「私ハ宇宙人デス。」
シャツを脱ぐ。
朱色の肌、灰色の腹部、紫の水晶体があらわになる。
明らかに人間のそれではない。
「正確二は地球外生命体デすネ。
ドチラにしロ人間ではアりませン。」
「「・・・」」
「えええええ!!??」
「はああああ!!??」
「てめぇコラこのクソ落ち着け!!」
「宇宙人を目の前にして落ち着いてられるか!!」
やあ、大曝露した私である。
思ってた反応と違う。
現在目の前まで少年が迫ってきている。小さな招き猫が服を引っ張って今にも突撃しそうな少年を止めている光景は中々奇妙だ。
意外なことに宇宙人であることを平然と受け入れているようだ、特に少年。好奇心に満ちあふれて高揚しているのがすごい伝わる。
「アイツらみてぇな奴かもしれねぇぞ!!」
「あなたはジブンの性器を奪ったりしますか!?」
?????
「しまセン。」
何でそんな発想になるんだ。私がそんな性犯罪紛いの下劣なことする宇宙人に見えたのか?悲しい。
「ほら!セルポ星人とは無関係だ!友好的な方ですよ!!」
「ほら!じゃねえわボケが!!」
誰だセルポ星人。…もしかして、この日本に他にも宇宙人がいたりするのだろうか。
"アイツら"や"友好的な方"といい、彼らは他の宇宙人と会ったことあるのかもしれない。
つまり私があらぬ疑いをかけられたのはセルポ星人とやらのせいだな?なにしでかしてくれているんだこんな子供に。許さん。
…いや今はそんな場合じゃないな。
情報が飽和して話がずれまくっている。
「あノ、一旦喋らないでくだサい。色々お話しする事があるので。」
「あっすいません。」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ…」
「単刀直入に何故正体を明カシたかお伝エシますと、私の能力ヲ用いてコこにイナいお二人の探索をすルタめデす。」
色々考えた。
ここに連れてきた赤い部屋という悪霊、外にいる覗き魔、最低でもこの病院には化物が二匹いる。
しかも、初手から溺死を狙い、廊下で焼死させようとし、悪霊に至っては必ず出血多量で殺しにくるなどかなり殺意が高い。
また、存在しない記憶を見せ、この私をいいように操っていたあたり、かなり狡猾で幻覚のようなものを見せることも可能ではないかとも思った。
呪われている私ほどでないだろうが、二人か一人だけでいる女性陣の方々はとてつもなく危険だ。
しかし廊下からあの覗き魔がいなくなっているとは限らないし、仮におらずとも病院内を探索する以上悪霊に不意打ちされるリスクもある。
普通ならリスクを冒して病院内をしらみつぶしに探すしかないのだろう。
しかし、私は普通ではない。
「私はサイコパワー…超能力が扱エマす。他ニモ生物の電気を感じ取ル能力なドも持ッてイマす。こレヲ用いてオ二人の探索をシます。」
コウモリやイルカのエコーロケーション、サメのロレンチーニ器官のような方法だ。
「壁ヤ床などノ障害物をアる程度無視でキるので危険ナ病院内を虱潰しデ探す必要なク、行き違イなどのリスクも抑エて探索でキます。」
廊下に出るリスク、悪霊に遭遇するリスク、探索に時間をかけて手遅れになるリスクを潰し、探している途中で行き違いになったりすることもなく、かなり安全かつ確実に発見できる手段を私は使えるのだ。
「しカし、この姿ダと超能力ノ出力が低ク、電磁波を感じルこトも出来なイノで、病院全体の探知ガ出来ません。」
私は地球人の姿だと超能力の出力がかなり落ちる。
また、視覚なども人間に合わせているため電磁波を読み取れない。
「なのデ、一旦元の、人でナイ姿に戻ル必要があリまス。
しカシ、何も言ワず変身してはカなりの混乱を招クと思い、伝エた次第デす。」
隣にいた人間が謎の生命体に変貌したら誰でも驚くだろう。
しかし元の姿だと言葉が話せない。
そのため、言葉で直接伝え、この未だ造りきれていない胴体を晒すことが、最適解だと思ったのだ。
「ツまリ結構急いで探スため暴露しマシた今すグ探知シますネ。」
「おお!それは心強
ウワーッ!!なに脱いでるんですか!!??変態!!!」
「上はとッくに脱イでまスし今更でハ。」
脱いだシャツとロングパンツを畳んでリュックの隣に置く。
体の形…特に腕と足回りが変わるのだ。着たままだと変身したときに破れるし、腕は可動域が狭まる。
「羞恥心ないんですかあなたは!!?」
「あリまセん。」
無性の地球外生命体に羞恥心を求めないでくれ。
体を元の姿へ戻す。
突き当たりのある喉を細胞で埋め尽し、鼻や口、睫毛は顔に、髪は頭に同化し、人間の凹凸のある顔が平坦になっていく。
両手の爪、指、皺はなくなり、腕が滑らかな二本の触手へと化し螺旋状に絡み合う。
踵からつま先までがなくなり先細く変形し、足と腰の付け根に円盤が造られる。
数秒程度だがあえて表現するならこんな感じだろうか。
部屋の隅々までくっきりと見えていた視覚がぼやけ電磁波の見えるものへ変わった。人間の視界とは全く異なりぐにゃぐにゃとしているが、違和感はない。
体に張っていた光の壁も消し、体の形も戻ったためサイコパワーの出力も操作性も元に戻った。
馴染みのある体だ。
「うわあっすごい!」
……少年がすごい見てくる。目がキラキラしてる。
小っ恥ずかしいな。
まぁいい。お二人を早く探そう。
電磁波とサイコパワーでの探知を行う。
………
ふむ。
まず、この病院は計五階建てのようであまり広くないようだ。外は何も無い。
肝心の綾瀬さん達は三階にいる。無事のようでホッとした。
下の階には血液の溜まっている部屋は無いようで、どうやら溺死させるつもりだったのは私達だけのようだ。この階の部屋全てが血の貯水槽になっていて殺意が計り知れる。
一階下で近いし彼女達とはすぐ会えるだろう。
問題はすぐ近く。
この四階の外壁に大きな電磁波の反応があった。恐らく、というか確実に覗き魔だ。未だに狙ってきているらしい。気持ち悪い。
残念ながらサイコパワーの方が引っかからなかったので具体的な姿形は分からない。電磁波の反応的になんか細長い?ような気がする。本当何アイツ。
まぁ探知は済んだ。早く合流しに行こう。
この姿だと口がなくて話せないので元の姿に戻る。
「おお!宇宙人はふだん人間に擬態して過ごしているって本当だったんですね!」
「肉体をそのまま変えてんのか。どうりで気づけねぇわけだぜ。」
「オ二人は三階ニいまスね。こコは四階なのデ一つ下です。しカシ廊下はアイツがまダ見張ッていルよウなのデ通れまセん。」
もし今出ようものなら黒焦げになるだろう。
「まだ廊下にいんのかよ。」
「この部屋から出られませんね…」
「出らレますヨ。」
「え。」
確かに廊下へは出られない。
廊下へは。
別に階段まで行くのに廊下を通る必要はないのだ。
なんなら階段を使わずとも三階へは行ける。
「お二人、こちラへ。」
「はい…?」
「よっと。」
もう一度姿を戻し
リュックを背負いずぶ濡れの服を乗せ、片腕の触手を少年とターボさんに掴んでもらいテレキネシスで少し浮かさせてもらう。
これで足を挫いたりすることはないだろう。
空いている触手を振り上げ構える。
レッツ、ショートカット。
□
ドガァンガラガラ
「うわっ何?!」
「あの部屋から聞こえたぜ。」
仄暗く無機質な病室をコソコソと探索していた綾瀬家の二人。
彼女達のいる三階は、自身らの足音がかすかに廊下へ響く程度で、ほとんど静寂に包まれている。
そんな三階に突如、轟音が鳴り響いた。
左前の部屋からだ。
「もしかしてあの赤マント?」
「分からん…隠れとけ。」
探索していた扉を閉めて息を潜める。
前触れなく起きた出来事。
心音が体の内に鳴り響く。
ガ ガララ
その部屋の扉が開いたようだ。
少し開けて覗いてみる。
「えっ!オカルン?!」
出てきたのは探していた人物その人であった。
肩にターボババアも乗っている。
見つかった喜びと怪我のない姿から安堵が湧き出る。
しかし、すぐに突き落されることになる。
「っ?!」
彼らの後に続いて部屋から出てきた"何か"。
灰色の体、朱色と水色の触手と先細い足にのっぺりとした顔、胸あたりに紫色の水晶体がある。
頭に三つ、足に二つの尖った突起物、目は黒と白目が入れ替わっており、睨みつけているような鋭い目つきだ。
どこからどう見ても人間ではない。
まさに宇宙人といった容貌だ。
その宇宙人はこちらを見ている。
「………。」
その鋭い目と目が合った、ような気がした。
わずかに開けていた扉を開け放つ。
「オカルン離れて!!」
「えっ綾瀬さん?!」
超能力で宇宙人を掴む、ことはなかった。
押し返される感覚がする。
「ああもう!!」
「……。」
超能力の押し合い。両者が動かない膠着状態。
そんな中星子がバットを持って飛び出す。
胸に向けてバットが振り抜かれる。
今にも当たる瞬間─
「ちょっと待ってください!!」
「うわ!」
静止が入った。
あの宇宙人は声に気を取られた隙をついたのかいつの間にか消えている。
星子のバットは空振り、モモはつんのめって前へよろける。
「その人…人?は敵じゃありませんよ!」
「えっどういうこと?」
「おい、説明しろ。」
「どうヤラ落チ着いていタだけたヨうで。説明ハ私かラしマしョウ。」
お待たせしました…
遅筆ですみません、次の投稿も結構後になると思います。
のびのび待っていてください。
主人公(地球人フォルム)のスペック
・服を着た時のシルエットは人間
・五感(嗅覚、味覚は不完全)は人間とだいたい同じで少し良い程度
・服で隠れる部分や臓器は造っていない
・喉と口があるので声が出せる。
・光の壁を常時張っていたり、元の姿達と感覚が大きく異なるためスペックは弱体化している
・ノーマルフォルムを基盤にしているので直接他のフォルムに変身できない