出撃!庶務騎士団   作:nocomimi

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こんな拗らせた兄弟はワシは見たこともなかったです

庭師のジュゼッペです。

 

ワシはラファエロの旦那と一緒に王都の入り口にあるアッピア街道の起点となる崖に挟まれた坂道で魔物どもの群れを待ち構えていたのです。

 

空が真っ暗になるほどの数の矢を敵が放ってきたあと、最初にやってきたのはオークどもでした。

 

ワシが挨拶代わりに巨石を三つほど転がしてやったあと、ラファエロの旦那は先頭集団の生き残りと戦い始めました。

 

その間、ワシは投石で後続の連中を間引いてやっていましたが、眼下で戦っていたラファエロの旦那は多数の敵を倒したものの次々にやってくる新手に包囲され始めていましたです。

 

「旦那!旦那!」

 

ワシは急いで斧を掴むと、大声で叫びながら坂を駆け降りていったです。

 

敵群の注意が逸れた隙に、ラファエロの旦那は手近のオークに殺到して袈裟斬りをかけ、胸を刺し貫いたです。

 

「旦那!伏せてくださいです!」

 

ワシが叫ぶと、ラファエロの旦那は地面に身を投げ出したです。

 

その瞬間、ワシは敵群の真ん中に飛び込んで、唸り声を上げながら身を回転させたです。

 

重い斧の刃が肉にぶち当たる音が響いたです。

 

オークの頭部や腕や胴体の一部が飛び散り、道の上に次々と落下したです。

 

ワシが数回身体を回転させている間、旦那はぴったりと地面に伏せていましたですが、

 

ひとしきりの戦闘音が止むと、旦那は恐る恐る上体を起こしたです。

 

ワシは息を治めながら斧の石突きを地面に突き立てたです。

 

ワシは努めて表情を変えないようにしましたが、やっぱり得意そうな顔をして旦那を見てしまっていたらしいです。(後で旦那から聞きましたです。)

 

「終わりましたです」

 

ワシが告げると、ラファエロの旦那は最初目を丸くして絶句していましたです。しかし、次に苦笑いを浮かべ、そしてとうとう声を上げて大笑いしてしまったです。

 

「第一波を凌いだみたいだな」

 

やっと笑いが収まると、ラファエロの旦那は剣を布で拭いながら言ったです。

 

目を上げて巨石と巨石の間から向こうを見ると、そこら中にオークの死体が転がっていましたです。もっとも、ワシらのいる場所の足元も、ほとんど足の踏み場もないくらい死体だらけでしたです。

 

百メートルほど先にはまだ大勢の魔物どもがいましたが、こちらに進むべきかどうかを迷っている様子でしたです。彼らが互いに言い争う声が聞こえてきたですから。

 

ですが、しばらくの後に相談がまとまったらしく、オークたちが再び隊を編成し始めたのが見えたです。

 

「こうしちゃいられんです」

 

ワシは踵を返すと、坂を登り始めたです。

 

「まだ仕掛けがあるのか?」

 

ラファエロの旦那が尋ねるのでワシは澄まして答えたです。

 

「ワシは田舎者ですからもてなしが好きなのです。相手がもう食べられないって言うくらいご馳走を用意するのが田舎の礼儀ですです」

 

ワシは崖の上に行くと、手早く木を十本ほど斧で斬って丸太をたくさん拵えたです。

 

「旦那、さっきよりもう少し上で立ってて欲しいです。それで合図したら坂を登って退避してくださいです」

 

「分かった。囮役なら任せろ」

 

ワシらが会話しながら敵の方を観察すると、どうやらオークどもはぎっちりと密集隊形を作って慎重に進むつもりの様子でしたです。

 

やがて百匹単位のオークどもが列をなして前進してきたです。

 

ラファエロの旦那はわざと相手からよく見えるように坂の途中に立ち、剣を構えたです。

 

「どうしたどうした!貴様らオークは見せかけの筋肉ばかりで剣術はまるで素人ではないか!少しは骨のあるところを見せんか?」

 

旦那が大声で相手を挑発したです。

 

オークどもは怒声を上げながら進軍を早めていったです。

 

とはいえ、密集隊形のまま歩いているので、列の動きは鈍く、互いに押し合いながら進んでいましたです。しかも、三つ並んだ巨石の間を通り抜けるのにも一苦労でしたです。

 

「ほら見ろ!筋肉ばかりで頭は空っぽだ!」

 

ラファエロの旦那はさらに挑発を重ねたです。

 

ワシは崖の上で丸太を一本持ち上げたです。

 

「旦那、今です!」

 

オークの群れが坂の半ばまで到達すると、ラファエロの旦那は踵を返して坂を登り始めたです。

 

ワシは横に持った丸太を思い切り宙に放り投げたです。

 

丸太はこちらに駆け登ってくる旦那の頭上を越えて、

 

密集したオークの群れの先頭にモロに突っ込んでいったです。

 

数十匹が巻き込まれ、たちまち敵の進軍が止まると、ワシはもう一本の丸太を持ち上げ、今度は縦にして槍のように投げたです。

 

飛んでいった丸太がオークの集団の真ん中に落下し、次いでゆっくりと後ろに倒れたです。

 

潰されたオークどもの悲鳴が上げるのも構わず、

 

ワシは次々と丸太を投げていったです。

 

その時でしたです。ワシの近くで敵の方向を観察していたラファエロの旦那が叫びましたです。

 

「ジュゼッペ!退避だ!」

 

ワシが顔を上げると、オークどもの背後にはいつの間にかゴブリンどもの弓兵が続いていたです。

 

既に、多数の矢が空中に撃ち上げられていたです。

 

ラファエロの旦那は駆け寄ってきてワシの腕を掴むと、手近に残っていた木の幹の陰に引きずり込んだです。

 

ところが、敵は狙いをよく定めていなかったらしく、矢が着弾する音と同時にオークどもの悲鳴が次々と上がったです。

 

「同士討ちだ。この分だと半日持ちこたえられそうだな」

 

ラファエロの旦那は身を縮めながらワシに言ったです。隠れている木の幹にも次々と矢が当たりましたですが、ワシは旦那と顔を見合わせ頷きあったです。

 

ひとしきりの矢の雨が止むと、ワシらは木の陰から顔を出したです。

 

すると坂の下は阿鼻叫喚の地獄絵図になっていたです。

 

矢を受けたオークどもの死体が転がり、生き残った奴らは互いに押し合いへしあい、倒れた仲間を踏みつけながら退却していったです。

 

「旦那、あいつら勝手に減っていくです」

 

ワシは笑いましたです。

 

ですが、ラファエロの旦那は剣を持ち直すと答えたです。

 

「油断は禁物だ。いかに魔物でも、犠牲を出すうちに次第に賢くなるはずだからな」

 

その言葉の直後、遠くの街道から再び太鼓の音が響いてきたです。

 

退却していたオークたちが、後ろに控えていた仲間たちと合流すると、

 

どうしたわけか、真っ黒に群がっていた魔物どもの集団が縦に真っ二つに割れたのです。

 

まるで、誰か重要な人物のために道を開けているかのようでしたです。

 

「いったい何をしようとしているんだ?」

 

ラファエロの旦那はそれを見ながら呟いたです。

 

「えり抜きの強い奴が来るのかも知れんですな」

 

ワシは答えましたが、まだ手近に残っていた丸太に目をやりましたです。

 

「でもこの丸太を三本ほどぶつけてやればどんなデカブツでもわかるはずです。ワシらに手出ししたら痛い目を見ると....」

 

ですが、ラファエロの旦那は手を上げてワシを制止したです。

 

「おい....待て...」

 

ワシも顔を上げて街道の向こうを見ましたです。

 

二つに割れた魔物集団の真ん中を誰かが悠々と歩いてこちらに向かってきていましたです。

 

目を凝らすと、それは細身の青年で、魔法使いのマントを羽織り、杖を手に持っていたです。

 

「くそッ...ディオか」

 

ラファエロの旦那は忌々しげに呟いたです。

 

「面倒な相手が来たな」

 

「でも旦那...ディアナ伯爵が言うには、ディオが魔物からルクレティアお嬢さまを救ったということではないですですか?」

 

ワシは尋ねたです。

 

「ディオはルクレティア嬢に惚れているからな。だが奴が魔物軍の一員だという事実には変わりはない」

 

ラファエロの旦那はそう言うと、ワシに顔を近づけて耳打ちしたです。

 

「作戦変更だ。奴を木立の中に誘い込もう。それで距離を詰めてから....」

 

その時、前に出てきた魔法使いの青年がこちらに呼びかけてきたです。

 

「ちょいと、あんたたち何コソコソしてんのよ?こっちに出てきなさいな」

 

それを聞いた瞬間、ワシとラファエロの旦那は思わず固まってしまったです。

 

「ディオ...じゃあないです?」

 

「じゃああれは一体....誰だ?」

 

ワシらは互いに顔を見合わせたです。

 

「ジョ....ジョバンニ?」

 

ワシと旦那は信じがたい思いで、もう一度声の主を見やったです。

 

魔法使いは、ワシが転がしておいた巨石の脇を通り抜けると、

 

街道の真ん中に立ってワシらを見上げていたです。

 

「おやまあ、やっぱり。ラファエロにジュゼッペね。よく生きてたもんだわね。感心するわ」

 

ワシとラファエロの旦那はまだ信じられない気持ちのまま、木立から出て坂道の上に立ったです。

 

「おい、君は本当にジョバンニなのか?」

 

ラファエロの旦那が呼びかけると、相手は気味の悪い含み笑いをしたあと答えたです。

 

「決まってるじゃないの。他の誰だっていうの?」

 

「違う。ジョバンニの旦那はワシらの友人だったです。貴様はディオが化けているです!」

 

ワシは思わず叫んだです。

 

「ちょいと馬鹿にしないで頂戴。あたしはあんな社会不適合のコミュ障の魔法オタクとは違うわ」

 

魔法使いはマントを翻すとこう答えたです。

 

「だいいちあいつはもうヴァルグ様の息子でもなんでもないわ。自分から出ていったんだもの。だから、新しい息子は、あ・た・し。ってわけ」

 

「なぜだ?......ジョバンニ。君は俺たちの一員だった。いや、それだけじゃない」

 

ラファエロの旦那は悲痛な声を上げたです。

 

「君はいつも言ってたじゃないか。料理で人を喜ばせることが生き甲斐だって。なぜ今さら魔物の走狗になど?」

 

「出会い...って言えばいいかしらね?」

 

ジョバンニの旦那は片方の眉を上げたです。

 

「あたしは出会ったのよ。何よりも偉大な存在にね。その存在の前には王国全体さえ霞んで見えるわ....そうよ。あのチンケなルーラル王なんか比べ物にならない権勢、力、そして魔力よ」

 

ジョバンニの旦那の変わりように、ワシもまた悲しみに胸が張り裂けそうになっていたです。

 

「嘘です。嘘です。ジョバンニの旦那はそんなモノに惑わされるお人ではないです」

 

ワシは首を横に振りながら、坂道を降り始めたです。

 

「ジョバンニの旦那。目を覚ますです。旦那は騙されて...」

 

「待て、ジュゼッペ。迂闊に近づ.....」

 

ラファエロの旦那がそう警告を発したと同時に、

 

ジョバンニの旦那の杖から雷が発射され、ワシの斧に当たると、ワシは思わずそれを取り落としてしまったです。

 

「で、あたしは生まれ変わったわけ。これからの人生、あたしはヴァルグ様のために生きることに決めたわ」

 

「ジョバンニの旦那。ワシは難しいことはわかりません。ですが旦那の喜びはどこにあるですか?」

 

ワシは痺れる手をもう片方の手で握りながら、それでもジョバンニの旦那に近づいていったです。

 

ワシはジョバンニの旦那の顔を真っすぐに見つめたです。その目は思った通り虚ろで、何の感情も読み取れませんでしたです。

 

「旦那はいつも人を喜ばせることができたときに自分も喜んでいたです。その喜びはワシにも見てとれたです。ワシは旦那に比べたら不器用な田舎者です。でもワシが庭を造ってお客さんに喜んでもらったときにも同じ...」

 

「いちいち煩いわね!」

 

ジョバンニの旦那の杖から再び雷が発射されたです。今度は一発目より大きく、それがワシの顔に直撃したです。

 

ワシは一瞬気を失いそうになりながら、ドウと後ろ向きに倒れたです。

 

「ジュゼッペ!」

 

ラファエロの旦那が叫びながらこちらに走り寄ってくる音が聞こえたです。

 

「しっかりしろ、ジュゼッペ!」

 

だけど、もう一度雷の発射される音がして、ラファエロの旦那が呻き声を上げながら倒れる音がしたです。

 

「頼むから昔のくだらないあたしを思い出させないでくれるかしら?ヴァルグ様の力に触れた時点で、古い自分は死んだのよ」

 

霞む目を必死で開けると、ジョバンニの旦那はゆっくりとワシらに歩み寄って来ていたです。

 

「さ、大人しく降参しなさいな。でないとあんたたちが消し炭になるまで雷で撃たないとならないわ。それか、丸焼きがいいかしらね?」

 

「ジョバンニ.....本当の自分を...思い出せ...」

 

ラファエロの旦那が呻くように言う声が聞こえたです。

 

「しつこい連中ね。何度言ったらわかるわけ?」

 

苛立った様子でジョバンニの旦那が言い、魔法使いの杖を掲げたです。

 

見ると、杖の先端に小さな雷が集まって球形を形成し始めたです。

 

「そんなに死にたいなら好きにするがいいわ....ほら、見なさいよ、この魔力。凄いと思わなくって?」

 

ジョバンニの旦那は唇を歪めながら誰にともなく呟いたです。

 

ワシは立ち上がろうとしましたが、身じろぎすることしか出来なかったです。

 

「ハハ!死になさい!」

 

そう言うと、ジョバンニの旦那は杖を大きく振りかぶったです。

 

ワシは思わず目を閉じたです。

 

しかし、凄まじい雷がジョバンニの旦那の杖から発射されたかと思うと、

 

不思議なことにその雷がワシらの前で壁にぶち当たったかのように弾き返されたのです。

 

しばらくの間、雷の光が激しく瞬いて周囲を照らしていたですが、

 

それが収まると、ワシらの前にいつの間にか、ジョバンニの旦那にそっくりな魔法使いがこちらに背を向けて立っていたのが見えたです。

 

「...ちょっと....何のつもり?よりによってなんであんたがここに居るのよ?」

 

ジョバンニの旦那は、驚愕の表情をしながらそう言ったです。

 

「また会ったね、兄さん」

 

こちらに背を向けていた魔法使いが答えたです。

 

* * * * * * * * * * * * * * 

 

「キミたち、勘違いするなよ。ボォクは兄さんとちょっと話がしたかっただけさ。別にキミたちの味方になったわけじゃあないからな」

 

新たに現れた魔法使いは、向こうを向いたままそうワシらに言ったです。そしてジョバンニの旦那に向かってこう語りかけたです。

 

「随分探したよ兄さん。まさかこんなところにいたなんてね」

 

「ディオ、あたしはあんたに用なんかないわ。第一あんたはもうヴァルグ家から追い出されたはずよ。こんなところをウロウロしてる場合?敵認定される前にさっさと消えなさいな。それか、ヴァルグ様に土下座でもして許してもらうのね」

 

ジョバンニの旦那は忌々しげにそう告げたですが、もう一人の魔法使い、ディオは平静な様子で応じたです。

 

「まあ待てよ兄さん。ボォクはよく考えたのさ。兄さんの言っていた『人を喜ばせる』って話をね。その....兄さんにとってはお笑い種かも知れないけど、ボォクも出会ったのさ」

 

「出会った?誰とよ?」

 

「....真実の愛...って奴かな」

 

ディオがそう答えた瞬間、ジョバンニの旦那は少しあっけにとられていましたがやがてヒステリックな哄笑をし始めたです。

 

「バカじゃないのあんた!まったく少しも成長してないのね...中二病そのまんまじゃない。呆れたわ!」

 

やっと笑いが収まると、ジョバンニの旦那は腹を抱えながらそう決めつけたです。でも、ディオは気を悪くした様子もなくこう言ったです。

 

「ま、笑いたければ笑ってくれ。ボォクの決心はそんなことくらいでは揺るがないよ。何しろ、この出会いがボォクの人生の全てを変えたんだから」

 

「...で...あたしに話って何よ?その女をどう口説き落とすかの方法を知りたいわけ?」

 

ジョバンニの旦那はそう尋ねたですが、すぐにこう続けたです。

 

「あんた魔法使いじゃないの。惚れ魔法を使えば一発でしょうが。わざわざ面倒な手練手管を使おうって気が知れないわ」

 

「兄さん...ボォクが知りたかったのはそんなことじゃあない。第一そんなやり方じゃあパパと一緒だ。ボォクはもうそのやり方から卒業したいんだ」

 

「ヴァルグ様と一緒でなぜいけないの?ヴァルグ様こそ至高の存在じゃないの」

 

そこでディオは溜め息をついたです。

 

「どうやら兄さんは洗脳魔法をかけられたみたいだね。どうりで様子がおかしいと思ったよ」

 

「洗脳?あんたにはそう見えるの?でもあたしにはどちらだっていいわ」

 

ジョバンニの旦那は呟くと、愛おしそうに杖を掲げて見つめたです。

 

「あたしには今までにない力がある。あの方の力が注入されたのよ。これこそ新しいあたしよ。ただ生まれ変わったんじゃあない。より強く美しくなったのよ」

 

「それは違うね。兄さんは昔のボォクと同じになった。ボォクが卒業することにしたボォク自身とね」

 

ディオが答えると、ジョバンニの旦那は大いに気を悪くした様子で相手を睨んだです。

 

「ちょいと、聞き捨てならないわね。あたしが退化したみたいじゃないの。社会不適合のコミュ障のくせに偉そうなことをお言いだね」

 

「退化さ。だってそうだろ?以前の兄さんは人を喜ばせることを目指していた。それは簡単なことではないし、相手が完全に自由でないとそれはできないって。そう言ってたよね」

 

ディオは言葉を継いだです。その語調はとても寂し気でしたです。

 

「......今のボォクにはそれがわかる。ルクレティアちゃんを喜ばせるってことは、力で支配するやり方じゃあできないんだ。だからボォクは兄さんにアドバイスを貰いたかった。だけど....だけどそれももう無理になったみたいだね」

 

ディオの声は静かだったが、ワシにはそれが坂道全体に響き渡るように感じられたです。

 

「兄さん……人を喜ばせるってのは、相手を支配することじゃない。自由に笑ってもらうことなんだ。そうだろ?最後に言わせてくれ。それをボォクに教えてくれたこと、心から感謝してるよ」

 

ですが、ジョバンニの旦那は苛立ちを隠さずに叫んだです。

 

「お黙り!人を喜ばせる?そんなものは弱者同士の傷の舐めあいにすぎないわ!」

 

ジョバンニの旦那は杖を振り上げ、その先端をディオに突き付けたです。

 

「今すぐ消えるか、ヴァルグ様のところに戻るか、あたしに殺されるか、どれかを選びなさいな。それに言っておくけど...」

 

「パパの力を借りているから、今の兄さんはボォクより強いって言いたいんだろう?」

 

ディオは遮ると言ったです。

 

「だから浅はかだっていうのさ。借り物の力を自分の力と勘違いしてる。兄さんは本当はそんな人じゃあない。ボォクは小さい頃から知ってる」

 

「知ってる?何をよ?」

 

「兄さんは、繊細で、人の感情にすぐ気づいて、よく気が回って...何もかもボォクと正反対だった。兄さんは決して冷酷でも強くもなかった。ただ、とっても優しい人だった」

 

「黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!」

 

ジョバンニの旦那は絶叫したです。

 

「これ以上言うなら弟といえども容赦はしないわ。その煩い口を二度と開けないようにしてあげる」

 

「本当にやるのかい、兄さん?...」

 

ディオは沈んだ口調で答えたです。でもその声音には静かな決意が込められているようにも聞こえたです。

 

「でも......ボォクも戦いを挑まれるなら受けて立つ。兄さんを目覚めさせるためなら...ね」

 

こうしてワシらの見守る前で、二人の魔法使いが杖を構えて向かい合ったです。

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