出撃!庶務騎士団   作:nocomimi

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法務職と現場リーダーは水と油

あら、お久しぶりですわ。

 

わたくし、ルクレティア・ヴァン・ディアナですわ。

 

どこまでお話ししましたかしら?

 

そうそう、あのダンジョンの最深部で閉じ込められた時のことですわね。

 

わたくし、ジョバン二さんがあれほど取り乱すのを見たのはあの時が初めてでしたわ。

 

でも、それには致し方ない面もございましたわ。

 

動く巨大石像が迫ってきている状況で、出口にはいつの間にか鉄格子が嵌っていたのですもの。

 

「開錠魔法開錠魔法開錠魔法開錠魔法開錠魔..................あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛思い出せない゛い゛い゛い゛い゛!!」

 

ジョバンニさんは頭を掻きむしってそう喚かれましたわ。

 

そうしたら庭師のジュゼッペさん、もう一度斧を振りかぶって石像の足元に振り下ろされましたの。

 

驚いたことに、石像の片足の薬指がそれでポッキリ折れましたわ。

 

ところがその時、石像が手に持った王笏を横に振り払いましたの。

 

近くにいたラファエロ主任が必死になってジュゼッペさんを伏せさせようとしてましたけど、運悪く一撃が当たってしまいましたの。

 

ジュゼッペさん、五メートルくらい吹き飛ばされて地面に倒れましたわ。

 

わたくし、すぐに駆け寄りましてよ。

 

でも、ジョバンニさんが叫びましたわ。

 

「ちょっ..ちょっとルクレティアちゃん!どこ行くのよ!」

 

ラファエロ主任も私を庇うように立って言いましたわ。

 

「ルクレティア!ジョバンニと一緒に退避しろ!」

 

「ワシ...は....まだ....大丈夫...で..す.....」

 

ジュゼッペさんは倒れたまま息も絶え絶えでこうおっしゃいましたわ。

 

でも、わたくし、治癒職としては自分にどんな危険が迫ろうとも職務を放棄することはしないと常々決心しておりましたわ。

 

ですからわたくし、すぐに祈祷を始めましたわ。

 

石像がわたくしたちに迫って、また王笏を振り上げるのが視界の隅に入りましたわ。

 

でもわたくしは諦めませんでした。

 

せめてわたくしが倒れてもジュゼッペさんだけは助けようと、その一念でしたわ。

 

すると、突然頭上に眩ゆい光が弾けるように現れましたの。

 

あまりの眩しさに、わたくし一旦治療を中断して顔を覆ったくらいでしたわ。

 

「逃げて!今のうちに逃げるのよ!」

 

ジョバンニさんの絶望的な叫び声が聞こえましたわ。

 

「ルクレティア!こっちに来るんだ!」

 

ラファエロ主任もジュゼッペさんを助け起こしながら叫ばれましたわ。

 

そこで、わたくし主任と一緒になってジュゼッペさんを脇から抱えましたわ。

 

そうして、洞窟の隅の方にあった岩の柱の陰に身を寄せましたの。

 

そこからラファエロ主任が顔を出して石像を見張っている間、わたくしジュゼッペさんを床に寝かせ、治療を再開いたしましたわ。

 

そうしたらジョバンニさんもそこに駆け込んで来られましたの。

 

「ジョバンニ、君は治療が終わり次第ルクレティアと逃げろ」

 

ラファエロ主任は剣を構えながらそう言っておられましたわ。

 

「お生憎さまね。出口に鉄格子かかってるわよ。気づかなかった?」

 

やっと平静さを取り戻したジョバンニさんがそうおっしゃったわ。

 

肩越しに石像のほうを見ると、さっきの眩ゆい光で目が眩んだのか、しばらく片手を目の辺りに当てておりましたわ。

 

「目くらましか?いい仕事だ、ジョバンニ」

 

ラファエロ主任が微笑んでそう仰いましたわ。でもジョバンニさんはこう答えられましたわ。

 

「ただの一時しのぎよこんなの。どうせまたこっちに来るわよ」

 

ジョバンニさんは喋ってるうちに、また悲観的になられたのか小さな声でこう呟かれましたわ。

 

「ああもうどうしてこんなプロジェクト引き受けちゃったのよ。あたしのバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ」

 

わたくしはそれを聞きながら治療を続けましたわ。するととうとうジュゼッペさんが意識を取り戻して微笑まれましたの。

 

「ワシは何の教養もない男ですが、お嬢様が一流の聖女であることはわかりますです。このご恩は一生忘れんです」

 

「礼は要りませんわ。わたくしの当然の務めですもの」

 

「スマン、二人とも。ほっこりとしたシーンを続けている時間はないんだ。ジュゼッペ、動けるか?」

 

ラファエロ主任がそう割って入ってこられたので、ジュゼッペさんが体を起こして答えられましたわ。

 

「ラファエロの旦那、ワシは諦めませんです。何度でもやってみるです」

 

すると、とうとう石像が視力を取り戻したみたいで、左右を見回し始めましたわ。

 

「ジュゼッペ。この岩の柱を奴の前に倒せるか?」

 

油断なく石像を見張りながらラファエロ主任が言われましたわ。

 

「ワシにとってはお安い御用です、旦那」

 

「よし。俺が囮になって奴の前に出る。そしたらギリギリまで引き付けてあいつの足元にこの柱を倒してくれ」

 

そう会話しているうちに、とうとう石像がこちらの居場所に気付いたみたいで、向きを変えて歩いてきたのですわ。

 

主任は柱の陰から飛び出して、大声を上げながら石像の注意を惹き始めましたわ。

 

「このノロマめ!貴様なんぞバラバラにしてオークどもの墓石にしてやるわ!」

 

すると石像は片足を少し引き摺りながらもどんどん主任に迫ってきましたわ。

 

そして石像が目の前まで来たとき、主任は叫ばれましたわ。

 

「今だジュゼッペ!」

 

ジュゼッペさんが唸り声を上げながら岩の柱に手をかけられましたわ。

 

主任は後ろに飛び退かれましたわ。そうしたら後を追おうとした石像のちょうど足元に岩の柱が倒れてきて、石像は躓いて転びましたの。

 

転んだといっても巨大な石像ですから、物凄い地響きが致しましたわ。

 

ラファエロ主任はここを先途とばかりに石像に殺到すると、その片目に思い切り剣をこじ入れましたわ。

 

すると何かガラス質の物が砕ける音がして、石像の目の部分から煙が上がりましたの。

 

でも、そこで石像が両手をついて身体を起こし始めましたから主任は慌てて飛び退かれましたわ。

 

そして石像がまた立ち上がって、主任を追い回し始めましたの。

 

でも、石像は片目を失ったせいか、主任が素早く後ろに回り込むと、戸惑った様子で立ち止まってしばらく辺りを見回すようになりましたわ。

 

するとジョバンニさんが叫びましたの。

 

「ラファエロ!そいつの頭頂部に受信装置があるわ!ぶっ壊すのよ!」

 

「頭頂部だと?」

 

主任は逃げ回りながら叫び返しましたわ。

 

「さっき倒れたとき見えたわ。魔力受信装置がついてるのよ!宝玉みたいなやつだからあんたにもすぐわかるわ!」

 

ジョバンニさんが仰いましたわ。

 

「ジュゼッペ!そこにもう一本岩の柱があるだろう!もう一度頼む!」

 

すると主任はそう叫ばれましたわ。

 

ジュゼッペさんはもう一本の岩の柱の後ろに回るとそれに両手をかけられましたわ。

 

「旦那!ワシはいつでもいいです!」

 

するとラファエロ主任は石像の前に立って挑発の言葉をかけながらおびき寄せられましたわ。

 

石像が主任を追って近くまで来たとき、ジュゼッペさんは唸り声を上げて柱を押し倒されましたわ。

 

ところが、柱が倒れた瞬間、石像はピタリと足を止めましたの。

 

多分、一度引っ掛かったから学習しましたのね。

 

そして足を上げて柱を乗り越えると再び王笏を振り上げて主任に襲い掛かりましたわ。

 

主任はほうほうの体で逃げ出されましたわ。その背後の床に石像が王笏を振り下ろして地響きがしましたわ。

 

「ラファエロ!こうなったら奥の手よ、こっちに来て頂戴!」

 

ジョバンニさんがそう仰ったの。

 

主任は全速力で走って石像の死角に回り込むと、私たちが隠れている物陰に戻って来られましたわ。

 

「何か手があるのか、ジョバンニ?」

 

息も荒いままで主任が尋ねるとジョバンニさんが答えられましたわ。

 

「いいこと、よくお聞きなさい。あたしの身体強化魔法で一分間だけならあんたの筋力を十倍くらいにできるわ。でも副作用もあるし、あんた自身コントロールできるかも微妙なところよ。でも方法はこれしかないわ。いい?」

 

それを聞いたラファエロ主任は頷かれましたわ。

 

「わかった。君を信頼する。術をかけてくれ」

 

「ラファエロの旦那、それならワシが囮になりますです。それにさっき倒した柱を投げつければあいつも少しはこたえるはずですです」

 

ジュゼッペさんもこう仰いましたわ。

 

作戦が決まって、ジョバンニさんが呪文を詠唱するとラファエロ主任の身体がみるみるバルクアップし始めましたわ。

 

でも、その間に石像がこっちに気づいて向きを変え、歩き始めましたわ。

 

同時にジュゼッペさんも物陰から飛び出して、さっき倒した岩の柱に手をかけて唸り声を上げながら持ち上げましたの。

 

「このポンコツの唐変木のデクの棒め!さっきはよくもワシを叩いてくれたな!」

 

温厚なジュゼッペさんとは思えないような罵声を上げながら、岩の柱を持ち上げて石像に向かって投げつけましたの。

 

すると岩の柱がぶち当たって、石像が大きくよろけましたわ。

 

石像は後ろに何歩か後ずさったあと、背後の壁にもたれ掛かる形になりましたの。

 

「止めだあああああああああああ!」

 

ラファエロ主任はそう叫びながら石像に突進しましたわ。

 

石像は体勢を立て直すと、また王笏を振り上げましたわ。

 

でも、ジョバンニさんの魔法の効果はてきめんでしたの。

 

なにしろ、主任が地面を蹴って跳躍するとそれだけで高さ十五メートルくらいに達していましたから。

 

主任はそうして石像の頭に取り付くと、その頭頂部に剣を思い切り振り下ろされましたわ。

 

主任が何度も何度も剣を振り下ろされているうちに、ガラス質の物が砕け散る音がして、石像の全身に小さな稲妻みたいなものが走り始めましたわ。

 

そうしてとうとう石像は壁にもたれて座り込み、動かなくなりましたの。

 

でも、主任は石像の頭の上で立ち上がったと思ったら、全身の力が抜けたように崩れ落ちて、そのまま床に落下してしまいましたの。

 

わたくし、慌てて主任のところに駆け寄りましたわ。

 

ジョバンニさんもやってきて仰いましたわ。

 

「ルクレティアちゃん、早く治してやって。多分全身の筋断裂よ。これメッチャクチャ痛いはずよ」

 

わたくし、頷いてすぐに治療を開始いたしましたの。

 

治療が終わると、ラファエロ主任が目を開けられましたわ。

 

「ありがとう...ルクレティア嬢」

 

わたくし微笑んで申し上げましたわ。

 

「ラファエロさん、わたくしの助言にも関わらず石像を壊してしまったのは不注意でしたわね。でもこうなったら致し方ありませんわ。訴訟を受けたらわたくしが弁護人を務めますわ」

 

そうしたらラファエロ主任、ゲッソリとした顔をなさいましたわ。

 

治療したばかりなのにどうしてあんなに疲れたお顔をされていたのかは、結局わからずじまいでしたわ。




ワシは難しいことは分からんですが、4,000文字以内にまとめるのは難しいですです。やはり「4,000文字ちょっと」を目標にするです。

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