出撃!庶務騎士団   作:nocomimi

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ホラー好き女子にも色々なタイプがいると知りましたのです

庭師のジュゼッペです。

 

ワシら庶務騎士団は、底知れない魔物の巣と通じていると言われる『ハデスの門』という洞窟を封印するべく、

 

古代遺跡「ヒエラポリス」に足を踏み入れたのです。

 

ところが、なだらかな丘を登って闘技場の中に入ると、

 

入り口が自動的に鉄格子で塞がれ、案の定魔物たちと強制バトルさせられるハメになったです。

 

闘技場の砂の中からぞろぞろと出てきたのはグール(屍鬼)どもでした。

 

ワシらはすぐ、ルクレティアお嬢様を守るように陣形を整えたです。

 

屍鬼どもは数十匹おり、ワシらを包囲してきたです。

 

連中は裂けた口を歪めて舌なめずりし、長い爪を持つ手をかざしながら襲いかかってきたです。

 

「ワシに任せるです!」

 

ワシは何しろ新品の斧を買ってもらったばかりなので、こんな雑魚敵に負ける気がしなかったです。

 

ワシは斧を振り上げ敵群に突進すると雄たけびを上げながら横に振り回したです。

 

斧の刃の切れ味は抜群でしたです。

 

ワシの斧に当たると、たちまち十匹ほどの屍鬼どもが胴体を真っ二つに切られて倒れたです。

 

「見たか魔物ども!」

 

ところが、上半身と下半身に分かれてしまったはずの屍鬼どもはまだ生きていて、

 

上半身だけで這いずりながら殺到してきたです。

 

ワシは慌ててそのうちのニ、三匹を縦に真っ二つにしましたが、

 

残った連中がワシの身体に取り付いて、噛み付いたり爪を立てたりし始めたです。

 

手で引き剥がそうとしても、しつこくひっついてくるのです。

 

その時、背後から雷撃が放たれ、ワシにとりついていた屍鬼に命中したです。

 

振り向くと、ジョバンニの旦那がルクレティアお嬢様を庇いながら魔法使いの杖をかざしていたです。

 

杖の先端から次々と雷撃が飛び出し、屍鬼どもの頭に当たりましたです。

 

さしもの屍鬼どもも、気を失ったらしくワシの身体から剥がれ落ちていったです。

 

「ジュゼッペ、こいつらは頭を潰さないとダメだ!」

 

見ると、ラファエロの旦那が戦いながら肩越しに振り向いてワシに叫んでいたです。

 

旦那は華麗な剣裁きで次々と屍鬼どもの胴を払い、その手首を断ち切り、そして首を刎ねて倒していたです。

 

ワシは了解すると、体勢を立て直し、残る敵に向き直ったです。

 

ワシは戦い方を変えたです。正面から迫ってくる屍鬼を斧の先端で突いて吹き飛ばし、あるいは横から来る奴の脚を柄で払って転ばせ、

 

倒れた奴はその頭をすかさず真っ二つにしたです。

 

ワシらはいつしか、ワシとラファエロの旦那が敵を迎え撃ち、ジョバンニの旦那がルクレティアお嬢様を守りつつ後方支援する隊形になったです。

 

戦っているうちに敵の数がやっと半分ほどになりましたが、ワシとラファエロの旦那はやや疲労してきたです。するとジョバンニの旦那が叫んだです。

 

「ちょいと二人とも下がってて!」

 

ワシが慌てて引き下がると、ジョバンニの旦那が杖を高く掲げて呪文を唱えたです。

 

すると、ワシらを取り囲むように円形の炎の壁が突然現れたです。

 

たちまち十匹以上の屍鬼どもが炎に包まれてのたうちまわり始めたです。

 

生き残りの屍鬼どももワシらを襲おうとして突進してきましたが、あえなく火だるまになってしまったです。

 

しかし、屍鬼どもは簡単には死なないことがワシにも分かってきたので、

 

ワシは油断せず斧を構え直しましたです。

 

案の定、燃え尽きなかった個体が数匹ほど炎の壁を突き破って襲ってきたので、

 

ワシは落ち着いて片端から首を切り落としてやったです。

 

やがて、炎が落ち着くと、闘技場には肉の焦げる嫌な臭いが充満しましたが、

 

動く魔物どもは一匹もいなくなったです。

 

「なんだ、最初からこうしてくれればよかったじゃないか」

 

ラファエロの旦那がジョバンニの旦那に冗談交じりに言う声が聞こえたです。

 

「ちょいと、自分は働かないであたしを便利にコキ使う気?魔法ってそんなお安い物じゃあないのよ」

 

ジョバンニの旦那が服の襟を直しながら答えておられたです。

 

「ジュゼッペさん、大丈夫でいらして?少しお怪我されたようですわ」

 

すると、ルクレティアお嬢様が旦那の後ろから進み出て心配そうに声をかけて下さったです。

 

「なにお嬢様...これくらいかすり傷です。唾でもつけておけば直るです」

 

ところが、ワシがこう答えるとジョバンニの旦那が仰ったです。

 

「ちょっとそんなこと言ってる場合じゃないわよ。屍鬼に噛まれたら細菌感染で自分も屍鬼になっちゃうこともあるんだから。早くルクレティアちゃんに直してもらいなさいよ」

 

「確かにそんなことになったらおおごとだな。ジュゼッペが屍鬼になったら誰にも手がつけられないぞ」

 

ラファエロの旦那もそう仰るので、ワシは大人しくお嬢様に治療してもらったです。

 

ところがです。

 

お嬢様の祈祷が終わるか終わらないかのうちに、奇妙な地響きが聞こえ始めたです。

 

それは闘技場のグラウンドを細かく揺らしていたですが、

 

やがて大きく激しくなってきて、

 

それと同時に闘技場の砂の中央が盛り上がり始めたです。

 

それは高さ数メートルまで盛り上がると、砂が爆発するように飛び散り、

 

そこから何者かが姿を現したです。

 

それは屍鬼でしたです。

 

でも、その大きさが異常なのです。背の高さが5メートルはありそうなのです。

 

「.....ちょ....ちょっと何なのよkrれe?」

 

目を丸くしたジョバンニの旦那が声にならない声を上げたです。

 

しかしワシらは我に返ると、武器を構え直したです。

 

そいつは乱杭歯の生えた口を大きく開け、禍々しい形の爪の生えた巨大な手を大きく振り上げてきたです。

 

巨大屍鬼が手を横に払って攻撃してきた途端、

 

ラファエロの旦那が進み出て素早く剣をその手に突き出したです。

 

剣が刺さり、たちまち鍔のあたりまで刃が魔物の手に喰い込んだです。

 

しかし、巨大屍鬼は痛みを感じないのか、その刺された手でもって強引にラファエロの旦那を捕まえようとしていたです。

 

ワシは咄嗟の判断で、斧を振り上げると巨大屍鬼のその腕の内側に思い切り振り下ろしたです。

 

斧の刃がバックリとそいつの腕を割りましたです。

 

ところが、巨大屍鬼は片腕が千切れそうなほどの重傷を負ったにもかかわらず全く堪えていない様子で、

 

もう片方の腕を振り上げてきたです。

 

その瞬間ワシは「しくじった」と思ったです。

 

ワシは自分が攻撃を終えたばかりの体勢で、巨大屍鬼の攻撃を防ぐことも避けることもできなかったです。

 

そして、そいつの手の一撃をモロに喰らって闘技場の壁まで吹きとばされてしまったです。

 

石の壁に身体ごと叩きつけられ、ワシは意識が一瞬遠のいたです。

 

それでもワシは立ち上がろうとしましたが、思うように身体が動かなかったです。

 

「ジュゼッペ!」

 

ジョバンニの旦那が叫んだです。

 

「ジョバンニ、ルクレティア嬢とジュゼッペを頼む!こいつは俺がなんとかする!」

 

ラファエロの旦那が剣を構えながら言ったです。

 

「でもこんなデカブツあんた一人でどうしようってのよ!」

 

しかしラファエロの旦那は勇敢にも突進していったです。

 

巨大屍鬼はまだ健在なほうの片手を振り上げて叩きつけてきたですが、

 

旦那は足さばきでその攻撃を紙一重で躱すと、剣を逆袈裟斬りに斬り上げて手傷を負わせたです。

 

でも、相手が巨大過ぎて到底致命傷には至らなかったです。

 

しかも、巨大屍鬼は地面に叩きつけた手をそのまま旦那に向かって払ったので、

 

旦那は吹き飛ばされて数メートル転がってしまったです。

 

しかし、ラファエロの旦那はそれくらいで挫けるような剣士ではなかったです。

 

旦那は素早く起き上がると、真っすぐ相手に突進していったです。

 

そして、巨大屍鬼が再び手を叩きつけようとするのをサイドステップして回避し、

 

前転すると相手の両脚の間から向こう側に抜けて行ったです。

 

そしてその時不思議なことが起きたです。

 

なんと、ラファエロの旦那の姿が消えたのです。

 

ワシは闘技場の壁にもたれ掛かって座りながらも、

 

ラファエロの旦那の姿を目で探しましたが、

 

グラウンドのどこにもその姿がないのです。

 

そして、巨大屍鬼のほうでもラファエロの旦那の姿が見えないのに戸惑ったかのように周囲を見回していました。

 

しかし、やがてこやつは旦那がいなくなったと判断して諦めたのか、

 

向きを変えてジョバンニの旦那とルクレティアお嬢様の方に歩き始めたです。

 

「ちょっとちょっとちょっとちょっとこっち来ないで!」

 

ジョバンニの旦那が悲鳴を上げて杖を掲げると、その先端から雷が放たれて巨大屍鬼の頭部に命中したです。

 

しかし、そいつは少しぐらついただけで、すぐに何事もなかったかのようにまた歩き始めたです。あまりに巨大過ぎて通用しないみたいでしたのです。

 

その時でした。そいつの背後の砂地が盛り上がると、中からラファエロの旦那が姿を現したのです。

 

「隙あり!」

 

ラファエロの旦那は巨大屍鬼に駆け寄ると、剣を二度閃かせました。

 

化け物の膝の裏の筋が見事に断ち切られたらしく、

 

そいつはバランスを崩し、地響きを立てて仰向けに倒れたです。

 

「止めだ!」

 

ラファエロの旦那は宙に飛び上がると、長剣を逆手に持って巨大屍鬼の片目に突き立てたです。

 

剣の刃が鍔のあたりまで化け物の頭部に喰い込むと、流石の巨大屍鬼も苦悶の呻きを上げて身体を反らしたです。

 

ラファエロの旦那は肩で息をしながら剣の柄から手を離して後ろに下がりましたが、

 

巨大屍鬼がそれでも生きていてのたうち回っているのを見ると、

 

ワシが取り落とした斧を拾い上げ、それを化け物の頭に何度も振り下ろしたです。

 

やがてとうとう巨大屍鬼は力尽き、次第に動かなくなっていったです。

 

「ラファエロ、大丈夫?」

 

ジョバンニの旦那が言ったです。

 

「俺は平気だ。それよりジュゼッペを頼む」

 

ラファエロの旦那は手を振って問題ないと身振りしたです。

 

ルクレティアお嬢様はすぐにワシのところに駆け寄ってこられたです。

 

「お嬢様、済みませんです。再びお手を煩わすことになってしまいましたです」

 

「問題ありませんわ。これがわたくしの務めですもの」

 

ワシが申し訳なさそうに言うとお嬢様は笑顔で応えてくださったです。

 

「それにしても驚いたわね。ラファエロ、あんた砂の中に隠れてたなんてね」

 

お嬢様がワシを治療して下さっている間、ジョバンニの旦那が感心して言われたです。

 

「あの巨大屍鬼が出てきたとき砂地に大きな穴を残しておいてくれて助かったよ」

 

ラファエロの旦那は剣を血払いしながら仰いましたです。

 

「それでその中に潜ってチャンスを覗ってたわけね。あんたにしちゃやるじゃない」

 

そう言うとジョバンニの旦那は闘技場の中を回り、屍鬼どもの身体を念のため魔法の炎で焼き尽くしていったです。

 

そうこうしているうちに、お嬢様の祈祷のお陰でワシも完全に回復したです。

 

「やれやれどうなることかと思ったがなんとか切り抜けたな」

 

ラファエロの旦那が言われたです。

 

「それにしても屍鬼がこんなに沢山出るなんて普通じゃないわねこの場所。ましてや巨大屍鬼なんて聞いたことないわ」

 

ジョバンニの旦那も額の汗を拭くと答えられたです。

 

「この場所には相当のいわれがあるようですわね。わたくし、ワクワクしてきましたわ」

 

ルクレティアお嬢様が仰いましたので、ワシらは絶句してお嬢様を見つめてしまったです。

 

「...あ...不謹慎でしたかしら?わたくし歴史や考古学にも興味がありますの。本でしか読んだことのない古代遺跡をこの目で見られるなんて滅多にできない経験ですわよね?」

 

しかしジョバンニの旦那が疑わしそうな目でお嬢様を見ながら言われたです。

 

「王墓のときから思ってたんだけどさぁ、あんたってもしかするとただのホラー好き女子?」

 

「ホラーは嫌いではありませんわ。でも、わたくしどうせなら創作物よりも本物に出会いたいんですの」

 

ルクレティアお嬢様は平静な口調で答えられたです。

 

「なんか...頭クラクラしてきたわ」

 

ジョバンニの旦那が呆れ顔で首を振ったです。

 

ワシらは気を取り直すと闘技場の出口を探したです。

 

出口は入口と反対側にありましたが、そこにも鉄格子が掛かっていたので、ワシはそこに手をかけて思い切り力を込めたです。ワシがしばらく奮闘していると、丈夫な鉄格子もやがてガタガタになり、人が通れる隙間ができたです。

 

向こう側には野外礼拝場のようなものがあったです。

 

高い石壁に囲まれた広々とした円形の石敷きのスペースの端に神像らしきものが置かれていたから、ワシらはそれと見当をつけただけでしたが。

 

神像は高さ十メートルほどで、玉座に腰かけた貴人のような姿でしたです。

 

そして、その両手は何かを受け取るかのように合わせて上に向けられていたです。

 

さらに、その神像の前には石の階段が設えられており、その階段の頂上がちょうど像の両手の前に来るようになっていたです。

 

「....おいジョバンニ、最初の冒険を覚えているか?神像が動き出して襲ってきたよな」

 

「あたしも遠くから見たときちょっと嫌な予感がしたわ。でも、こいつは関節とかもついてないし大丈夫そうね」

 

ラファエロの旦那とジョバンニの旦那が神像を見上げながら言い合っていたです。

 

「これはモレクの神像ですわね」

 

ルクレティアお嬢様が言われましたです。

 

「モレク?何だそれは?」

 

ラファエロの旦那が尋ねられたです。

 

お嬢様が説明しようと口を開かれた瞬間でした。

 

「.....汝ら訪問者たちよ........」

 

神像を見上げていたワシらの背後から何者かが声をきけてきたです。ワシらは驚いて振り向いたです。

 

「......我らの聖なる神殿に何用か。もし我らが聖所を荒す目的で来たる者ならば我ら容赦はせん」

 

声が発せられたのは、神像とちょうど差し向いにある壁からでしたです。

 

その壁には人間の顔が石に彫られていたです。石の顔は横にズラリと並び、合計四つほどありましたです。

 

そしてその顔のうちの一つが喋っていたのです。

 

「もし我らが聖所を荒す目的で来たる者ならば我ら容赦はせん....さあ、汝らの来訪の目的を告げよ」

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