インフィニットストラトスD×D   作:グレン×グレン

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本作における衝撃の設定の一つが公開されます。


最初に言っておく。

箒ファンの皆さんごめんなさい


第四話 あれはアイツの失態だ

 

 

 夕暮れの一歩手前、海の上に人影が多数存在した。

 

 彼らはISを身にまとわない。完全な生身の状態で宙に静止していた。

 

「・・・通信の傍受は失敗しましたが、衛星のハッキングには成功しました。銀の福音はすぐ近くにいます」

 

「では、私が監視を行う。残りは二班に分けそれぞれ別方向からIS学園の人間が集う旅館を挟撃しろ。後方からの強襲はロートに任せる」

 

「承知しました。ジーコン様」

 

「全ては偉大なる真なる魔王の世界のため」

 

 ・・・今、世界は大きく変動する瀬戸際へと立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一次福音迎撃作戦は失敗した。

 

 オフェンスを担当した織斑一夏が戦闘不能になったためである。

 

 その織斑一夏は、急遽用意された部屋で、機械に繋がれて昏睡していた。

 

 絶対防御とはその名に反して全ての攻撃から身を守るわけではない。

 

 エネルギーの都合上の限界は確かにあり、それを超えたダメージは使用者へと直撃するのだ。

 

 ゆえに、一夏はその影響で昏睡状態であった。

 

 奇跡的に重傷と呼べるレベルで済んでいるが、それでも本来なら死亡してもおかしくないほどのダメージを一夏は受けていた。

 

 その一夏の様子を、レヴィアは見ていた。

 

 本来なら彼女はこの部屋に入ることはできない。

 

 情報交換のためにIS学園に送り込んでいた工作員などの協力で情報をつかみ、こっそりと見舞いに来ていたのだ。

 

「・・・馬鹿だな、君は」

 

 深い眠りについた一夏の頬を、その手が撫でる。

 

「君は僕の物だと言ったはずだ。それなのに僕の許可もなく命を無駄にかけて・・・」

 

 静かに目を閉じ、レヴィアは過去を思い出す。

 

 紅い赤い(あか)い血があふれだすかのように漏れる、あの光景を。

 

 あんなものは二度とゴメンのはずだった。

 

 そうならないように努力してきたはずだった。

 

 それも思い込みではなく、ちゃんと公平に見る人たちに評価されるほどの成果を出してきたはずだった。

 

 その結果が、これだった。

 

 選ばれた者であり、選ばれた者として行動し、その名に恥じないよう努力を重ねてきた。

 

 それなのに、この結果だった。

 

『・・・アストルフォ。あとどれぐらいで付く?』

 

『あと十数分。・・・蘭はふさぎこんでいる』

 

『フェニックスの涙は?』

 

『すまない』

 

 即座の回復は不可能。もちろん回復そのものは可能だが、この十省ではさすがに時間がかかるだろう。

 

 その事実に落ち込み、自分の指導の甘さに腹が立った。

 

 悪魔の駒によって転生した悪魔は、使用した駒によって能力の上昇を得る。

 

 一夏に使用した駒は戦車。その特性はパワーとディフェンスの強化。

 

 これは一夏に対する詫びといってもよく、何かあっても大丈夫であるように頑丈さを与えようとした結果だ。

 

 本来一夏の実力相当の悪魔が、これほどのダメージを受けることなどあり得ない。

 

 しかし、一夏はある特性に特化して鍛えており、その結果防御力がおざなりになってしまった。

 

 本来ならこんなことはあり得ない。そのための対策はちゃんと立てているし、それが発動すれば軽傷程度で済んでいたはずだ。

 

 ・・・IS学園に入るにあたり、一夏からの要望で処置をしていなかった。倫理的な観点からレヴィアも納得したが、こんなことならやっておけばよかったと痛感する。

 

『アストルフォ。・・・着いたら旅館の護衛を頼む。僕はちょっと行ってくるよ』

 

 最後に一夏の髪に触れ、レヴィアは振り返る。

 

「人の物に手を出したんだ。まさかただで済むとは思ってないだろうね?」

 

 その目は深く静かに燃え上がっていた。

 

 今、終末の獣が戦場に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋で静かに、箒は目を閉じていた。

 

 思い返すのは先ほどの戦い。

 

 冷静に思い返し、そして自分の動きを思い返す。

 

 あの時自分に失態はなかったか、もっといい動きはできなかったか。

 

 何度も思い返し続け、しかし突然目をあける。

 

「・・・何の用だ?」

 

「勘が鋭いわね」

 

 障子をあけ、鈴が静かにはいってくる。

 

「福音の場所が分かったわ。30キロ離れた沖合に停止中ですって」

 

「・・・それで?」

 

 その言葉の意味がわからず、箒は首をかしげる。

 

 福音の場所が分かったのはいい。だが、それが彼女にとってどういうことだというのだろうか。

 

 それについて判断するのは自分の役目ではない。それは千冬たち、指示する側の役目だろう。

 

「出撃命令が出たのか? それなら行くが」

 

「・・・一つだけ聞くわ」

 

 静かに、鈴の目が箒を射抜く。

 

 それを箒も、向き直って正面から受け止めた。

 

「アンタ、なんとも思わないの?」

 

「一夏のことならこれでも衝撃は受けているさ」

 

 まぎれもない本心を告げる。

 

「だが、あれはアイツの失態だ」

 

 瞬間、胸倉を掴まれて一気に持ち上げられた。

 

 その小さな体にどれほどの力があるのかといったレベルだったが、箒は驚かない。

 

 そういうものがあるというのは身を持って体験している。この程度で驚くようなことではなかった。

 

「アンタ・・・本気で言ってる!?」

 

「ああ本気だ。あいつは好機を逃して自分から攻撃を喰らった。アレを失態といわずになんという?」

 

 殺意すらこもった瞳で睨みつけられるが、箒は動じなかった。

 

「どう思い返してもアレは決定的なまでに一夏のミスだ。それはひるがえせんよ」

 

 今この事態は、下手すれば何万人もの犠牲者を生む可能性のある緊急事態である。

 

 そして一夏がチャンスを犠牲にしてその身を犠牲にしてまでかばったのは密漁者だ。

 

 多くて数十人の、道理から外れて行動するものと、無数の道理の中に生きる者。

 

 表の社会を守ろうと行動する物が優先するべきなのはどちらなのか、それは聞くまでもない。

 

 箒はそれゆえに一夏が悪いと断じる。

 

 被害を出さないようにするために出撃する気になっておきながら、よりにも寄って犯罪者のために失敗してはいけない作戦を失敗した。

 

 ゆえに箒は一夏に同情しないし、非難する。目的のために切り捨てられないような手合いに対して、かける情けなど一切なかった。

 

「へえ。それで自分には一切責任がないとか開き直るわけ?」

 

「まさか。一般生徒が度の過ぎた高性能機を与えられてそのまま参加したのは私のミスだ。あれに織斑先生を乗せていれば今頃は一夏も無事だったろうな」

 

 確かにそうだろう。

 

 ブリュンヒルデの称号すら持つ最強のISのりに、稀代の天才科学者が開発した新世代ISが組み合わされば単機でも福音を撃破できただろう。

 

 素人同然の使い手では真価を発揮できるわけもない。その点において箒は自分の失態を認めていた。

 

「ああそう。分かったわ」

 

 唐突に、その手から力が抜ける。

 

「これから福音をぶちのめすわ。織斑先生には内緒だけど、アンタはどうする?」

 

「これ以上一般生徒が出しゃばるわけにはいかんだろう。そもそも命令違反をするつもりはない」

 

「「・・・・・・」」

 

 静かに視線がぶつかりあう。

 

 鈴は怒りを込めて、箒は無感動に。

 

「それならいいわ。でも、これ以上一夏に関わらないで」

 

「あいつが寄ってくる分はそちらでどうにかしろ。それだけ呑めば受け入れよう」

 

 それだけ言葉を交わすと、鈴はそのまま出て行った。

 

 完全に嫌悪の感情が込められた視線だったが、それは一切気にしない。

 

 気にしないまま、箒はプライベートチャネルを起動して通信を繋ぐ。

 

 紅椿の物ではない。

 

 あれは箒にとって欠陥機だ。そんなものを日常に置いて頼るつもりなど箒には無かった。

 

『・・・シャルル、聞こえるか?』

 

『あ、箒? そっち専用機持ちが行ったみたいだね?』

 

 シャルルは苦笑するような響きで返すが、その言葉に箒は得心する。

 

『どうやら単独行動というわけではないようだな』

 

『僕はお互い無かったことにしたけどね。他の専用機持ちは全員動くみたいだよ?』

 

『更識も動くのか? 意外だな』

 

『レヴィアさんに申し訳が立たないみたいだよ? あとアースガルズさんはリベンジするつもりみたい。あとはまあ・・・想像通り?』

 

 なるほどと納得する。

 

 簪はレヴィアに想いを寄せている。そのレヴィアと親しい一夏がこんなことになり、仇を討とうとでも考えたのだろう。

 

 ヒルデのことはわからないが、もしかしたら言っても聞かないと判断して仕方なく護衛したのかもしれない。あの戦いでも支援に徹していたし、そういう性根の可能性もある。

 

 鈴にセシリアにラウラはもっと簡単だ。惚れた男が酷い目にあって、黙っていられる性分ではないだろう。

 

 相も変わらず異性を引き付ける男だと実感し、箒は苦笑する。

 

 思えば自分も昔はあれに想いを寄せていたわけだ。そういう意味では少しばかりの共感を抱くが、それもせん無きことだ。

 

 今はそれ以上の想いがこの身を締めている。それがある限りそんなものは意味をなさない。この身を占めていた姉への複雑な感情も、自分の状況に対する憤りも、今の彼女にはくだらないものだった。

 

 篠ノ之箒は刀として生まれ変わった。

 

 ゆえにそんなことに興味はない。

 

 だからその銘にも刀自身は意識を向けない。

 

『じゃ、そろそろ僕らも覚悟を決めようか、スプリング』

 

『ああ、巻き添えで死ぬのはごめんこうむるからな、サマー』

 

 亡国企業の当主の刀、スプリングは、これから起こるであろう破壊から身を守るため、静かに転移用の魔法陣の準備をする。

 

 これから予定通りに行けば、この旅館は周囲の土地ごと地球上から消え去るだろう。

 

 一夏が痛みを感じることすらなく死ぬことに対して、箒は自分でも驚くぐらい無感情なのを自覚した。

 

 そんな自分に好感を覚えて、さすがに自分でもちょっと引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして少ししてから、教師たちはこの非常事態にようやく気付いた。

 

「代表候補生の半数以上が無断で出撃しただと!?」

 

「レヴィア・聖羅さんの姿も見えません!!」

 

「代表候補生の位置が判明しました! 福音にむかって高速で接近しています!!」

 

 想定外の事態が重なり、教師たちは翻弄される。

 

 そんななか、千冬は少し目を閉じて考えた後、口を開く。

 

「打鉄とラファール・リヴァイブが一機ずつあったな。私と山田先生で連れ戻す。残りは生徒たちの護衛をしているんだ!!」

 

「わ、分かりました! 五分で準備します!!」

 

「三分でやれ!」

 

 素早く指示を出しながら、千冬は脳裏で一夏のことを思う。

 

 思えば、ここ数年は多少すれ違いがあったかもしれない。

 

 数年前に誘拐されてから、レヴィア・聖羅と知り合ってから、どことなくぎこちないことがいくつもあった。

 

 IS学園に入学してからも、教師としての本分を重視するため、なかなか距離を縮められなかっただろう。

 

 その間にもあの愚弟はその一級フラグ建築士としてのポテンシャルを発揮し、女子高という状況も手伝って多くの人に囲まれた。

 

 それらすべてが仇となって今の状況がある。

 

 姉としても教師としても人としても何とかしなければならない。

 

「麻耶」

 

「なんですか、織斑先生」

 

「・・・福音は私が相手をする。生徒達を、頼む」

 

 静かに決意を込める。

 

 福音は、たとえ刺し違えても自分が撃破すると。

 

「死んじゃだめですよ、織斑先生」

 

「まあ、善処するさ」

 




本作における敵ネームドャラの一人、箒さん。


なんというか色々な物をふっ切ってしまっています。半裸をみられて反応しなかったのも、ふっ切ったので特に意識してないというわけです。


そして冒頭で暗躍している方々は、まあD×Dなら大方予想できているであろうあの勢力です。
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