に体重体組織計を置く。
「それは……」
「医療用体重体組織計、これで貴方の体脂肪率を調べるの」
「便利なものだな……それを、いまどこから?」
「いいことを教えてあげる」
「む」
「こういうコラボは、なんでもアリなのよ」
「流石にメタいぞ」
困惑しながらも鷹目ネライは体重体組織計の上に乗り、ハンドルを握る。
「……これで、いいのか……?」
「結構」
電源を入れると、体重体組織計の数値がパラパラと切り替わっていく。
「なぁ、レイナさん」
「なに」
「…………レイナさんは、どうしてここに来たんだ」
「ここに……って、何処に?」
「シャーレにだ」
数値の測定が終わるまでに、彼は私の事を詮索し始めた。
机の上に置かれた冷めたコーヒーを飲み込み、私は答えを言わなかった。
「レディーのプライベートを詮索するのはよした方が良いわよ」
「俺はレディじゃないからなんでもいいのか」
「有名人のあなたにとっては今更でしょ。公開全裸なんだから」
「……好きで開けっぴろげてるわけじゃないんだがな」
再びコーヒーを飲み込み、静かな時間が訪れる……
私はそんな彼の『脳筋』らしさを証明する為にある
「実は私、シャーレを狙うスパイなの」
「……なにっ!?」
「ええ、シャーレの…………くっ……ぷぷっ……」
やっぱり単純だ。
私は少し嘲笑うかの如く、腹を抱えた。
「……騙したのか」
「あっはっは……貴方やっぱり脳筋ね……」
「む……。それで、実際のところはどうなんだ」
彼は私の嘲笑をため息で済ませて……さらに追求した。
私はコーヒーの最後の一滴を飲み込み、言う。
「……ああ、別に……不良生徒としてフラついてたら先生に拾われただけよ」
「不良って、冗談だろ……?」
「そんなに驚く事じゃないでしょ、今のキヴォトスでは生徒の三割が不良なのよ」
「まだスパイの方が信じられるな。トリニティの不良でも、ここまで優雅なやつはいないぞ」
「エレガントな不良がいちゃダメ?」
「ダメというより、信じ難いんだ」
「そう。ま、信じるかは好きにすればいいわ」
軽い雑談をしていると、体重体組織計から音が鳴る。
「うん、十分なデータが集まったわ」
数値は……まあ、隠しておこう。
彼のプライベートを公開するほど私は野蛮じゃない。
ズボンを履きながら彼は呟く。
「スパイだと言って男心を騙したり、不良だと言って俺の気を逸らしたり、レイナさんは意地悪だ」
「……どうかしら。でも不良生徒だった事を証明する方法は今無いわね────」
その時、目に映ったのは彼の硬くて大きな腹筋。
その腹筋は……女性であるなら少し息を飲む程には魅力的だった。
「……む、腹筋になにかついてるか……?」
そんな彼の言葉を聞いて私は思わずこう言った。
「少し触ってもいい?」
「……なんだ、やっぱり最初から体が目当て─────」
「投げるわよ」
「……漏らすぞ」
「関係ないわ」
「もう、好きにしてくれ……」
私の横暴とも取れる質問に彼は渋々といった様子で腹筋を私の傍に寄せた。
「…………硬くて、汗臭い……」
「一応、体育の後に匂いケアはしているんだが……。レイナさんは匂いに敏感なんだな」
指で触れてみると、少し蒸れていて汗臭い……それにゴツゴツと硬くて安心するような感覚がする。
「……うん……硬くて、強くて……」
「……レイナさん?」
鷹目ネライの言葉が耳に入って、現実に引き戻される。
「あっ…………ごめんなさい、少し……」
彼の瞳を見て、私は察した。
今なら、彼を好き勝手出来るのでは?
大雨の中、先生は出張……夜の九時。
少しだけ……少しだけなら────
「…………少し…………」
「……怖いぞ。なんだ、どうして─────」
つまみ食いしても、バレやしない
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「───っていうシナリオを作ってみたんだけどどうかな!レイナさん!」
才羽モモイがそんなゲームシナリオを私の前で嬉々として持ち込んで見せてきた。
私は懐にあるリボルバーを引き抜き───笑う。
「───鉛弾と炸裂弾、どっちが良い?」
「あっ、勘弁してくだ───」
(……仲がいいんだな、あのふたりは)
鷹目ネライはそんな私達を見て、呆れていた。