100万のウルサス軍に対抗してみた。by.マンネルヘイム   作:チト 熟練見張員

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もはや公然の事実と化したオート戦闘さんの正体で草。
でも天災で草も生えねぇわ。
………あれ?変だな…あそこだけ夏雪草が咲いてるぞ…?
プリースティス先生!これはいったい…?

「ただの雑草プリ。引っこ抜いておくプリ。」


第六話 将軍、決す

「村を放棄するべきだ。」

 

「ッ……」

 

 

最初に口に出したのは、前村長のお爺さんだった。そしてそれは、口に出さずともこの場にいる誰もがハナから確信していながらも、口に出すには躊躇われた提案だった。

 

 

時は遡り、監視隊が村にやって来た日より数え3日目の朝。マンネルヘイムの召集により、村の代表者たちが村長の家へと集まっていた。

議題は、通達されなかったが皆察しがついていた。村が監視隊に目を付けられた件と、村長がそのまま殺っちゃった件についてであった。

 

 

「………自首する」

 

「「「却下」」」

 

 

開口一番に放たれたマンネルヘイムの決断は、全会一致で否決された。これは村の意地であった。

 

 

「だが私がこの村にいる限り、この村は監視隊にーーー」

 

「たとえ村長が自首したとて、遅かれ早かれ監視隊はこの村を焼きますよ。」

 

「最近平和だったので忘れてましたが、そういえばこの世界ってクソでした。」

 

「……。」

 

「なら私がーーー」

 

「レガソフ先生もダメですからね?」

 

「でも私は感染者d」

 

「ウチの村長なんて、流れ者のサルカズですよ?今更では?」

 

「いや、ソレハソノ…」モニョモニョ

 

 

哀れ、開幕早々村で一番頭がいい人(マンネルヘイム)2番目にいい人(レガソフ)は沈黙した。2人は顔を見合わせ、お互い居心地が悪そうにしながら席に深く座り直した。

 

だが、他に何か案があるかというとそういう事も無く、あーでもないこーでもないと、ただ時間が過ぎていった。

 

そして、話は冒頭に戻る。

 

 

 

「村を放棄…とおっしゃいますが、具体的にはどのようにするお考えで?」

 

 

村の男の1人が、おずおずと手を挙げて訊ねる。

 

 

「分からん。」

 

「分からんって……」

 

 

皆、重苦しい空気で押し黙る。

そもそもの話、この会議の終着点など最初から決まっていた。

 

“村を捨て、どこかへ逃げる”

 

それが、この村にとれる最も現実的な手段だった。

皆それは分かっている、だが容易に口に出すことは憚られた。

 

先祖代々の村を捨てるのか?

引越し先で暮らしていけるのか?

食べ物は?移動手段は?

子供達はついて来れるのか?

そもそも、移住とは簡単に言うがそんな場所見つかるのか?

 

簡単に口に出せる訳が無い。

今この場にいる者らの如何様によって、この村全員の生き死にが架かっているのだ。村を出て新天地へ、何も考えずにそう言えたのならどんなに楽だろうか。

 

お爺さんは、自らその役を買って出た。

 

本来、こういう事は村長が提言するべきだろう。

だがマンネルヘイムは、この村の生まれではない。

もはや多くの人間は気にしてはいないものの、その生い立ちが“この村を捨てる”という選択を容易にしている、と思う人間が出てもおかしくない。それに、仕方なかったにせよ今回の事件の中心であるマンネルヘイムに“私のために村を捨てて”とは言いずらいだろう…と言うお爺さんの気遣いもあった。

 

 

「仮に村を捨てるとしましょう。幸い、監視隊の食糧徴発は免れました。村の食糧をかき集めれば、1年は保つでしょう。ですが、その後は?季節はもうじき冬です。道中の村から食糧を分けて貰えるとも思えません。まして、我が村は……お気を悪くされたら申し訳ありませんが、感染者やサルカズ人を抱えています。希望は薄かと」

 

「我々農協としては、季節も懸念事項ですねぇ。新天地で農業を始めるなら、最低でも3月までには腰を添えたいですね。初期農業なら主食になって荒地でも育つジャガイモがベストですが、種まきの季節は4月までです。それまでに畑をこさえなければ、食料が尽きて餓死ですね。」

 

「どこへ向かって旅をするかというのも問題ですよ。南へ行けば行くほど監視隊は増えていきますからね。」

 

 

お爺さんの提言で、流れはやっと進み出した。

だが、それにしたって問題は山積みだ。

先の見えない道の旅は、歩み出すのに心配事は潰えない。

そして、問題はこれらの展望だけではない。

 

 

「なんでも良いですが、早くこの村を離れないと監視隊来ますよ?」

 

 

タイムリミットは刻一刻と迫っている。

少し前まで都市にいたレガソフの話では、恐らく今頃未帰還の監視隊に本部が不審がる頃合い。そこから捜索隊が組まれ、この村に来るまでおよそ1週間。身支度を済ませ、降雪により行き先を悟られないようにする為にも、今日から出立に向け本格的に準備を始めたい、というのがこの場にいる皆の総意だった。

 

 

「……地図を」

 

 

マンネルヘイムの指示で、筋骨隆々の村男たち*1が机と地図を隣の部屋から持ってくる。

長たちは囲んで、その地図を覗き込んだ。

 

 

「西が東……いっそ東の国境を目指し、このまま極東へと逃げるのはどうでしょう?」

 

 

若い男が地図を指差し、村の位置から国境と極東への道をなぞっていく。

が、それに老年の鉱夫が待ったを掛ける。

 

 

「駄目だ。国境にはウルサスの大陸艦隊がいる。大所帯で動いているのが見つかればお終いだ。」

 

 

鉱夫はかつて、極東方面で働いていたことがあった。

ウルサスは数年前に極東へと侵攻を試みたが、頑強な抵抗を前に挫折。その失敗は国内へと波及し、ウルサスは新体制派と旧体制派による熾烈な内戦へと発展するにまでに至った。その為、ウルサスは強大な艦隊戦力を以て極東へ睨みを利かせていたのだった。

 

 

「意表をついた逃げる道は無いものか…」

 

 

マンネルヘイムがボソっと零す。

言い出しっぺのお爺さんは、国際情勢は詳しくないのでずっと黙ってた。

 

 

「西へ向かい、インフィ氷原の下を通ってサーミに出るというのは?」

 

 

今度は牛飼いの逞しい女が、村からサーミへとインファ氷原を周ってなぞる。

が、今度は猟友会のメンバーらが反発した。

 

「駄目だ駄目だ!雪原との境にはウルサスの精鋭軍*2が張っている筈だ。そこを通るのはもってのほか!」

 

「だいたい、ここからサーミまで徒歩で何ヶ月かかると思ってんだよ…凍っちまうわ。」

 

「あの辺りは熊も多い。」

 

 

「しかし、そうなりますと……」

 

 

西へと行っても東へ行っても、手詰まりの状態。

さすが偉大なるウルサスの軍隊。伊達に戦争だけで食い扶持を繋いできただけの規模はあった。ウルサス軍の包囲網は、鉄壁だった。

 

 

「………。」

 

「逃げ道など…どこにも無いではないか…ッッ!!」

 

 

鉱夫が、拳を振り落として叫んだ。

実際、この場にいる者達の総意だった。

皆口を閉じ、再び重苦しい雰囲気が立ち込める。

 

そんな中で、お爺さんはとある物をこしらえていた。

それに気づいた向かいの村人の1人が、疑問符を浮かべる。

 

 

「……?お爺さん、一体何を…」

 

「クジじゃよ」

 

 

お爺さんは、2枚の紙切れを取り出した。

 

 

「……赤い印が東、無ければ西…」

 

「………まさか」

 

「ん、引たまえ」

 

「えェッ?!俺がですかぁ!?」

 

 

お爺さんは隣に座っているガタイの良い村男に、捻られた紙切れを差し出す。

くじ引き…つまり神頼みの運任せだった。

 

 

「このような大事な事を…クジなどで決めて良いのでしょうか…?」

 

「じゃが、この中で西か東かの決断の責任を取れる者はおるか?」

 

「それは…そうですが…」

 

 

運任せなら、いっそ誰も責任を取らずに済む。

どうせ危険度はフィフティーフィフティーなのだ。

じゃぁいっそ、運に身を委ねても良いのではなかろうか…

 

 

「あっ、でも最近おれツイてなかったんで…」

 

「よし、やっぱお前は引くな。」

 

「……はぁ、この中で最近運が良かった者は?」

 

「「……。」」

 

 

沈黙。

 

 

「あ、グスタフさんが一番運がよかったのでは?」

 

「……私がか?」

 

「あの怪我で生き残ったんです。十分、豪運かと」

 

「ん、村長が責任もって引くべき」

 

「……まぁ……それなら私が…」

 

 

 

マンネルヘイムは席を立ち、お爺さんの前に移動する。

お爺さんとマンネルヘイムの目が合い、お爺さんは力強く握った2切れの紙屑を、マンネルヘイムの目の前に差し出す。

 

 

「………では」

 

 

そう言い、マンネルヘイムの手が紙切れに伸びる。

が、掴み取る寸前で動きが止まる。

 

 

「……。」

 

 

マンネルヘイムの手が、どちらを掴もうかと右往左往する。

村人達は、その様子を固唾を飲んで見守っていた。

 

 

(西か東か…何、そこまで重要な問題ではない…どうせ修羅の道は変わらないのだから。ならば、ここは一思いに引いてしまった方が楽というものだ。)

 

(なに、状況は1930年代と同じだ。言うなれば、ドイツと組むかソ連と組むか、その二択に過ぎない。はっはっは!どうせ戦争になるのだから、どっちを選んでも同じだ。どっちもくそ!くそくそくそ!!)

 

Perkele ! ! ! (くそぉ!!!)なんでッ…また繰り返すのか…究極の二択を…私にッ!!何が虚しくてッ…こんな重大な決断をッ…!!ッ決断を2度もせなきゃならんのだ!?西も東もくそじゃねぇか!!くそ!!西も東もくそなら、北でずっと籠もらせてくれ!!ほっといてくれよ!!お前達のことだぞ!!クソッタレのナ*スに、クソッタレのソ連が!!)

 

Perkele(くそ)

 

Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)Perkele(くそ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、そん…」

 

Perkele!!!!!!(*未知の言語スラング*)

 

「ッ?!」

 

 

マンネルヘイムはいきなりキレた。

お爺さんの手に握られていたクジを2本ともひったくり、振りかぶって部屋に隅にあった暖炉にブン投げた。

赤い印のついた紙切れも、そうでない紙切れも、一瞬のうちに炭に果てた。

 

 

「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」

 

 

肩で息をするマンネルヘイムに、皆が顔を合わせる。

突然の行動に、誰もすぐには言葉が出なかった。

 

 

「……村長…さん?」

 

 

1分ほど待って、ようやく村人の1人がおずおずと尋ねた。

 

 

「あの、クジの方は……」

 

 

背を向け暖炉の火を見つめているマンネルヘイムは、振り返らずに応える。

 

 

「……決めた。決めたぞ私は。」

 

「な、何を…」

 

「まさか、決めたのかっ」

 

「どっちだ!?西か…それとも東か…ッ!!」

 

 

マンネルヘイムの決断に、皆の注目が集まる。

だがマンネルヘイムの次の言葉に、みな動揺した。

 

 

「我々は、どっちにも行かん。」

 

 

 

 

「……は?」

 

「それは一体、どういう」

 

 

予想外の回答に、住人達は思わず顔を見合わせた。

 

 

「西も東も行かないという事は…まさか南に?」

 

「南にも行かん」

 

「ならば、一体……」

 

 

マンネルヘイムはスッと立ち上がり、住人らのほうへ振り返った。

住人達は、マンネルヘイムの顔を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我らはこれより、北へ向かう。」

 

 

その顔は、悪い顔(歴戦の風貌)をしていた。

*1
農家の長男たち

*2
国土主張おじさん




余談ですがこの小説、元々は『北ウルサスの白い悪魔』という名前で出す予定でした。
内容も今とは全然違っていて、主人公はフロストノヴァの姉(inシモヘイヘ)という設定でした。作者はレユニオン大好きなのでフロストノヴァもアリーナも死にませんが、それはそれとして作者は曇らせ好きなんですよね………よく分かりませんが、きっとシモヘイヘは長女としての役目をまっとうする事でしょう。うん、あとは察してください。

小説の読者層を調査したいのですが…

  • プリースティスに脅されて…
  • 一般通過ミリヲタor歴史ヲタ
  • ドクターだし歴史も好き
  • チャリで来た(未プレイ、未履修)
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