The budding of [E]motions 作:しろのねこ
原作:NieR:Automata
タグ:R-15 NieR:Automata ニーアオートマタ NieR:Automata ニーアオートマタ ネタバレあり
ゲームに登場した9Sの一個前の9Sで、且つアダムとイヴに出会う前を想定してます。
君を何度も殺してきた。
身分を偽り、この手で何度も、何度も。
「任務だから」とその度に自分に言い聞かせた。
だから、こんな感情を持ってはいけない。
それでも、死んでいった君との時間は、かけがえのない時間だった。
終わりのない戦いの中で、一筋の希望や光だと思えた。
でも、任務だから君を殺した。任務だから仕方がなかったんだ。
幾千もの言い訳と、懺悔を繰り返した私は……
「僕は9Sです。これからよろしくお願いしますね。」
9Sは挨拶を済ませると、バンカーから降下した2Bへ現地情報の共有を始めた。
今回の任務は、指定された複数のポイントにおけるセンサー設置と機械生命体の殲滅だ。
しかし、2Bには別の任務も下された。
極秘データへのアクセスを試みた9Sの破壊命令――
まただ、私は何度繰り返せばいいのか。
「ポッド042より2Bへ、メンタルの異常を検知。」
随伴支援ユニットのポッド042が2Bへ伝える。
「私は大丈夫。9S、気にしないで。」
「はあ……そうですか……何か困った事があれば教えて下さいね!」
情報共有は淡々と進み、最初に向かうポイントが決まった。
今回降下した場所は、それほど調査が進んでおらず、未確認の脅威に対応すべく2Bが派遣された……という体になっている。
S型モデルはハッキングや索敵に秀でているが、戦闘力が高くない。故に戦闘型のB型モデルと行動する事が多い。
9Sに本来の任務を悟られないようにするには、うってつけだった。
「それじゃあ出発しましょうか。各ポイントは遠いですが、遠足だと思えば楽しいですよ!」
「9S、私達ヨルハ部隊は感情を持つことを禁止されている」
「ああ、ごめんなさい……」
最初のポイントへと向かう道中だった。
「僕、2Bさんとこうやって一緒に行動できるのが嬉しいんです。」
「生まれた時からいつも一人で行動していて寂しかったんです。勿論、バンカーや他のS型との通信はしてましたが…」
「そう…。」
そうだ、9Sはいつもこの話をする。ずっと寂しかったと。
誰かと一緒に行動するのが楽しいのだと。
私も、君と一緒にいるのが楽しかったんだ。
任務ではなく、君と話していることが。
楽しそうに話す9Sに、私は感情を出すなと言えなかった。
「9S、私を呼ぶのに敬称はいらない。さんを付けなくていい。」
「……分かりました!2B!」
「ポイント付近に到着しました。ここは水没した都市のようです。」
高層ビル群が建ち並んでいたのだろう。海面から斜めにそびえ立つビルが数多くあった。
先の大戦で地盤沈下が起こり、海へと沈んでしまった。
足場は悪いものの、高架橋伝いに目的のポイントに到着した。
「えっと、道中含めこの辺の安全を確認し、敵感知センサーを設置ですね。」
「2Bは周囲の警戒をお願いします。」
「わかった。」
9Sが装置を配置し、起動準備や接続を行う。
2Bはその様子を見て9Sの破壊の機会を伺っていたが、一突きしようとした瞬間、強烈な違和感が頭を駆け巡った。
「設置終了!……2B?」
「なんでもない。それより問題なく終わったの?」
「大丈夫です。簡単な作業でしたから。」
「それより2B!海水浴しませんか?」
9Sは言い終わらない内に、コンクリートの浅瀬へ駆け出していった。
ブーツを脱ぎ、素足を晒す。そして海水へ足を浸した。
「人類は不思議な事をしていたんですね。冷たいのは気持ちいいですが…」
「9S、任務なんだから遊んじゃ駄目。」
「いいじゃないですか。機械生命体もいなくて想定より早く終わったんですし。」
「2Bも一緒にどうですか?」
「私は……別に……いや、分かった。」
2Bもブーツを脱いで素足を海に晒した。
9Sと同じ感想を抱いたが、不思議と悪い気分ではなかった。
「2B?ゴーグルを脱いでも大丈夫なんですか?」
ハッとした。無意識にゴーグルを外していた。何故?どうして?
「きっと海が気持ちよかったからでしょうね。僕も外しちゃうかな。」
その時、海と9Sがとても綺麗に見えた。見えてしまった。その時、私の中で何かが変わり始めた。
「2つ目のポイントに付きました。「デパート」と呼ぶそうです。」
森に飲まれつつある商業施設へと辿り着いた。長い年月が経っているにも関わらず、いくつか商品も残っているようだった。
「デパート?」
「商品がたくさん置いてあって、とても大きなお店の集合体のようなものだそうです。」
「ここもセンサーの設置のみですね。パパっと終わらせちゃうので、よろしくお願いしますね。」
2Bは周囲の警戒をしつつ、いくつかの商品に目を向けた。
一つはバッグ、苔が付いてしまっているが、以前は美しい赤のショルダーバッグだったのだろう。
二つは靴、既に形が崩れかかっているが、赤のレディースシューズだ。
三つは服、ナイロンの保護布のおかげか、奇跡的に色と形が保たれていた白色のワンピース。
9Sと一緒にこんな素敵な場所で買い物が出来たら……
「2B、設置完了しましたよ。」
我に返った2Bは周囲の確認を改めて行った。
「わかった。こちらも問題ない。」
「2B、あっちの商品をじっと見てましたけど、気に入っちゃいました?」
「ち……違う!私はそんな事思ってない!」
人間であれば顔が真っ赤になりそうになりながら反論する。
「まあでも、僕は2Bとデパートで買い物がしたいなって思いますよ。何も買わずに見て回る事を「ウィンドウショッピング」なんて言い表す言葉があるそうです。だから買わなくてもきっと楽しいですよ!」
想像するだけでなんて楽しそうなんだろう。そう思ってしまった私の変化は、既に分水嶺を超えてしまっていた。
「3つ目のポイントに到着!2B、順調に進んでますね。」
「そうね。」
「ここは団地?という場所のようです。集団で人間が生活していたようですね。」
周囲は砂漠になっており、人類の生活の跡は建物や道路しか残っていなかった。
ここでの任務は、先のセンサー設置の他に機械生命体の殲滅も含まれていた。
「そういえば2B、僕の親しい人達は僕のことを「ナインズ」って呼ぶんですけど、2Bもそろそろどうですか?」
「……まだ、いい。」
「そう…ですか…」
2Bは複雑な心境だった。9Sから、また「ナインズ」と呼んでいいと言われた嬉しさと、裏切らなければならない罪悪感でおかしくなりそうだった。
先に進むと、大きな洞穴があり、機械生命体の反応があった。
「2B、そろそろ接敵が近いです。警戒して下さい。」
「分かった。……あれは?」
数体の機械生命体が腰をぶつけ合っていた。まるで人間の――
「コノママジャダメ」
「コノママジャダメ」
機械生命体は繰り返し叫ぶ。繰り返し行う。トライアンドエラーを行うように。
「……2B!?」
2Bは膝から崩れ落ち、武器を地面に突き立てた。
「どうしたんですか!?大丈夫ですか!?」
「このままじゃ駄目…駄目なんだ…私は…」
「様子がおかしい…ポッド!シールドを展開しつつ撤退!」
「了解:直ちにシールドを展開する。」
9Sは意識が朦朧とした2Bを抱きかかえて洞穴を後にした。
機械生命体達は二人に目もくれず、行為を行い続けた。
「ポッド042から9Sへ:当機随伴支援対象2Bのメンタルが悪化している。」
団地を後にし、周囲の安全が確認された場所へ退避した先でポッドは9Sに伝えた。
2Bのメンタルは、徐々に且つ加速度的に悪化していた。
しかしそれは積もり積もった過去の亀裂によるものであり、2Bすら認知出来ていなかった。
「ポッド、論理ウイルスワクチンの投与!」
「否定:2Bはウイルスに汚染されていない。メンタルの悪化は9Sとの接触から始まっている。」
「どういう事だ……いやもしかして……やっぱり本当に……」
2Bが意識を取り戻し、起き上がった。しかしまだ不調である様子を隠しきれていなかった。
「2B、大丈夫ですか?」
「9S……私は……」
「コノママジャダメ」
「このままじゃ……」
「2B……?」
「ポッド、今から1時間後までシャットダウン。バンカーとの通信も切断。」
「9S、そっちのポッドもそうして」
「わ……分かりました……」
「9S、逃げよう。私と一緒に来て欲しい。」
「2B!?何言ってるんですか!?」
「私は、私は……9Sを何度も殺したんだ。何度も何度も。」
「9Sが極秘データにアクセスする度に殺して、9Sの記憶をリセットし続けたんだ。」
「それに私は2Bなんかじゃない。2Eなんだ。処刑型ヨルハ機体の。君を処刑するために派遣されてきた。」
全てを話してしまった。もう私には止められない。止めたくない。
これ以上、君を殺したくないんだ。
「君は私の光だったんだ。何度出会っても変わらなかった。」
「もっと強く繋がりたい。もっと深く繋がりたい。」
「私はもう君を殺すことに耐えられないんだ。もう……耐えられないよ……。」
「お願い……。」
何故アンドロイドなのに涙が出るのだろう。何故アンドロイドが人の心を持たねばならないのだろう。
こんな思いをしてしまうなら、私は―ー
「2B……僕は……。」
「2B、僕も話す事がある。月面人類会議、あれは嘘なんだ。」
「もう既に人類はいない。何故ならヨルハ計画の中に月面人類会議が入っていたんだ。」
「打ち上げているコンテナも中身は殆ど空だった。全部偽装されていたんだ。」
「だから、もうヨルハ部隊にいる理由もない。戦う意味もなくなった。」
「そして、2Bが僕を殺し続けた事も知っている。」
「だけど恨んでなんかいない。2Bは十分苦しんだんだ。それで十分だよ。」
「だから2B、一緒に行こう。」
「ありがとう……ありがとうナインズ……」
「私はナインズといる事で、ナインズを殺した罪を償っていきたい。」
あれから数ヶ月、機械生命体は宇宙へと旅立った。ヨルハ部隊はヨルハ計画に基づき壊滅。
脱走兵である私達は、他の脱走兵と共に逃げ延びた。
正しい選択を行ったとは言えない。仲間を見殺しにしたのも否定はしない。
だけど、気付いてしまった。
大切な人が隣にいてくれるだけで、この世界は、無価値でも無意味でもないのだと。
ヨコオタロウは神であり敵であるので、自分の心はグチャグチャです。
でも2Bと9Sには救われて欲しいのでこうしました。サブクエの脱走したヨルハ部隊も救われてほしかったので一緒にしました。
ポッドの処理に困りましたけど、1時間で逃走したということにしてください。
あと壊レタ世界ノ歌にもアンチテーゼというかアンサーしてます。あの曲は歌詞も大好きですが、救われなきゃ駄目なので…。
機械生命体も人間になろうとしたし、アンドロイドも人のようにありたかったんだからコレもアリだろうと。
でも二人に愛の概念をもたせるかどうかは各自に任せます。
自分は陳腐化する気がして愛という言葉をあえて入れませんでした。
アンドロイドだからこそ出てくる愛という言葉を使わない愛を表す言葉を入れたいなと思ったので…。