インフィニットストラトスD×D   作:グレン×グレン

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第十四話 和解の道ができると嬉しい

 堕天使総督、アザゼル。

 

 堕天使の執政機関である神の子を見張る者(グリゴリ)の総督であり、どちらかといえば研究者肌の存在。

 

 研究者としては神器の研究が中心なようで、その知識は異形の業界でもトップクラスといわれている。人造神器開発にも手をつけているらしく、三大勢力の戦争時にそのメモがばらまかれたのは笑い話になったとか。

 

 戦闘能力に関しても堕天使トップクラスであり、魔王と張り合うことも可能というトップクラスの力を発揮する。

 

 指導者としてもカリスマ性が高く、トラブルメーカーの側面があるといわれているが、同時に面倒見がいい性分で部下からは好かれているとされている。

 

 人間界にも興味を持っているらしいが、少なくとも表向きには人間界に直接介入することを止めているというのが認識だ。

 

 そのアザゼルが、人間界を巻き込みかねない篠ノ之束を匿っている。

 

 その事実に、レヴィアは平静を装うのに時間がかかった。

 

 落ち着けレヴィア。お前はできる奴だ。

 

 ここでとりみだしたら眷属が一緒に慌てるだろう。そんなことになったら魔王さまにも申し訳が立たないからとにかく落ち着くんだ。

 

 王とは砕けず汚れず慌てない。メンバーの中でも特に落ち着いていることこそが余裕を生み、眷属の心をも落ち着かせてるはずだ。

 

 さあ深呼吸だ。いや深呼吸したら動揺してるのがばれるからやめろ。小さく呼吸を繰り返して落ち着こう。

 

 よしとりあえず落ち着いた。アストルフォはたぶん動揺しているの気付いているだろうけど。あいつは口下手だからたぶん言わないはず。

 

 さて、

 

「・・・それで、わざわざこちら側にばらした理由を説明してもらおうか? ですよね魔王さま」

 

『ああ、これだけの非常事態、遅かれ早かれ気づく可能性が高いアースガルズ・コーポレーションにあえて説明するのはともかく、我々には内密にした方がよかったはずだ。何故いまさら?』

 

 そう、レヴィア達の疑問はもっともだ。

 

 表向きには専属契約を結んでいるといってもいい一夏がISに深くかかわった時点で、こちら側のスタンスは証明している。

 

 ISは仕方ないからある程度かかわるだけで、こちら側からIS開発研究を主導したり、コアの解析などは消してしない。当然コアの保有もしないし、積極的な要求もなし。密接な付き合いをしないように気をつけるし、そうなりそうなら引き離すための行動もする。

 

 調べればすぐにわかるように(しかし一夏の正体はばれないように)オープンにしていたし、そのスタンスは研究室にも通達していた。

 

 わざわざ向こうからばらすようなことをした目的が理解できない。

 

「簡単なことだよ。戦争を起こさないためには、戦争を望まない者同士での連携をとる必要があるということだ」

 

 両手を広げて肩をすくめると、四朗はソファーに座り直す。

 

「現魔王派は、最低でも悪魔が回復しきるまでは戦争をするつもりはない。ならば今の段階で戦争を再発させるような事態に対しては対抗するはずだ。もちろん事情を知る者は最小限にしてもらうが、必要な協力を避ける必要もあるまい?」

 

 そういうと、四朗は紅茶を一口飲んでから、サーゼクスに視線を向ける。

 

番外の悪魔(エキストラ・デーモン)、メフィスト・フィレス卿と会談したい。あの男がアザゼルとパイプがあることはつかんでいる。奴と極秘に接触して状況把握と問題の解決の意思を知りたいのだ」

 

 その言葉に、サーゼクスは僅かに名目した。

 

『それそのものは構わんのだが、現在彼は指導する魔法使い組織が内乱を起こしているため連絡がつかない。こちらの予測では二年ほどかかるといわれているが、構わんかね』

 

 その言葉に、四朗は眼を閉じて考え込み、深く考え込んで―

 

「―仕方がないな」

 

 ため息とともに了承した。

 

『まあそっちの方はこっちからも何とか出来んか動いてみよう。直接介入はできんが、物資の搬入といった間接的な部類なら、かかわっとる魔法使い組織同士の横のつながりで何とかなるじゃろ』

 

 オーディンがそう言いながら映像で何やら資料をかき集めているようだ。

 

 それらを組み合わせれば早期の解決も図れるだろう。

 

 無論、それができたからといってこの事態を収められるのかは分からない。

 

 だが、納めることができる可能性は確かにできたのだ。

 

 世界大戦という甚大な非常事態に対してカウンターを叩きこめることが分かり、その場の空気はだいぶ穏やかなものになった。

 

『ISコア関連に対する資料請求などはやめておこう。我々としても戦争を起こしかねない火種は出すつもりはない』

 

「魔王さまの意向に逆らうつもりはない。なんなら、倉持技研に任せているIS方面を、そちらの息のかかった企業に移しても僕はかまわないよ」

 

「そこまでしなくてもかまわん。ただし、念を入れて倉持技研にはこちらからある程度の情報のやり取りを請求したいので株主権限で要求してもらう。オーディン殿、アースガルズ・コーポレーションに任せて構わないな?」

 

『いろいろ未完成な第三世代機を共同開発したいということでいいじゃろ。やれやれ、こちらも一部にしか伝えておらんのに、いろいろと働かせるのう』

 

 会談の中心となっていた四人が意見をまとめあい、そして終了といわんばかりに同時に息をついた。

 

 それに合わせて、それを見守っていた全員が一息をつく。

 

 問題は何一つ解決はしていない。ISは未だ聖釘を中核とし、それは公表したくても現時点では不可能。その根本ともいえる篠ノ之束は神の子を見張る者と共におり、その総督であるアザゼルの目論見は見えない。

 

 だが、少なくとも三つの勢力がその問題解決のために協力し合うことを約束した。

 

 問題は未だ多いが、しかし対処できる可能性も大きくなったのだ。今はそれで良しとしなければならない。

 

 だから、今はこれで終了なのだ。

 

「・・・あ、そういえばアタシどうしよう!?」

 

 唐突に、顔を真っ青にして鈴が悲鳴を上げる。

 

 それにどうしたことかと視線を向けて、レヴィアはある事実に思い当った。

 

「あ! 須弥山!!」

 

「ど、どうしようレヴィア!! さすがにコレ、おじいちゃんに知られたらヤバいわよね!?」

 

「よし落ち着くんだ鈴ちゃん。深呼吸して無かったことにしよう」

 

 バッサリ言い切った。

 

「もうちょっと真剣に考えなさいよ!!」

 

「大丈夫だよ鈴ちゃん。あちらは本格的にISと関わるつもりはないって言ってるんだ。だったらISに関わるこの話もこちらから言わなければ問題ないよ」

 

 努めて笑顔でそう言ってごまかす。

 

 最悪の場合はレヴィアの側から確保している伝説級のアイテムを幾つか差し出す必要はあるだろうが、しかしそれで何とかなるだろう。

 

 だが、総合的に見て世界が関わっているとはいえ聖書の教えの内輪もめに近いのだから、ばらさなくても別に問題はないだろう。

 

「最悪の場合は僕の眷属悪魔にして君を須弥山とのパイプにするから。それなら重要人物だから少なくとも殺されることはない」

 

「ほんとでしょうね!? 嘘だったら承知しないわよ? いや、アンタ殺してあたしも死ぬ」

 

 目がマジだったがにっこり笑顔で迎撃する。

 

 実際一夏が上級悪魔になるまでにことが終わったらそうするつもりだ。レーティングゲームに積極的に参加するつもりもないのでえり好みする必要はない。追加でいえば十分及第点だろうから問題はあるまい。

 

 うんうんと自分に自分で頷きながら納得すると、後ろから声がかかってきた。

 

『そうじゃな。だったらついでにこっちにもパイプを作ってもらおうかの? 下僕候補にふさわしい奴を紹介するぞ?』

 

 オーディンがにやにやと笑いながらそう提案する。

 

 なるほど確かに正論だ。

 

 これだけの秘密を共有する以上、それ相応の連絡要員を作るというのは当然の判断だろう。

 

 加えて言えば自分という存在の眷属悪魔にするのも好都合だ。ある程度の非難は自分の立場で封殺できるし、直接政治にかかわっているわけではないので、意見が深く反映されることもない。しかし重要ポジションに入るので、アースガルズの意見を素早く伝えることは可能だ。

 

 今後のことを考えれば、各勢力との独自パイプの生成は必要だ。これは好都合だろう。

 

「僕としては構いませんよ。それで、誰を選びます?」

 

『ヒルデ。頼んでいいかの?』

 

 オーディンの言葉に、ヒルデは背筋をぴっちり伸ばした。

 

「じ、自分がなのかデス!? 自分、一応テストパイロットデス! まずくないかデス!?」

 

『以前から悪魔の魔力体系に興味があると言っていたじゃろう? IS適正Sランクを手放すのは惜しいが、儂との悪魔契約の一環として行動すれば言い訳も立つじゃろ』

 

「いや、確かに実家は跡取り多いから大成できないし、IS乗り続けられるなら問題ないがデス、ロキ様キレません!?」

 

『このまま無視するわけにもいかんじゃろ? 奴も政治的工作までするなとは言わんし何とかなるわい。実家の方は儂が守るから心配する出ないわ』

 

「そ、それなら確かに問題はないなデス・・・」

 

 オーディンに説得されつつ、その視線はちらちらとレヴィアの方に注がれる。

 

「確かに、こんな若いのに王さまっていうのしっかりと考えてるのは高ポイントデス。間違いなく人生のアドバンテージで将来設計上方修正確実デス・・・」

 

 少しの間考え、そして決意したかのようにレヴィアに向かい合う。

 

「一つだけいいかデス?」

 

「なんだい?」

 

 レヴィアは正面から向き合い、その言葉を待つ。

 

「今の異形の社会について、憂いはあるかデス?」

 

 深い意味を感じさせる質問だった。

 

「ある」

 

 だから、真剣に、しかし短く答える。

 

「まだまだいろいろと問題はあるし、何より各種神話体系との冷戦状態も何とかなるといいとは思っている。可能性があるなら和解の道ができると嬉しいとは思っている」

 

「・・・ならいいデス。これからよろしくお願いするデス」

 

 ヒルデは深く頭を下げる。

 

「ただ、自分はアースガルズのものなので、もしアースガルズに理不尽に害なすというときは、しっかり敵対するから覚悟するデス」

 

「構わないさ。現政権は、そっちからムチャ言わない限り危害を加えるつもりはないしね。こっちで馬鹿が出たら叩きのめすのは契約のうちかな?」

 

 微笑を浮かべ、レヴィアは懐から駒を取り出す。

 

 種別はビショップ。それを指で回しながらレヴィアは目を細める。

 

「文字を使う独特な魔法体系の使い手が眷属か。これならレア度も高いし周りからとやかく言われることもないね」

 

「旧魔王の血を継ぐ者の配下として、アースガルズの未来に栄光を与えるかもしれない力になるデス。よろしくお願いするデス」

 

 そして契約はなされる。

 

 駒がヒルデに溶け込み、そしてヒルデの背中から悪魔の翼がはえる。

 

 その翼を興味深そうにしげしげと眺めてから、ヒルデは照れくさそうにはにかむと、冗談じみた敬礼をする。

 

「以後よろしくデス 我が王様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・では、そろそろお開きにしたいが、何か質問はあるかね?」

 

 オーディンとサーゼクスがそろって下がった後、四朗は立ち上がりながら全員を見回した。

 

 既に空も暗くなっており、そろそろ戻らねば皆が心配するだろう。

 

「なんなら僕に対する個人的質問でもいいよ? まあ時間もないし一回だけにしてくれると嬉しいかな?」

 

 レヴィアは茶化すようにそう言い、しかし皆は動揺する。

 

 それはそうだろう。

 

 悪魔という存在が実在することを知ったのも初めてなのだ。さらに旧魔王血族同士による激突が開かれ、その力の強大さも知った。そのうえで教会の至宝が関わる重大な事実が明かされ、その根幹にISが関わっているという事実まで知らされた。

 

 衝撃が強すぎてどこから手をつけていいかもわからないだろう。

 

 だからレヴィアは個人的質問も受け付けてハードルを下げたのだが、しかしそれでも上手くいくわけではないようだ。

 

 いっそこのまま切り上げて旅館へと戻るのもありかも知れない。そう思った次の瞬間。

 

「・・・ここで言うことではないのかもしれないが、聞きたいことがある」

 

 千冬が、鋭い視線を向けながら立ち上がった。

 

 その視線に、レヴィアは聞きたいことを半ば理解する。

 

「・・・一夏君のことですね」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 静かに目をつぶりながら、千冬は言葉を探す。

 

 そして思い出すのはわずか数年前、レヴィアを紹介した一夏の姿だ。

 

 ドイツにいた時に知り合い、助けてもらったことがあると言っていた。あの頃はそれを深く聞かず、ただ素直に感謝したものだ。

 

 だが、今の状況を知ってしまえばその疑念が浮かぶ。

 

 タイミングから言って、レヴィアと一夏が知り合ってからすぐに悪魔になったと考えるべきだろう。

 

 そして一夏の性格から考えて、こんな重大なことを何も言わずに独断で動かすとも考えにくい。

 

 だから、聞かねばならない。

 

「・・・ドイツで、モンド・グロッソでいったい何が起きた? あの事件で、一夏と蘭にいったい何があったのだ?」

 

 その言葉を受け、レヴィアは静かに一歩を踏んだ。

 

「最初に、言っておかねばならないことがあります」

 

 そのまま身を沈め、両手をつき、膝をつき、首を垂れる。

 

 それは土下座だった。

 

「今まで事実を秘密にしていたことはもとより、織斑一夏と五反田蘭を悪魔にせざるを得ない状況へと持ち込んだこの身の不徳、謹んでお詫び申し上げます」

 

 それは、深い謝罪だった。

 

「お、おいレヴィア!?」

 

「それは気にしてないって言ったじゃないですか!!」

 

 その姿に一夏と蘭が声を上げるが、しかしレヴィアは動かない。

 

 そして、千冬も動けない。

 

 あの時、自分はあまりにも後悔しすぎた。

 

 大事な弟を恐怖させたこと。その友人をも巻き込んだこと。ブリュンヒルデという栄光に驕り、そのせいでこのような事態を引き起こしたこと。

 

 全て自分の罪を心底思い、しかしそれ以上の事実があることを気づかされる。

 

 ゆえに、すぐには促せなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・聞かせろ。お前の、罪を」

 

 しかし、踏み込まねばならない。

 

 このまま知らぬふりはできそうにない。

 

 ショックを与えたくなかった一夏の判断もあったのだろうが、自分はいままで弟と距離を取り過ぎていた。弟の肝心な部分に触れることを避けていた。

 

 それではだめだ。それは嫌だ。

 

 もし弟が悪魔になったことに重大な秘密があるのだとすれば、そしてそれが自分の予想通りなのだとすれば、その罪はあまさずこの身に受けたい。

 

 だから、自分も頭を下げる。

 

「全て教えてくれ。あの事件で、いったい何があったのかを」

 




 次から時系列が一気に過去に飛んで、一夏と蘭がどうして眷属悪魔になったのかが語られます。

 散々伏線張って色々あったことを匂わせてきた誘拐事件。その真相は・・・。
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