100万のウルサス軍に対抗してみた。by.マンネルヘイム   作:チト 熟練見張員

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遅々として進まない執筆。すみません。
新しい仲間が、マンネルヘイムに加わるようですよ


第五話 将軍、再会を果たす

「……ぅん…」

 

「!!」

 

「村長さん!」

 

「村長さんが起きたぞ!!」

 

 

夜、一軒の家に多くの村人達が集まっていた。

突然村へやって来た監視隊、連行されていく住人、そしてそれを庇い監視隊に斬られた村長、その後の惨劇。

 

平和な村に訪れた大事件は、村人達を混乱させた。そして、それを収められる村長も倒れてしまった。村人達は仕事も碌に手がつかず、不安に駆られていた。

 

 

「……私は、どれほど寝ていた?」

 

「半日です。応急処置はしましたが、傷が深く。……あまり動かないでください。」

 

「……監視隊は?」

 

「全て村長が皆殺しに」

 

「……そうか。」

 

「………村長」

 

「もう外も暗い。皆も一度、家に帰り家族を安心させてやってくれ…私は大丈夫だから。」

 

「……分かりました。」

 

 

部屋に詰めていた村人達は、村長の容態を心配そうに見つめながら、部屋からすごすごと去っていく。

 

 

「皆、ありがとう。また明日、改めて話し合おう。」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「………。」

 

(………。)

 

「………。」

 

(………はい。)

 

「はい、じゃないが?」

 

 

マンネルヘイムが眠りにつくと、意識を失う前に居た空間に再び立っていた。

 

 

「貴様が言った通り体を任せたら、偉大なるウルサス帝国の監視隊(絶対手を出したら後が怖い団体)を皆殺しにしてたんだが?」

 

(でも助かったであろう?)

 

「助かった。助かったが、流石にやり過ぎではないか!!」

 

(どうどう)

 

「私は馬ではない!」

 

(元近衛騎兵の貴公への、粋なジョークというものだ)

 

「やかましいわ!!」

 

 

体を預けてから意識が戻るまでの記憶は、補填されていなかった。マンネルヘイムからすれば、監視隊に斬られたと思ったら気付けば相手が皆殺しにされてた、という意味不明な状況である。というか、普通に恐怖体験だった。

 

 

(しかしだな?あのままでは、貴公は死んでいたし、あの男も処刑されてたし、なんならあの村は焼き討ちに遭っていたぞ?)

 

 

焼き討ちは異端審問のスタンダード。はっきりわかんだね。

マンネルヘイムは遠い目をした。

 

 

「で?私が彼らを皆殺しにしたことで状況はどう変わりましたか?」

 

(焼き討ちに遭うのが1週間遅くなったぞ☆)

 

「問題を先延ばしにしただけではないか!!」

 

 

マンネルヘイムは頭を抱えた。

村を守るべき立場の村長が、果たしてこんなに行き当たりばってりでいのだろうか?

今の所、問題の解決どころか寧ろより深刻化させているだけである。

 

 

「そもそもの話だ。貴様は一体何者なのだ!私の頭の中から出ていってくれ!」

 

(朕が誰とな?そうだな、あえて言うならフィンランドの王だ)

 

ドンッ!!

 

…………

………

……

 

 

「ヘルシンキ大学病院精神科はあちらです。」

 

 

マンネルヘイムは、目の前の霊体を養豚場の豚を見る様な目で見た。

いきなり存在しない自国の王を騙り出したら、「何言ってんだコイツ」って反応になる。

さらに言えば、マンネルヘイムは自他ともに認める愛国主義者であった。笑顔だが、額には血管が湧き出ている。

 

 

(朕を異常者扱いするな無礼者)

 

「王よ生憎我が祖国(フィンランド)は共和制です」

 

(歴史の瞬間に立ち会った貴公ならば、皆まで言わずとも理解できると期待していたのだがな……私の見当違いで合ったようだ。)

 

「私が…立ち会った…?………ッ!!まさか」

 

 

この時、マンネルヘイムの脳内に一つの可能性を思いつく。

だがそれはあまりにも荒唐無稽な考え。

だがしかし、万が一という事もある。

 

『フィンランド共和国』

 

それは、静寂と雪に包まれた、もう帰れるハズなどない愛すべき我が祖国。共和制なので当然王など居ない。だが、これは正確な表現ではない。歴史を辿るのならば、確かに近代のフィンランドにも、『王』と呼ぶべき人が居たと言えるだろう。

 

 

「まさかお前…いや、貴方様はーーーーー」

 

(AXAXAX!貴公もようやく気づいたようだな。そう、何を隠そう朕こそがーーーーー)

 

 

フィンランド共和国がまだ共和国ではなかった時代。

フィンランド大公国と呼ばれる小さな属国が、ロシアと同一の君主を仰いでいた時代ならば、あるいはロシア革命に際し赤軍を駆逐して擁立された王は、たとえそれが遥かに短い期間しか在任していなかったとしても、それがドイツの内政干渉の結果誕生した王だったとしても、マンネルヘイムの王であったとも言えよう。彼こそはーーーー

 

 

 

 

 

 

「フィンランド王、フリードリヒ・カール・フォン・ヘッセン殿下!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(違う)

 

「え」

 

(全然違う……誰じゃヘッセンって、ドイツ人か?)

 

 

カーレルⅠ世ではなかった。

だが当たらずとも遠からず、ヘッセン王はドイツ帝国国王ヴィルヘルムⅡ世(ビスマルク追放おじ)の義弟だった。

 

マンネルヘイムの腑抜けた声が、光が差し込み始めた空間に響く。

目の前の男のボヤけていた輪郭が徐々に明瞭となっていき、一人の人間の姿を映し出した。

 

 

『ふんっ!改め、朕こそヨーロッパにおける最も古い帝国の神聖にして不可侵なる皇帝にして、全ロシアのインペラートル、そしてフィンランド大公国同君連合の太公ーーーー』

 

 

 

『ニコライ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフである』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「グスタフ?入るぞ…」

 

「……んぅ……う“ぅ……」

 

「おっと、まだ寝ておる。せっかくスープが出来上がったのじゃが…」

 

 

おじいさんが部屋に入ると、マンネルヘイムはベッドで寝ていた。

だがその顔は苦しそうで、何かに魘されているようだった。

おじいさんは手に持っていたタライを椅子の上に置き、マンネルヘイムが寝るベッドの側に腰をかけ、顔にかかっていたピンクの髪を優しく払った。

 

 

「こんなに辛そうな顔を……悪夢に魘されて……」

 

 

おじいさんはマンネルヘイムが監視隊に斬られたと聞いたとき、自らを責めた。

おじいさんにとってマンネルヘイムは、急にできた可愛い孫であった。外見に反して大人びていたが、責任感は強く、されど義理には固かった。監視隊に矢面になって反発したのは、村長としての役目を果たしたからだろう。

 

彼女自身、余所者である事を心のどこかで気にしていたのだろうか、マンネルヘイムは村の仕事には積極的に参加していた。それは、側から見れば自分が村にいてもいい理由を作るために、必死になっているようにも見えた。無論、村人たちはマンネルヘイムの事を余所者だなんて思ってはいなかった。最初こそ、所属がサルカズだったという事もあり、村の一部からは疑惑の目を向けられていた。だが、それはマンネルヘイムの人柄の良さに触れすぐに杞憂だったと知るところになった。

 

『村に上下水道を引くぞ!』

 

なんて言い出した日には、いよいよ村の皆で集まって会議になった。そろそろ誰かなんとかしてあげないと、そのうち宮殿でも建てそうな勢いだったから。マンネルヘイムを村長にしようと思いついたのは、そんな時だった。村長という立場があれば、マンネルヘイムは村に居てもいいと自分を認めるのでは?という声が上がった。自分としても、そろそろ村長という職を辞したいとは考えていた頃合いだった。村の皆の命を背負うという重責は、老いてきた身には重過ぎると感じていた。

 

だから、自分はゴーサインを出した。

マンネルヘイムを村長に推そうと。

 

誰も反発する者はいなかった。

あの娘になら村を任せてもいいと、皆不思議とそう思えた。

 

 

 

だからーーー

 

この子がこんな重症を負ったのもーーー

 

村長としての責任を果たさねばならなかったのもーーー

 

8人の監視隊に手を掛けざる負えなかったのもーーー

 

全て、私のエゴが招いたーーー

 

 

「んぅ……こ…う……てい……」

 

「こうてい?どんな夢を」

 

「皇帝を…殺す…」

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

「ん、皇帝を誅す」

 

『やめないか』

 

 

ニコライ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフ

 

そう、あの極東で斬りつけられたロシア皇太子。

極東のイエローモンキー如きに遅れをとり、世界最強のバルチック艦隊をみすみす沈めた皇帝。

悲劇の皇女アナアスタシアのお父さん。

赤化革命で最初に滅んだ王様。

ラスプーチンの操り人形

 

などなど愛称*1は多々あれど、一番馴染み深い呼び名はこれであろう。

 

 

ロシア皇帝(ツァーリ)ニコライⅡ世

 

 

 

 

「で、なぜ(せん)の時代の敗北者が私の頭の中に?」

 

『ロシア帝国はまだ負けておりませぬ。』

 

「勝ったのはソ連なんだなこれが。」

 

 

悲しいかな、ソ連よりロシア帝国の方がマシだったという事実。

やっぱ全部ドイツが悪いよドイツが。

 

 

『我が忠実なる近衛騎兵マンネルヘイムよ、偉大なるロシア帝国を再建するのだ』

 

「断る。」

 

 

マンネルヘイムは即答した。

マンネルヘイムは、過去ロシア軍に在籍しており、なんなら近衛騎兵とかいうエリートだったのである。その後のロシア(ソ連)とフィンランドの関係を考えれば、マンネルヘイム的にロシア軍人時代は掘り返されたくない黒歴史も同然だった。

 

 

「皇帝陛下……いや、ニコライ。なぜ私をココ(テラの大地)につれてきた。」

 

『貴公を連れてきたのは、朕の意図するところではない。朕はただ、哀れな貴公をサポートするためにココにいるのだ。』

 

「貴方は一体…どこまで知っているのですか?」

 

『知っていることしか知らん。朕が知っているのは、貴公がこの世界に呼び出されるにあたり獲得した権能のみだ。』

 

「権能…?」

 

『しかり。目下最大の問題を作ったのも、貴公の権能の一つの所為。』

 

「オート戦闘とかいう、ふざけた名前のアレか?」

 

『そう、アレだ。』

 

「あれかぁ…」

 

 

オート戦闘はマンネルヘイムの新たな頭痛の種になった。

そもそもコレが暴走したせいで村は滅亡の危機になっているというのに、起源も分からないときた。絶対に厄ネタである。

 

 

『オート戦闘だけではないぞ?他にも貴公は権能を獲得している。』

 

「まだ何かあるんですか?」

 

『今は言えんが…』

 

「言ってくださいよ!?」

 

『今は言えんが、おいおい貴公に教えてやろう。その時まで、精々努力するがいい。帝国再興をな』

 

「しないって言ってるだろ!?」

 

 

ニコライはそう言うと、闇に消えていった。

それに合わせてマンネルヘイムも意識が朦朧となっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『安心して、貴女には私がついているわ』

 

 

視界が暗くなり眠りに堕ちる時、誰かの声が聞こえた様な気がした。

マンネルヘイムの意識はここで途切れた。

 

*1
ほぼ蔑称




<登場人物紹介>


ロマノフさん

マンネルヘイムの精神世界に居座る、ナビ妖精みたいな奴
前は皇帝をやっていたらしい。マンネルヘイムには好かれてると思っている
共産主義者ではない。


グスタフ

実は村のみんなからすごく可愛がられてたことが判明したサルカズの少女(?)
賢い。本名はカール……なんだって?
あとなんかめっちゃ強いことが判明した
共産主義者ではない。

小説の読者層を調査したいのですが…

  • プリースティスに脅されて…
  • 一般通過ミリヲタor歴史ヲタ
  • ドクターだし歴史も好き
  • チャリで来た(未プレイ、未履修)
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