出撃!庶務騎士団   作:nocomimi

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出撃!アルト村の洞窟を探索せよ

ワシは王城に勤める庭師のジュゼッペと申す者ですです。

 

ワシは北の果てにある田舎村の木こりの息子として生まれたです。

 

そうして成人すると家業を引き継いで、村の娘と結婚し、子をもうけ、慎ましいながらも幸せに暮らしてきたのですです。

 

また、ワシは木こりをしながら富裕なご家庭の庭造りも手掛けるようになったです。思いのほかこれが好評となったのです。

 

木々の葉を綺麗な形に切り、下草を刈って、そこここに花を植える。

 

そんな慎ましい庭造りではあったのですけども、お客様たちは皆、この庭にいると心が和むと喜んで下さったのです。

 

しかし、ワシにはある秘密があったのです。

 

ワシの家の者は先祖代々、通常の人間の何十倍もの筋力を持つ特異体質だったのです。

 

ワシの父親は、亡くなる前、このことを誰にも知られてはならないと厳しくワシに言い聞かせたのです。

 

理由は、村に居場所をなくすから、とのことでした。

 

しかし、運命の日は来てしまったのです。

 

長い間雪が降った冬が明け、春が来たある日のことだったのです。

 

暖かな日の光に緩んだ雪の斜面が崩れて雪崩となり、ワシらの家を襲ったのです。

 

ワシは家の近くにあった巨大な岩を持ち上げて、家の背後に投げ落としたのです。

 

その岩のお陰で、ワシらの家は無事だったのです。

 

中には妻とまだ幼い息子がいたのです。

 

しかし、騒ぎが収まると、巨大な岩の場所が動いていることを村人が気づいたのです。

 

問い詰められたワシはとうとう本当のことを話してしまったのです。

 

そして、「化け物」と噂されたワシらは慣れ親しんだ村を離れることにしたです。

 

ワシは家族を連れて彷徨いながらどんな仕事でも手がけましたです。

 

鍛冶屋になろうとして金づちの柄をヘシ折ってしまったり、工場で働こうとして工具をぐにゃりと曲げてしまったり、上手くいかないことが殆どでしたです。

 

それでも、ワシは妻子を養うためどんな仕事でも一生懸命にやりましたです。

 

そうして歳月が過ぎ去ったです。

 

ワシの妻は、ひどく苦労をかけたせいか息子が成人する前に病気で亡くなってしまったです。

 

息子は学校を卒業すると家を出て行ったです。きっと母親の想い出のある家にずっと住み続けるのが辛かったのでしょうです。

 

ワシは、思いました。

 

こうして身一つになった以上、もう自分の家や持ち物をいつまでも抱えていてもしょうがない、と。

 

そこでワシはちょうど王城に庭師の求人があると聞いて応募したのですです。

 

住み込みで食事つきの待遇と聞き、願ってもないことと思い、明日からでも働けると面接で答えたです。

 

ワシはそうして家を売り払い、王城の前庭に住み込むことになったです。

 

しかし、ある朝早くのことです。

 

ワシは油断していて、あの力を使いながら丸太を切っているところを人に見られてしまったです。

 

見たのは、同じく城勤めのラファエロの旦那でしたです。

 

ワシは、もしかするとまたバケモノ扱いされてしまうのだろうか、このささやかな終の棲家さえも追われてしまうのだろうか、と不安で不安で仕方がなくなりましたです。

 

しかし、その後ラファエロの旦那がまたワシのところにおいでになったのです。そして旦那は、王国の危機を打開するために一緒に働いてほしいとワシにおっしゃられたのです。

 

ワシは難しいことはよくわかりませんでした。ですが、ワシの斧が王国の役に立つのならどんなことでもいたしますです、とだけ答えたのです。

 

こうして翌日、ワシはラファエロの旦那に連れられて王陛下の御前にまかり出た次第だったのです。

 

そこには、料理人兼魔法使いであられるというジョバンニの旦那と、弁護士兼聖女のルクレティアお嬢様もおられました。

 

そんな次第で、ワシら四人は王様の許可を受けて出発したのです。

 

ワシらはまず、王様の貸してくださった二頭立ての馬車に乗りましたです。

 

御者のセバスチャンはワシと同年代の気さくな男ですです。

 

「なに?アルト村まで?それじゃあ急がねえと日が暮れちまわあな。ちっと飛ばすから皆掴まっとれよ!」

 

セバスチャンは馬に鞭を当てて馬車を発車させたのです。

 

ラファエロの旦那は鎖帷子に長剣、ジョバンニの旦那はマントとブーツと杖。ルクレティアお嬢様は修道女の服。

 

ワシは何を着ていけばいいのかわからなかったので、差し当たり羊毛のチュニックの上に皮のベストを着て斧を持っていったのでございます。

 

そして半日ほども旅をすると、ワシらはアルト村に到着したのでございます。

 

アルト村はカボチャの出荷で栄えた農村ということで、村とはいいじょう民家は数多く商店も複数あって、さながらちょっとした町といった様子だったのです。

 

ワシらはそこで茶屋に入って休憩したのです。

 

木造屋根の茶屋は昼をだいぶ過ぎていたのでゆったりと座ることができたのです。

 

「ああお腹すいちゃったわよ。早く頼みましょう!」

 

ジョバンニの旦那が手際よく注文を取りまとめてオーダーしてくれたのです。

 

そこに、村長に挨拶に行っていたラファエロの旦那が来たのでごさいます。

 

「あんたの適当に頼んどいたから。別にアレルギーとかないわよね?」

 

ジョバンニの旦那がそう言うのです。

 

「ああ、済まない....いや、ちょっと待ってくれ。昼食代は一人500ルピーまでで納まるだろうな?」

 

ラファエロの旦那が慌てて言うのです。

 

「もう遅いわ。フルコース頼んじゃったわよ。前菜、スープ、パスタ、メインは子羊のロースト、あとはドルチェにコーヒーか紅茶がつくって」

 

「待て、2500ルピーもするじゃないか。予算の五倍だぞ」

 

「予算予算予算予算ってうるさい男ね。そんなの項目付け替えれば何とでもなるでしょ?少しは頭使いなさいよ」

 

ジョバンニの旦那は優雅な手つきでナプキンを広げながら反論しておられたです。

 

「ジョバンニさん、わたくしはこの『プレーンおにぎり定食』でも大丈夫ですわ。ヘルシーだし予算内に納まりますわ」

 

「あんたは余計な気い使わなくていいのよ、ルクレティアちゃん。第一出張でこんな田舎まで行かせておいてお昼がたったの500ルピーなんて冗談じゃないわ」

 

「項目付け替え...って待てジョバンニ、お前なんでそんなテクニックを知ってるんだよ!」

 

そうやって旦那方が言い争っている間に、前菜とスープとパンが運ばれてきたでございます。

 

するとルクレティアお嬢様が立ち上がってこうおっしゃったのです。

 

「皆さま、わたくしが代表して食前の祈りを捧げさせていただきますわ」

 

そうしてルクレティアお嬢様は祈り始めたでございます。

 

お嬢様はまず全知全能の神をほめたたえると、ワシら四人が無事に任務を全うし帰還できるようにと祈られたでございます。

 

そこで祈りが終わるかと思いきや、お嬢様は御者セバスチャンの持病の痔が治るようにと熱心に祈られたのでございます。

 

そこで祈りが終わるかと思いきや、お嬢様は今度は茶屋に入るまでにすれ違った村人一人ひとりのために祈られたのでございます。

 

働く男性たちには、仕事の上での安全が守られるように、と。

 

主婦や母親たちには、その手の技が祝福されて、家庭が明るく保たれるように、と。

 

そして子供たちには、愛を受けながらすくすくと育つことができるように、と。

 

ワシはやがて空腹を感じ、思わず身体を揺らしながら薄目を開けたです。

 

でも、ルクレティアお嬢様の祈りはますます熱心になり、今度は村長のために祈り始めたです。

 

ジョバンニの旦那がやがて小さな声でこう囁いたです。

 

「ちょっとこの子いつまで祈ってるのよ。スープが冷めちゃうじゃないの」

 

するとラファエロの旦那がこう答えたです。

 

「祈祷には形式というものがある。途中で端折るわけにもいかんだろう」

 

それを聞いたジョバンニの旦那が小さく笑って言ったのです。

 

「あんた信心深いタイプなのね。意外だわ」

 

そうしてルクレティアお嬢様は祈りを捧げ終わると、輝く目をしながら仰ったのです。

 

「さあ、皆さん、感謝していただきましょうですわ!」

 

ワシがスープを掬って飲もうとすると、それはすっかり冷め切ってたです。

 

でも...味は変わらなかったです...たぶん。

 

そして次のパスタを運んできた店員さんは、前菜がまだ手つかずでテーブルに乗っているのを見て困った顔をなさっていたです。

 

でも、ワシらはどうにか食事を終えて馬車の旅の疲れを癒すことができたです。

 

ワシらは茶屋を出ると、村長からもらった地図を手にして洞窟に向かっていったのです。

 

その洞窟は徒歩で一時間ほどかかりましたです。

 

でも、ワシは庭仕事で歩き回るのには慣れているです。

 

ですがジョバンニの旦那がしばらくして音を上げたです。

 

「ちょっと....こんなに歩くなんて聞いてないわよ。なんで馬車を帰らせちゃったわけ?」

 

「セバスチャンは非戦闘員だ。もし洞窟の近くで待機させておいて魔物に襲われたら責任問題になるだろ」

 

ラファエロの旦那がこう答えたです。ラファエロの旦那は普段は事務職なのに、身体を鍛えておいでなのか少し汗をかいているだけでしたです。

 

一番意外だったのがルクレティアお嬢様です。お嬢様は我々に少しも遅れることなくスタスタとお歩きになっておられたです。

 

「お嬢様はおみ足がお丈夫ですな。ワシは感心しましたです」

 

ワシが思わず言うとお嬢様は笑顔でこう答えられたです。

 

「修道院での日々は祈りと聖典朗読の時間以外は全て労働でしたわ。わたくしの先生はよく『すべて労働は祈りにつながる』と仰ってましたわ。ですから身体を動かすのは今でも苦ではありませんわ」

 

そんなこんなでワシらは洞窟に到着したのです。

 

ですが、小高い丘の中腹にあったその洞窟は、見るからに禍々しい雰囲気を放っておったのです。

 

まるでワシらを丸ごと呑み込もうとするかのように。




どうにか4,000文字以内収まった~!!!
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