思いついたはいいけど需要があるのかわかんなかったのでとりあえず上げてみたり。


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とある猟虎と暗黒星(ダークスター)

 

 

弓箭猟虎はぼっちである。

正確に言えば、ぼっち(自認)である。

 

優れた容姿に成績優秀、運動神経もよくて芸術にも造詣が深く、さらにはおどおどとした庇護欲に訴える性格。

彼女が通う枝垂桜学園がお嬢様学校なのも幸いし、実際のところそこまでぼっちというわけでもない。

だが────────

 

(ああ、今日もお誘いいただいたのに………せっかくお友達になれるチャンスでしたのに……)

 

彼女はとある事情により、毎度毎度交友を深める機会を逃していた。自己肯定感だけはわりかし高い猟虎だが、こと人間関係に関しては色々と重い。

 

たとえよく思われていようと、話す機会があろうと、それを認識できず、彼女が求める『友達付き合い』ができないのでは意味がないのだ。

少し聞けばなんとかなりそうなレベルの齟齬だが、話しかける勇気がないのでなんともならないのが人生というやつである。

 

そんなわけで、今日も猟虎は一人帰宅だった。

 

「はぁ……」

 

どよんとした気持ちが口からこぼれ、首が自然とうなだれる。

 

()()さえなければ、今頃クラスメイトとショッピングのはずだった。学舎の園のデパートに行くはずだった。

流行りのスイーツショップに寄って、ケーキをひとくち交換するはずだったというのに!

 

しかも獲物は大して啼かなかったというおまけ付き。大損である。

 

「わたくし、このままずぅーっとぼっちなんでしょうか………」

 

湿度高めの負のオーラを撒き散らしながら、猟虎は足を一歩前に進めて────────カン、と。

 

「あら?」

 

足が何かに当たった。

つま先にHITしたそれは、くるくると回転しながら数メートル先まで滑っていく。

 

『ちょっ、まわっ?!ぎゃーっ!!!!』

 

……なんだか情けない悲鳴を撒き散らしながら。

 

怪しがりて寄りて見るに、それは携帯電話。

それも最近学園都市の外で主流だという四角い板状、いわゆるスマートフォンだった(もちろん学園都市にもスマホはあるが、多機能型やら小型やらの格安試作機に埋もれがちなのだ)。

 

画面は点いていて、なにやら可愛らしい少女が映っている。

「誰かの落とし物でしょうか」

 

(動画を再生しながら落とすものですかね)と不思議に思いつつ、とりあえず手に取ろうと、猟虎はしゃがみ込んだ。

当然、画面を覗き込む形になる。すると。

 

『あ、ちょっとあんた!!』

 

「ふぁいっ??!!」

 

バチコーン!と目が合った。

 

あまりにも不意打ち。あまりにも至近距離。ぼっちにとっては刺激が強すぎたのか、咄嗟に彼女は回避行動を取る。

 

曲げていた膝を瞬時に伸ばし、跳ね上がる最中に手を振り上げて重心を後ろへ。要は美しいバク転であった。

暗部で鍛え上げた身体能力をフルに使ったそれは手本のようで、着地まで完璧。美しい軌道を描いて数メートル後退した猟虎は流れるように右手を振り上げて、

 

『はーっ?!ちょっと嘘でしょ、2時間よ?!やっと誰か来たと思ったのに〜ッ!!!』

 

その場に崩れ落ちた。

 

(引かれた……絶対に引かれた……!!!終わりですか終わりですねだって着地を狙えましたものね素人の方ですよねならいきなりバク転しただけのヤバい女ですわたくしもう終わりですっ)

 

もはや涙まで出てきた。

 

ビデオ通話だがなんだか知らないが、彼女はこのスマホの落とし主なのだろう。

今も『誰でもいいから通りすがりなさいよーッ!!!』と言う声とともに画面を叩く音が聞こえてくる。

これを届ければ、それを機に友人になれたかもしれなかった。

 

しかしもはやそれは叶わぬ夢。

呼びかけたくらいでバク転かます女相手に仲良くしようとは誰も思うまい。

きっと手渡す時だって目線を合わせてもらえないし受け取ったらお茶なんかせずにさっさと帰ってしまうのだと、猟虎は絶望した。

 

……それでも、弓箭猟虎は真面目な人間であった。

涙をこぼしつつ、もう一度スマホに歩み寄る。

 

「もっ、申し訳ありません……おおおお、お、驚いてしまい………そのぅ…………とと、届けるくらいなら致しますからっ、どうかっ………!!!」

 

『あれ、さっきの子じゃない!戻ってきたんならそんなの気にしないわよ、それより手を貸しなさい』

 

「────えっ」

 

今、この少女は何と言ったのか。

気にしない?いきなりバク転したことを?

あの挙動不審を全く気にしない、太平洋より広い器の持ち主?

そしてなにより、

 

(わたくしを、必要としてくださる……?!)

 

それは、猟虎にとって革命であった。

言葉にできぬ激情に、口がはくはくと空回る。

しばらく逡巡して、ようやくひねり出した言葉は。

 

「お、お名前を、お聞きしてもっ……よろしいでしょうか……?」

 

すると少女はキョトンとしてから、『確かに、頼む割に名乗らないってものおかしな話ね』と笑った。

 

そして姿勢を正して、ビシッ!とこちらに指を差す。決めポーズから放たれる名乗りは、さながら決めゼリフである。

 

『この私こそ、アイプリ界最強の『ダークスター』!!!ダークチィ様よ、覚えておきなさい!』

 

 

 

────学園都市。

科学と魔術が交わるこの街に、科学とも魔術とも取れる「イレギュラー」が現れた。

ひとりぼっちとひとりぼっちが出会うとき、そこに何が生まれるのか。

 

 

 

 

 






弓箭猟虎→まさか実体のないバーチャルアイドルプリンセスだなんて思うわけがない

ダークチィ→角度的に猟虎のアクロバットが見えていない

ナイナイ尽くしの勘違いから始まる話。
需要があれば続くかもしれない


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