【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
チャミー操るマレデウスは、前に踏み込むなり、空中に浮かぶ俺に鋭い正拳突きを放った。
「ッ、戻れ!」
俺はそれに歯噛みしながら、パラグライダーを仕舞いこむ。起こるのは自由落下。だが、それでは終わらない。
俺はグラップリングフックを放ち、落下の勢いでマレデウスの下半身をスイングする。
そうだ。巨大な人型の敵と戦う経験は、すでに積んである。
いわばこれは―――チャミーINマレデウスは、ナルシスON巨大ゴーレムのレベル2!
『っ。その動きは知っていたが、やられると中々やりづらいものだな!』
マレデウスが身をよじるが、その程度ではグラップルは外れない。俺は弧を描いてマレデウスの背後に飛び上がり、グラップルを回収からの再発射。
狙うは背中のど真ん中。コックピットを背後から打ち破る!
「開幕パンチは貰ったァッ! パイルッ、バンカーァァアアアアアア!」
グラップルで急接近。構える拳に唸る炎。巨大なエネルギーを秘め、俺は杭を打ちだした。
パゴォォォオオオン! と軽快な金属音が響く。炎が吹き荒れ、反動に俺は吹っ飛んだ。
そこにパラグライダーを展開し、さぁどの程度のダメージか、と確かめる。
そして、愕然とした。
無傷。マレデウスは、パイルバンカーを食らってなお無傷だった。「マジかよ……!」と俺は引きつった笑みを浮かべる。
笑うのは、チャミーだ。
『ハハハハッ! 海神がここまで頑強だとはな。テクト、お前の機動力はすさまじいが、攻撃力が足りていなければ、私には勝てないぞ!』
マレデウスが振り返る。手を広げ構える。手の平の中心には、輝く巨大なガラス球がある。
そのガラス球に、光が灯った。殺意を宿した光である。
前世が日本人の俺には、それが何であるかが、すぐに分かった。
「回避ィッ!」
パラを閉じてグラップルで森に向かって急速回避。俺がいた場所に、光線が走る。
光線はそのまま、背後の森を焼き払った。俺は森の中に身を隠して、戦慄する。
『おお、びーむ、とはこういう機能だったか』
「チャミーお前! 直撃したら俺即死だぞバカヤロー! これの何がケンカだゴラァッ!」
『何を今更。王族のケンカが命がけではないとでも? 私が五歳を超える頃には、兄上縁者から差し向けられた暗殺者から、裸足のまま逃げ出したものだったぞ!』
「王族ってそうなの!?」
『それに―――』
チャミーが、くす、と笑う。
『お前は避けただろう、テクト。ならこの程度、手加減する必要はないということだ』
再び光線が森を焼く。だが俺のことを見つけられてないのだろう。狙いは的外れだ。
同時に、思う。やはり正気ではない。チャミーは本来かなり慎重なタイプだ。ケンカ一つで、友達が消し飛ぶような攻撃は絶対にしない。
「クソッ、早くぶちのめして、正気に戻してやるよ」
俺が言うと『やれるものならやってみろ』と勇ましい答え。お前、正気失ってる自覚があんの? じゃあ怒りも込めてぶちのめすよ?
まぁいい。ケンカしたいと言うなら、やってやろう。マレデウスを破り、あの顔に拳を叩き込んでやるまでだ。
宝玉の魅了効果はよく分からないが、マレデウスが倒れても続くような代物ではないはず。
「友達だからな。付き合ってやるさ」
俺の呟きは聞こえていなかったのだろう。答えもなくマレデウスは、再び光線の構えを取る。照準はまっすぐ俺を狙っている。見つかったか。俺は素早く、グラップルで森を駆ける。
俺を追って、光線が走る。森を焼き払いながら、マレデウスは光線を一閃する。
だが、光線は無限ではない。放ち終わったタイミングを見計らって、俺はグラップルで森を飛び出した。
マレデウスに向かって飛び掛かる。マレデウスが腕を駆動させて叩き落とそうとするのを、パラグライダーを瞬間展開して回避する。
『っ! 本当に回避が上手いな、テクト!』
「生憎、こちとら一撃が命取りなもんでね!」
パラを瞬時に仕舞って、振るわれたマレデウスの腕にグラップルを打ちこむ。そこに着地し、腕伝いにマレデウスの肘裏まで駆け上がる。
マレデウスは固い。固い装甲である以上、正面から戦うつもりはない。つまりは、弱い部分を狙えばいいのだ。
例えば、関節。どんな固い素材で作られていても、関節は脆いものだ。
「パイルッ、バンカーァァアアアアアア!」
パゴォォオオオオオン! と軽快な音。荒れ狂う炎。
だが、マレデウスは無傷だった。俺は「固ってぇなぁおい!」と次は肩に移動する。
『くっ、ちょこまかと……! テクト! お前海神相手に生身で対等に戦うとは正気か!?』
「あぁ!? 今更何言ってんだ!」
『冷静になったら、生身じゃ逆立ちしても勝てないなと思ったまでだ! この超人め!』
「うるせぇッ! ここまで全部計算づくの天才が!」
俺は振り払う腕をグラップルで回避し、ついにはマレデウスの頭部に辿り着いた。
そして、再びパイルバンカーを構える。狙うは目。関節がダメでも、目なら砕ける!
そこで、チャミーではない声が響いた。
『ここまでだ、チャミー。私が出る』
『カノン―――仕方ない。一対一を楽しみたかったが、ここまでのようだ、テクト』
コックピットから、カノンが飛び出す。岩鎧をまとった、全力の姿。空中でカノンは俺に狙いを澄まし、巨大ハンマーを振りかぶる。
「神槌ミョルニル」
そして、巨大ハンマーが、俺目がけて飛んできた。
「チッ、奥の手を出してきやがって!」
俺はマレデウスの肩にグラップルを打って急速回避。からのパラグライダー展開で、マレデウスの腕の追撃を躱す。
そこから仕切り直して、カノンの死角から攻めないとな―――そう思った瞬間だった。
「戻れ、ミョルニル」
「っ」
巨大ハンマーが一人でに、宙を走る。俺に飛んできたから、パラを閉じて自由落下で回避。
するとその先に、移動したカノンが地面で巨大ハンマー、ミョルニルを掴んでいた。
カノンは戻ってきたミョルニルの勢いを生かして回転。そのままノータイムで俺にミョルニルを投げつけてくる。
「――――ッ」
凶悪。俺は歯噛みする。カノン。手に戻るミョルニルを、そのままの速度で投げ返せるのであれば、それは無限の砲撃そのものだ。
避けきれない――――そう思った瞬間だった。
「テクトさんはッ! ぼくが守るのでッ!」
地龍が走り来て、ミョルニルを轢き弾き、カノンを踏みつぶす。
「!?」
『なぁっ! ……く、はは! もう来たのか! 聖女候補筆頭殿!』
俺たちの視線が地龍に釘付けになる。つまり、地龍の頭に乗る、小さなセラフィに。
セラフィは地龍の頭の上で、手を組んでいた。ゴ――――ンゴ――――ンと鐘が鳴り、後光が差し、セラフィの頭の上にはヘイローめいた魔法陣、背中には巨大な翼が広がっている。
「セラフィ! おまっ、それ!」
俺がパラグライダーでゆっくり下降しながら叫ぶと、セラフィは言う。
「地龍は、主の前に下ったと書いてあった! であれば地龍は主のシモベ! 聖魔法で使役できない道理はないので!」
マジかよ、と思う。頼もしい援軍だが、やりすぎじゃないかと味方ながら思ってしまう。
だが、チャミーは上機嫌で笑っていた。
『ハハハハハハッ! これで二体二だな、テクト! さぁ、続きを楽しもう!』
「……このケンカが終わる頃、魔獣島残ってないんじゃねぇの?」
俺はグラップルで森を移動し、地竜の上まで飛び上がる。
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