インフィニットストラトスD×D   作:グレン×グレン

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この話でレヴィアの奥の手が二つ出されます。


第八話 これって集団幻覚ってオチは無いですよね?

 

 

 ただ威光を振りかざしてその恩恵にあずかろうとするものと、その威光を照らすことに使い、そのうえで恩恵すら使って領民を導くもの。

 

 王という存在における悪い在り方と良いあり方が、真正面から激突した。

 

「だったらこれならどうだ!!」

 

 威風堂々とするレヴィアの姿に業を煮やしたのか、ジーコンが空間をゆがませて剣を呼び出す。

 

 見るからに禍々しいオーラを放つその剣を握り、ジーコンはレヴィアにきりかかった。

 

 それを手に障壁を展開してレヴィアは防ぐが、その剣は障壁を両断し、レヴィアの腕と激突する。

 

 瞬間、今までにない速度でレヴィアが弾き飛ばされた。

 

「魔剣ディルヴィング! クレーターすら穿つ破壊力の前に弾き飛ばされるがいい!!」

 

 続けざまに切りかかり、その衝撃がレヴィアをどんどん後方へと押しつける。

 

 その余波は海にすら及び、剣が叩きつけられるのに同期して、巨大な波がいくつも発生する。

 

「なるほど、それなりに考えているようだ。足りない実力を補う努力は認めよう。及第点はくれてやる」

 

 両腕に小さくも、しかし確実な切り傷を作りながらレヴィアは敵の実力を上方修正する。

 

 思った以上に強敵だった。ただ自分が強いと思い込んでいるだけのおろかものかと思ったが、それにふさわしい武器を手に入れようとする努力ぐらいはしていたようだ。

 

 レヴィアは強力な武器を集めることを否定しない。

 

 それを否定すれば、高性能の兵器を開発する今の人類の流れそのものを否定することになる。

 

 足りない者をよそから持ってきて補うのは、当然の行動だ。

 

 しかし、それでもこの程度の相手に屈することがあってはならない。

 

 目の前の男は権利だけむさぼろうとするおろか者だ。

 

 その権利を行使する側としての在り方があまりにも足りていない。未熟であり幼稚であり考えが足りない。

 

 そんなものに、今の時代を象徴するISをくれてやる道理など存在しない。

 

 ゆえに、振り下ろされるその一撃にカウンターで拳を叩きこみ―。

 

「だがそれまでだ!!」

 

 その一撃を、防ぎきった。

 

 驚愕に目を開くジーコンの視界は、レヴィアの拳を確認する。

 

 まるで鋼で動物の像を作ったかのように、鋼の毛皮がその腕を覆っていた。

 

「それが・・・貴様を魔王の領域へと近付けるといわれている・・・」

 

「そう。超剛性防御結界、金剛鉄腕。・・・ひじから先までしか展開できない、欠陥品さ」

 

 レヴィアの両腕の変化はそれだけではない。

 

 指の長さから爪の形状に至るまで変化し、それはまるでオオカミと人をかけ合わせたかのような姿だった。

 

「人狼の血を持つ混じり者の悪魔であるが故に発現させることができたこの能力、貴様じゃ一万年かかってもできないだろう?」

 

「お・・・のれぇ!!」

 

 やけになって何度も叩きつけてくるが、レヴィアは正確に腕で受け止める。

 

 この防御は体ごと巻き込むような攻撃には無意味だが、相手が武器を使ってくるなら話は別だ。

 

 結界そのものが空間にとどまるように動くため、重量物を持ち上げることはできないが防御力が働くため支えることは容易。

 

 ゆえに、この防御は彼女の真骨頂。

 

 折れぬ砕けぬ曲がらぬ染まらぬ。そこにあり続け輝きを放つレヴィアの王道を示す、究極の防御の体現だ。

 

 現魔王が全力を出してなお突破困難のこの防御を、魔王の残骸でしかないジーコンが破ることなと不可能だと、レヴィアは確信していた。

 

 そして、ゆえに今度は守りを打ち砕くことで証明する。

 

「固有術式、起動」

 

 レヴィアの左腕の金剛鉄腕が、一瞬で消滅する。

 

 それらは魔法陣と化しレヴィアの左拳に集約される。

 

 それを振りかぶりながら、レヴィアはその現象の名を宣言した。

 

「固有術式、焦がれの矛盾。・・・喰らっておけ!!」

 

 瞬間、隕石が墜落したかのような衝撃が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね? 大丈夫だったデス」

 

 ヒルデの言葉も耳に入らない。

 

 目の前で起きた大規模破壊に、その場にいた物は唖然としていた。

 

 その視界の先、ジーコンは右腕を吹き飛ばされていた。

 

 魔剣ディルヴィングが宙を舞い、それをレヴィアは軽くつかむ。

 

 禍々しいオーラがレヴィアを汚染するかのようにまとわりつくが、レヴィアは意にも介さなかった。

 

「使わなければ呪いもこの程度か。意外と怖くないね、伝説の魔剣もこの程度か」

 

 軽くふるいながら、レヴィアはジーコンに視線を向ける。

 

 その姿は勝者のそれであり、そしてそれは誰が見ても明らかだった。

 

 圧倒的かと思われた攻撃は通じず、切り札と思われた武器も奥の手で防がれ、そして腕ごと吹き飛ばされて奪われた。

 

「鈴ちゃんの腕を千切った報いはそれですませてあげるよ。今から投降するなら、受け入れるけど?」

 

 油断なく向けられる視線にさらされながら、ジーコンは悔しげに歯ぎしりをしていた。

 

「お、お姉さまの完全勝利だと・・・?」

 

「鈴さんを一瞬で倒した相手をああも簡単に・・・?」

 

「お、織斑先生? これって集団幻覚ってオチは無いですよね?」

 

 ラウラもセシリアも麻耶も現実を受け入れきれていなかった。

 

 当然だろう。

 

 世界最強の兵器とすら言われるISを生身で撃破するような存在が現れたと思ったら、それを圧倒する存在が実は学友で一般生徒だったなどと、信じられないにも程がある。

 

 なまじ代表候補生(元含む)であるだけにその分衝撃は重い。当分夢に見てうなされたとしても同情できるレベルだ。

 

「レヴィア。やっぱり、カッコイイ」

 

 1人恋する乙女なのはこの際置いておいて、千冬は視線を後ろに向ける。

 

「アースガルズ。お前、いつから知っていた?」

 

 思えば、彼女は最初からこの展開を予想していた節もある。

 

 ただ一人レヴィアの勝利を一切疑わず、今も特に動揺している節がない。

 

 レヴィアの正体を何らかの形で知っていた可能性は非常に高かった。

 

「最初からデス。・・・こっちの業界じゃ有名人デス」

 

「説明はあると思っていいんだろうな」

 

「仕方がないデス。他の人には内緒にしてほしいデス」

 

 指を口元に当てるヒルデに、千冬は心底ためいきをついた。

 

 鈴のあの尋常ではない拳の速さなどから考えて、一夏達もこのことについて知っている可能性が高い。

 

 必ず聞きだそうと心に近い、そして意識を戦闘へと戻す。

 

 あまりに圧倒的な状況下に、ジーコンは明らかに狼狽していた。

 

「何故だ・・・。何故、白龍皇の光翼が効かない!?」

 

「馬鹿じゃないの? あんな露骨な能力の耐性、作ってないわけがないだろう。禁手(バランス・ブレイカー)状態でも迎撃フィールド張れば耐えられるし、通常状態なら肉体の耐性だけで無効化できる」

 

 ためいきすらつきながら、レヴィアはそう断じる。

 

 もはやだれが見ても勝敗など明らかな状況に、この場にいる誰もがレヴィアの勝利を確信した。

 

 それはジーコンも同様で、しかし彼はまだあきらめない。

 

 自分はもともと別働隊だ。本命は別にいる。

 

 欲を出して福音をとらえようと考えて自分はここにいるが、そもそも目的は臨海学校に出ているISだ。

 

 そのために念を入れた部隊編成をしているし、なにより向こうには赤龍帝の籠手がある。

 

 他者を弱体化する白龍皇の光翼なら無効化されることもあるが、自身という内側を強化するアレならそれは意味をなさない。

 

 あくまでレヴィアという存在は外側からの干渉を防ぐことに特化しているのだ。そこに付け入る隙がある。

 

 ゆえにその事実を利用して巻き返しを図ろうとしたジーコンは、しかしあり得ぬ言葉を聞いた。

 

「・・・あ、旅館のほうを人質にするつもりなら甘いからね」

 

 勝者の笑顔を続けながら、レヴィアはそう言い切った。

 

「アストルフォ。そちらはどうだい?」

 

 その言葉に、彼女の背に映像が展開する。

 

 それは、殺戮の現場だった。

 

 破壊の痕と無残な死体がそこらじゅうにあり、そしてそれを生みだしたものはその腕に紅い腕をつかんでいた。

 

 それを見てジーコンは驚愕する。

 

 十秒ごとに自身の能力を強化し、そしてその倍化の力を他社にも与えることができる神滅具、赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》。

 

 それが引きちぎられていた。

 

『迎撃終了。増援が助力』

 

「おかしいね。念のために雇った魔法使い組織はまだ到着していないはずだけど」

 

『いや、悪魔祓い』

 

 通信ごしの言葉に、レヴィアは眉をひそめる。

 

「教会の人間がなんのようだ? 助かったのは良いんだけど、僕の立場でうかつな接触は避けたいんけどね」

 

『会談要請。魔王との通信は1人が限度、かつ極秘回線を要求』

 

「・・・警戒を続けながら非常用直通回線でサーゼクスさまを呼び出してくれ。今のうちに片付ける」

 

『了解。悪魔祓いからも1人行った』

 

「来る前に片付けたいねぇ」

 

 そう言いながら通信を切り、そしてジーコンに宣言する。

 

「貴様の負けだ。負けを認めるか無様に散るか、好きな方を選びたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心の中で、レヴィアは相応に焦っていた。

 

 念のためにアストルフォに警備をさせて、さらに一夏に蘭をつけるという判断をとっていたが、まさか本当に必要になるとは思わなかった。

 

 しかも赤龍帝とか想像の外にも程がある。アストルフォの戦闘能力が規格外だったので何とかなったが、まさかここまで危険だとは思わなかった。

 

 白龍皇と赤龍帝。歴史上幾度となくぶつかり合い、そして多くの被害を生みだした覇の担い手。二天龍というドラゴンの至高。

 

 そんな存在を奪い取ったジーコンにはある程度の評価を送ろう。おそらく相応の数の犠牲者が出ただろうが、将来的に見ればそれだけの価値はあった。

 

 だが、それをあの男は無駄撃ちした。

 

 せめて禁手に至るまで鍛え上げてから実戦に投入すれば勝ち目はあったが、今の未熟なままでは意味がない。

 

 故に心底ほっとして、しかし動揺は表に出さない。

 

 王とはそういうものだ。

 

 人々の前で弱みを見せれば、王の在り方は揺らいでしまう。

 

 敵の前で弱みを見せれば、それは付け入るすきになる。

 

 だから揺らぐな振れるな乱れるな。

 

 今この場で動揺することは許されない。勝利の意味を明らかにしろ。

 

 だからこそ、威風堂々と、レヴィアはジーコンに宣言する。

 

「この場で降伏するというのなら、僕の方で現魔王の方々に相応の扱いを願ってもいい。悪い取引ではないだろう?」

 

 焦がれの矛盾はもう使えない。

 

 アレは一日限定の一発勝負で使うものである。

 

 加えて言えば、あれは障壁の一つを一日使用不能にする代わりに、攻撃力に変換するという代物だ。金剛鉄腕クラスの障壁は完全に変換できないが、それでも規格外の攻撃力を自分に与えてくれる。

 

 ゆえに、今の自分は金剛鉄腕を右腕にしか張れない。

 

 それでも苦戦するとは思わないが、世の中には限度がある。

 

 ゆえに屈しろ。

 

「・・・・・・もはや、詰んだか」

 

 その言葉に、心の底でほっとした。

 

「ならば、せめてこれを試そう」

 

 だから、この言葉は予想外だった。

 

「・・・生き残れた場合の褒美として教えておこう。この行動を選んだのは私だが、それはある存在を迎え入れるにあたる、あちら側からの条件だ」

 

「・・・まさか、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーか!?」

 

 その言葉にレヴィアは一人の男を思い出す。

 

 三人の超越者の一人。旧魔王派最強の存在。

 

 だが、ジーコンはぎこちなく首を振った。

 

「アレはダメだ。貴様は真なる魔王の血族としての誇りがないが、あれは悪魔そのものとしての誇りも怪しい。奴を頭に据えれば我らは終わル」

 

 そのしゃべり方にすら異変は現れる。

 

 そして、その内容も警戒するほどだ。

 

 それはつまり、今の旧魔王派には頭に仰ぎたいほどの実力者がいるということであり、そしてそれは今別行動しているということ。

 

 それだけの実力者が隠れている事実に、レヴィアは警戒し、しかしそれ以上に今の状況を警戒せざるを得ない。

 

 目の前の男の魔力が、異常なまでに上昇している。

 

 現魔王を相手にしても勝機をつかみかねないほどの上昇。いくらなんでも短期間に上昇しすぎている。

 

「あとハ・・・私の身を以って・・・研究ノ・・・でーたヲトルノみダ・・・ァアアアアアアアア」

 

 そして変化は急激に起こった。

 

 全身の体が白く変色し膨れ上がる。

 

 その波動に耐えきれずレヴィアが後ろに押し出される中、その体は人の物からかけ離れた姿をした。

 

 例えて言うならば、複数の腕を持ったサソリ。

 

 吹き飛ばされた右腕の分だけ右側が少ないものの、その巨体に見合ったサイズのその腕は、軽くふるわれただけで強大な威力となるだろう。

 

「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

「よくもまあ二転三転する状況だね。・・・厄介な」

 

 純白の怪物を前に、レヴィアは呼吸を整えると気合を入れ直した。

 

 その眼前に、咆哮が放たれた。

 




固有術式は境界線上のホライゾンの神道系の代演を使う術式を想像していただけるとわかりやすいと思います。


一見チートの極みに思えるレヴィアの奥の手ですが、実は結構使い勝手が悪いです。


金剛鉄腕は魔王級ですら突破困難な冥界でも1,2を争う究極の防御ですが、ひじから先しか展開できない。

つまり真価を発揮するには敵の攻撃に腕をぶつけられるだけの技量が必須なので、戦闘技術がはるかに上の相手には意味をなしません。さらにその防御範囲ゆえに体ごと包みこんだりする範囲攻撃にも無力。技量の低い近接戦闘タイプを相手にしてこそ真価を発揮する能力です。


焦がれの矛盾も、一回しか使えないうえに使用した防御障壁は使えなくなるという欠陥があります。ゆえに一発勝負になるうえに失敗した場合戦極がひっくり返りかねません。

最もそこまで使わねばならないような敵に合うこともまれではあります。今回両方使ったのは、鈴の救助をする時間を得るためにも早めに決着をつける必要があったからです。
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