n番煎じともいう。
(パクリの意図は一切ありませんが、万が一にも既存の作品と同じような文章があればお知らせください)
【
彼は格が低いとされる淫魔でありながら、最恐の悪魔として名を馳せている。
その理由としては、彼に目を向けられたモノは等しく魅了されてしまうからだ。
重要なのは、「目が合った」ではなく「目を向けられた」という点。
盲目であっても、同性であっても、性的嗜好が違っていても。
彼に目を向けられてしまえば、皆等しく彼の虜となってしまう。
ならば意識外からの不意打ちであれば、と誰しもが思うだろう。
しかし不条理な事に、彼は周囲の「空間」を魅了することで壁として機能させており、危害を加えられることを防いでいた。
つまり非生物さえも魅了の対象なのである。
天災、理不尽、怪物。
ありとあらゆる言葉をもって評された、正しく「最恐」。
「くっ…」
その最恐の前に、とある騎士が膝をつく。
彼女は西方地域にて最強と称されている女騎士であり、此度の淫欲の王討伐の任を受けていた。
しかしそんな彼女をもってしても魅了からは逃れられず、あと一歩の距離で膝をついたという訳である。
「驚いたよ。まさか、こんな近くに来られるまで気付けなかったなんて」
脳髄を蕩けさせるかのような美声で、彼は謳った。
「【武芸百般】【万能】【究極の一】……様々な異名で語られているだけはあるね。盗賊顔負けのスニーキング技術だ。
この距離まで来られたのは、生まれて初めてだよ」
彼の賛辞を受け、女騎士の顔がみるみると蕩けていく。
【盗賊王】の謀略に嵌められ、
脳内の全てが、淫欲の王に侵食されていく。
(堕ちたな…)
その様を見た彼はほくそ笑み、徐に彼女の頬に触れようとする。
インキュバスである彼をもってすれば、ただの皮膚接触だけで極上の愛撫に等しい。
この駄目押しによって完全に己が物とし、そのまま貪ろうと今後の方針を固め――
手首から先を無くした右腕が瞳に写った。
「あえ?」
気の抜けた声が漏れ、それが合図とばかりに鮮血が迸る。
「ぎっ、アァァアアァア!?」
壊れた噴水のように紅い血が噴き出し続け、思わずもう片方の手で抑えようとし――空を切る感覚だけが帰ってくる。
目を向ければ、左腕の肘から先が喪失しているではないか。
なぜ、なぜ、痛い、痛い、辛い、なぜ、血、赤い、腕、なぜ。
混乱し、思考が定まらない。
視界の端の写っていた、振り切られた銀閃にも気付くことが出来ない。
美しく光を反射する銀色の剣にも。
その剣を手に持っている女騎士にも。
――蕩け切ったままの“女”の顔に、僅かな悲哀が宿っていたことにも。
しかし女騎士は逡巡もなく、ひと思いに剣を振った。
淫欲の王が、最期まで現実を理解する間もなく。
わからない、分からない、判らない、解ら――
私は騎士である。
現在は西方地域最強の騎士とまで謳われるほど名声を馳せている。
騎士になったきっかけは幼少期の体験が大きい。
生まれ故郷たる村が魔物たちに蹂躙され――そこに、騎士団が救援に来たのだ。
殺された男や弄ばれた女は大勢いたが、それでも決して少なくない人数が助けられた。
そんなヒーローとでも言える彼らの姿に憧れ、私は必死に志願して入団を果たした。
――違う、嘘をついた。
本当はそんな高潔な理由じゃない。
今のはあくまで建前。無垢な子供たちや民衆、上官たちへの方便だ。
本質は真逆。長い付き合いの同僚にも悪趣味と呆れられた、とても自分本位なものだ。
それは――
全力で抵抗しても抗えない理不尽に蹂躙されたい。
私が騎士をやっている理由は偏にそれだ。
どうにも私は性癖が倒錯しているようで、重度の
幼少期に、物陰に隠れながら網膜へ焼き付けたあの光景。
何度も相談に乗ってくれた、同じ願望を持っていた近所のお姉さんが魔物に弄ばれ悦んでいた姿。
あれこそが、私の理想とも言えるだろう。
…正直、今でも自らを慰める際にはお世話になっている。
念の為、心の防衛本能とかそういうやつの可能性も考慮して専門の医師を訪ねたこともある。
しかし精神魔法にも熟達した医師からは「マジで生まれつきだね。こう…魂が
そのため私は、胸を張って言う。
「理不尽を相手に蹂躙されたい」と。
だが、ただ押し負けるだけでは到底納得できない。
重要なのは「全力で抵抗しても抗えない」という点だ。
持てる手段を尽くし、抗いに抗ってもなお圧殺してくる
それこそが私の運命、私の命と言えるだろう。
その点、
仕事なので初手から殺しに行ったが、直前で見えない壁に阻まれてしまった。
魅了した空間による自動防御、実に
しかし認識した相手へ掛かる魅了、これが良くなかった。愛する人への加害意識を奪えないなど欠落品も良いところだ。
何度も重ねてしまうが、私の嗜好は「全力で抵抗しても抗えない」ことだ。
魅了が掛かってしまった瞬間、私は彼を殺すための方法を全力で模索し続けた。
その結果がこの有り様だ。
空間の自動防御に阻まれる? なら空間ごと斬れば良い。
魅了で精神が侵される? 重畳、理想の相手なら私の全力も捻じ伏せられるはずだ。
あと彼の姿を目にしたり声を耳にした時、その体臭を嗅いだ時など。
彼という存在を強く認識すればするほど肉体が
もっとも、力が抜けきったとしてもそれを前提にした動きをすれば良いだけだ。筋力の足りない騎士たちが使っていた技術を以前教わった。自身の力は最小限に、相手の動く力を流用するのだとか。
なので、身体にかかる重力などを運動エネルギーに変換して相手を両断できるようになった。おかげで疲労が溜まり辛くなり、継戦能力が上がった。
とても助かったので感謝を述べたのだが、彼らは「違う、そうじゃない」と天を仰いでいたが、何が違うのだろうか。
話が逸れてしまった。
つまり、魅了で私の心を掴んでしまったばかりに
惜しかった。実に惜しかった。
今度こそ理想の相手と出会えたと高揚しただけに、その落胆はひとしおだ。
まぁ、騎士として民草の安寧を守れたので良しとしよう。
というか良しと考えないとやってらんない。
そうして少しヘソを曲げながら、私は帰路に就いたのだった。
女騎士
_主人公。重度のマゾヒスト。早い話がこ〇すばのダ〇ネスもどき。
ただし「ぼくのかんがえたさいきょう」みたいな化け物スペックがあるので、理想の相手へ求めるハードルが青天井。なんなら未だ発展途上である。
一応は立場と良心に従い人類の味方として、騎士としての役目に準じているので、傍から見れば理想の騎士そのもの。
優先順位としては、騎士としての役目>被虐願望。
世界各地で名を馳せる化け物のようなモンスターたちに挑み勝ち続けているため、無辜の民からは救世の英雄、人類の敵からは人の形をした絶望扱いされている。
最近の悩みは、理想の相手が見つからない現状そのものに理不尽を感じ興奮しかけていること。
もはや末期である。
ちなみに作中にて描写された【盗賊王】の躾けがどうたらに関しては、「当時はまだ未熟だった」「盗賊王の格がめちゃくちゃ高かった」などの要因が重なった結果。あと一歩で陥落するところだったが、ギリギリ逆転勝ちできてしまった。
【武芸百般】【万能】【究極の一】などの二つ名の通り、基本何でもできる。そのため理想の相手が見つかれば、性癖も相まってどんな状況にも対応してひたすら尽くす忠犬属性を発揮する。見つかりさえすれば。
ただし隙あらば理不尽を求めて襲いかかってくるバーサーカーなので、それを制圧できなければどうなるかは想像に難くない。もはや彼女が一番の化け物。
少なくとも真っ当に生きていればちょっとした怪我の範疇で済むが、そうでなければ…
_インキュバスの王。
生物非生物を問わずに魅了する理外の化け物…なのだが、主人公が強すぎたため敗死。
敗因は「相手が悪すぎた」。
近所のお姉さん
_ちょっと出てきた端役。マゾの先輩にして主人公の良き(?)理解者。
魔物たちから助け出された際に、手を差し伸べてくれた騎士くんに一目惚れ。さらに彼に無自覚のサド欲があることを見抜き運命を感じて熱烈アプローチ。
現在は2児の母であり、夫婦仲は円満である。