あと自分で書いててなんだけど、この話の一夏君は確かに殺された方がいいと思う。
織斑一夏はとても反省していた。
まさか愛の告白をスルーしていたとは思わなかった。
ああ、これは男として制裁を受けねばならないだろう。女の告白を気づかずする―とか、殺されても文句は言えない。少なくとも制裁を受けるべきだ。
とはいえ、
「見えない弾丸で滅多打ちとか反則だろぉおおおお!?」
これは反則だ。
「うっさい死ね! 死ね死ね死ね死ね死ねっ!! 乙女の純情台無しにしてくれちゃって、死んで詫びなさい!!」
顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりしながら額に青筋を浮かべて猛攻を加えてくる鈴から逃れながら、一夏は何とか攻撃を最小限のダメージで対処していた。
とはいえこれは厄介だ。
甲龍の第三世代兵装、衝撃砲。
空間そのものをどういった理屈か砲弾とかし、武器に使用しているのだ。
別に見えない弾丸というのはそこまで脅威でもない。
発射された弾丸を視認するなど、よほど弾丸の速度がおそいか特殊な弾丸でもなければ無理だ。一夏も弾丸そのものを見て回避する技術など教わってはいない。そんな上位クラスの実力者じゃなければできない技量より、相応の反射速度があれば誰でもできる技術のほうを教わっている。
とはいえ、砲身が見えないのは致命的だ。
一夏が教わっている回避方法は、銃身と銃口、そして発射されるタイミングが分かる行為が見えなければ真価を発揮しない。
当然、砲身そのものが透明であり、かつ思考で発動する衝撃砲は驚異だった。
しかも厄介なことが二つある。
一つは殺気を垂れ流されているということ。
全世界公式配信で告白をばらされたことにより、鈴の殺気は全力放出され続けている。
これでは砲撃のタイミングを殺気の爆発で見ることは不可能だ。もうこれは、トリガーを引きっぱなしにしているのに近い。
もう一つも鈴が切れていることにある。
鈴はブチギレたために狙いが甘くなっている。
これだけ効けば、命中率が下がっていいことのように思えるかもしれない、視線と狙いがあってないというのは最後の回避のファクターを失ったに等しいのだ。
しかも砲身は360度球状に展開できるようで、小刻みに移動して後ろに回り込んでも、そのまま砲撃を叩きこんでくる。
ゆえに高速起動を繰り返してエネルギー切れを待つしかない。
もはや勝つには一つしかない。
瞬時加速《イグニッション・ブースト》。
ISの基本機能の一つでもある、PIC《パッシヴ・イナーシャル・キャンセラー》を最大限に利用して、一瞬で最高速度にまで到達するこの技量は、一夏の奥の手だ。
織斑千冬は、これともう一つの力を利用して世界一に到達したのだ。ならば、代表候補生相手にも十分な勝算が見込めるはず。
ゆえに、一夏は決意する。
幸い、今までの砲撃で土煙が上がり、地面の知覚はほとんど見えていない。
これならなれない瞬時加速の事前行動を見られる可能性は低い。勝算は十分にある。
(一度失敗したら流れは完全に鈴の物だ。・・・何があっても流れをこっちに持ってくる!!)
いくら瞬時加速といえど、高速で移動している状況下で逆のベクトルに加速することは難しい。
そして相手に向かっている状態で加速しても、反応される可能性が上昇する。
だから、ブレードを地面に突き刺して急ブレーキをかけた。
勢い余って爆撃といってもいい砲撃が通り過ぎる。もちろんいくらかくらってしまったが、この程度のダメージで逆転できるなら目っけものだ。
「もらったぁああああ!!」
瞬時加速、発動。
視界が風景を置き去りに移動する。
一夏はそれらに意識を向けない。向ける相手を間違わない。
今切るべきは凰鈴音ただ一人。その姿と切るタイミングだけは間違わず、勢いよく振り下ろす。
「な・・・っ!?」
怒りに目がくらんでいた鈴は反応できない。
そのまま二人の距離が一気に縮まり―
閃光が、二人の戦いに割って入った。
「・・・アリーナの観客は全員走れ!!」
レヴィアはその光景を見た瞬間にそう叫んだ。
今、アリーナでは二機の動きが止まっている。
と、いうかタイミングを殺されて振り下ろせなかった一夏が、鈴に思いっきりぶつかって空中でもんどりうっていた。
大きな衝撃と爆発が、衝撃砲によって舞い上がっていた土煙をはるかに凌駕するほどの土煙を生んでいる。
遮蔽シールドに守られているはずのこの空間に、何者かが突入してきたのだ。
「ちょ、ちょっと待ってください聖羅さん。いくらなんでもそれは急ぎ過ぎでは?」
状況がつかめていない実況がそうたしなめるが、そんな意見は無視する。
これまで何度も命がけの戦いを繰り広げたことがあるからこそわかる。ISとの戦いすら経験したことのアルミだからこそわかる。
あれは、まずい。
「遮蔽シールドをやすやす貫通するような物、こちらに向けられたらどうなるかわかるでしょう!! ・・・死にますよ、皆!!」
既にこの瞬間から、この場は試合会場ではない。
災害の現場か戦場か。とにかく一瞬の油断が死を招く緊急事態の場へと変化してしまったのだ。
「・・・生徒会長!!」
万が一のために用意していた緊急回線を開き、楯無を呼び出す。
こんな非常時である以上、個人的に生徒会長のとの直通通信があるだなんて秘密をばらしても問題ないだろう。というかそれどころではない。
だが、その通信は繋がらなかった。
『あー、無理ッス。通信は試合開始前からこっちでジャックしてるッス』
その答えは、土煙の中からやってきた。
土煙が晴れた中、そこにいるのは二機のISである。
双方ともに全身装甲。しかし、その形状は明らかに違う。
片方は、既存のISとそこまで変わった姿を取っていない機体で、軍用のISといわれればそこまでおかしなところはないだろう。
背中に、まるで亀の甲羅を思わせるほど大型のバインダーが付いているのが特徴といえば特徴だが、それでも隣に比べればおかしくない。
もう片方は、明らかに異形だった。
例えて言うならゴリラ。
その両腕は明らかに人のサイズではなく、腕と足のバランスが付いていない。
しかもその腕の先には、左右に一問ずつあり、腕としての仕様は考えられていないのがよくわかる。
さらに頭部には首がなく、センサーレンズが不規則に並んだ不気味な顔をしていた。
『あーテステスッス。こちら潜入してきたテロリストッス。さっきのはかなり無理した砲撃なので、今からは使うつもりはないッス。・・・逃げようとしたら撃つッスけどね』
明らかに挑発を兼ねているのだろう。機械的に合成された不気味な声が、まともな方のISから漏れ出ていた。
その、逃げれば殺すという意味の言葉に、観客全員の動きが固まる。
誰もが死にたくはない。ゆえに言うことを聞くしかなかった。
『貴様、何者だ?』
管制室から、千冬の氷点下の声が聞こえてくる。
誰がきいてもわかる。本気で怒っている。
ブリュンヒルデの本気の怒りに、直接向けられているわけでもない観客から悲鳴が漏れた。
しかし、侵入者は一切ひるまなかった。
そうだ。それでこそブリュンヒルデだ。それぐらいの殺気を込めてくれなければ面白くない。そう言わんばかりの余裕が、侵入者から漏れていた。
『さっきも言ったッス。テロリストッス。名前は・・・ウィンターとでもよんでほしいッス』
『さっきから通信が繋がらないのは貴様のせいか』
『そうッス。この機体は電子戦用なんで、有線回線以外はシャットアウトッス。この試合が始まる前から、IS学園の方では大騒ぎッス。・・・音もシャットアウトできるから、あなたでもわからなかったわけッス』
それは驚異的な技術力の証明。
通信をシャットアウトするだけでなく、それを相手に気付かせないようにすることも可能。さらに物理的な音すら遮断するようなシステム、現代に存在しない。
『・・・なぜ音までシャットアウトする? あれだけ派手に動けば、どうせ気付かれるぞ』
『逆ッス。学園の方に増援妨害を兼ねて襲撃かけてるッス。だからそれを気づかせないためにやったッス』
そういうと、アリーナのモニターの画像が変化する。
・・・それを見て、この場にいる者は度肝を抜かれた。
それはいうなればホバータンクとでもいうべきものだった。
戦車特有のキャタピラが存在せず、まるで僅かに宙に浮かんでいるように見える下半身。故障した時のためか移動時のエネルギーの節約のためか、申し訳程度にタイヤが付いているが、それが動いてい無いのはわかっていた。
さらに上部の砲身も以上。二連装の方針は現代ではろくにお目にかからないし、それがまるで腕を振るかの如く高速で稼働するのも異常だった。
そして異常なのはその戦闘。
数機のISと数十機のそれが、勝負になっていた。
ISからの砲撃を余裕で耐え、時にはドリフト走行でかわしながら、戦車は砲撃を放つ。
砲撃は素早い照準によってISをかすめたり、そもそも散弾による攻撃でISにかなりの割合が辺りもする。
・・・ISが世界に知らしめされた白騎士事件で、世界が学んだことはただ一つ。
桁違いの数の兵器を以ってしても、ISにはかなわない。ろくにダメージを与えることも出来ず、さらに死亡者を出さないように気をつけることも出来る程度の戦闘しかできないということだ。
その常識がいま崩れ去っていた。
『本命の目的は見ての通りッス。・・・ウチの新兵器のデモンストレーション。・・・ちなみに、基礎設計はこの映像と一緒に全世界同時配信で無料公開中ッス』
いきなり現れた敵勢力。
ちなみにこれ作ったのは束さんではありません。
しかし我ながらなかなかうまくいかない。本格的にD×Dの色を出せるのは原作三巻らへんからなんですよね・・・。