庭師のジュゼッペです。
ワシとラファエロの旦那は、オークの先遣隊をやっつけたあと、
洗脳されたジョバンニの旦那の雷にやられてしまったのですが、
ジョバンニの旦那の双子の弟のディオが忽然と現れジョバンニの旦那と戦ったのです。
そしてディオが勝ったのですが、ジョバンニの旦那は倒れてしまい、息もしていませんでした。
ディオはやはり兄弟だからか、慌てて救命措置をしました。フレデリコの坊やも手伝いました。
それでも生き返らず憔悴していることろに、ルクレティアお嬢さまが颯爽と現れたのです。
お嬢さまはジョバンニの旦那に息を吹き返させたあと、
旦那の治療が終わるまでの間、代りにここを守っているようにとディオに向かっておねだりされたのです。
すると、ディオはあっさりとこちらに寝返ったのです。
ラファエロの旦那は「愛の力」と言っていましたが、なるほど恋というものは恐ろしいほど人を変えるのだとワシも驚きましたです。
ディオは威張った奴でしたが、その力は凄まじいものでしたです。
ワシとラファエロの旦那は、ディオの旦那の助けのもとオークの第二陣をも退けたのです。
しかし、そこに新しい敵が魔物どもの列を縫うようにして接近してきたのです。
トロルたちです。それが四匹もおり、それぞれが巨木のような棍棒を抱えていました。
周囲にはゴブリンどもが群がっていて、トロルの身体中に喰い込んだ鉤から伸びた鎖を彼らが操っていました。
「クソッ...面倒な奴らが来たな」
ディオの旦那が呟いたです。
「どうする?」
ラファエロの旦那は剣を構えながらも尋ねたです。
「ワシには動く岩程度にしか見えんです。岩はどけるか割るかして片付けるです」
ワシは斧を構えると言いましたです。しかしラファエロの旦那はワシに注意しましたです。
「ジュゼッペ、油断は禁物だぞ。やつらは力が強いだけじゃない。痛覚が鈍いから相当の深手を与えないと止められん」
「おい、退却だ」
ディオが唐突に言いました。ラファエロの旦那は困惑して尋ねましたです。
「退却?どういうことだ?」
「奴らの作戦はこうだ。トロルどもがボォクらに十分接近するまでゴブリンどもが操る。そして接近したら鎖をリリースして、トロルどもが勝手に暴れるに任せるんだ」
ディオの旦那は坂の上を指さしましたです。
「平らな場所ではこちらが不利だ。だから崖の上から攻撃する。ボォクは鎖が繋がっている間に最大出力の雷をブチ込む。そしたら剣士、お前が飛び付いて急所を狙え。ひげ、お前は丸太を投げつけろ」
「...なるほどな。いい案だ」
ラファエロの旦那は頷くと、ワシに合図し坂を登り始めたです。
坂の上にはフレデリコの坊やが心配そうな顔で立っていました。
「フレデリコ、もはやここは危険だ。早く行け」
「わ...わかりました...でも...次に来るときまで...」
ラファエロの旦那が言うと坊やは渋々ながら答えました。ところがディオの旦那が遮ったのです。
「坊や、バカだなぁ。このボォクがついているのにこいつらが死ぬと思うか?それより次のサンドイッチはもっと工夫してくれ」
ディオの旦那が言うと、坊やは安心したように頷き、街道を駆け出したです。
坂の上で旦那方が敵の様子を観察している間、ワシはもう数本の丸太を拵えたです。
それが終わるとワシは丸太を一本構え、ラファエロの旦那は崖の横の松に登ったです。
やがてトロルどもは地響きがするほどの足音を立てながら鈍い動きでワシらの眼下まで進んできましたです。
ゴブリンどもは喚きながら鎖を引っ張り、トロルどもを誘導していましたです。
「行くぞ!」
ディオの旦那は杖を振り上げると、その先端に巨大な雷の球を形成しましたです。
次の瞬間、凄まじい雷が先頭のトロルに向かって迸りましたです。
身体中に喰い込んだ鉤と鎖に電流が走り、近くにいたゴブリンどもが悲鳴を上げて弾かれるように倒れたです。
雷を喰らったトロルも、一瞬意識が遠くなったのか、低い呻き声をたてながら上を向いたです。
ラファエロの旦那は木の枝から飛び降り、トロルの頭に飛び付くと、その後ろ首に思い切り剣を突き立てたです。
しかし、後続のトロルがそれに気づいたのか、手を伸ばして旦那を捕まえようとしたです。
ワシは丸太を持ち上げると、そのトロルの頭目掛けて思い切り投げつけたです。
飛んで行った丸太はモロに化け物の顔面に直撃し、流石の鈍い怪物といえどもやや面食らった顔をして、動きを止めたです。
ラファエロの旦那が何度も剣を突き立てると、最初のトロルがとうとう深手を負って膝から崩れたです。
ですが、その頃には二匹目がもう立ち直っていたです。
怪物は、棍棒を振り上げましたです。棍棒は崖の上まで届くほどの長さで、空気が唸りを上げるのが聞こえたです。
ラファエロの旦那は、一匹目のトロルから慌てて飛び降り、身を躱しましたです。
その直後に棍棒が一匹目のトロルの頭を直撃し、物凄い衝撃音がしたです。
「旦那!」
ワシは叫ぶと、丸太を拾い上げて再び二匹目のトロルに投げつけたです。
そいつはやや怯みましたが、それでも旦那を狙うのをやめませんでしたです。
しかも、三匹目・四匹目のトロルどもも前進してきたです。
ワシは咄嗟の判断で、後衛の二匹のトロルどもに足元に向けて次々と丸太を投げつけたです。
飛んでいった丸太が、トロルどもの足元にいたゴブリンたちを跳ね飛ばし、怪物どもは制御を失って暴れ始めたです。
ですが、ラファエロの旦那が二匹目のトロルの振り回す棍棒から必死で逃げているのが眼下に見え、ワシは決心したです。
ワシは斧を掴むと、崖から飛び降りて旦那のところに向かったです。
地面に着地すると同時に、ワシは斧を振り上げてトロルに突進したです。
トロルは旦那を追うのに夢中でワシに気付かなかったのが幸いでした。
ワシは斧を思い切りそいつの脚に叩き込んだです。
ところが、トロルの頑丈さというのはワシの想像以上でした。
脚にバックリと傷ができたものの、トロルは倒れませんでした。
そして今度はワシを踏みつぶそうと足を持ち上げてきたです。
ワシは咄嗟に斧を横持ちにしてその刃でそいつの足を受け止めたです。
まるで倒木に巻き込まれたような衝撃でしたが、ワシはどうにか倒れず持ちこたえたです。
トロルはワシを押しつぶそうとして体重をかけてきます。ワシは顔を真っ赤にして唸り声を上げながら耐えたです。
「ジュゼッペ、一旦逃げろ!」
ラファエロの旦那が叫びながら駆け寄ってきて、トロルの脇腹に斬りつけたです。
怪物が気を取られた隙に、ワシは斧を手離しギリギリのところで横に転がってトロルの足から逃れたです。
顔を上げると、ラファエロの旦那はトロルの振り下ろした棍棒を紙一重で避けたあと、
地面に喰い込んだ棍棒を駆け登り跳躍して怪物の顔に取り付いたです。
そして剣を思い切りトロルの眼に突き立てたです。
ところが、トロルは手を伸ばすと旦那をむんずと捕まえたです。
ラファエロの旦那は怪物に捕まえられ宙ぶらりんになってしまったです。
その瞬間、坂の上から雷が飛んできて、トロルの眼に刺さった剣の柄に当たったです。
凄まじい電流がそこから流れ込んだのか、トロルは地響きのような叫び声を上げ、それから旦那を手離してゆっくりと倒れていったです。
「大丈夫ですか、旦那?」
「大丈夫だ!」
ワシが尋ねるとラファエロの旦那は立ち上がって答え、トロルの眼から剣を引き抜いたです。ワシも地面に落ちた斧を拾い上げましたです。
しかし、顔を上げると、残り二匹のトロルがもう目の前まで迫ってきたです。
その周辺にいたゴブリンどもは、もはや怪物が手を付けられなくなったと判断したのか、喚きながら後方に逃げていったです。
トロルどもは出鱈目に棍棒を振り下ろし、逃げ遅れたゴブリンが何匹が潰されたです。
「ジュゼッペ、奴らの後ろに回ろう!」
トロルどもの棍棒が当たって街道の左右の崖が崩れ始める中、ワシらは奴らの脚の間をすり抜けて後ろに回ったです。
怪物どもはひとしきり暴れると、周囲に誰もいなくなったと気づいて辺りを見回し始めたです。
その時、坂の上にいたディオの旦那が叫んだです。
「おい、能無しのデカブツども!悔しかったらここまで来い!特大の雷をくれてやるよ!」
トロルどもはディオの旦那の挑発がわかったのか、唸り声を上げながらのしのしと坂道を上り始めたです。ワシらには気づかないままでした。
ワシとラファエロの旦那は一匹の後ろから近づくと、ワシが斧を振り上げてアキレス腱の辺りに思い切り叩き込んだです。
そいつが呻き声を上げ動きを止めた瞬間、ワシは間髪を入れず第二撃で反対側のアキレス腱も断ち切ったです。
ラファエロの旦那は剣を収め、歩けなくなったトロルの背中に引っ掛かって残っていた鎖を掴んでよじ登り始めたです。
しかし、顔を上げると最後の一匹が坂を登ってディオの旦那に迫っていたです。
ワシは急いでそいつを追いかけると、斧を振り上げて思い切り足首に叩きつけたです。
わずかに痛みを感じたのか、怪物は呟くような声を上げ振り向いたです。
ワシはもう一度斧を振り上げると同じ足首に斬りつけたです。
ところが大して堪えなかったのか、そいつは
ワシは逃げそこねて吹き飛ばされ、崖の壁に叩きつけられたです。
呻き声を上げながら目を上げると、ラファエロの旦那が三匹目のトロルの後ろ首を剣で刺し貫いたところでしたです。
しかし四匹目はワシを敵と見定めたのか、ドシドシと地響きを立てながら迫ってきたです。
「やれやれ、手がかかる部下だなぁ」
ディオの声が聞こえたです。途端に一筋の炎が舌のように伸びてきて、トロルの顔を包んだです。視界を奪われた怪物は立ち止まり嫌々をするように首を振ったです。
ワシは口の中に溜まった血を吐き出しながら立ち上がったです。
「まだ…終わっとらんです!」
斧を振り上げると、トロルが炎に目を塞がれている間に何度もその脚に斬りつけたです。
やがて炎が止まると、トロルは歩けなくなり片膝を突いたです。地面が揺れたです。
ですが怪物はまだ死んでおらず、棍棒を振り上げようとしていましたです。
しかし、三匹目を仕留めたラファエロの旦那が走り寄ってくると、ワシと怪物の間に入るように立ちはだかったです。
「俺に任せろ!」
怪物はラファエロの旦那に狙いを変えたです。しかし振り下ろされた棍棒をラファエロの旦那はギリギリで回避し、進み出るとトロルの喉のあたりを剣で刺したです。
同時に、ワシは棍棒を持ったトロルの指を狙って斧を振り下ろしたです。怪物は武器を手離すと後ろに尻餅をついたです。
ワシは斧を放り出すと、近くに落ちていた丸太を拾い上げて、正面から思い切りトロルに叩きつけたです。そうして後ろに倒れたトロルの眼をラファエロの旦那が剣で貫き、しばらくするとようやく怪物は大人しくなったです。
「おい、生きてるか?」
ディオの旦那がそう言いながら坂を降りてきたです。ワシらは膝に手をついて肩で呼吸していたです。
「ひげもじゃ男、傷を見せてみろ」
ディオの旦那はそう言うとワシの顔を覗き込みましたです。
「身体中が痛みますが、まだ動けますです」
ワシが答えると、ディオの旦那は低い声で呪文を詠唱しながらワシの身体に触れたです。
すると驚いたことに痛みが引いたです。
ワシが目を丸くしてディオの旦那を見ると、彼はこう言いましたです。
「勘違いするな。これは治癒魔法じゃあない。ボォクの専門外だからな。ただの痛み止めだ。まあモルヒネみたいなもんさ。せいぜいこれからも頑張ってくれ」
意味がわからずワシが目をパチクリさせていると、ラファエロの旦那が言いましたです。
「ジュゼッペ、ルクレティア嬢が戻ってくるまで無理はするなよ。君は攻撃力は随一だが負傷確率も高いからな」
ところが、その時敵陣のほうから低い角笛の音が聞こえてきたです。その音は極めて不吉な音でしたです。
街道の向こうを見やると、魔物たちの群れが真っ二つに割れ、真ん中を何者かが悠々と進んできたです。
* * * * * * * * * * *
ワシらが目を凝らすと、輿を担いだオークどもがこちらに向かって歩いてきており、その輿の上に誰かが座っているのです。
さらには、その後ろから四体の新たなトロルどもが付き従っていましたです。
彼我の距離が縮むと、輿の上の人物の様子がワシらにも見えてきたです。
「パパ...」
ディオが呟きました。その声音には、愛着と、諦念と、哀しみが込められているように聞こえたです。
輿の上の人物は、黒光りする高価そうな鎧を纏ったヴァルグ伯爵でしたです。
彼は寛いだ様子で肘掛けに肘を突き、冷たい視線で戦場を眺めていたです。
その後ろに従うトロルどもは、ゴブリンたちに鎖で操作されていたからだけではなく、目の前のヴァルグに畏れを抱いている様子で、暴れもせず歩いていたです。
ヴァルグはワシらの五十メートルほど手前で輿を止めさせると、声を上げたです。
「よく持ちこたえたものだ。敵ながら褒めてつかわそう」
ヴァルグの声はよく通ってはっきり聞こえたです。
「剣士ラファエロ、斧使いジュゼッペよ。もし儂の配下になるならば今の五倍、いや十倍の報酬を支払おう。どうだ?」
「断るです!ワシは今の生活に満足しているです!」
「右に同じだ。貴様の部下になるなら乞食にでもなったほうがましだ」
ワシとラファエロの旦那はほぼ同時に答えたです。
「フン...愚かなことよ。誇りとともに死するつもりか」
ヴァルグはそう言うと、背後に控える魔物どもの群れを示したです。
「わが軍はまだ1パーセントも損耗していない。このまま死ぬまで戦い続けるつもりか?」
「ハッ....庶務騎士団を舐めてもらっては困る。俺たちがどれほど貴様にダメージを与えたか覚えていないのか?」
ラファエロの旦那が不敵な笑みを浮かべながら叫び返したです。ヴァルグは含み笑いするとこう答えたです。
「いずれにせよ大勢は変わらん。お前たち腑抜けた人間どもが我々に勝てるわけがない」
ヴァルグはそう言うと、付き従う魔物どもに向かってこう叫んだです。
「これは序章に過ぎん。魔族の世は近い。いや、既に来ているのだ」
魔物どもが一斉に歓声を上げたです。
「パパ!」
その時ディオの旦那が声を上げたです。
その声に、ヴァルグ伯爵はゆっくりと視線を向けたです。
「パパ...ボォクのこと、怒ってるんだよね...分かるよ。今までの恩を仇で返すようなことをしちゃったから」
ディオの旦那は躊躇いがちに言うとこう続けたです。
「でもこれだけは分かって欲しいんだ。ボォクはパパが嫌いだから出ていったんじゃあない。一人前の男になりたかったんだ。父親だったら息子が自立するのを喜んでくれるはずだろ?」
「愚かなヤツよ。あの女にたぶらかされたに過ぎぬものを.....」
ヴァルグは鼻を鳴らすと傲然と顎を上げてディオの旦那を見下ろしたです。
「違う。パパは恋をしたことがないから分からないんだ」
ディオの旦那は叫んだです。
「あの出会いがボォクの全てを変えた....ボォクはもう昔の自分じゃあない。昔の自分にはもう戻れないんだ」
「男というものは女の色香に惑わされるものだ。だが奴らに中身などない。女を利用するのではなく女に利用されるとは度し難き愚かさよ」
「違う!違う!」
ディオは大きな声でヴァルグを遮ったです。
「そりゃあ最初はボォクも彼女が可愛いから惹かれたのは認めるよ。でも...なんていうか、彼女と会話しているうちに.....ボォクの魂は彼女の魂の波長と共鳴してしまったんだ。彼女の魂がボォクに語り掛けたんだ。『自由に生きろ』って」
ヴァルグ伯爵はしばしの沈黙のあと、口を開いたです。その眼差しは冷たかったです。
「自由など幻想だ。力ある者が支配し、弱き者は従う。それが世界の理だと教えたではないか」
それを聞いたディオは下を向いていましたが、顔を上げてヴァルグを見据えたです。
「昔はボォクもそれを信じていたよ。でも彼女のとの出会いでボォクは学んだ。本当の喜びは自由の中にしか生まれないって」
ディオは静かな、しかし力強い声でこう言葉を継いだです。
「だから...ボォクは自分の意思で生きたい。自分で道を選びたい。それがボォクの力だ」
それを聞いたヴァルグは低い声で笑いましたです。
「どうやら完全に自分を見失っているようだな。儂のところに戻ってくるなら、使用人程度にはしてやろうと思っておったが....」
ヴァルグはそう言うと片手を上げたです。
「これが最後通牒だ。今までの攻撃など小手調べにも満たぬ。貴様らは本当の地獄を見ることになるぞ」
「望むところだ。好きなだけ魔物を連れてくるがいい。片端から斬り捨ててくれるわ!」
ラファエロの旦那が叫んだです。
するとヴァルグは片手を前に振り下ろしたです。
再び不吉な角笛の音が鳴り響いたです。
四匹のトロルどもが唸り声を上げ、ゴブリンどもに引っ張られながら前進し始めたです。
同時に、その背後ではオークどもの集団が武器を構えて進軍し始めたです。
ワシらは顔を見合わせ、誰から言い出すともなく踵を返し坂を駆け登ったです。
「おい、ひげ、丸太を作っておけ!」
坂の上に辿り着くとディオがワシに命令したです。
「言われるまでもないです!」
ワシは斧を振るうと、木を片端から切り倒していったです。
その間、ディオとラファエロの旦那は敵軍を注意深く観察していたです。
敵の進軍は、トロルの歩調に合わせていたのか、随分と遅かったです。
ところが、ディオの旦那が異変に気付いたかのように表情を変えたです。
「クソッ...そう来たか....」
いつまでたっても敵が坂道を登って来ないのでワシが崖から下を覗き込むと、敵軍は横に広く散開していたです。
そして、四体のトロルたちも街道を挟む崖の手前で横に広がり、そこで棍棒を振り回し始めたです。
ドカンと衝撃音がして、崖が崩れ始めたです。
「奴ら崖そのものを崩してから面で攻撃するつもりだぞ!」
ラファエロの旦那が警告したです。
「おい、ひげ!トロルどもを止めろ!」
ディオの旦那は右側の崖に走りながらワシに言ったです。
ワシは頷くと、丸太を一本持ち上げて、左側の崖の前で棍棒を振るうトロルの一匹の頭に投げつけたです。
衝撃音がして、トロルが一瞬怯んだです。しかし、すぐに怪物は頭を振って立ち直り、また棍棒を振るったです。
地響きがして、足元の崖が崩れ始めたです。ワシとラファエロの旦那はたまらず後退したです。
右側の崖ではディオの旦那がトロルたちに向かって雷を撃っていたです。
ワシはもう一本丸太を持ち上げると、目の前のトロルに投げつけたです。
再び怪物は怯みましたが、時間稼ぎに過ぎないとワシは悟ったです。
ワシは斧を拾い上げると、崖の崩れていない箇所に立って大声で叫んだです。
「このデカブツ!お前なんかバラバラにして庭の置物にしてやるわい!」
立ち直ったトロルはワシに向き直るとノシノシと近づいてきたです。
ワシは助走をつけると、斧を振り上げながら崖からジャンプしたです。
そして、雄たけびを上げながらトロルの頭に斧を振り下ろしたです。
斧の刃が怪物の額に食い込むと、化け物は白目を剥き、次いでゆっくりと横に倒れていったです。
ワシは斧の柄を掴んでいましたが、トロルが倒れた衝撃で地面に転がったです。
「ジュゼッペ!」
顔を上げると、ラファエロの旦那がワシを見下ろしていたです。
ワシの周囲にはゴブリンどもが数えきれないほど群がってきたです。
ラファエロの旦那は崖を飛び降りると、走り寄ってきて剣を振り回しワシの周囲の魔物を牽制したです。
「大丈夫か!」
「旦那、申し訳ないです。足を挫いたみたいです」
ワシはラファエロの旦那の肩を借りて立ち上がりましたです。
もう一匹のトロルの咆哮が聞こえてきて、地響きとともに近くの崖が大きく崩れたです。
「二人ともボォクが行くまで持ちこたえろよ!」
ディオの旦那が崩れ残った崖の上にやってきて杖を掲げると、雷を飛ばし、それがワシらの近くにいた生き残りのトロルに直撃したです。
ワシは斧を拾い上げると、片足で立ちながら振り回したです。それに当たって数匹の魔物が倒れたです。
包囲網が崩れた隙を縫って、ラファエロの旦那はぐらついたトロルに駆け寄ってその身体に飛びつき、急所に剣を突き立てたです。
すると、ゴブリンどもはトロルの身体から外れた鉤付きの鎖をワシに投げつけてきたです。
鎖が絡んでワシは動きが鈍くなったですが、それでもワシが暴れると、鎖に引っ張られた魔物どもが引き摺られながら喚いたです。
「離せ、この小鬼ども!」
ワシが倒れまいと抵抗している間、ラファエロの旦那がトロルに止めを刺したです。
低い断末魔の呻きとともに怪物が倒れると、ラファエロの旦那は化け物から飛び降り、ワシの周囲のゴブリンを斬り倒しましたです。
「まだ戦えるか?」
「もちろんです!」
ワシと旦那はゴブリンたちを片端から倒していったです。
しかし、目を上げると崖はおおかた崩れてしまっていたです。
再び角笛が響き、前進してきた魔物たちが洪水のように崖と坂を登り始めたです。
「クソッ...王都に侵入されるぞ!」
ラファエロの旦那が叫んだです。ディオの旦那も矢継ぎ早に雷を発射しましたが、あまりに敵の隊列が横に広過ぎて、倒し切れていなかったです。
その時です。
坂の上に到達した敵の先陣が斬り倒される音がして、
魔物どもが慌てて坂道を後退していったです。
ワシが目を凝らすと、
坂の上には甲冑を身に着け馬に跨った騎士たちの一隊がいたのです。