インフィニットストラトスD×D   作:グレン×グレン

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一夏VSラウラ 本番です。


第八話 だからさ、負けられないんだよ

 

 

 瞬時加速を使い、一夏は一気にラウラにせまる。

 

 レヴィアの行動で目が覚めた。

 

 そうだ、そもそも織斑一夏に対して、ラウラと同様に怒っているのは自分だろう。

 

 自分が弱かったせいで大事な姉の栄誉は傷つけられた。そのせいで姉は大会二連覇という偉業を成し遂げることができなかった。姉に弟を自分が原因で誘拐されたという傷を作ってしまった。

 

 千冬を敬愛するラウラが怒りに燃えるのは当然だ。それを否定する権利は一夏には無い。

 

 だから、一夏は彼女に怒りを向けはしない。

 

 見せるのはただの一つ。

 

 ・・・その傷をばねに、織斑一夏はそれだけの価値がある男になったのだと証明することただ一つ。

 

「行くぜぇええええええ!!」

 

「甘い!!」

 

 そして、正面からの突撃など代表候補生には通用しない。

 

 織斑一夏の戦闘スタイルが猪武者なのは少し調べればすぐわかる。

 

 ゆえにこの奇襲は奇襲たりえない。来るとわかっている奇襲はただのテレフォンパンチでしかない。そしてテレフォンパンチにカウンターを叩きこめないで、代表候補生は、IS特殊部隊隊長は務まらない。

 

 だから、この流れは呼んでいた。

 

 ISのパワーアシストと転生悪魔・戦車の駒のバカげた身体能力を使い、強引に片足を地面にたたきつける。

 

 シールドエネルギーすら削れるほどの抵抗を受け、不知火の機動が高速でずれた。

 

 自然と、カウンターで放たれたAICから回避され、一夏はそのまま得物のトリガーを引く。

 

 それにすらカウンターとしてプラズマ手刀を返すラウラだが、それは悪手だった。

 

 対IS用炸薬加速式近接戦闘ブレード、鎌居達。

 

 パワーアシストと切れ味だけでは補助武器にしかならない近接戦闘用のIS武装を主兵装へと変えるための、試作型武装。

 

 激しい打ちこみに耐える胴田貫を参考にした頑丈な刀身に、液体炸薬を爆発加速させるブースターを取り付けた無茶苦茶な設計思想で開発された高性能なガラクタ。

 

 使い勝手が悪いという欠点により採用されなかったが、しかしこれは一夏にとって都合がよかった。

 

 もともと織斑一夏は複数のことをこなせるような器用なタイプではない。一つのことを極めて一点特化で強くなるタイプだ。

 

 そしてISに長くかかわるわけにはいかない立場である以上、正道で強くなる必要はない。一つの特殊な武装を使いこなして力量を高める方が向いている。

 

 何より、織斑一夏は剣士なのだ。それも、小手先で勝負するのではなく剛剣で叩き切るパワータイプ。

 

 そんな一夏が破壊力重視のブレードを振るえば、一撃で全てを叩き切る。

 

 故にそうする。ゆえにそうなった。

 

「なんだと!?」

 

 一撃でプラズマ手刀は弾き飛ばされ、それどころか発振機が衝撃で損傷する。

 

 これで片腕の出力は半減。最初の流れは一夏へと傾いた。

 

「このままたたみかける!!」

 

 戦闘とは、流れをつかんだ方が優位になる。

 

 それを知っているからこそ一夏はさらにたたみかけようと突撃を駆ける。

 

 その視界に、黒の砲口が大きく映った。

 

 条件反射レベルで身をひねるのと、レールガンが火を吹くのはほぼ同時。

 

 さらにそのすきをついて一夏と不知火を搦め手とるように、ワイヤーブレードがアリーナを駆ける。

 

 流れを一瞬で切り返し、ラウラが戦場の流れを奪い取る。

 

 戦闘は、早くも激しさを増していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・驚いたよ。まさかお前があんな邪道に手を染めるとわな』

 

「・・・こんなところで個人回線とは驚きですね」

 

 一夏とラウラの攻防激しく入れ替わる戦いを観戦しながら、レヴィアは千冬の言葉に返答する。

 

 既にこの戦闘は自分では介入できない高速戦闘へと切り替わっていた。

 

 もし自分があの戦闘に入ったとしても、ワイヤーブレードにぶつかって足を引っ張るしかない。

 

 自分の実力を知っているからこそのあの博打であり、その程度の実力でしかISを動かせないのをレヴィアは自分でわかっていた。

 

『あまり自分が選ばれた者だと誤解させては困る。・・・あとで生徒全員に対してフォローを入れてもらいたいところだが?』

 

「それは断ります」

 

 レヴィアは千冬の言葉を切って捨てた。

 

 ああ、その流れは確かに予想していた。

 

 先日のことだ。ラウラは千冬に教師を辞めてドイツの共同をしてくれと懇願したそうだ。

 

 その際、IS学園の現状に対する不満を理由とし、千冬に切って捨てられたらしい。

 

―少し見ない間ににずいぶんと偉くなったな。たかが十五歳で、もう選ばれた人間気どりか?―

 

 ・・・レヴィアは潜入させていた工作員にこの通信を開放回線へと変更させながら、レヴィアは気合を入れ直す。

 

 このスタンスだけは崩せない。そしてそれゆえに今の彼女を否定する。そしてそれはIS学園全体に広めなければならない。

 

「つい先日ラウラちゃんにあなたが言った言葉を否定させましょう。・・・十五だろうと何だろうと、選ばれた者として自覚を持つのがIS学園生(僕ら)の義務でしょう」

 

『なんだと?』

 

 かつて男尊女卑社会ができた理由の一つが、男が女を守る者という流れが生まれたからである。

 

 武家社会に置いて武士が上流階級として行動して武士道が生まれたように、まず責務があってその後で特権がある。

 

 貴族社会における高貴なるものの責務(ノブレス・オブリージュ)がいい例だろう。

 

 そして、レヴィアはそれを全面的に肯定している。

 

「パワーバランスの元であり、世界の中心に立っているISというのは間違いなく特権です。そしてその責任も非常に重い」

 

 それは権利を得る者が一番最初に学ばねばならないことだ。少なくともレヴィアはそう思う。

 

 責任を果たすことは絶対条件だ。全てはそこから先にある。

 

「それを一番最初に伝えるのが、教育者としての責任でしょう」

 

 ゆえに、レヴィアは千冬を認められない。

 

『バカげたことを。彼女たちは確かにISを乗れる立場かもしれないが、それ以前に1人の少女たちだ。・・・貴様はそれを理解してないのか?』

 

「優先順位があると言っているんですよ。・・・特権階級はまず責任を果たして、その報酬として権利を持たねばならない。『ただの少女』じゃなくなっているでしょう、入学した時点で」

 

 IS乗りに責任があるとするならば、それは時代のパワーバランスをになうものとして責任を担うこと。

 

 それほどISとは最強の象徴であり、女性優位社会の象徴なのだ。

 

 その風潮を生んでいる物を使っているという自覚がなければ、彼らは権利だけをとって醜くなる。

 

「己の義務すら果たせないくせして権利だけを得ようとする者の天敵であれ。それが僕が自分に課した役目です」

 

 かつての魔王の血筋がそれだ。

 

 戦闘能力に置いても政治能力に置いても現魔王に比べて見劣りする癖に、まるで自分たちこそ上であるかのように考える。そしてそれを子供たちにまで伝えようとする。

 

 それを醜く感じた時、レヴィアは彼らと決別することを決意した。

 

 わずか12歳の時に賛同者と共に行動し、あのおろか者達が持っている宝物を奪い取って現政権へと亡命した。

 

 結果として賛同者全ての命を引き換えに、その亡命は成功した。

 

 だが、彼女はその意味を理解していなかった。

 

 自分には義務を遂行する能力など無かったのに、それ以上の権利が舞い降り、さらにそれにすがる哀れな迷走者達を迎え入れなければならなかった。

 

 その不満のはけ口を求めて行動し、その結果二人の哀れな犠牲者を生んだのは未だ鮮明に覚えている。

 

「世界最強のIS乗りの称号の責務を理解せず、その義務を果たさなかったから、あなたは自分の名誉を捨てることになった。・・・僕は常にそう思っています。そう思わなければいけない立場だ」

 

『・・・なんだと?』

 

 通信に威圧感があふれだす。

 

『バカげたことを言う。・・・世界最強、ヴァルキリー、ブリュンヒルデ。そんな称号に天狗になった結果がアレだよ。ただおごり高ぶった馬鹿がそのツケを大事なものに追わせてしまっただけだ』

 

 ああ、それは彼女にとってはそうなのだろう。

 

「別に否定はしませんよ。他人の考えを全て全否定するだなんて現代の風潮に合わないしナンセンスだ」

 

 栄誉を得ようともそれで守るべきものを傷つけては意味がない。それは確かに正しいだろう。

 

 だが、それはレヴィア・聖羅の在り方ではない。

 

「・・・だがそれを、『ブリュンヒルデ』という影響力を自覚せずに危機意識を持たなかったツケだと考えるのが僕という存在なんですよ」

 

 だから全否定はしないが肯定もしない。

 

「人は立場にあった責任をまず果たすのが第一で、それが嫌ならそこから逃げるのが当然。そして物事を通すなら道理を可能な限り守るべき。その二つができなかったが故に後悔した僕は、そうあるために努力するだけです」

 

 だから、そうした。

 

 その結果が今の一騎打ちだ。

 

「だから僕は謝りもしませんし撤回もしません。IS学園生徒にISを動かすものとしての責務を自覚し遂行させるために常に行動します」

 

 だから彼女と組むのは好都合だ。

 

 ともに今のIS学園に不満があるのだ。むしろこうなるのは必然だろう。運命という言葉を信じたくもある。

 

「・・・そして、悪いが一夏君はそんな僕の側の者でなければいけませんよ?」

 

 その視界の先で、不知火の脚部にワイヤーブレードが撒きついた。

 

 こう着状態に陥っていた試合が、ついに動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワイヤーブレードが巻きついた瞬間、一夏は賭けに出ることを決意した。

 

 もとより相手の方が格上で、さらに基本的に隙がないのだ。

 

 ペースをつかめなかった以上そうするしかない。そうでもしなければ意地も示せない。

 

 だからそうした。

 

「うぉおおおおおお!!」

 

「なんだと!?」

 

 ワイヤーブレードをむしろ引き寄せるように足を振り回し、振り回される前に逆にこっちから引き寄せる。

 

 もとよりパッケージすら付けられない仕様にすることで基本性能の上昇に特化したこの機体。全方面に対して対応できるが故にパワーで劣るシュヴァルツェア・レーゲンでは対応できなかった。

 

 さらにその勢いを利用して鎌居達が振るわれるが、しかしラウラはそれを素早くかわす。

 

 あのブレードの危険性は既に身にしみて認識していた。それゆえに回避が間にあった。

 

 ・・・それが罠であることも気づかずに。

 

「ああ・・・」

 

 不知火の左腕がレーゲンの脚部をつかむ。

 

 強引な回避を行ったが故、ラウラには一瞬の隙ができた。それゆえにこのような行動をとることができ、

 

「この瞬間を待っていたぁあああああ!!」

 

 そのまま加速した一夏は、ラウラをアリーナのシールドに叩きつけた。

 

 ラウラという弾丸から観客を守るために、アリーナのシールドは最大出力で黒いISを排除しようとする。

 

 その莫大なエネルギーの奔流が、レーゲンのシールドエネルギーを高速で削り取っていく。

 

 最初のつかみでダメージをあたえ、しかしそこからはIS操縦者としての地力で押し返され続けていた。

 

 それを超えるためには、ISだけでない何かが必要だった。

 

 そして一夏は、それをアリーナのシールドに求めた。

 

 勝利の要素の一つに地の利というものがある。

 

 地形に合わせた戦術を組み立て、有利な地形から攻撃したものが勝利するというこの考え方は、つまり戦場を活かしたものが勝つということである。

 

 強力なシールドがあるという地を活かして利用した一課が、戦局を大きく傾けることは自明の理だった。

 

「な・・・めるなぁああああ!!」

 

 だが、その道理を超えてこそ第三世代。

 

 これまでのISが偶発的要素が無ければなしえなかった特殊能力を初期段階から発揮することこそがレーゲンを含めた新世代機の真骨頂。

 

 シールドに叩きつけていた不知火の動きが、明確に止まる。

 

 AIC。アクティヴイナーシャルキャンセラーと呼ばれ、停止結界と呼称されることもある捕縛機構が、一夏を空中に張り付けにした。

 

「これで終わりだ、織斑一夏」

 

 想像以上にダメージを負ったことで鬼気迫る表情になったラウラが、レールガンの砲身を突きつける。

 

「教官の栄光を汚した貴様に、ここまでやられるとは思わなかったぞ」

 

「ああ、そうだな」

 

 その言葉を一夏は否定しない。

 

 例え誰が何と言おうと、織斑一夏は織斑千冬の名誉を傷つけ、五反田蘭を苦しめた。

 

 確かに、誘拐したものが一番悪いといえばいいのだろう。だが、それをむざむざくらってしまったのは一夏の弱さでしかない。

 

 そして・・・。

 

「だからさ、負けられないんだよ」

 

「・・・なんだと?」

 

 それゆえに力を求めた。

 

「こんなところで負けたら、織斑千冬が名誉を捨ててまで助けた織斑一夏が、結局その価値も無かったって証明しちまうじゃねえか」

 

 一呼吸をし、そして告げる。

 

「一度失敗しちまって、それで終わるしかなかった俺は、だけどやり直すチャンスをアイツにもらったんだ」

 

 織斑一夏にとって、レヴィア・聖羅は恩人だ。

 

 彼女が手を差し伸べてくれなければ、自分は再起することすらできなかった。

 

 ・・・そんなチャンスを与えられておきながら、ただ自分の所業を悔やむことしかしない?

 

 それは馬鹿のやることだろう。

 

「だから俺はここで勝って証明する。織斑一夏は千冬姉に迷惑をかけた分だけ成果を出す。それだけの価値がある存在だって証明する!!」

 

 だから、最後の策を叩きつける。

 

「ふざけるなよ・・・」

 

 ラウラの表情はもはや鬼のそれだ。

 

「私を負かすだと?」

 

 今の言葉により、彼女の限界は突破しかけていた。

 

「あの方に力を授けられ、それによって高みへとたった私が、あの方の栄光を奪い取った貴様に負けるだと? あの人から与えられたたったひとつの栄光を、貴様が奪うだと?」

 

 ワイヤーブレードが射出され、プラズマ手刀が展開される。

 

「私のたった一つの栄光を、貴様ごときに汚されるものかぁああああ!!」

 

 レールガンで撃ち滅ぼすなど生ぬるい。この男は考えられる全ての手段でボロ雑巾へと変えてやる。

 

 その思いがひしひしと伝わり、一夏は―

 

「オイふざけんなよ」

 

 ここで初めて、自分自身の矜持以外の戦う理由を彼女に向けた。

 

 それは、怒りだ。

 

「千冬姉が与えた栄光が力? 違うだろうがふざけんなよ!? それは千冬姉に対する侮辱だろうがっ!!」

 

 言葉と共に解放した。攻撃が放たれるタイミングで解放した。

 

 良いだろう見せてやろうラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

 織斑千冬が与えてくれるのは、力だなんてただの暴力じゃ断じてないと。

 

 直後、スラスターが暴発した。

 

 限界を超えかねないほどのGが、ISの搭乗者保護機能を超えて自分にかかる。

 

 それだけの推力を以ってして、強引に停止結界を突き破った。

 

 不知火のスラスターを暴走させることによる莫大な推力の発生。

 

 織斑一夏は猪武者であり、最新技術の塊であるAICの対策など考えられない。

 

 そしてシャルルの協力を以ってしても、そもそも原理ゆえに下手な穴が存在しないこの技術の対策は立てられなかった。

 

 ゆえにこの力技による強引な解決策しか思いつかなかった。

 

 だが、それは強引な力技であるが故に、最新技術の塊である第三世代武装の対策として想定されていなかった。

 

 ゆえに、この成功は当然であり、

 

「喰らえぇえええええええ!!」

 

 鎌居達によるカウンターが、ラウラに直撃した。

 




自分の頭では、AICに対抗する手段がこれしか思いつかなかった・・・。

もう少しスマートな方法が思いつければよかったんですが、そう上手くはいきません。
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