ダンジョンを踏破した人間の命令を聞かなきゃいけない人外美少女に改造されたTS主人公が、自分の言うこと聞くお人好しを最強にしてダンジョン攻略させる話が書きたかった。

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TS改造メインヒロイン(自称)は最強無双チート主人公を作りたい

 太平洋に浮かぶ、とある島。

 そこに口を開けた【ダンジョン】は、発見からわずか数年で世界中の人間を狂わせた。

 

 あらゆる秘境が踏破されたこの地球上に突如現れた、新たなる未知。

 国家を問わず、多くの人間がダンジョンに挑み……そして、そのほとんどが帰ってこなかった。

 

 最高峰の頭脳を持つ科学者も、徹底的に訓練された軍人も、ただ興味本位で訪れた一般人も、誰もかも。

 

 平均生存日数――十八日。

 統計が語るのは、挑む者の大半が一か月も経たずして死体か消息不明になるという現実だ。

 

 だが、血塗られた記録も人々を遠ざけはしない。

 むしろ逆。ダンジョンから持ち帰られる新素材、超常のアイテム、そして時に国家の軍備すら変える未知の技術。

 その一攫千金の夢が、貧者も富豪も、軍人もならず者も、同じように飲み込んでいく。

 

 今日もまた、新たな挑戦者が【島】に降り立つ。

 そして統計にまた一行、冷酷な数字が新たに刻まれていく。

 

 全てが、最深部に潜む、ダンジョンを司る【主】の糧とされていることなど、知る由もなく……。

 

 人々が知らぬ闇の中。

 主の企みは進み、ついに一人のある男が尋常ならざる力を宿した【怪人】へと変えられていた。

 

「ウオオ洗脳する前に怪人化を施したせいで反逆されて死ねーッ!」

「バカなダンジョンで世界を支配するはずのこの私がぁあアアア!!」

 

 ――そんな割とシビアめな現代ダンジョンの最深部で、俺は俺を怪人化させたラスボスを爆発四散させていた。

 

 ここに至るまで長い紆余曲折があったかと言えば特にそういうことも無く、マジでなんか気がついたら人体改造されてたので、暴れたら勝てちゃっただけだ。

 かくして悪は去った。完。

 

 爆散の音を聞いて、ボス部屋にモンスターたちがわらわらと入ってくる。

 そして、自分たちの主の惨状を見て泣き叫んだ。

 

「うわーんあるじ様が死んだ!」

「さらってきたお姫さまを押し倒そうとしたらお姫さま本人に殺されちゃったー! 痴情のもつれー!」

「誰がお姫さまだ」

 

 先のモノローグで「一人のある男」と言った通り、当然ながら俺は男性である。

 いや、であった。

 現状を再確認するように、俺は床の血溜まりに改造された今の自分の身体を映す。

 

 元はただの痩せこけた老け顔の成人男性。

 それがなんということでしょう。一級建築士(ダンジョンマスター)である匠(故人)の手によって、見た目は人間ながらどこか底知れなさを感じる金髪金眼の神秘的美少女に早変わり。人外じみた肌の白さとそれに相反するような快活な印象を共存させているのはまさに職人技の一言。元の面影を全く残してくれやしない驚きのビフォーアフターである。なんかもう改築っていうか建て直しだが。

 

「でも姫さま、改造されたあとにまんざらでもなさそうな顔してた」

「メスにされて嬉しいんだったら交尾ぐらいさせてやればいいのだ。こんな変態にすら嫌われてあるじ様も哀れなのだ」

「別に今からでも貴様らに主人の後を追わせてやってもいいんだぞ☆」

 

 それにしても、ダンジョンの奥底にこのような知性のあるモンスターたちがいるとは知らなかった。やったことに後悔は無いが、主の死に泣く姿を見ると、流石に悪いことをした気分になる。

 

「でもあるじ様いなくてもごはん出てくるから正直かまいやしねーのだ」

「かんがえてみたらべつにあるじ様に恩あるわけでもないや」

「ばらばらになったあるじ様もぐもぐ」

「所詮は獣畜生か……」

 

 忠義のちの字もなければ涙もねえモンスター共。

 その中のデカいネズミのような、他のモンスターよりもやや賢い個体に対して俺は問いかける。

 

「ていうか普通に疑問なんだけど、なんでTS改造より先に洗脳しとかなかったの? 一言命令するだけでいいんでしょ?」

「あるじ様のやることはよくわからないのだ。でも男を洗脳してもつまんねーから女にしてからじっくり洗脳の過程を楽しみたいって言ってたのだ!」

「良い趣味してんじゃん☆ 結果として死んだがな」

 

 思っていたよりエロゲ世界出身みたいなボスだったらしい。初代仮面ライダーのご加護があって助かった。

 

 しかし、そういうことをやる(やから)なら、もう少し色々な人が攫われていてもいいようなものだが。その割には俺以外の人間をこの最深部で見ていない。

 

「改造して知性ありモンスターにできるのはレベル1以下の生き物だけなのだ。ボクらは何も知らずに入ってったけど、人間は弱いとなかなかダンジョンに入らないから、お姫さまみたいな改造素材にできるザコ人間はとても貴重なのだ!」

「シバくぞテメー」

 

 しかし、ふむ。確かにダンジョンが発見されてからかなり早い段階で、レベル3未満の人間は立ち入り禁止となっていた。

 こいつら知性ありモンスターも、元はダンジョンに迷い込んだ小動物が改造されたものなのだろう。俺が知っている普通のモンスターは、もっと非生物的な闇のエネルギーの集合体みたいな見た目をしているし。

 

「なんでお姫さまはそんなクソザコなのにわざわざダンジョンに入ってきたのだ?」

「クソザコ言うな。入ったんじゃなくて無理やり連れてこられたの」

 

 元の俺が痩せこけて老け顔だったのは、別に、元からそういう顔だったからというわけじゃない。

 

 病気だったのだ。それも、ダンジョンで入手できる(ポーション)でしか治らない、命に関わる難病。

 日本ではまだ治験も下りておらず、違法な手段での購入も非常に困難。

 そこでダンジョンの管理局(ギルド)職員としてこの島で働き、探索者相手に個人的に取引を持ちかけ、ついに薬を手に入れる算段がついたのだが……。

 

「グレーな個人売買を受けるような探索者だから、色々と後ろ暗いところがあってさ。約束よりちょっと早めに行ったら、俺のとは比べ物にならないぐらい怪しげな取引の現場に出くわしたわけ。……そして、取引を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった……」

「なるほどなのだ。それで、口封じのために危険なダンジョンに放り込まれたというわけなのだ」

 

 姿は人外美少女、頭脳は成人男性。その名は……!

 ……この見た目で元の名前ってのもな。まあその辺はいいか。

 

 とりあえず、座る人間のいなくなった玉座に腰掛ける。

 ヤツはここから色々とダンジョンの機能を操作していたが……。

 

「……使えないっぽいなぁ」

「ダンジョンの支配者になれるのは人間だけ、モンスターなお姫さまには無理なのだ」

「困ったね。元の姿に戻ったりはできないってわけだ」

「別に戻りたいと思ってもないくせにあたかも不本意であるかのようなポーズを取るのはやめるのだ!」

「不本意ではあるよ???」

 

 どうすんの今日からの生活。俺いやだよこんなとこで探索者の屍肉だけ食って生きていくの。

 

 でも美少女の姿になったことに関しては、まあ、うん。

 いやほら、あの闇取引、かなり大きい組織が関わってたみたいだし。

 ダンジョンの厳重な警備をわざわざ突破して俺を口封じするぐらいだし。

 元の姿だとまた危険な目に遭う可能性があるからね。今の身体は前より圧倒的に戦闘力高いからそういう意味でもね。仕方ないよね。

 

「本気で戻りたいなら別の人間をダンジョンの主にすればいいのだ。それでまた改造してもらえば多分戻れるのだ」

「え~? でもそれってさ~新しい主に命令もされるんでしょ~? じゃあ元に戻れなくっても仕方ないよね~☆ 自由失うの嫌だもんな~☆ かーっ、この姿でどうにかこうにかやってくしかないか~☆!! いや~参ったな~~☆☆!!!」

「でもほっといたら最初にダンジョンを攻略した人間が自動的にダンジョンの主になるのだ」

「おい今なんつった」

 

 のだ口調ネズミを引っ掴んでぐいと顔を寄せる。そりゃ一体全体どういうこったよ。

 

「どうもこうもダンジョンはそういうものなのだ。試練を突破した人間をダンジョンのあるじにして、好き放題させるシステムなのだ。前のあるじ様も詳しいことは知らんけど、攻略したらなんかそんな感じでダンジョンのあるじになったのだ。それでダンジョンの力で好き放題してたら、ブチギレた人間たちの強制転移魔法でダンジョンごとこの世界に追放されたのだ」

「……ダンジョンを誰にも攻略できないようにしたりは……」

「あるじじゃないぼくらじゃ大してダンジョンをいじれないし、仮にあるじだったとしても、ダンジョンの根本的な部分をどうにかすることは多分できねーのだ」

 

 ダンジョンの姫という名のTS雌奴隷化を回避したと思ったら、やっぱり回避できてなかった件。やはりこの世界はエロゲーだった???

 

「い、いやいや。今、最前線でダンジョンを攻略してる探索者が普通にいいひとで、命令なんかせずに無条件解放してくれるって線も……」

「こちらが今、もっともダンジョンの完全攻略に近い探索者の様子になりますのだ」

「うーんこのイケメンが美少女侍らすお手本のようなハーレムパーティー」

「こいつ女探索者と見るや声かけにいくし、ゴリゴリにやることヤってるから儚い希望は捨てた方がいいのだ。なんならダンジョンですらおっぱじめるせいで傍から見てたあるじ様も女日照りに耐えきれず『もう女体化させた男でもいいか』ってなっちゃったのだ」

 

 こんなのが最前線探索者ってマジ? もっと頑張れよ他の探索者。

 

「お、女探索者は? 女探索者をあるじにすれば……!」

「ある程度のレベルの女探索者は全員こいつに手篭めにされたのだ」

「バケモンか? やってるゲーム間違ってんだろ」

 

 その後も実力ある探索者を見ていくが、どいつもこいつも信用できない。そりゃ、平均生存日数が十八日の場所に潜るような輩なんて、基本的に頭が悪いかおかしいかの二択なのでしょうがないのだが。

 

 とはいえしょうがないではすまされない。攻略進捗的に、このダンジョンが踏破されるのはまだまだ先の話だが、いつかは来る未来ではあるのだ。それまでに手を打たなければ。

 

 もうこの際適当な初心者で構わん。いい感じのお人好しをダンジョンの主にして、俺を迷宮の支配から解放させねば。のだネズミに聞いた感じ、ダンジョンの構造とかは弄れなくても、レアアイテムとかレアモンスターとかは好きに出せるらしいし。パワーレベリングさせるのだパワーレベリング。

 

「おっ……?」

 

 純朴そうな日本人の青年を発見する。レベルは4。入ったばかりの駆け出しだろう。モンスターに襲われそうになった他の探索者を助けようとしたが、ダンジョンでは恩を仇で返されるのがデフォ。罠に嵌められ、敵のヘイトをなすり付けられている。

 

 い……いるじゃーん! こんな殺伐とした場所にも、真っ当な善性を持つお人好しが!

 仮にも自分の主人となる人間だ。できれば女の子が良かったが、贅沢は言っていられん。こいつにしよう。

 

 これから都合良く窮地に最強人外美少女が助けにくるからね☆ その後もダンジョン内でやたら都合良いことがガンガン起こるようになるからね☆ ぶっちぎりで成長して最前線ハーレム野郎も追い抜かさせてあげるからね☆ とにかくそんな感じでご都合主義系最強無双チート主人公になろうねっ☆ なれっ☆ なっちゃえっ☆

 

「でもそんなに上手くいくのだ?」

「こんなお人好しのガキ一人ぐらい簡単にたぶらかせるに決まってるじゃん。見てほら俺のこの圧倒的美貌」

「美少女化したのは不本意であるというポーズはどこにいったのだ?」

 

 このメインヒロイン度120%の正統派美少女顔面に微笑まれれば、明らかに女慣れしていない未成年男子なんぞイチコロよ。勝ったな。

 

「それじゃ行ってくるからダンジョンの留守番よろしく!」

「もうオチが見えたけれどせいぜいがんばるのだ」

 

 なんか言っているが知ったこっちゃねえ。

 よーし待ってろ少年! 今からメインヒロイン(自称)がキミを最強無双チート主人公にしちゃうぞー!




この後めちゃくちゃメインヒロインにされた。(続かない)

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