転生したら『分身』の個性を持っていた件   作:鋼色

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四話 地獄の大元首

「Helloエンデヴァー」

 

万を超えるコンピューターに囲まれた男は口にする。

 

「幸せが欲しいだろ。荼毘……いや、燈矢をたぶらかしたAFOをぶっ飛ばしたいだろう。俺と組もうぜ」

 

「幸せになって一緒に蕎麦を食べようぜ、別世界のエンデヴァー」

 

その男、_______は悪魔的な笑みで提案をした。

エンデヴァーが絶対に断れないであろう手札を出して。

 

 

 

 

 

 

我が愛しき幼馴染よ、アナタは今どうしていますか。

雄英のヒーロー科に受かるために個性の特訓をしているのですか?

私は今、グラントリノとエンデヴァーとホークスの三人に特訓を受けております。

 

暇かよコイツら。

 

「訓練中に余計な考え事を入れるな。……はあ、そろそろ休憩にするぞ」

「あざーっす!!ゴチになりやーす!!」

「貴様……冷からもらえる小遣いには限りがあるんだぞ」

「エンデヴァーさんなら小遣い増やしてもらえるでしょ」

「いやいや、分かってないなー。エンデヴァーさんは夫婦らしさを味わいたいんだよ」

「うるさいぞホークス」

「ふーん……あ、グラン爺さんがたい焼き買ってこいだって。冷凍のやつ」

「なんだその訳がわからないこだわりは」

 

財布を見て不安がっているエンデヴァーを見たのでサ◯ゼで済ませてあげた。俺ってば超優しい。

 

「本離……貴様の個性は応用力が高い」

 

食事をしている時にエンデヴァーが急にそんなことを口走る。

それは7年間個性に向き合ってきた俺にとって当たり前のことだ。

 

つーか、10日間だけとは言え、一緒に特訓してたんだから周知の事実みたいなもんでしょ。

 

「だが、当人のスペック……つまり貴様のスペックが個性の性能に並んでいない。運動神経、反射神経、判断力が足りていない。感覚で考えるな、全ては頭で片付けろ」

「エンデヴァーさんは分羅くんに教えた技を早く使って欲しいんだよ」

「余計なことを言うな」

 

ホークスとエンデヴァーのじゃれあいを意識外に放出する。

 

思考するのは先ほどの話。

 

俺が転生してから7年。転生してからと言うもの、長いこと鍛錬に費やしてきた。

真綿とデート行ったり遊びに行ったりした以外は、鍛錬だった。

 

だからこそ、実感できる。エンデヴァーが口にしたことは全てが事実であることに。

俺は黒閃を何度も決めた。術式の解釈を深めることができた。それでもなお、届かない。

 

天候を変えるオールマイトには届かない。無限を操る五条悟には敵わないんだ。

 

解釈を広げるのは一度止めた方が良いのか?

止めたとして、どうやって能力を上げれば良い?

俺に都合よく上げる術なんて持ち合わせていないぞ。

 

「……しかし、今の幼い貴様に言っても発展性など皆無だ。ゆえに、俺は……俺たちは貴様を小学生だとは看做さない。学びに来たインターン生以上だと考え、対応しよう。覚悟はいいか?」

「……」

 

控えめにゆらゆらと燃えていた炎が豪快に燃え盛る。

眩しいまでに光り輝く炎、純粋な一直線の期待・思い。

 

真剣に見つめるエンデヴァーの瞳がどこか遠くを見つめるような視線が、心の奥底……いや、体の裏側までゾワゾワさせる。

 

見ているのは自分であって自分じゃない。

 

あくまでも俺は過程、踏み台であると思わされている。

 

本来なら軽蔑の対象になんのか?目の前にいるのに見られていないってのは最低の行為だ、つって。

 

当然の話だ。だが……俺にとっちゃあ当然じゃない。

 

何でかな、分かんない……分かんないけど、面白そうで、楽しそうで、ワクワクが止まらないんだよなぁ!!

これで興奮しちまう俺は変態か?見られていない状態から、勝って俺を認知させる未来を見ちまった俺は異常か?

 

いや……どうでも良いか!

 

俺が抱いている感情が何であれ、エンデヴァーの様子が何であれ、俺が楽しいと思うのは変わらない!

 

「上等。期待全部通り過ぎて第二のオールマイトになってやんよ」

「負けん気は十分。それが最後まで持つかどうかだな」

 

➖➖➖

[ホークスの試練]

・救助

 

ホークスが与えた特訓メニューは視線を周囲に配れるためのもの。

1度に50人毎の藁人形が空中から落ちてきて、能力で救うのが()()()()()()()

 

全て合わせると10ステージあり、1ステージをクリアするごとに藁人形は50人分増加する。

 

また、配置はクリアする度に難解化する。

 

制限時間も存在し、こちらもクリアするごとに短くなる。

 

本離分羅……第一号(ファルガ)がこの試練に挑戦してから3日ほどが経過した。

挑戦回数、その数100を優に超え、現在では4桁へ届きそうになっている。

 

一粒の汗が地に降った時、その身はすでに空へと浮かんでいた。

ギラギラとした鋭い目つきで観察し、即座に個性の選択をした。

 

灰眼の粘液(タルト・スライム)

 

自分の体の油脂や汗を少々溶かし、粘度の高い液体にする。

微量な量によって作り上げられた大規模の粘液。等価交換とは言い難い不釣り合いの交換。

 

その研ぎ澄まされた技術により、総勢500名の命は救われた。

だが、試練はここで終わらない。ここまで行くだけであれば簡単に終わる。

 

類稀な感知能力と操作能力。その二つを持ち合わせている分羅にとってこの程度など容易に終わる。

 

この次があるから試練の挑戦回数が4桁に並びそうになっているのだ。

 

風を切り裂き、刃が迫る。紅蓮の豪傑の羽、金髪、見覚えがありすぎる顔。

 

その者、『速すぎる男』ホークスのコピーであった。

 

機械ヒーロー「ガランダルトン」が作り出した完全模造品のホークス。

 

本物よりかは能力は数段階劣るが、俺にとっちゃあ十分なくらいだ。

特に守りながらの戦闘だとな。さてはて、今回こそクリアできるだろうか。

 

拡張術式

 

いや、できるできないじゃない。やるしかない。

ヒーロー候補生だろうが。覚悟を少しは見せてみろ…!!

 

「惰羅化羅ァ…!!」

 

 

「樹海片鱗」

 

「……と、三鳥・大火炎(プロタクト・バースト)!!

 

飛んでくる羽を「樹海片鱗」で防ぎつつ、「三鳥・大火炎」の高スピード、高火力で吹き飛ばそうとする。

 

……が、現実はそう上手くはいかない。追尾型の炎は簡単に切り刻まれ、爆発した。

 

それを認識し、新たな拡張術式を発動しようとした時だった。

 

呪力を術式に注入しようとした瞬間、偽ホークスは後ろに立っていた。

気づいた。だが、それはあまりにも劣っていた。羽による勢いをつけた攻撃は第一号(ファルガ)を吹き飛ばした。

 

どれだけ能力が優秀だろうと本体の思考が間に合わなければ弱い。

 

数日前に言ったエンデヴァーの言葉を証明する現実に舌打ちをしてしまう。

 

その現状をどうにか立て直そうとするが、遅い。

 

「いてぇ」

 

第一号(ファルガ)の得意分野は近接戦闘。それですら負けてしまう現状、苛立ちが募ってしまう。

救出人数ではなく、偽ホークスの強さにでもなく……自分の成長性のなさにイライラが止まらない。

 

分かっている。

 

(理解している)

 

己になぜ成長する機会がやってこないのか。

 

(なぜ成長できないのか)

 

それは……

 

(それは……)

 

 

 

 

 

それはきっと逃げているからだ

 

 

 

 

「俺は一人じゃない。俺は、5人だ。だから、怖くない。だから、俺はもう逃げない。立ちはだかるのが人間の根本部分に備わっている痛みだろうと、俺は逃げない」

 

瞳閉じた先に見えたのは緋色の稲妻。体全体を覆い包む暖かい電気に口元は緩まる。

 

拡張術式

 

第一号(ファルガ)は……否、本離分羅は追い詰められた場面での覚醒を果たした。

 

それも何十戦もし、疲労困憊であり、反応が遅れて防御もまともにできていなかった状況で、だ。

 

今までのどんな時よりもひどい痛みに出会し、届かない現実に震えた。

 

だからこそ、目覚めた。本離分羅の本質は逆境にこそ燃え上がり勝利を掴む主人公(ヒーロー)気質。

 

それこそが……決意を持って常人には辿り着けない領域に足を運ぶ芸当こそが最強の資格を持ち得る。

 

至宝地雷(スーパーフィーバー)

 

「鳴ッ……神!!」

 

人の体には微弱ながら電気が流れている。その電気を利用し、新たな拡張術式で強制的に増強化したのが「鳴神」だ。

 

それは子供が耐え切れる出力じゃない。本来なら1秒経過する前に死しているほどの芸当。

 

いや……分羅も例外ではない。毎秒、常に死んでいるのだ。

「惰羅化羅」によって常時再生しているから生き残れているだけだ。

 

「速さ勝負といこう」

 

風と雷。睨み合い、衝突する。どちらも己の全力をもってぶつかった。

激しいぶつかり合いの末、勝利を飾ったのは雷。

 

「今なら思いっきり溜めれる……赫灼熱拳・雷雲!!

 

溜めて放つ。エンデヴァーが教えた火力の極地。

わずか3秒。けれど、十分であった。第一号(ファルガ)にとってその時間は。

 

「ギリギリ勝利ってとこか?……っと、さっさと降ろしてクリアしねえと。制限時間を超えちまう」

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