「私の名前はレヴィア!よろしくねテレイナ!」
レヴィアの言葉にテレイナは驚いたような表情を浮かべた。その様子にレヴィアは不思議そうに尋ねた。
「どうしてそんなに驚いてるの?私の格好変だった?」
「い、いえ…格好は大変美しいものですが…失礼ですがレヴィア様はどのようなご身分なのですか?」
「うん、そうだよ。それと、そんなに緊張しなくてもいいよ。私は君が思ってるような偉い人じゃないよ」
「は、はぁ」
未だに信じられないといった様子のテイレナ。しかしレヴィアはそんなものお構いなく彼女の隣にドサリと勢いよく座り込んだ。
「ねぇ、これからテレイナは国の貴族なの?公爵って言ったけど偉いんだよね?どんな生活してるの?食事とかはやっぱり美味しいの?本とかどんなのがあるの?」
いきなり隣に座り、その後すぐにきたレヴィアの怒涛の質問攻めにテレイナは何を言えばいいか分からない様子だった。それに気づいたレヴィアは質問攻めを辞め、今この状況をどうにかする方針に移した。
「あ!ごめんね、私だけ話しちゃって。先ずはこの状況をどうにかしないとね。この近くに街とかはあるの?」
「……馬車で数刻程の場所にレロンナという街があります。本日はそこに宿泊する予定でして」
「なるほど、なら先ずはそのレロンナって街に行けばいいんだね!道なりに沿っていけばいいんだよね!」
「え、ええ…」
レヴィアは街の目的地が分かったので、早速移動の準備を始めようとした。
「それじゃあ最初は君達だね…」
レヴィアは盗賊に殺された二頭の馬の魔物を埋葬する。
「次はきっと今より、良くなると思うから。だから次が来るまでお休み」
埋葬した馬に優しく語りかけた後、レヴィアは立ち上がり、次の作業へと移る。
「さて、一番大事なことは終わったけど……これ、どうしようか?」
そう言って、馬車の周りで伸びている盗賊達を見やる。
(本来なら然るべき裁きを受けるべきなのだろうけど、ここら辺の法律とか知らな…あ!)
「ねぇ、テレイナ!この盗賊達どうする?街まで持って行ったら罰してくれるんだよね?」
馬車の扉を開け、レヴィアの様子を伺っていたテレイナに話しかけた。彼は貴族であるテレイナは法律にも詳しいだろうと判断したのだ。
「確かにレヴィアさんのいう通りですが…その人数を運となると、かなり難しいのではないでしょうか?」
テレイナの言葉通り、盗賊数は十数人おり、テレイナが乗っている馬車にはまず乗り切れない人数だ。盗賊達を歩かせることはできるが、十分な拘束具を持っていないため、レヴィアがいたとしても隙を狙って何か起こすかもしれない。しかし彼女のレヴィアは最初の言葉を聞いて、どうするか決めていた。
「確かにこのままじゃ運ぶのは難しいけど、私の魔法を使えば運べるよ!」
彼はそう言うと、自身の前に三つの魔法陣を展開する。すると、その魔法陣から土でできた人型の大きなゴーレムが出てきた。同じものをレヴィアは三体創り出し、一体に馬車を運搬させ、残りの二体に盗賊を持ち運ぶように命令した。
「3位層の魔法……しかも、詠唱もなく三体のゴーレムを召喚するなんて。あれなら盗賊達も退けたのも納得がいくけど。一体あの子何者なの……」
馬車の扉を開けてレヴィアの様子を眺めながら、テレイナは更に彼の正体について疑惑が膨らむようだった。そんなことを気にせずレヴィアは明るい声で彼女に話しかけた。
「これで、移動できるよ!本来より遅くなると思うけど、陽が落ちる前には着くと思うよ!」
「…い、色々とありがとうございます」
そうしてレヴィアは馬車に乗り込み、テレイナの隣に座ると、馬車が動き出した。そしてレヴィアは早速テレイナに話しかけた。
「それで、テレイナは目的地はレロンナっていう街なの?」
「レロンナはただの中継地点です。レロンナから数日かけて、ドルシード魔法学園にいく予定でした」
「魔法学園…?魔法でも勉強するの?」
「ええ、魔法を学ぶために入学する予定でした。しかし、付き添いの護衛も居なくなった今、その予定も変更せざるおえないようですが」
そう言うテレイナの表情は少し悲しそうだった。
「魔法をそんなに学びたいなら私が教えてあげようか?多分そこの学園よりも上手く教えることができると思うから!」
「ふふ、ありがたい提案です。しかし、魔法学園に入学する目的は、ただ魔法を学ぶ為だけじゃないのです。ドルシードには、毎年プラクライス王国でも権力を持った貴族や商人などの御子息達が入学してきます。それ故に、学園では魔法を学ぶ以上に、権力争いや有力者との繋がりを持つなどの政治的な目的が優先されるのです」
「へぇ〜たしかテレイナは公爵家だから、魔法よりもそっちの方が大事だったんだね。大人になってないのに大変だね」
レヴィアはこの世界での一般常識はある程度知っており、法律や経済などのは理解できているが、人間同士の権力争いについてはあまり理解できていないのである。
「私の話はこれぐらいでいいでしょう。レヴィアさんの事について教えてもらってもいいですか?」
「私ばっかり質問してたからね!私に答えれることは答えてあげるよ!」
レヴィアはどんとこいと、胸を辺りをドン!と叩いた。
「でしたら、先ずはあの盗賊達はどのようにして倒したのですか?護衛は逃げていたはずですし、魔法も強力な魔吸石を持っていたはずでしたから…どうしたのか気になりまして」
「あ〜確かにこれ持って『魔法は使えないぜ!』って私に自慢してたね。だから、魔法は使わずに殴って気絶させたよ」
レヴィアはいつの間にか盗賊から奪っていた魔吸石を、服から取り出してさも当然かのように言った。
「……え?今、なんと?」
「だから、皆殴って気絶させたよ」
「いや、確か私の馬車の周りには十数人の盗賊がいたはずですが……それを全員?」
「うん、3人ぐらい魔法で倒したけど、残りは全員殴って気絶させたよ」
「……………」
もはや言葉が出ないといった態度をとっているテレイナを見て、流石のレヴィアも自身がしたことがおかしい事だったと理解する。
「あ、いや…これは…ほら!私蹴りも使ってたから!流石にパンチだけじゃ倒してないよ!」
「フフフ、そうでしたか。ですがこの事は私以外には言わない方がいいですよ」
焦ったように変な言い訳をするレヴィアを見て、テレイナは笑みを浮かべながら楽しそうにしていた。
「うん!そうするよ!」
(うーん、まだまだ普通というのが分かってないね。今後はもっと気をつけないと)
そうしてレヴィアは1人納得して気合を入れ直していた。そんなレヴィアの様子を見ながらテレイナは口を開いた。
「楽しそうな所悪いのですが、もう一つ伺ってもよろしいかしら?」
「うん!いいよ!」
「レヴィアさんは、どうして1人であの場に居たのですか?その様子ですとレロンナを知らないみたいでしたし。それ以外の街ですと、ここからだとかなり距離があるはずですが…何か事情でもあったのですか?」
テレイナは何故あの場にレヴィアが居たのかを質問した。そして、ついでにレヴィアが何を目的として行動しているのかも尋ねた。
「うーん…あそこに居たのは偶々だしなぁ。あ!だけど何で1人かはちゃんと答えられるよ!私はねこの世界を旅して、色々なことを経験したいの!」
「旅…ですか。私もこのような身でなければ、ご一緒させて貰いたかったですね……すいません、この事は忘れてください。レロンナに着きましたら、そこでお別れですね。ノックス家長女としてレヴィアさんにはこれ以上迷惑をかけることはできません」
「そっか…テレイナはどうするの?魔法学園にどうやって行くの?」
「まずはお父様に、連絡をしませんとね。そこから魔法学園に行く準備をするとなると、一ヶ月ほどかかりますかね。その頃には入学試験はとうの昔に終わってますね」
「入学試験が終わるとまずいの?」
「ええ、先程政治の目的があるとは言いましたが、学園は原則国家権力が立ち入れない場所なのです。それ故に入学する際の規則も厳しく、特に入学試験は決められた日時に来なければ、たとえドルシード魔法学園のある、この国…プラクライス王国の王子であっても入学する事はできません。如何なる不正も許さないだとか……はぁ……まぁ例外はあるようですが、今の私には使えない手段なので」
表情にはあまり出てないが、レヴィアは彼女の悲しさと悔しさが伝わってきた。
「だったら、私のゴーレムを…」
レヴィアの言葉にテレイナは首を横に振った
「ありがたいお言葉ですが…ノックス家の長女として、あなたにまともなお礼もできていないのにこれ以上迷惑をかけることはできません。それにもし、私を助けたとなるとあなたを貴族の醜い争いに巻き込むかもしれません」
テレイナの意思は堅いようでレヴィアの助けを受け入れようとはしなかった。
(初めての友達だし…折角なら助けてあげたいけど。この様子だとダメそうだなぁ……どうやら貴族は基本的に自分の身内以外に迷惑をかけたらダメみたいだね。身内以外………はっ!!)
「ねぇ!テレイナはノックス家以外には迷惑をかけたくないんだよね!」
「え、ええ…」
「だったら簡単な話じゃん!私がテレイナの家の従者になればいいじゃん!家族になるとかだと難しいけど、従者は雇うだけでよかったと思うから!どう!いいでしょ!?」
レヴィアの言葉にテレイナは今日一番の驚愕の表情を浮かべていた。しばらく内容が飲み込めなかったのか、数秒彼女の時間が止まった。そしてしばらくしてテレイナは口を開いた。
「え…それは……そうですが……先程述べように、私に関わるとレヴィアさんにも危険が…」
「ふふん!私はレヴィアが思っているよりも強いから大丈夫!」
「あ、いや、レヴィアさんが強いのは知ってますが。そういったことで……」
「それに!私、従者とか憧れてたんだ!誰かの下について働いてみるってこととか、一度経験してみたかったんだよね!このチャンス逃したら次ないと思うし…だから、いいでしょ!いいよね!?」
レヴィアはテレイナの言葉を遮り、ガバリと彼女の両肩を持って迫り必死に説得した。確かにテレイナを助ける手段として従者になることを提示したが、結局はレヴィア自身が従者をやってみたいので、このチャンスを逃すまいと鬼気迫るほどの説得となった。
「はぁ…………分かりました。レヴィアさん、あなたをノックス家長女、ノックス=テレイナの従者とします」
「本当に?やったー!!初めての従者だぁ!私初めての従者になったぞ!!」
テレイナの言葉に、レヴィアはとても嬉しそうにはしゃいでいた。その様子を見ていたテレイナは先ほどまでの暗い表情はなくなり、自然と笑みが溢れていた。
この日レヴィアはテレイナの従者となった。
※設定
・レヴィアは観測者として一度テレイナを見捨てようとしましたが、普通に助けたいと思ってました。そして今回、レヴィアはこの世界で初めてまともな会話をしたテレイナを若干身内判定しているので、助ける事になんの躊躇もありませんでした。
次はテレイナ視点の話です。
それと二週間時間がほしいと言って一日二日で投稿してますが、いつこのペースが崩れるか分からないので、今回も二週間は待ってて欲しいです。