・・・投稿できるレベルで設定練り込むまで時間がかかって、それまでに書きためたのが多すぎるから今のうちに減らしておかないと。
第一話 名前を覚えていてくれてよかったデス
トンネルを抜けると、そこは海だった。
IS学園臨海学校。一年生の一学期最大のイベントに、生徒たちは色めき立っていた。
「海だぁ~っ」
「臨海・・・」
「学校っ!!」
「「「「「ひゃっほぉおおおおおっ!!」」」」」
普通の臨海学校でもここまではしゃぐことはそうないだろう。
IS学園は本当にテンションが高い。
レヴィアと千冬の会話が解放通信で行われていたこともあり、ISに乗るという事実に対して真摯に向き合う者が増えたとはいえ、やはり年頃の女の子が集えばかしましい。
テンションはうなぎ上りに上がって、千冬の出席簿がところどころで唸りを上げていた。
「いや~、いい天気だよなぁ」
そんなただなかにいる唯一の男である一夏は、しかしその状況を一切気にすることなくのんきだった。
朴念仁・鈍感・枯れた男の三冠をゲットするこの男は、世の男たちに殺されても文句は言えないのではなかろうか?
つい先日レヴィアと水着を買いに行き、トラブルに巻き込まれたとは思えないのんきさだった。
ちなみにトラブルとは、昨今の現状ゆえにざらにいる女尊男碑の行き過ぎた女に使いっぱ知りにされそうになり、あげく断ったらいきなり警備員に付きだされそうになったものだ。
何が酷かったかというとその際のレヴィアの反応であった。
速やかに一夏の立場を『大声』で明確にすることによって周囲の注目を集め、ISに触れたこともない女性がISを駆る男性を奴隷のように扱おうとすることを演説混じりで非難。直後に法的に訴えることを女性に明言までした。
もとよりレヴィアは権利は義務と責任を行使した結果得るものであるとの持論を持ち、それに忠実に生きている王である。
ゆえにその手の類に関しては速やかに排除する性分であり、しかも民事でいいので裁判に持ち込むという、財力あふれる立場を最大限に利用した戦術をとる。
結果、そんなことをしでかした女性は公衆の面前で土下座するという大被害を負った。・・・実名入りで写真をネットに上げようとしたレヴィアをとどめるのは大変だったと付け加えておく。
基本的に良い主なのだが、あのあたりとエロさはどうにかならないだろうか?
などと考えている一夏に、女体特有のやわらかさがのしかかる。
「一夏! ぼさっと突っ立ってないで泳ぐわよ!!」
「お待ちなさい! 一夏さんにはわたくしにサンオイルを縫っていただくのですからね!!」
「よよよ嫁! そ、そそそその・・・」
のしかかる鈴を引きはがそうとするセシリアに、さらにその後ろからラウラが赤い顔で近づいてくる。
「何やってるの、一夏」
そして、レヴィアを見失って不機嫌な簪がそこにツッコミを入れた。
結構気合を入れて水着を新調してきたというのに肝心のレヴィアがいないので、相当不機嫌だ。
「か、簪か。これどういう状況だよ」
「クラス代表対抗戦を思い出して。それですべて説明がつくから」
「「な・・・ちょっと!?」」
「クラス代表対抗戦でなにがあったのだ?」
簪のある意味ストレートすぎる説明に、鈴とセシリアはビビって後退し、事情を知らないラウラは首をかしげる。
・・・思い出す。
そういえば、鈴に答えたのは人がいないところだったから、一般生徒は鈴の告白に対する返事があったことにも気づいていないはずだ。
その状況下でラウラがあんなことをしたから、もしかしたら生徒たちは注目しているのかもしれない。これがいわゆる三角関係だというものだろうか?
だがそれだとセシリアはどういうことだ? ・・・わからん。
「いや、それだと説明つかないことがあるんだが」
「馬に蹴られたらどう?」
ものすごい冷たい声でバッサリ切り捨てられてしまった。
孤立無援で助けは来ない。
さあどうしようと思ったその時に、後ろから高い声が聞こえてきた。
「・・・あっはは。だったら皆でビーチボールとかどうデス?」
その声に皆が振り向けば、そこにいたのは銀の髪を短く切りそろえた少女の姿。
一瞬考え込んだが、しかしすぐに思いいたる。
ここにいるのは一組と二組と四組のクラス代表。ゆえに代表会で顔を見たことがあるのは当然だった。
「たしか、アースガルズさんだっけ?」
「そうデス。名前を覚えていてくれてよかったデス」
一夏が名前を問い返せば、少女はほっとしたかのように息をついた。
「・・・誰ですの?」
唯一知らないセシリアが首をかしげ、それに応えるのはなんだかんだでそんなセシリアとよくつるんでいる鈴だ。
「三組のクラス代表よ。ほら、トーナメントでハンドガン使って相手倒したでしょ?」
「ヒルデ・アースガルズ。・・・世界各国に兵器売買と民間警備企業で財をはせているアースガルズ・コーポレーションのテストパイロット」
簪の説明が一番わかりやすいだろう。
アースガルズ・コーポレーション。
世界各国のIS産業にも手を出しており、単独開発している先進国にも匹敵するISを開発し、世界第四位のシェアを生みだしている。IS学園にも機体そのものは展開していないが武装は展開しているほどだ。
自国でのIS開発ができない国家はIS開発のために大きく出資をしており、それゆえに事実上世界で一番ISコアに触れることができる企業だともいえる。
そんな企業のテストパイロットとくれば、もはや先進国の代表候補生にも匹敵する。実際この企業の出身が国家代表として大会に出たことも数多い。
「ヒルデでいいデス。今後はもっと関わることになると思うので、是非専用機持ちと親交を深めたいのデス」
「どういう意味だ」
ラウラの問いかけに、ヒルデはその平均な胸を張る。
それに貧乳だらけの一同の額に青筋が浮かぶが、ヒルデは気付かなかった。
「今まで本体の開発が遅れて持ちだせなかった自分の専用機が完成したデス。なので、皆さんとおそろいデス」
「へぇ。どんな機体なんだぐふっ」
思わず無遠慮にそんなことを聞いてしまい、恋する乙女の嫉妬による肘打ちをくらってしまう。
ちなみに、そういった経験が少ないラウラとそもそも感染していない簪は、むしろ性能を聞き出せないかと政治的に考えて耳を澄ませていた。
「結構特殊な機体とだけいうデス。それ以上は・・・」
あえて意味深にいい、ヒルデはビーチボールを掲げる。
勝てば教える。負ければ教えない。
実にわかりやすい。そしてあえて乗ってやろうという気分になってきた。
「いいわよ。あたしとラウラと簪でチーム組んで、それ以外は敵チームね」
「それでいい。・・・一夏は一度叩きのめされた方がいいしね」
「ちょ、どういう意味だよ!! 誰か教えてくれ!!」
「というか、わたくしはどちらかというと小さい方なのですが!? ああなんで自分でばらしてますの!?」
「ふっふっふ。極貧にとっては少しあるだけでも嫉妬の対象ということデス。その勝負乗ったデス!!」
「いや、私は嫁と組みたいのだが・・・鈴、引っ張るな!!」
夏の海で、一夏たちは新たな友と共に夏を満喫していた。
ちなみに、ビーチボールは参加希望者が増えて混沌状態になって試合続行不可能になったと付け加えておく。
一夏が青春を(無自覚に)謳歌しているころ、レヴィアは1人岩場のほうについていた。
あのまま水着少女の群れの中にいると、我を失って暴走しそうだったので距離をとったのである。
「す、スペック高い美少女の群れが水着で・・・っ! これは何の御褒美だ、刺激が強すぎる!?」
鼻血すら垂れ流しながらガクガク振るえるレヴィア。色欲に飲み込まれかけた上級悪魔の姿がそこにはあった。
一言言おう。とてもあほらしい。
そんな主の姿に一言言いたくなったのか、アストルフォがどこからともなく現れると、ティッシュの箱をそっと差し出した。
「あ、ありがとうアストルフォ。・・・いつもすまない」
「・・・気にするな」
そういいながら使ったティッシュを回収するためのポリ袋を取り出したアストルフォは、しかし動きを止めると背後を凝視する。
姿を消した存在の気配を感知。この気配は以前にも感じたものだった。
それに気付いたのか、レヴィアも鼻血を吹くと鋭い視線を後ろに向ける。
その風景がゆがみ、中から現れたのは。
「ほ、箒ちゃんのビキニ姿はあはあ・・・。本当に刺激が強いよねぇ」
鼻血をまきちらした篠ノ之束の姿があった。
・・・レヴィアもそうだが残念なものが多い海岸である。
「いやぁ、お互いに良い物を見たね。これで私は十年ぐらい戦えるよ!」
「そ、そうか。まあ水着の美少女はそれだけで活力の源だから仕方がないね」
サムズアップする束と、ちょっと引きながらも同意するレヴィアの姿にアストルフォは額に手を当てた。
主は基本的に素晴らしいが時折ダメだ。そしてそれに同調するこの天才科学者も問題が非常にある。
「それで? 天下の篠ノ之博士がこんなところに何の用ですか?」
とはいえ、締めるところはしっかり締めるから頼れるのだが。
「特に変なことはしないよ。大事な妹に迷惑かけたお詫びをしたいってだけかな?」
「それを信じろと? 悪いがあなたはの人間的な評判は非常に悪い」
「それは確かにそうかなぁ。いや、黒歴史なんで忘れてほしいかも」
「人間生きていれば黒歴史が増える物ですよ。お気になさらず」
はっはっはと笑い合う二人だが、その目は笑っていない。
レヴィアは篠ノ之束の情報を事前につかんでいたからこのフレンドリーな女性が本物か心底疑っていた。
束はレヴィアがただものではないことを既に『知って』いたため、さすがに無警戒というわけにはいかなかった。
少なくとも、ここで激突すれば双方ともにただでは済まない。
そして・・・。
「いっくんのことを、お願いしてもいいかな?」
束にそのつもりはなかった。
「一夏君のことかな?」
「うん。正直ね、いっくんがISを仕えた理由はこの束さんにも分からないんだ」
その言葉に、レヴィアは僅かにだが驚いた。
この天災ならその原因をつかむことはできると思っていたし、もしかしたら原因そのものであることも考えていたからだ。
それが彼女でもわからないという。
一夏の存在は想像以上に重い。この状況下で真実が知れ渡ればどうなるかを考え、レヴィアは状況を天秤にかけ―
「―約束しよう」
それでも、決意を変えなかった。
「一夏君は僕にとっても大事な存在だ。だから全力を持って支援するし、可能な限り悪いようにはしない」
「そっか・・・」
その言葉に束は微笑み、
「ありがとう」
真摯に頭を下げた。
それは、心底他人を認めている人にしかできないようなもので、不覚にもレヴィアは見とれてしまっていた。
「ISはきっと世界をひっくり返すけど、君みたいな人がいるならいっくんは大丈夫だね」
そういうと、束の姿がうっすらと消えていく。
「ありがとう。お願いね」
・・・彼女を見送りながら、レヴィアは状況を判断し損ねていた。
のちに、レヴィアは束を取り押さえておかなかったことを心底後悔することになる。
その僅か一日後、篠ノ之束は姿を現した。
姿を現したのはIS試験用ビーチ。周囲が切り立った崖に囲まれたそこは、ISで空を飛ぶか一旦潜って海中のトンネルから出るかするしかない天然の隠れ家だった。
そんな機密性が高い場所で、ISのテストを行うのが本来のこの臨海学校の目的。
そして、そんな場所でものすごい高笑いをしながら篠ノ之束は姿を現した。
「はーはっはっは! 大天才束さん参上だよ~? みんな拍手拍・・・グボッ!?」
そしてその頭部を千冬に容赦なくつかまれた。
いや、これはつかむというより砕くが正しいのだろうか?
「貴様は今が授業中だということも理解できていないようだなぁ?」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! ちーちゃんストップ束さんの優秀な頭脳がこのままだとパァンって割れちゃう!?」
・・・臨海学校とは学業の一環であり、ゆえに千冬は教師らしく振舞っていた。
容赦なくアイアンクローを叩きこむのが教師として正しいのかはこの場合さておく。
「・・・姉が、申し訳ない」
絞り出すように、うつむいた箒から謝罪の言葉が漏れる。
ふだんからクールビューティの認識を持たれている箒のこの姿に、生徒たちは箒が苦労していることを痛感した。
「あ、改めまして・・・。IS開発者の篠ノ之束です。よろしくね♪」
アイアンクローから脱出した束がポーズを決めて生徒たちに己の在り方を証明する。
目じりに涙がにじんでいるのがご愛敬だが、それがむしろ緊張を緩和しているようだ。
「いっくんもちーちゃんも元気で何より。そして箒ちゃん!」
ジャンプして箒の前におりたった束は。
「箒ちゃんに、プレゼントがあるんだ」
顔をすこし赤くして、束がスイッチを押した。
その瞬間飛来するのは、三メートルほどの菱形。銀色に包まれたそれは、束の隣に降り立つと、その中身を解放した。
それは、紅。
色鮮やかな椿のような、誰もが見惚れる紅の鎧。
「この大天才が持てる技術の粋をつくし、設計思想的には第四世代なハイスペックチートIS」
己の最高傑作を、束は自慢げな笑顔を浮かべて言う。
「その名を、紅椿!! ぜひ箒ちゃんに使ってほしいんだよ!!」
その姿に、その場にいた者たちは圧倒された。
ISという機体の基礎ともいえる第一世代。
増設ユニットによる特化仕様を取ることができる第二世代。
単一仕様能力のような、特殊能力を機体のデフォルトとして再現することを目的とした、試作段階の第三世代機。
それを飛び越え、基本スペックによる全領域対応を目的とした新たなる新世代機。第四世代。
それを与えられるという時代を先取りした栄誉を―
「・・・辞退します。というか、そんなもの渡されたらいろいろと問題が起こるでしょう。一般生徒に渡していいものとダメなものの区別ぐらい付けてください姉さん」
「「「「「「「「「「えぇえええええええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」
ため息交じりに箒は拒否した。
「・・・大変だ千冬姉! 束さん息してない・・・心臓止まってる!?」
「お、おいしっかりしろ!!」
結果として織斑姉弟を混乱させるぐらい衝撃的な一言だったと追加しておこう。
本作品の箒さんは本当にクールです。
この章から、本格的にD×D要素がからみ始めてきます。
そしてこの章で結構この作品の重要根幹部分も出てきますし、感想で疑問に上がっていた一夏が戦車な理由なども説明します。
さすがに投稿速度は落ちていくと思いますが、楽しんでみていただけると幸いです。