出撃!庶務騎士団   作:nocomimi

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ボォクの遅すぎる反抗期はこうしてやってきたのさ

「やあ兄さん、気分はどうだい?」

 

ボォクは、地下牢の格子に顔を寄せると、中で壁にもたれかかって座り項垂(うなだ)れている兄さんにそう声をかけたんだ。

 

おっと、自己紹介が遅れたね。ボォクの名はディオ。

 

偉大な魔術師にして、広大な領地を誇る伯爵家の養子でもある。

 

ボォクのパパは、ヴァルグ・エンリーコ・デメトーリオ4世。

 

年齢は110歳だけど、見た目年齢は60歳。

 

名君として領民からも魔物たちからも尊敬されてるんだ。

 

だけど、そのパパの「魔物と人間の共生」という高貴な理想を邪魔する連中が現れた。

 

庶務騎士団っていうんだけど、剣士と魔法使いと怪力斧使いと聖女からなる四人組なんだ。

 

そして、その魔法使いが、ボォクと生き別れになった双子の兄さん、ジョヴァンニだったというわけ。

 

それを最初に知ったのは彼らがアルト村にあるオークたちの洞窟にやってきた時だった。

 

ボォクがリモート操作でダゴンの神像を動かして追い回してやったら、

 

なんとそのうちの一人がジョヴァンニだったんだ。

 

あいつ、目眩ましをかけたり、仲間の剣士を身体強化したりしてボォクの石像を攻撃し、最後には壊してしまったんだ。

 

ボォクは腹が立って仕方がなかった。だから今度は王墓に罠を仕掛けて待ち受けた。

 

魔力転送装置を使って幽霊騒動を起こしたんだ。

 

そうしたらあいつら見事に引っ掛かったよ(笑)。

 

しかも、パパの助言通りに王の棺の中に魔力転送装置を入れておいたら、あいつら案の定その場所を突き止めて破壊したんだけど、

 

貴族会議のメンバーでもあるパパはそれを逆手に取ってあいつらに対する王墓損壊罪の告訴状を提出したってわけ。

 

ボォクのパパは恐ろしく頭がいい人なのさ。

 

ところが、ルーラル王はあいつらを無理やり牢から出したうえ、

 

パパにとってゆかりの地だった『ハデスの門』を塞ぐよう指令したらしいんだ。

 

パパがスパイを使ってそれを突き止めた時には残念ながらあと一歩遅かった。

 

そこでボォクは、あいつらを一網打尽にしてみせるからボォクにまかせて、ってパパに言ったんだ。

 

そして、神殿から出てきたあいつらを罠にかけて、剣士と斧使いと一緒に、ジョヴァンニのやつも捕まえてやった。(すごいでしょ?エヘン)。

 

ちなみにあのカワイコちゃんの聖女は、ボォクの部屋に連れていくよう部下たちに命じておいた。もちろんボォクはヘンなことはしないつもりさ。ちゃんと正式に結婚を申し込むんだ。

 

んで、もはや兄さんの運命はボォクの手の中にあるも同然。

 

でも、ボォクは敵だからってむやみに殺したりはしない。

 

相手が兄弟だっていうのもあるけど、それだけじゃない。

 

ボォクは、人の能力はちゃんと評価して活用する主義なのさ。

 

だから、敵を捕まえたらまず説得して味方につける。賢いだろ?

 

「...あんた、一体なにしにきたわけ?」

 

そしたらジョヴァンニはこう呟いたよ。

 

「あたしにマウンティングしたいっていうんなら勝手にひとりで喋ってなさいな。あたしは聞いてないから」

 

「兄さん、そうつれなくしなくてもいいだろぉ?ボォクらは兄弟じゃあないか」

 

ボォクが言うとジョヴァンニはそっぽを向いたまま応じた。

 

「あんたと兄弟だっていうのが、あたしの人生でいちばん恥ずかしいところよ。他の何はおいてもね...」

 

「兄さん、意地張ってたってボォクにはわかるんだよ。兄さんは料理人をやるにせよ魔術師をやるにせよ、自分の能力を生かしきれていない。図星だろ?」

 

ボォクは黙ったままの兄さんに話しかけた。

 

「そもそもルーラル王なんていうチンケな奴の下にいるからいけないのさ。だってそうだろ?兄さんが思い切り料理をやろうとしたって、肝心の雇い主が金欠でヒーヒー言ってるんだから世話がない。兄さん、料理をやりたいっていうならパパのお抱え料理人になるっていう道もあるぜ?」

 

するとジョヴァンニが唐突に尋ねてきた。

 

「じゃあディオ、ひとつ聞くけどあんたは何をやりたいの?何を目指してるの?」

 

「何を目指してるって?そりゃあ決まってるだろ」

 

ボォクは胸を張って答えた。

 

「ボォクは歴史上最も偉大な魔法使いになるのさ」

 

「で...それでどうするの?」

 

ジョヴァンニは続けて尋ねてきた。

 

「どうするって...決まってるじゃあないか。ボォクが最も偉大な魔法使いである以上、誰もボォクには逆らえない。ボォクのパパ以外はね。世界中の人間がボォクを伏し拝むのさ。凄いだろ?」

 

「くだらない夢ね....」

 

すると兄さんはポツンと呟いたんだ。

 

「おいおい、意地っ張りも大概だなぁ兄さん。いったい何がくだらないってのさ?最も偉大な魔術師になれば...」

 

「で、それで誰が喜ぶの?」

 

ジョヴァンニはボォクを遮った。

 

「え?喜ぶって...決まってるだろ。パパはきっと喜んでくれるさ」

 

「その他は誰?」

 

そう問われて、ボォクは言葉に詰まった。

 

「喜ぶのはあんたの養父ひとりだけ?他には特にいないのね?」

 

兄さんはそう畳み掛けてきた。

 

ボォクは当惑して、答えられなくなってしまった。だってそんなこと考えたこともなかったから。

 

「...で、あんたの魔法で心が和む人とか、元気が出る人とか、明日から頑張ろうって思う人、いるかしらね?」

 

ジョヴァンニは自分に言い聞かせるかのように呟いた。ボォクは困惑しながらも言い返した。

 

「そ...そりゃあ...い...いるさ!いるに決まってるよ。だって他に同じことできる奴なんていないし....」

 

「あんたの火炎魔法で?雷撃で?」

 

ジョヴァンニは溜め息をつくとボォクのほうを見た。

 

「ディオ、あんたにはわからないかも知れないけど、もう一度教えてあげるからよく聞きなさいな」

 

そう言うと兄さんは前を向いて続けた。

 

「あたしは料理で人を喜ばせたいの。人を喜ばせるって簡単なことじゃあないわよ。だからこそやりがいがあるのよ。魔法で誰かを気絶させたり焼き尽くしたりするよりよっぽどね」

 

それを聞いたとき、ボォクはだんだん腹が立ってきた。

 

まるで、ボォクの今までの努力を無価値だと言われたみたいな気がしたからだ。

 

「フン...喜ばせるだなんて、それこそ下らない夢じゃないか。他人のために何かしてやったところで、どうせ明日は忘れられるじゃあないか?それより、物凄い力を手に入れて回りの連中を支配してやったほうがよっぽど...」

 

ところがジョヴァンニは最後まで聞かずにこう続けた。

 

「あ..そうそう。人の本当の笑顔ってね、その人が完全に自由でないと見られないものなのよ。覚えておきなさい。あんたがもし将来、誰かを本当に喜ばせたいって思ったときのために」

 

そう言われてボォクは完全に言葉に詰まってしまった。

 

ボォクは踵を返すと、頭を下げて礼をするゴブリンの番兵の横を通り過ぎ、廊下を足早に歩いた。

 

無性に腹が立つ。

 

思えば、ジョヴァンニはいっつもこうだった。

 

小さいころからボォクのほうが駆けっこも早かったし、喧嘩も強かったし、背丈だって高かった。魔力だってボォクのほうがずっと上だった。

 

けど、ジョヴァンニはいつも口が達者で、大人の歓心を買うのが上手かった。だから器用に世を渡ることができたんだ。

 

でもボォクはどこに行っても鼻つまみ者。怒るとすぐに雷で人を撃つから「雷の子」って呼ばれたもんさ。

 

そうして里親や施設を転々としたあと、パパがようやくボォクを拾ってくれた。

 

そしてパパは、ボォクに魔法が思い切り使える環境を用意してくれたんだ。

 

世界一偉大な魔法使いを目指して何が悪い?

 

誰も及ばないような圧倒的な力を追い求めて何が悪い?

 

ボォクはそう自問自答しながら昇降機に乗りボタンを押した。

 

そして十三階で降りると、廊下を歩いてボォクの自室のドアを開いた。

 

すると、そこにあったものを見てボォクは目を丸くしてしまったんだ。

 

なんと、あのカワイコちゃんの聖女が、部屋の真ん中に立っている。

 

それも、地味な修道女服ではなく、真っ白なドレスを着て。

 

頭にはあの地味な頭巾ではなく、黒髪を綺麗に結い上げティアラをつけているのだ。

 

そのあまりの美しさにボォクは頭がクラクラしてしまったほどさ。

 

ルクレティアちゃんの周囲には美容師やら化粧師やらがいて甲斐甲斐しく働いている。そしてその横にはパパが立っていた。

 

「おお、ディオよ。説得のほうはどうだったのだ?」

 

パパがこちらを向いた。

 

「さっぱりだったよ。申し訳ないけど時間がかかりそうなんだ」

 

「まあよい。時間はたっぷりある。焦らぬことだ」

 

パパがポケットから金貨を取り出して美容師たちに与えると、彼らはうやうやしく頭を下げて退出していった。

 

「それにしてもパパ....これって一体?」

 

ボォクは改めてルクレティアちゃんを見た。

 

「今のゴタゴタが片付いたら結婚式を挙げるのであろう?あんな服では祝い気分が削がれるでのう」

 

パパはそう言うと、ボォクの机の上に無造作に放り出された修道女服を指差した。

 

「ありがとうパパ....でも...」

 

ボォクはパパの気遣いが嬉しかった反面、心配になってきた。

 

ボォクの見たところ、ルクレティアちゃんは相当の頑固者だ。

 

ドレスを着て息子と結婚しろとパパに言われて、ハイそうですかと従うようなタマでは絶対にない。

 

ボォクはルクレティアちゃんに近づくと声を掛けてみた。

 

「ルクレティアちゃん、あのさ...そんなわけだから....」

 

こんな時って何て言ったら良いんだろう。

 

「ま..その...環境が変わったりして慣れるの大変だろうけどさ....取り敢えず..その....」

 

「ふつつか者ですが、よろしくお願いしますわ、ディオさま」

 

ところがボォクが言い終わらないうちにルクレティアちゃんがそう答えたのでボォクは耳を疑った。

 

「え?今なんて言ったの?」

 

「ふつつか者ですが、よろしくお願いしますわ、ディオさま」

 

ルクレティアちゃんは全く同じ言葉を繰り返す。

 

「え...それって普通さあ、プロポーズをオッケーするときの言い方だよ..ね?」

 

「はい、ディオさま。わたくし、未熟者ですが、末永くよろしくお願いいたしますわ」

 

ルクレティアちゃんはそう答えた。

 

途端に物凄い混乱がボォクを襲った。例えようもない喜びが湧き上がってきたと思うと、波が退くようにそれが消えていき、代わりに言いようのない不安感と疑いがボォクの脳裏に危険信号を鳴らしたんだ。

 

「え...ルクレティアちゃん..その...本当に良いの?キミ、確か修道女は男と一緒になれないって...」

 

「はて....修道女..でございますか?わたくし、そんなものになった覚えはございませんわ」

 

ボォクは驚愕した。

 

おかしい。何かが絶対におかしい。

 

ボォクはルクレティアちゃんの瞳を覗き込んだ。

 

そして気づいちゃったんだ。彼女が何を言っても、その目は虚ろなままだってことに。

 

ボォクはパパの顔を見ると尋ねた。

 

「パパ、もしかしてルクレティアちゃんに...何か...した?」

 

「ん?ああ、ちょっとした洗脳魔法じゃよ。大したものではない」

 

パパは事もなげにこう言ったんだ。

 

「せ...洗脳?..洗脳って..!」

 

「何しろこの娘、部下どもが近づこうとするたび聖典を引用したり祈祷を始めるでの。頭痛がして仕方がないと苦情があったのじゃ。それにどうせお前の妻になるのだからこうしておいたほうが事がスムーズに...」

 

「な..なんてことをしてくれるんだよ!パパ!」

 

ボォクは思わず泣きそうになりながら怒鳴った。

 

「ル...ルクレティアちゃんはあのままが良かったのに!ボォクはこんなロボットみたいな女の子と一緒になりたくないよ!それだったら生意気なルクレティアちゃんに毎日皮肉を言われてたほうがよっぽどマシだ!」

 

ボォクはパパにすがりついて懇願したんだ。

 

「パパ!頼むよ!彼女を元に戻して!魔法を解除してよ!お願いだよ!」

 

ところが、パパはフンと鼻を鳴らすとボォクの手を振り払った。

 

「そんな面倒なことができるか。呪いというものは掛けるのは一瞬でも解除するには手間がかかるのだ」

 

「そ...そんなぁ...」

 

ボォクは途方に暮れた。ということは、あのクッッッソ生意気でウィットに富んでいて目がキラキラしたルクレティアちゃんはもう二度と戻って来ないってこと?

 

「で..でもパパ、何かないの?呪いを解除する儀式とか何か...?」

 

しかしパパは襟を直すと、足早にドアに向かいながら付け加えた。

 

「お前もあまりこの娘に血道を上げずに仕事に身を入れることだな。まだやることは山ほどあるでの。わかったな?」

 

そう言ってパパは行ってしまった。

 

そう、パパはいっつもそうなんだ。

 

パパはボォクがこの城に来て以来、どんなものでも惜しまずに与えてくれた。

 

でも、ボォクの望みがパパの考えていることと少しでも違うと、途端に機嫌が悪くなるんだ。

 

ボォクは溜め息をついた。そしてルクレティアちゃんの顔を見た。

 

その顔は例えようもないほど美しかったけど、その青い目は人形のガラスの目みたいに虚ろだった。

 

ボォクは椅子に座るとガックリとうなだれて手で顔を覆った。ボォクが欲しかったのはこれじゃあない。

 

ボォクはデスクの上にあったブランデーの瓶を手に取ると、栓を開けて瓶のままガブ飲みした。

 

すると、ルクレティアちゃんが話しかけてきた。

 

「ディオさま、どうして悲しいお顔をされるの?ルクレティアにできることがあれば何でもいいつけてくださいな?」

 

ボォクは改めて彼女の顔を見た。

 

やっぱりその両目は虚ろで何の感情も読み取れない。

 

それを見て、ボォクは胸の中がやるせない痛みでいっぱいになると同時に、

 

アルコールが体中を駆け巡るにつれ、彼女を失ってしまったという諦念がやがてどす黒い欲望に置き換わっていくのが自分でもわかった。

 

「ルクレティアちゃん、本当にどんなことでもしてくれるのかい?」

 

ボォクは尋ねた。

 

「はい、ディオさま。もちろんですわ。それがあなたのルクレティアの務めですもの」

 

彼女は言った。ボォクは迷った。でも、今は使用人たちも部下もいない。

 

ボォクは立ち上がると、ルクレティアちゃんに近づいた。

 

改めてボォクは彼女を頭の先からつま先まで眺め回した。

 

美しい。本当に美しい。

 

しかし、その内面にあった、その美しさの根源である魂はどこかに消えてしまった。

 

今、ここにあるのはその入れ物だった身体だけ。

 

ボォクは胸の張り裂けるような悲しみと、腹の奥から湧き上がってくる欲望の両方に突き動かされながら、

 

両腕を伸ばして彼女の身体を抱き寄せたんだ。

 

ところが、その瞬間に強烈な肘打ちがボォクの鳩尾に刺さった。

 

そして彼女はボォクの片腕を掴むと低く腰を落とし、

 

次いで身体を跳ね上げてボォクを投げ飛ばしたんだ。

 

床に叩きつけられたボォクの脇腹に容赦なく蹴りが喰い込む。

 

さらにボォクは腕を捻り上げられながらうつ伏せの体勢にひっくり返された。

 

そして、後頭部にゴツンという強烈な衝撃を受け、気を失ったんだ。

 

* * * * * * * * 

 

気がつくと、ボォクはギッチリと猿轡を掛けられていた。

 

どうやらボォクのネクタイを猿轡にしたらしい。

 

手を動かそうにも、ベルトか何かで後ろ手に縛られている。

 

両足も同じだ。動かそうとすると靴紐のような細い紐が足首にキツく喰い込んだ。

 

必死に顔を上げると、ルクレティアちゃんは既に修道女服に着替えていた。

 

「あら、お気づきになったのね」

 

彼女は、ボォクがあの剣士から取り上げて床に放り出しておいた剣を手に取り刀身を見つめながら言った。

 

そしてボォクに向き直ると微笑んだ。

 

「わたくし、幼い頃は剣士になることを夢見ていましたわ。女は剣士になれないと言われて諦めましたけど、訓練は続けてましたのよ」

 

ルクレティアちゃんはボォクの隣に跪くと、こう言った。

 

「今から猿轡を外して差し上げますわ。でも、ちょっとでも呪文を詠唱しようとしたら...」

 

彼女は目をクワッと開きながら低い声で続けた。

 

「その喉、左から右へ真一文字に掻き切らせて頂きますわ。よろしくて?」

 

ボォクは一も二もなく頷いた。彼女が手を伸ばし、猿轡の結び目を解いた。同時に、彼女は剣の切っ先をボォクの喉にあてたんだ。ヒヤリとした鉄の感触がして、ボォクは恥ずかしながらチビりそうになってしまった。

 

「騎士団の男性陣が閉じ込められている場所を教えてくださいな。教えてくださったら命だけはお助けしますわ」

 

「...廊下に出て突き当りの昇降機で地下2階に降りるんだ。そこの地下牢だよ....だけど...」

 

ボォクは咳き込むようにして答えると尋ねた。

 

「どうやって呪いを解いたんだい?ボォクはてっきりキミが...」

 

「呪いなど最初からかかってはおりませんわ」

 

彼女は片方の眉の端を上げると答えた。

 

「わたくし、こんなこともあろうかと思って、大司教の祝福した聖水を服用して参りましたの。ですから物理攻撃以外は通用しませんわ」

 

ボォクは安堵と喜びで思わず溜め息が出た。彼女は元のルクレティアちゃんのままなんだ。

 

「約束どおり命は奪いませんわ。でも、もう少し大人しくなさっていてね」

 

彼女はそう言うと、床に転がっていた酒瓶を手に取り、振り上げようとした。

 

「ま...待ってくれ!」

 

ボォクは慌てて叫んだ。

 

「ボ...ボォクは本気でキミにプロポーズするつもりだったんだ。キミに呪いを掛けようとしたのもパパが勝手にやったことだ。ボォクはキミがボォクを好きになってくれるまでいくらでも待つつもりだった。本当だ!信じてくれ!」

 

ボォクの中にはルクレティアちゃんを諦めきれない気持ちが急激に込み上げてきた。

 

「ボォクはキミを幸せにするよ。絶対さ。約束するよ。全てを投げ打ってでも...」

 

「わたくしを幸せにしてくださるの?あら、なんて嬉しいお申し出かしら」

 

ルクレティアちゃんは酒瓶の首を持ってそのボトムを自分の肩に乗せると、こう続けた。

 

「なら、一つだけ、確実にわたくしを喜ばせる方法がありますわ」

 

ボォクは尋ねた。

 

「な...なんだい?なんでも言ってくれ。絶対にそれをするから」

 

「わたくしが最も喜ぶことは、ディオさん、あなたが悪を悔い改め正義に生きることですわ」

 

彼女はそう言うと、酒瓶を振り上げてボォクの後頭部を思い切り殴りつけた。

 

そうして、ボォクの意識は再び闇の中に沈んでいったんだ。

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