「気を取り直して、今度はウンディーネが近くにいるということだからそっち行ってみようか!」
ボロボロの一夏に肩を貸しながら、レヴィアが皆を促して移動する。
「ウンディーネっていうと水の精霊よね? ゲームとかで出てくる」
「だけどゲームとは違うし必ず美人ってことはないですよね。・・・ちょっと残念」
歩きながら、鈴と蘭がそう言って話すのを一夏は聞いた。
確かに、現実は必ずしもファンタジーというわけにはいかないだろう。
実際、ものすごい存在に選ばれて力を得るだなんてファンタジーの主人公のような経験をした一夏自身、全体で見てみればまだまだ下の方だ。
ISにしたってそうだ。
女だらけの環境に唯一入れる男など、ハーレム物の定番の一つだとか弾は言っていたが、はたして自分はどれだけ活躍しているだろうか。
クラスの代表に選ばれたのは相性によるものだし、クラス代表同士の戦いもトラブルが発生したし、自分の過去に関わる因縁の清算も何やらトラブルが発生して・・・。
「なあ、レヴィア」
「なんだい、一夏君」
レヴィアの言葉に頷いてから、一夏はふと浮かんだ疑問について聞いてみた。
「俺って、ラノベの主人公みたいな気がしてきたんだけどどうだろ?」
「みんなー? この馬鹿は一度死刑になった方がいいんじゃないかおもったひと挙手」
全員が手を上げた。
「なんでだよ!?」
「一言でいうと自覚が薄い。一夏君、僕は一人か二人なら君の嫁を眷属にすることもやぶさかじゃないが、だからと言って百人や二百人もできるわけじゃないよ?」
ものすごいことを言われてしまった。
「俺ってそんなにモテるのか?」
「料理できて正義感があってレアな側面持っているイケメンはモテるんだよ。言っとくけど一夏君、中学時代にファンクラブあったからね? 蘭ちゃんが正妻オーラ出してたから鈴ちゃん以外諦めたけど」
「マジか!?」
そういえば、なんどか弾はよくわからないが「お前は蘭を泣かせたいんだな? そうなんだな?」とかいって突っかかってきたことがあったが、それはつまりそういうことか。
そうか、俺はモテていたのか・・・。
「・・・あれ? だとするとIS学園にいる状況ってヤバくないか?」
「いや、クラス代表対抗戦の惨状知って突っかかる猛者はレアだと思っ!?」
冷静にツッコミを入れたレヴィアの後頭部に、レーザーとレールガンが直撃した。
結論として、ウンディーネを見ることには成功した。
だが、それはとても不幸な出会いだった。
「・・・・・・」
レヴィアは沈黙した。
「「・・・・・・」」
蘭と鈴も沈黙した。
「「「・・・・・・」」」
セシリアもラウラも簪も沈黙した。
「・・・・・・」
ヒルデに至っては崩れ落ちていた。
「現実は、非情」
アストルフォの言葉が真実をついていた。
今目の前では、二人のウンディーネが縄張り争いを行っていた。
それはみごとな戦いというべきで、もし使い魔にしたのならば、戦闘面において明確な戦力として運用できるだろう。
筋骨隆々なムキムキマッチョなウンディーネにより、返り血が飛ぶ肉弾戦だというだが。
「なんで・・・コレなんだデス!?」
使い魔捜索二時間で、一同は憔悴しきっていた。
ユニコーンには逃げられウンディーネはいろいろな意味であれで、好奇心に充ち溢れていた使い魔探索は明らかにアレだった。
正直いろいろと面倒だった。
「なんでこんなことになったんでしょうか・・・」
ユニコーンの時もアレだったせいで、特に消耗が激しい蘭が憔悴し切った表情でつぶやく。
自分の使い魔であるイタチを呼び出してなでることで精神を安定させている始末だ。
正直ちょっとレヴィア自身落ち込んでいる。
数年ぶりの新入り悪魔の使い魔なのだから、気合を入れて探そうと思っているのにこの展開だ。
特にウンディーネが酷い。
世の中はファンタジーみたいにはいかないとは思うが、だからと言って魔法攻撃ではなく肉弾戦とかどういうことだろう。
もう少し何とかならないのだろうか。魔力運用による戦闘の強大さは我が身を持って知っている。どう考えても戦力としては十分だろう。
何故体に走る。もっと知的に行こうとは思わないだろうか?
「なんなんですのアレは。フェアリーテイルというものをなんだと思ってますの?」
二番目に酷いのはフェアリーテイルで有名なイギリス人のセシリアだ。
あとそういった方面に興味津々の簪も何気に落ち込んでいる。
被害者が非常に多い。それほどまでに肉弾戦ウンディーネの衝撃は強かった。
不味い。これはマズイ
「・・・涙出てきた」
デスがついてないぐらいヒルデがマズイ。
これは何とかしてどうにかしなくてはならない。
フルパワーで視線を巡らせて生物を探す。
とにかくまともなのを発見して軌道を修正しろ。それができなければこのままだとまずい。
「ふむ、聞きたいことがあるのだがいいか、お姉さま」
「ゴメンラウラちゃん。ちょっと後にしてくれないかな?」
「いや、本当に一つだけなのだ」
「なんだい?」
この際小動物でもいい。とにかく発見しなくては・・・。
「ドラゴンというのはそんなに珍しくない生命体なのか?」
「いや、強力でレアな方の生物だけど・・・」
そこまで答えて、レヴィアはふと気付いた。
ラウラの視線があらぬ方を向いている。
ふとその方向に向かって視線を向けた。
・・・真っ白なドラゴンがこちらに向かって飛んできていた。
「ほ、
割とレアなドラゴンが飛んできていた。
聖光龍。聖なるオーラを放つかなりレアでかつ強力なドラゴンだ。
ぱっと見若くて小さめなドラゴンだが、しかしそれでも強力な部類になるだろう。
そんなドラゴンがこちらに向かって接近してきていた。
ついでに言うと、聖なるオーラを垂れ流すこのドラゴン、悪魔にとっては格上のドラゴンに匹敵するほど危険である。
そんなドラゴンが、体当たりする軌道でこっちに向かって突っ込んできていた。
「・・・総員後退!!」
「「「「「うわぁああああああああ!?」」」」」
全力で後退するとほぼ同時に、ドラゴンが地面に激突した。
「な、何だコイツ!?」
カレドヴルッフを構えながら、一夏があわてて迎撃態勢をとる。
いきなり高位のドラゴンが墜落してきたとなれば、それは慌てもするだろう。
「まさか墜落してくるとは思わなかったな。我々相手に単騎で来るとはやってくれる」
「やってられないわね。なんで使い魔探しに来てモンスター相手にしなきゃならないのよ」
戦闘になれているラウラと鈴に至っては、既にISを展開して戦闘準備をとっているぐらいだ。
とはいえ、来たからにはこちらもやらねばなるまい。
「いきなりドラゴンが強襲とかよくもやってくれるね。返り討ちにしてくれる」
このタイミングでこんなのが出てくるとは思わなかった。なんとしても反撃しなくては。
と、思った瞬間に―
「・・・いや、ストップデス」
皆を止めるように、ヒルデが一歩前に出た。
「ヒルデ・・・?」
戸惑う皆をよそに、ヒルデはつかつかと聖光龍に近づくと、こそこそと様子を見る。
「蘭ちゃん蘭ちゃん。このドラゴン怪我してるデス。治療~」
「え? あ、はい!」
ヒルデに促されて、慌てて蘭が治療を開始する。
確かに言われてみてみれば、うろこが何枚もはがされていて、見ているだけで痛々しい姿をしていた。
「いや、ちょっと待って。それってつまり・・・」
このドラゴンをそんなにボロボロにした連中がいるというわけで―
「・・・あの、レヴィアさん?」
「あれ・・・何?」
セシリアと簪が指差す先に、それは来ていた。
なんというか、キメラみたいな鳥がやってきていた。
「総員戦闘―――――っ!!」
「・・・なあ大将、テスト中になんか例の連中とカチあったみたいなんだけどよぉ?」
望遠センサーを装備したISを身にまといながら、オータムは自らの主にそう伝えた。
『どうせアレクラスの相手を想定していない雑兵だ。・・・どれぐらい持つかデータをとっておけ』
「あいよ。・・・あ、ミノタウロス仕留めたんだがいるか?」
『丁度いい。アレの塩漬け肉はスプリングが気に入っていた。持って帰れ』
「福利厚生が充実していることで嬉しいねえ」
十数分後、キメラの群れは殲滅された。
戦闘能力はISの火力でも十分撃墜可能なレベルだったが、耐久力はともかくHPが高い体質だったのか非常に手間取った。
「全員無事かい? 点呼ー」
「一夏だけに1!」
「なんで一夏さんってギャグダメなんですか? あ、蘭です。2」
「鈴よぉ。3」
「4でセシリアですわー」
「どいつもこいつも覇気がないな。ラウラ・ボーデヴィッヒ、5番!」
「6番、アストルフォ」
「7番簪。ヒルデ?」
「あ、8番のヒルデデス。ドラゴンも大丈夫デス」
ドラゴンの治療を続行しながら、ヒルデはドラゴンに文字を書く。
書く文字は鎮痛。それで怪我がなくなるわけではないが、少なくとも怪我の痛みからはある程度解放される。
「大変だったなデス。でも、これで大丈夫デス」
そう言ってなでるヒルデの目はとても優しげだった。
「まあ、使い魔ができないのは残念だけどデス。ま、変な化け物に襲われてる希少種を助けれたなら上出来です」
にっこり笑いながら、ヒルデは聖光龍にほほ笑んだ。
その姿を見た聖光龍は、その頭をヒルデにすりよせた。
「あれデス?」
・・・その光景を見て、その場にいる者は共通した思いを感じた。
・・・あ、懐かれた。