出撃!庶務騎士団   作:nocomimi

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宗教の雑学だってときには危地を切り抜けるのに役立つのですわ

皆さまご機嫌いかが?

 

ルクレティア・ヴァン・ディアナですわ。

 

わたくし、騎士団のメンバーの皆さまとともに、

 

『ハデスの門』を封鎖するべく向かった古代遺跡「ヒエラポリス」で、

 

グール(屍鬼)だらけの闘技場をどうにか抜け、

 

その奥にあった野外礼拝場までたどり着いたのですわ。

 

すると、その壁に設置してあった石製の神官たちの顔が喋り始めたので、

 

ジョヴァンニさんが信者の振りをして彼らから情報を聞き出そうとしたのですわ。

 

それでその神官たちの顔が古代の礼拝儀式について色々教えてくださったのですけど、

 

そのあまりの悍ましさにラファエロさんが怒りを発せられてしまい、

 

同じように義憤を感じたジュゼッペさんが神官たちの顔を粉々に叩き壊してしまったのですわ。

 

そうしたら今度は、わたくしたち野外礼拝場の下にあった地下空間に落とされてしまい、

 

そこにあった円柱状の化け物(「大神官レギオン」と名乗られましたけど)から死刑を宣告されてしまったのですわ。

 

その円柱は、その頭についていた目玉から光線を発し、

 

ジョヴァンニさんが結界で辛うじてそれを防御したのですけど、

 

相手があまりに強力過ぎて、ジョヴァンニさんも疲労困憊の様子でがっくりと床に膝をついてしまわれたんですの。

 

そこでわたくし叫びましたの。

 

「神官さま...わたくしが供物になりますわ!どうかこの者たちにお慈悲を!」

 

そうすると、見込んだ通り円柱が動きを止めたのですわ。

 

でも円柱はこう言いましたの。

 

「神官への冒涜は最大の罪なり。罪びとは宥めの供物となることはできぬ」

 

「わたくし、偉大なモレクさまに比べたらはしためにも満たない存在ですわ。でも...でもどうかお聞きくださいませ神官さま」

 

わたくし、ここで小芝居を打つことにしたのですわ。

 

「わたくし先程から言葉においても行いにおいても冒涜はしておりませんわ。わたくし、幼い頃からモレクさまこそ救い主と信じ、その教えについて興味を持って調べておりましたの。そしていつかこの神殿に来ることを夢見ておりましたわ」

 

ラファエロさんもジョバンニさんも目を丸くしてわたくしを見つめておられましたわ。

 

「それで、この方たちが神殿へ旅をされると仰るからついてきて参りましたの。女の身では一人旅は安全ではありませんから.....でも、この方たちがモレクさまの教えについてあまりに無知だということに、道中ずっと心を痛めておりましたわ。でもわたくし、女が殿方に物を教えるなど烏滸がましいことですから、黙っておりましたの」

 

わたくし、ここで畳み掛けましたの。

 

「神官さま、どうかわたくしを供物としてお受け取りくださいませ。清純な処女が生贄となるは村を一つ救うに値すると言われておりますわ。ですからこのわたくしの身をお捧げするかわりに、この罪深い三人の者たちの命をどうかお見逃しくださいませ」

 

すると一瞬だけ、円柱の化け物の目玉が瞬いたのですわ。

 

「わたくし偽りは申しませんわ。もし疑われるなら神官さまご自身で存分にお調べくださいませ」

 

わたくしは両手を広げましたわ。

 

すると円柱の化け物の頭の巨大な目玉の光が消えて、その代わりにその斜め下にあった小さな目玉が光りましたわ。

 

「娘よ、ならば近くに進み出よ。だがもしその身の上に偽りあらば汝もまた罪びとと同じように滅びよう」

 

わたくし、一瞬だけジョヴァンニさんの目を見ましたわ。

 

すると、ジョヴァンニさん、何か考えがあるのか、わたくしと目を合わせたあと、

 

ラファエロ主任のほうを見ましたの。

 

わたくしには、ジョヴァン二さんが主任に向かって頷きかけたような気がしましたわ。とは言ってもほんの数ミリ頭を動かしただけで、注意して見なければわからないようなレベルでしたけども。

 

それで、わたくし前に進み出ましたわ。

 

すると、円柱の化け物の前の床から小さな四角柱がせり上がって来ましたの。

 

その四角柱には目玉がたくさんついてましたわ。

 

「娘よ、服を脱ぐがよい。汝の言葉がまことか偽りか調べようぞ」

 

円柱の化け物がまた言いましたわ。

 

これも見込んだとおりでしたけど、

 

わたくし最初から覚悟を決めておりましたから、それほど躊躇はいたしませんでしたわ。

 

わたくし、四角柱の前まで来ると、修道女服を脱ぎ捨てて下着姿になりましたの。

 

「それも脱ぐのだ。神の前に隠すものがあってはならぬ」

 

また円柱の化け物が促しましたわ。

 

わたくし、一瞬だけ迷いましたけど下着の裾に手をかけましたわ。

 

その時でしたの。

 

「この化け物がああああああああああああああああ!!」

 

ラファエロ主任が剣を振りかざして走り寄ってきたのですわ。

 

「今よ!」

 

そしてジョヴァンニさんの叫ぶ声が聞こえたのですわ。

 

その瞬間、円柱の化け物の頭部の巨大な目から光線が発せられると同時に、

 

ラファエロ主任が高く跳躍したのですわ。

 

そして主任が一瞬前までいた床に光線が命中して炎が上がりましたわ。

 

主任は五メートルほども跳躍すると、円柱の頂上にとりついて、

 

光線を発し続けている目玉を横から剣で打ちましたの。

 

すると、目玉から発する光線の熱で主任の剣がたちまち赤熱してきたのですわ。

 

そして剣から伝わる熱が主任の手を焦がし始めたのにも関わらず、

 

主任は苦痛の呻き声を上げながら何度も化け物の目玉を打ちましたわ。

 

すると化け物の目玉から炎が上がり、光線が止まりましたの。

 

ラファエロ主任は止めとばかりに化け物の目玉に剣を突き入れると、

 

力尽きたように床に落下してしまいましたわ。

 

ラファエロ主任はちょうどわたくしの近くに落ちて参りましたから、

 

わたくし急いで駆け寄って助け起こしましたの。

 

主任の両手はほとんど骨が見えるほどの火傷を負っていましたわ。

 

すると、円柱から声がしましたの。

 

「決して許されじ大罪!この世においても来るべき世においても呪われよ!」

 

わたくし、まだ何かがあるという予感がしましたから、ラファエロ主任に肩を貸して四角柱の陰に身を寄せたのですわ。

 

案の定、円柱の化け物の頭部にあった小さな目玉が瞬き始めたのですわ。

 

円柱の化け物は頭を傾けると、その小さな目玉をわたくしたちのほうに向けたんですの。

 

わたくし、ラファエロ主任と一緒に急いで四角柱の陰で身を低くしましたわ。

 

もしそうしなかったら、すんでのところでその目玉から発せられた小さな光線で焼かれてしまうところでしたわ。

 

すると円柱の化け物が絶叫しましたの。

 

「冒涜者よ!冒涜者よ!まだ我が裁定に逆らうか!」

 

すると、今度はわたくしたちの盾になっていた四角柱が下がっていきましたの。

 

わたくし、これは絶体絶命と思いましたわ。

 

そのとき、ジョヴァンニさんが立ち上がって呪文を詠唱しましたの。

 

同時に、ジョヴァンニさんの杖の先端に小さな雷が無数に現れて球形を形成しはじめたのですわ。

 

「あたしの怒りを思い知りなさい!」

 

その途端にジョヴァンニさんの杖から特大の雷が発射されたのですわ。

 

その特大の雷は、円柱の化け物の頭の目玉に突き刺さったラファエロ主任の剣に命中すると、内部を伝っていったのですわ。

 

そして円柱全体を雷が包んだようになり、神官が断末魔の悲鳴を上げるのが聞こえましたわ。

 

「EGWあsdgOIJWGだえrhくぇたえrhtqjqtjqryqpmんじいいい!!」

 

そして円柱の周囲に浮かんでいた文字が急速にぐるぐると回り始めたかと思うと、

 

やがてひとつ、ふたつ、と消えていきましたわ。

 

最後には、円柱の頭についた大小の目玉の光も完全に消え、

 

地下空間は真っ暗になりましたの。

 

「.....ねえ、ラファエロ、ルクレティアちゃん、ふたりとも生きてる?」

 

ジョバンニさんがゼイゼイ喘ぎながらもお尋ねになるのが聞こえましたわ。

 

「わたくしは大丈夫ですわ」

 

「俺も..どうに...か....生きてる..ぞ」

 

わたくしたちが答えると、ジョバンニさんが言いましたわ。

 

「...よかった....あたし疲れたわ。今日はもう仕事したくないわ...」

 

「ジョバンニの旦那、あとはワシに任せるです。なんでしたら王都に帰るまでずっとワシが旦那をおぶっていくです」

 

ジュゼッペさんがそう慰めるのが聞こえましたわ。

 

やがて気を取り直したジョバンニさんが杖の先端に明かりをともして近づいてこられましたわ。

 

その時すでにわたくしはラファエロ主任の傍らに座って治療を始めておりましたわ。

 

そうすると、男性陣は皆一斉にギョッとした声を上げられましたわ。

 

「ル...ルクレティア嬢....まずは服を..着てくれ」

 

「そ...そうよ!あんたってばなんていう格好してんのよ」

 

ジュゼッペさんに至っては、ヒイと声を上げて両手で顔を隠しておられましたわ。

 

「わたくし、痛みに苦しんでいる人を一分一秒でも放置はしておけませんわ。皆さま、申し訳ありませんけど目を閉じていてくださるかしら?」

 

わたくしはそう告げると祈祷を続けましたわ。

 

わたくしが予想したとおり、ラファエロ主任はジョバンニさんの身体強化魔法で筋力強化をしていらしたのですわ。

 

そのせいで両手の重度の火傷に加えて全身に筋断裂を負っておられましたから、治療には結構な時間を要しましたわ。

 

それでも治療を完了すると、わたくしは修道女服を着てジョバンニさんに声をかけましたわ。

 

「ジョバンニさんもお元気なさそうですわね?いま治療いたしますわ」

 

「あたしは良いのよ。どこも怪我してないもの」

 

ジョバンニさんはそう手を振って答えられましたわ。

 

ジュゼッペさんも、恐る恐る顔を隠していた両手を下げられましたわ。

 

「でもあたしの魔力も今日は打ち止めね。こんなに一挙に使ったの初めてよホントに」

 

「ジョバンニ、さっき君の声が頭の中で聞こえたんだ。『身体強化の魔法かけたげるからあいつの目玉を潰して』ってな。あれも君の魔法だったんだな?」

 

ようやく元気になられたラファエロ主任が立ち上がって仰っしゃいましたわ。

 

「そうよ。以心伝心魔法ってやつ。メルリヌスのおじいちゃんに教わったばっかりだったから使えるか不安だったけど」

 

「それにしてもあいつの光線の発射のタイミングまでわかるとは流石だな」

 

「まあ魔力の流れってやつよね。発射する前にとんでもない量を溜めるから離れてても感じるのよ」

 

お二人がそう言い合ってるうちに、ジュゼッペさんが円柱に手をかけて唸り始めましたわ。

 

そうしてちょっとジュゼッペさんが頑張っていると、円柱は大きな音を立てて横倒しになりましたの。

 

「これであの威張り腐ったダイカンシンもしばらく大人しくなるです」

 

ジュゼッペさんは両手を打ち合わせて埃を払いながら得意そうにそう言われましたわ。

 

「それを言うなら大神官でしょ。それよりここから出る方法探さなきゃだわ」

 

ジョバンニさんがそう突っ込むと、ラファエロ主任は今や物言わぬ円柱の頭から剣を引き抜きながら言われましたわ。

 

「ここまで精巧な設備なんだ、保守管理のための通路が必ずあるはずだ」

 

わたくしたちが地下空間を探すと、案の定円形の壁の一箇所に隠し扉らしき継ぎ目がありましたの。

 

「あたし魔法は打ち止めって言ったでしょ?解錠魔法だって結構な魔力使うのよ?」

 

そうジョバンニさんが仰ったら、ジュゼッペさんが手を挙げられましたわ。

 

「ワシに考えがあるです」

 

ジュゼッペさん、そう言ってさっき倒したばかりの円柱を両腕で抱えると、

 

なんとそれを持ち上げましたの。

 

ジュゼッペさんは顔を真赤にしながらもそのまま歩いて行かれると、それを破城槌みたいに壁に叩きつけられましたわ。

 

すると壁が粉々に砕け、その先に通路が見えましたの。

 

「さすがだなジュゼッペ。解錠魔法より怪力ってわけか」

 

「ワシはあのダイカンシンを倒すとき活躍できなかったですから、少しは貢献したいです」

 

ラファエロ主任に肩を叩いて労われると、ジュゼッペさんは照れ笑いされましたわ。

 

わたくしたちがその通路を辿っていくとやがて別の部屋に出ましたわ。

 

その部屋には細長い台みたいなものがいくつもあり、その上にガラス製のケースが置いてありましたの。

 

近づいてよく見ると、ケースの中には人の遺体のようなものが横たえられていましたわ。

 

その遺体は格式のありそうな冠や装飾品を身に着けていたから普通の身分ではないことはすぐにわかりましたわ。

 

「神官たちだろうか?」

 

「装束からすると、おそらくそうですわね」

 

ラファエロ主任にわたくしが答えると、ジョバンニさんが顔をしかめて仰ったんですの。

 

「あいつらの頭の中身を記録して疑似人格にしたってわけね」

 

「そのお陰でわたくしの小芝居が通用したわけですわね。彼らも所詮は人間ですもの、欲望には勝てませんわ」

 

わたくしが何気なく呟くと、ジョバンニさんは呆れ顔で首を振りましたわ。

 

「ルクレティアちゃん、あんたってさあ」

 

ジョバンニはちょっと躊躇しながらもこう続けられましたの。

 

「あんたって.......マジで恐ろしい女よね。助けてくれて感謝してるけど」

 

「本当だな。君が俺たちの味方で本当に良かった」

 

ラファエロ主任も相槌を打ちましたわ。

 

「あら、修道女が人畜無害な存在だなんて誰が決めたんですの?わたくし、ひとたび悪と戦うとなったら絶対に勝たないと気がすまない性分ですのよ?」

 

わたくしは涼しい顔でお答えしましたわ。

 

そうしてその部屋にあった扉を抜け、さらに通路を進むと、わたくしたちとうとう地上に出ましたわ。

 

地図を見ながら確認すると、どうやらわたくしたちは野外礼拝場のさらに奥に進んだようでしたわ。

 

そこも先程の野外礼拝場と同じように壁で囲まれた区画で、目の前には縦十メートル、横五十メートルほどの浅い空堀のようなものがありましたわ。

 

そして、その堀の内側の壁の一角に縦横三メートルほどの穴が開いてましたの。

 

それは地図上にあった『ハデスの門』の場所と一致してましたの。

 

「これが『ハデスの門』か....」

 

ラファエロ主任が呟きましたわ。

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