転生者剣士はハッピーエンドを迎えたい 作:虚構歴史学者(自称)
見切り発射。 エタる気しかしないけどモチベがあれば続きます。
とても暗い。 ここはどこだ? 俺は・・・俺は何をしていたっけ。
わからない。 この深淵のような暗闇で、俺は何をすればいいのだろう。
(・・・コレ、死んだのかな)
そんなことを不意に思った瞬間、微かながら先刻までのことを思い出せた。
(あぁそうだ、確か・・・)
確か、海で海水浴をしていたら唐突に浮き輪から空気が抜けて海に沈んで・・・そこから先の記憶がない。
うんまぁ、状況から考えて海に沈んで溺死したんだろうな。
・・・あれ待ってじゃあ今ここで思考してる俺はなんなの? もしかしてまだ生きてる? ワンチャンあるか?
そう思い至りカラダを動かそうとするも、動いているような感覚はない。 そうしてろくに藻掻くこともできず、意識が沈んでいく。
もし来世などという物があるのならば、この虚空を、果てのない虚無を、垣間見た深淵の闇を、決して忘れることはないだろう。
時は明治時代、とある村に一人の少年が暮らしていた。
彼の名は
尤も、今の彼に前世の記憶などというものはなく、ただの一般人として日々を謳歌しているだけであるが。
・・・そんなある日の夜遅く、僕は誰かがナニかを貪るような物音と、夥しい血の匂いで目を覚ました。
「何、これ」
僕はこれがなんなのか知らない。 知らないけれど、何故かわかる、わかってしまう。 これは、"死"の匂いだと。
「・・・ここにいちゃいけない」
そう思ったのも束の間、部屋の外から足音が聞こえてくる。 先ほどまでの物音は、もう聞こえない。
・・・それが意味するのは。
「おいおい、こんな真夜中だってのに起きてるガキが居やがるぜ。 折角死ぬ恐怖を味わわせないよう寝てる間に来てやったってのに、ツイてねぇなぁ?」
僕はコイツが誰なのかはわからないけれど、化け物であることはわかる。 なんだっけ、確か・・・あぁ、鬼か。
「・・・人喰い鬼?」
「おー、よく知ってんなぁ。 いかにも俺は人喰い鬼だ。 今からお前を喰い殺す鬼だよ」
そう言いながら鬼はこちらに近付いてくる。 このままだと、僕はまた死んでしまう。 またあの深淵の闇に呑まれてしまう・・・。
・・・? "また"? またって何だ? 僕は・・・何かを忘れている?
そういえば、なんで僕はコイツを見てすぐに鬼だとわかったんだろう。 姿は人間に似通ってるし、人間じゃないことはわかっても、伝承やら童話やらの鬼とは似ても似つかないのに。
「どうした? 恐怖で動けねぇか? キシシッ」
・・・あぁ、思い出した。 これは前世の記憶だ。 そしてその記憶が正しければ、ここは俺がよく知る世界。
(なら、やることは決まったな)
まずはこの場を生き残らなければ話にならない。 武器になるものは確か弓があったはずだ。
あぁでも、攻撃する前に一応確認しておくか。
「ねぇ、一つ聞きたいんだけどさ」
「あン? なんだよ」
「命乞いって、受け入れてもらえたりする?」
「・・・テメェ、舐めてんのか? 受け入れるワケねェだろ」
「ま、だよね。 じゃ、残念だけどこっちも死にたくないからさ。 抵抗、させてもらうよッ!」
眼前に迫った鬼の腕を掴んで合気の要領で投げ飛ばす。 室内戦じゃ勝ち目はない。 廊下に出て隣の部屋に飛び込み、両親だったであろう死体を踏み越えて壁に掛けてある弓を掴み取る。
「クソガキがァ・・・!」
弓を掴むと同時に、背後から追ってきた鬼が怒りを滲ませた声でそう言った。
あ、そうだ。 折角だし前世で有名なあのセリフでも言ってみるか。
「・・・もちろん俺は抵抗するで? 弓で!」
まぁ俺は21歳じゃなくて14歳だし、本家は拳だけどな。 いやさすがに拳じゃムリよ、悲鳴嶼さんじゃあるまいし。
「殺すッ!」
そう叫びながら飛び掛かってきた鬼の爪による切り裂きを弓を刀のように振って受け流す。 窓際で待ち構えていたこともあり、鬼は窓の障子を突き破って外に飛び出す。
(わー重っも)
受け流しの時に受けた衝撃の重さに思わず顔を顰めながら鬼を追って外に出る。 既に鬼は立ち上がり、こちらに向けて殺意を放っている。
こっちの武器は弓で、矢は一本もない。 一見すれば勝ち目などないように見える、が。
弓って近接武器なんだよな、ソースは仮面ラ○ダー。
弦を引き待ち構える。 跳躍しながら襲い来る鬼の腕を軽く身を引いて回避し弦を離す。 肉薄した鬼の胴に弓が強く打ち付けられ、痛みに軽く呻いたのが聞こえた。
すかさず刀を逆手で振り上げるように弓の下側で殴打、そのまま上から、右から、左からと続けざまに殴り続ける。
鬼は化け物だが、元を正せば人間だ。 十二鬼月ならいざ知らず、この程度の下級鬼であれば基本痛覚に過敏である。
鬼になってからこうやって抵抗されることなんて、鬼殺隊にでも出会わない限りは早々ないのだから当然だ。
「ぐっ!? いたっ、な、なんだよこのガキ!?」
そんなわけで、そうして怯んだ時点でタコ殴りにしてやれば防戦一方になる。 あとは簡単だ、必死になって動きが雑になった攻撃を避けつつひたすら殴ってればいい。
何か喚いている気がするが気にしない気にしない。
そうしていると鬼は反撃を諦め、逃走を試みる方針にシフトしたようだ。 まぁ、逃がすワケがないんだけど。
「はい残念拘束拘束~っと」
「なっ・・・!?」
弦の片方を根元から引きちぎって鬼の首に巻き付け縛り上げる。 弦ってのは存外強靭だ。
矢を引き、放つ。 ただそれだけの行為に物体を貫通するだけの威力と遠くまで飛ばせる射程を付与できるのに足るだけの強度がある。
「ハッ、馬鹿が! それじゃ攻撃できねぇだろ!」
うむ、その通り。 弦の片方はまだ弓に繋がれたままなので、このままであれば弓を振ろうとすれば拘束が緩む。
だから折る。 折る。 こう、柄の真ん中でボキッと。
そうすると弓だった物があら不思議、刃はないものの擬似的な双剣に早変わり!
重量が左右に分配されたことで身軽さもアップ! ということでさっきより高速でぶん殴れるよ、やったね!
「ほらほらさっきの威勢はどうした~? 殺すんじゃなかったの~?」
「ぐっ、クソがぁ・・・!」
そう言いながら攻撃をしてくる鬼だが、その動きはあまりにも単調すぎてつまらない。 こっちとしては長時間の戦闘は疲れるからさっさと終わらせたいのだが、生憎と日輪刀がない俺では殺せない。
早く鬼殺隊さん来ないかな~、夜明けまで粘るのダルいんだけど。
そんな祈りが天に通じたのか、一陣の豪風が目の前を過ぎ去った。
「風の呼吸・壱ノ型 塵旋風・削ぎ」
颯爽と駆け付けたのは黒い衣服を纏った剣士。 俺が一般の子供なら即通報案件だが、この剣士が鬼狩りだと知っているので特段驚きとかはない。
「あ、弦がバラバラになっちゃった」
あまつさえそんな場違いなことを呟くレベルである。
「俺は鬼殺隊という組織に属する剣士だ。 鬼は日光で炙るか日輪刀という特殊な刀で頸を落とすことでしか殺せない」
目の前でそう説明してくれるのは鬼殺隊の隊士さん。 見た感じネームドじゃない一般モブ隊士っぽいね。 はーおもんn・・・じゃなかった、どうせならネームドに会いたかったな~。
「俺達鬼殺隊は、人間を喰らう鬼を滅するために活動している。 もし君がそれを望むのなら、剣士を育てる"育手"を紹介しよう」
「・・・お願いします」
こうして、俺は剣士になった。