インフィニットストラトスD×D   作:グレン×グレン

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第十七話 レヴィアぁああああああああああああああああああ!!!!!

 

 と、ここで終われば感動的だったが

 

「さて一夏君、話は戻るけどアレは再開することに決めたからね」

 

 一夏の肩に手をおいて、レヴィアははっきりとそう言った。

 

 直後、一夏と蘭の顔が赤と青を交互に行ったり来たりし始める。

 

「れ、レヴィア!? アレってまさか・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!? ま、ま、まままさか!?」

 

 周りを見ながら狼狽する二人に、レヴィアは真剣な顔でうなづいた。

 

「もちろん防御力アップのアレに決まっているだろう? あ、せめてもの情けで蘭ちゃんはセットでするからとりあえず今からしよう」

 

「「やっぱり!?」」

 

 愕然とする二人に視線を向けていたアストルフォが、静かに首を横に振った。

 

 視界の隅でそれを確認した二人は同時に絶望する。

 

 この男、止める気が一切ない!?

 

 一夏は脂汗を流しながら、とにかくなだめようと頭を高速で回転させている。

 

「ま、待て待て待て待て!! アレは勘弁してくれって言ったよな!? お前、しないって約束してくれたじゃないか!?」

 

「・・・アレは僕の不覚だった。アレを毎回定期的にやっていれば、そもそも福音の攻撃で君が昏睡状態になることはなかったんだ」

 

 心底後悔している表情で、レヴィアは強くこぶしを握る。

 

「皆にも説明するけど、一夏君が使うカレドヴルッフは、実はものすごい欠点が多い癖の強い武器なんだ」

 

 カレドヴルッフ。

 

 レヴィアが出資することで開発された、量産品としては最高クラスの攻撃力をもつ近接戦闘武装。

 

 だがこれは、非常に欠点が多い。

 

 まずは、使用者が出せる性能を引き出せば引き出すほど劣化する。

 

 次に、量産できるというだけで実はコストパフォーマンスは非常に悪い。

 

 最後に、カレドヴルッフを使う物は、そのための体質になってしまうのだ。

 

 具体的に言うと、そのポテンシャルや才能がカレドヴルッフを使うために引っ張られて肉体が変質する。

 

 この特性によって、一夏の肉体は致命的な欠点ができている。

 

 戦車の駒によって強化されている肉体耐久度や、悪魔になることで得た魔力運用能力が、カレドヴルッフを使用するための才能に引っ張られてしまうのだ。

 

 そのため一夏の耐久力は同年代の戦車の中でも低いし、魔力そのものは高いのだがカレドヴルッフを使うために使用しなければその効果は非常に低い。

 

 良くも悪くもカレドヴルッフを使うことに一点特化した悪魔なのである。

 

 それでもアリーナのシールドを蹴っても耐えられる程度の耐久力は持っていたが、福音の全力攻撃を耐えるには足りなかった。

 

 だが、レヴィアの行動を持ってすればその分の防御力の上乗せは普通にできたのである。

 

 それを怠り一夏を昏睡状態に追い込んだことを、レヴィアは深く反省していた。

 

「そのために一夏君の防御力を犠牲にし、その結果この始末。王として、このような失態は二度と犯さないために努力する!! 室長、部屋貸してください!! とりあえず今日の分は終わらせてから帰ります!! 十分で終わるし掃除する人にチップ払うから!!」

 

「・・・よくわからないがまあいいだろう。とりあえず夕食も食べていくといい」

 

 レヴィアの剣幕にも動じず、四朗はさらに他のメンバーにも気を使った発言をする。

 

「あ、いいんですか伯父さん? 確かにもう遅いですけど」

 

「ああ。旅館の方はこちらで手を打っておくから、ついでに風呂にも入ると良い。日本人である私用の船だから、浴室はそれなりに豪勢なんだ。夕食は休憩中のメンバーが鯛を釣ったから刺身でも出そう」

 

「本当ですの!?」

 

「ほう・・・。刺身とはマグロだけではないのか」

 

 麻耶に応えるその言葉に、セシリアやラウラが目を輝かせる。

 

 日本文化の一つの極みともいえる刺身。旅館の夕食で食べてから、二人は日本文化に見せられていた。

 

「・・・そういえばもうこんな時間ね。お腹もすいたしちょっと待ってましょうか」

 

「レヴィアも早く来てね。私、待ってるから」

 

「よくはわからんがさっさと終わらせろ。私もあんなのはもうごめんだ」

 

 あっという間にそういったムードになる一同に、二人は顔を見合わせると途方に暮れる。

 

 いや、何とかする方法はあるにはあるのだ。

 

 内容をはっきり言えば止めてくれそうな人は何人もいる。

 

 ただし、それを言うと二人の命がない。

 

 どうしよう。

 

 その思いを共有した二人の肩を、レヴィアがしっかりとつかむ。

 

「さ、さっさといくよ。僕もおなか減ったしすぐに終わらせないと」

 

「「え、ちょ、ちょっと待って・・・」」

 

 妙にうきうきしたレヴィアは勢いよく二人を引きずって部屋から出ていく。

 

 それを見送った四朗は、立ち上がると肩をゆっくりと回した。

 

「さて、迷惑をかけた人たちにもしっかりと詫びをしなくてはならないしな。久しぶりに私も腕を振るおう」

 

「伯父さん料理上手ですもんね。あ、私も手伝います」

 

「あらあら。だったら簪ちゃんのために私も腕を振るおうかしら?」

 

 和気あいあいとする空気の中、ふと立ち止まったヒルデがアストルフォに尋ねる。

 

「そういえばどうやって防御力上げるんデス? 自分も後で受けようとおもうデス」

 

 その言葉を聞いて、アストルフォはぽつりとつぶやいた。

 

「房中術の応用」

 

 ・・・鈴が硬直した。

 

「ん、どうした凰?」

 

 千冬が訪ねても鈴は反応しない。

 

 ゆっくりとレヴィア達が去って行った方向を見て、少しの間考えて、そしてアストルフォの方を向く。

 

「ソレッテ、イツカラ?」

 

「蘭が、12になってから」

 

 それを聞いて鈴はゆっくりと頷き―

 

「レヴィアぁああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 文字通りドアを蹴り破ってレヴィア達を追撃した。

 

「・・・どういうことだ?」

 

「さあ?」

 

 千冬とラウラが顔を見合わせる。

 

 房中術というのが関わっているのは分かるが、それがどうしたというのだろうか?

 

「そういうことか・・・」

 

 唯一わかっているらしい四朗が、額に手を当ててためいきをついた。

 

「えと、どういうことデス?」

 

 ヒルデの言葉に、四朗は言おうか言うまいか悩み始めるが、やがて悲鳴と破壊音が響き渡ってから諦めたようだ。

 

「房中術とは中国古来の術式の一つで、陰陽の概念を男女に当てはめ、それらを組み合わせることによって生命体の流れをよくする秘術とでも言うべきで、しかし聖書の教え的には少し止めた方がいいやり方でな・・・」

 

 少しの間悩んだが、言った。

 

「具体的にいえば、S○Xする必要がある術式だ」

 

 時が止まった。

 

 動ける側である楯無と麻耶が、固まっている側に恐る恐る視線を向ける。

 

 約四名が、時を止めていた。

 

「か、簪ちゃん!? 気をしっかり保つのよ!!」

 

「お、織斑先生しっかり!! っていうか私12歳の女の子に先越された!?」

 

「あ~、自分女の子でも大丈夫だけど、いきなりするのは緊張するデス」

 

「気にしなくていい。親しい配下にはよく行なっている」

 

 ヒルデが顔を赤くして好奇心満々の表情をしたり、アストルフォがなんてことないように言うが、冷静に考えると非常にまずい。

 

 男女で絡み合うこと(ソフトな表現)で発動する術式を応用するということは、つまりそういうことで。

 

 蘭が12の時にしたということはもちろん彼女もそういうことをされたというわけで。

 

 そしてその時にしたということは一夏が13のころというわけで。

 

「レヴィアさんはそんなころからエロかったんデス?」

 

「年齢をごまかしている。レヴィアはもう18」

 

 最後にイレギュラーな情報が出てきたが、それはどうでもいい。

 

 誰がどう考えても犯罪である。

 

「・・・きゅう」

 

「簪ちゃんしっかりして!? れ、レヴィアさんめよくも!!」

 

 簪が倒れたことで、引き金が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、レヴィアの悲鳴が響き渡った。

 

 あと一夏と蘭がレヴィアと同じ意味で悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな夜の海で、ウィンターはハイパーセンサーを駆使してその悲鳴を感知していた。

 

 ウィンターの機体は隠密行動に適しており、光学迷彩も駆使することで遠距離ならば勘付かれないことも可能だ。

 

 ゆえに、この悲鳴を感知することぐらいは可能であり、水中で行動することで会談の内容も大体把握できている。

 

「一つ聞きたいッス」

 

『なんだ?』

 

 自らの主にこんなことを聞くのもなんだとは思ったが、しかし一応聞きたかった。

 

「なんで、ジーコンの援護を許さなかったんだッス? ゴーレムも多くいたし、上手くすれば一人ぐらい殺せたッスよ?」

 

 それは過信ではない。

 

 確かに驚異的な戦闘能力を持っていたが、しかし機動力ではほぼこちらが上だった。

 

 暴走状態のジーコンを利用し、援護射撃を受けながら行動すれば異形に関わらない織斑千冬や、ダメージを受けていた織斑一夏なら殺せていた。

 

 確かにセーラ・レヴィアタンは防御特化型なので自分達の幹部クラスなら無視することができれば何の問題もない。

 

 あの規格外の破壊力を放った五反田蘭との連携は脅威だが、最低でも自分とスプリングなら防御もしくは相殺が可能だろう。

 

 オータムもある程度の下準備があるなら防御は可能だろうし、主の本気なら直撃してもある程度なら耐えられるだろう。

 

 とはいえ警戒するべき対象であることに変わりはない。というよりIS学園にいる異形の存在というだけで、本来なら警戒対象なのである。

 

 まさかあそこまで高い耐久力を持っているとは思わなかった。禁手状態の赤龍帝が相手でも、相手が初期段階ならしのげるだろう。

 

 そしてそれを瞬殺するアストルフォとか言うのは最大の脅威だ。少なくともIS学園に即座に到着できる状態なのはできる限り避けたい。

 

 そういう意味でも減らせるタイミングは逃すべきではないと判断したのだが、しかし何故なのだろう。

 

「答えがあるならぜひ教えてほしいッス」

 

『簡単なことだ。・・・攻略法は既に見つけてある。それがある以上お前を撃墜される可能性をそのままにするわけにはいかにない』

 

 その答えは納得できる物で、しかし油断できるほどではない。

 

 自分は主に忠誠を誓っているが、主は別に自分のために命をかけるわけではない。

 

 相応に有望な人材だと判断しているだろうし、何より自分の能力は計画のメインプランであるため必須ではあるが、だからと言って全てをかけて釣り合うと考えているわけではなかった。

 

 それでも十分だと考えている自分は、ある意味で狂っているのかもしれない。

 

 だがそれでも構わない。

 

 自分という存在にふさわしい世界を主は作ろうとしている。そしてそのための準備は整おうとしている。

 

 なら問題はないだろう。

 

 どちらにせよ、自分達の戦力ならあの程度の敵なら返り討ちにすることができる。

 

 そして肝心の段階にまで行くことができれば、増援の心配だけはない。

 

 ならば確かにこのままでもいいだろう。

 

『じゃあ、作戦は第二段階にまで行くのかな?』

 

 通信に割り込んで、サマーの声が聞こえてくる。

 

 ああ、確かにタイミングはその通りだろう。

 

 自分達の技術の一部をある程度流して、世界の軍事バランスを大きく変動させる第一プランは成功した。

 

 次は、世界各地のISを奪取する第二計画に移行する。

 

 最終調整のためにもISの数は多いほどいい。

 

 だから、自分の出番が忙しくなることだろう。

 

『・・・それで、ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな、ウィンター?』

 

「なんだッス?」

 

『簡単なことだ、レヴィアの眷属やら悪魔祓いやら後詰の魔法使いのせいで襲撃犯が壊滅しただろう? ・・・避難に使ったあれは使い捨てだから帰れんのだ。あいつらが独断行動して帰ってないからまだ混乱中だろうが、このままだとまずい』

 

 スプリングの説明に納得した。

 

 ・・・どうやら、第三段階には修正が必要らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬかと思った」

 

 どこか遠くを見つめながら、一夏はバスの中でつぶやいた。

 

 さすがにまずいと思ってばらさなかったことがバレ、本当に殺されるかと思った。

 

 鈴は本気で攻撃を叩きこむし、セシリアはライフルを呼び出して照準を向けるし、ラウラは何を思ったのかそれなら自分もと服を脱ぎだして止めるのに苦労した。

 

 そして千冬はレヴィアにエリアルコンボを叩きこんで撃沈した。あの規格外の耐久力を持つレヴィアを気絶させるとは、いったいどうやれば可能になるのだろうか。

 

 あとその隙に清水を突きこもうとした楯無は危なかった。なんというか目の色が正気を失っており、慌てたヒルデが「鎮静」の文字を大量に書いてようやく動きを止めたぐらいだ。

 

 おかげで夜は再び攻撃が来るのではないかと思って気が気じゃなかった。ぶっちゃけ一睡もできていない。

 

 もうバスの中で寝ることにしようか。

 

 そう考えて目を閉じようとしたその時、一夏の視界にブロンドの髪が映った。

 

「あなたが、織斑一夏君ね?」

 

「は、はい・・・」

 

 見たことない美女の姿に、一夏は少し戸惑う。

 

 こんな女性は学園の教師にはいなかったはずだが、いったいどうしたことだろう。

 

「私はナターシャ・フィルス。銀の福音のパイロットよ」

 

「・・・福音の!?」

 

 そういえば、福音のパイロットは救助された後、四朗経由で病院まで搬送されていたと聞く。

 

 そんな人が何で、こんなところにいるのだろうか。

 

「え、えっと・・・」

 

「ふふ。あの子のせいでいろいろ大変だったみたいだから、ちょっとお詫びをしに来たのよ」

 

 そういうと、ナターシャの顔があっという間に近づき―

 

「・・・一夏さんのバカ」

 

 遠方からの声が、確かに聞こえた。

 

 直後、強力なエネルギーの塊が側頭部に直撃した。

 

 そのまま勢いよく側転しながら、一夏は吹っ飛ばされた。

 

「きゃあああああああああああ!?」

 

「うわっ!? 織斑君が大変なことになるかと思ったらそれ以上に大変なことに!?」

 

「て、敵襲!? なにがあったの!?」

 

「バスのガラスしか壊れてない! これ狙撃だよね!!」

 

「本っ当に一夏さんは油断できない人ですね。自業自得ですわ」

 

「むむむ。嫁の暴走を止めるのが私ではないとは残念だ。やはり先達はなかなか油断できん・・・」

 

「セシリアさんとラウラさんが冷静すぎる!?」

 

 あっという間に大騒動になっている中、一夏の視界は確かに見た。

 

 アストルフォに羽交い絞めにされた蘭が、そのまま森の中に消えていくのを。

 

(二人とも帰ってなかったのか・・・)

 

 むしろ念には念を入れたレヴィアがそのまま警護を続行させたのだが、それを知る一夏ではない。

 

 うん、確かにあれは一夏がうかつだったとは思うが、だからっていきなり砲撃はひどくないだろうか?

 

 手加減されているのは当然理解しているが、それと撃たれた事実は全くの別問題なのである。

 

「・・・一夏、大丈夫?」

 

 すぐそばにシャルルがしゃがみ込んで、そんな一夏に手を差し伸べる。

 

「しゃ、シャルル?」

 

 ゆっくりと顔を動かしてみれば、シャルルは苦笑しながらも一夏をいたわる表情を浮かべていた。

 

「よくわからないけどしっかりして。ほら、立てる?」

 

 ・・・その優しさが身にしみた。

 

「シャルルありがとう!! マジ大好きだ!!」

 

「え、きゃぁ!? い、一夏ストップ!!」

 

 思わず抱きしめて感謝の気持ちを伝えてしまう。

 

 なんというかものすごく優しさが身にしみた。ああ、この純粋な優しさは世界の宝だ。文句いう奴は俺が相手になってやる。

 

 できることなら、シャルルにはずっとこのままでいてほしいと願うのは悪いことだろうか?

 

 ああ、過酷な環境に置かれている物は、その分優しさがとても身を侵食してしまうのだろう。

 

 できることならば、自分自身こういったたことができる存在になりたいものだ。

 

 少なくとも、それができれば自分は誰かの心は守ることができるのだから。

 

 ・・・そうだ。

 

 ふと、一夏は気付いた。

 

 誰かを被害から守るだけでは、まだ半分だ。

 

 被害におびえる人たちの心も安心させなければ、本当の意味で人を守ったことにはならないはずだ。

 

 それこそが、自分が目指すべき道ではないか。

 

「・・・シャルル」

 

「え、な、なに!?」

 

 なぜかシャルルは顔を真っ赤にしているが構わない。

 

「なんか、俺が進むべき道が見えた気がするよ。本当にありがとう」

 

 素直にお礼を言う一夏を見て、さらにシャルルの顔は真っ赤になる。

 

「う、うん。・・・どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、最初は蘭さんのおかげで助かりましたし、今度はわたくしたちが動くべきでしょうね」

 

「うむ。見れば鈴も駆けつけてきているが、待っている場合ではないな」

 

「・・・一夏ぁああああああ!! アンタが目を離した隙になに男に手を出してんのよぉおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・馬鹿しかいないのか、ここは」

 

 夏の日差し以上に厄介な物に頭痛を感じながら、箒は額に手を当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・頼むから妙な火種を残さないでくれ。ガキの面倒は大変だし、何よりあいつの周りはクセの強い奴が多いんだ」

 

 惨状を耳にしながら、千冬はため息をついた。

 

 つい昨日、衝撃的なことを聞き続けたうえにこれではさすがに気が滅入ってしまう。

 

「ご、ごめんなさい。まさか私もあんなことになるだなんて・・・」

 

 眼前で男が狙撃されるなどという事態にさすがに動揺しているのだろう、ナターシャも頬がひきつっていた。

 

「それで、昨日の今日で大丈夫なのか?」

 

「それはあなたの弟にこそ言ったらどう? 私はずっと守られていたもの」

 

 守られていた。

 

 その言葉に千冬は納得する。

 

「なるほどな。・・・福音の暴走というのはそういうことか」

 

「ええ。周りを全て敵と認識したが故の守護対象《私》の安全確保。それこそが福音がああいう動きを取った原因よ」

 

 言葉を続けるナターシャの瞳は、一夏に見せた温かさなど一つもない、敵意に満ちたものだった。

 

 銀の福音は機能回復したものの、暴走という前代未聞の事態を警戒した政府によって当面の封印処理が決定した。

 

「・・・・・しかるべき報いは受けさせるわ。あの子を汚した者たちを、許すわけにはいかない」

 

「あまり無茶はするなよ? どうせこの後、査問委員会だろう?」

 

「まあ無茶をするつもりはないわ。・・・ねえ、『元』担当者さん?」

 

 そう言って後ろを振り向くナターシャに合わせて、千冬も視線をそらす。

 

「は、離してくださいアストルフォ!! いや、悪魔の文化を考えれば確かにする意味はないかもしれませんけど、一夏さんはもうちょっと自分がモテることを自覚させないと制限つかなくて本当に面倒なことに・・・」

 

「あれでは、それには、気付かん・・・!」

 

 背中から龍の頭を八つとも出している蘭を引きずりながら、そのまま下がろうとしているアストルフォの姿があった。

 

 アストルフォはそれに気づくと、千冬とナターシャに一回ずつ頭を下げる。

 

「・・・まさか」

 

「ふふっ。口下手だけど頼りになるのよ? 子供のころはおかげでだいぶ助かったわ」

 

 衝撃の事実がこの一日足らずで出すぎだろう。

 

 実は一連の事件の黒幕が束だったとしても驚けない。と、言うより一枚かんでいる可能性は普通にあるから始末に負えない。

 

「そういうことだから、あの後の事情についてもある程度は知っているわ。・・・あなたも大変でしょうけど頑張ってね」

 

 そういうと、ナターシャは千冬の脇を通り過ぎる。

 

 ・・・僅か一日足らずでとんでもない世界の情報が大量に入ってくるものである。

 

 変な自負など持ってはいないが、ブリュンヒルデの称号など、霞む以外のことが起こらないものだ。

 

「やれやれ・・・。」

 

 世界は狭いのか広いのかよくわからない。

 

 ただ一つだけ言えるとすれば・・・。

 

「・・・一夏は、少し見ない間に大きくなったものだ」

 

 とはいえ、教師としても姉としても、追い抜かれるわけにはいかない。

 

 学園に入ったら鍛え直そう。

 

 そう思い、千冬は日常へと戻っていった。

 

 

 

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