転生者剣士はハッピーエンドを迎えたい   作:虚構歴史学者(自称)

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 "◯の呼吸・◯ノ型"って言うじゃないですか。
 ワタシずっと"◯の型"だと思ってました。 平仮名じゃなかった。
 誤字報告にアルティメット感謝。



4話 それぞれの帰路

 

 

 

 

 

 最終選別が終わった。 真菰達と山を降り、最初の広場に戻ると既に他の通過者達が待機していた。

 

「姉さんっ!」

 

「しのぶ!」

 

 先に広場に戻っていたらしいしのぶが、カナエを視界に捉えると瞳を潤ませながら駆け寄ってくる。 カナエもそんなしのぶを抱き締め、無事を喜んでいる。

 

「・・・なぁ真菰、異形の鬼を斃した後合流してなかったのか?」

 

「あー・・・合流したんだけど、三日目に鬼に襲われた時にはぐれちゃって。 私とカナエさんは五日目に合流してそこから一緒に行動してたんだけど、しのぶちゃんとは合流できなかったんだ」

 

「・・・なるほどねぇ」

 

 姉妹の感動の再会に水を差すのも悪いと判断した俺は真菰を引き連れて広場に移動する。

 そのまま生き残った面々に目を向けると、余裕綽々でリラックスしてる者、選別を終えたにも関わらず未だに殺気立ってる者、満身創痍で息も絶え絶えな者、鬼と相対した恐怖からか震え怯えている者など様々だ。

 

 だが、これだけは言える。 少なくとも初日にいた者の半数は山で命を散らしている。

 まぁ、それでも参加者の半数近くが生き残ったのは多い方なのだろう。 今回は俺が結構な大虐殺をしたし。

 ・・・コホン、炭治郎たち五感組が突破した時、報告を受けたお館様は"優秀だ"と言っていた。 たったの五人でも"優秀"と判定される。 つまりそういうことだ。

 

「お帰りなさいませ。 皆様、ご無事でなによりです」

 

 そうして幾ばくかの時が経つと、あまね様が口を開く。 確かこの後は、隊服の採寸に鴉の支給と鋼選びか。

 

「まずは、隊服を支給させていただきます。 皆様の体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます。 階級は───」

 

 あー、そういやそんなのあったな。 どうせあれこれ動き回るために上を目指すつもりだし、面倒だから一番上の"(きのえ)"だけ覚えとこう。

 

「次に、皆様に"鎹鴉"を付けさせていただきます」

 

 そう言ってあまね様が手を叩くと、上空から鴉が飛来し通過者達の肩や腕に着地した。

 

「俺の担当はお前か、よろしく。 名前は?」

 

「カァ! オレ、璃空(リクウ)! ヨロシク!」

 

 うん、意志疎通もスムーズ。 多分だけど当たりの部類。

 鎹鴉って結構クセ強いのが多いから、マトモな子が来てくれてよかった。 業務連絡を主とする鎹鴉がクセの強いヤツだと苦労しそうだからな、本当によかった。

 

「では、次にこちらを」

 

 そう言いながら、あまね様は後ろに鎮座していた机?テーブル?に掛けられていた布を取り払った。

 

「こちらから、玉鋼を選んで下さいませ。 鬼を滅殺し、己を守る刀の鋼は、ご自身で選ぶのです」

 

 それを聞くと参加者達の目の色が変わる。 みな机の前に集まり、鋼を見てどれを選ぶか頭を悩ませている。

 ぶっちゃけ鋼の良し悪しなぞわからんので、どれを選んでもあまり変わらないと思う。 少なくとも目星で判定できるようなものではない。

 専門的な知識や知見があるならいざ知らず、ここにいるのは刀の製造に関しては一切を知らないシロウトなのだから当然だ。

 

「・・・うーん、ダメ。 全然わかんない。 幽希はどれにする?」

 

「俺はコレかなー」

 

「お~、早いね」

 

「こういうのは直感が大事って、おばあちゃんが言ってた」

 

 ・・・というのは冗談なのだが、実際こういう時は思い切った方がいい。 技能振っても情報が得られないなら、大人しく幸運一発でなるようになるさと割り切ることだって大事なのだ。

 

 その後、選んだ鋼を渡し採寸を済ませ、終わった者から帰っていいと言われたので帰路につく。

 最終選別は本当に色々あった。 ・・・あったか? あった、よな・・・?

 まぁ、色々あったということにしておくか。

 

 肩に乗って寛いでる璃空を伴に修行してた山までゆったり歩いて行く。 折角だし明治末期の風景でも眺めるか。

 まだ環境汚染だとか温暖化だとかとは無縁・・・とまではいかないかもしれないが、それでも令和の世に比べて自然が豊かで空気が澄んでいる。

 

 記憶を取り戻してからはすぐ育手のとこで修行三昧だったから、こうして穏やかに移ろう景色に思いを馳せるのは初めてかもしれないな。

 

 青い空、緑の山々、暖かな陽光。 ・・・うん、いい景色だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「それでね、幽希君が真菰ちゃんにこう言ったの。 『決断しろ! お前の想いはその程度か!?』って」

 

「姉さん、その話もう五回目・・・」

 

 最終選別の帰り道、私たちは無事に最終選別を通過し、晴れて鬼殺隊の剣士として生きていくことになった。

 それはいいのだが、どうも選別が終わってから姉さんの様子がおかしい。 口を開けば『幽希君が~』とか、『幽希君は~』とか、"幽希君"の話を何度も何度も繰り返している。

 

(・・・どうしてこんなことに)

 

 聞いた話では、その幽希という人は異形の鬼を圧倒する実力があり、姉さんと真菰さんを異形の鬼から守ったとかなんとか。

 私も異形の鬼と姉さんが戦ってるって聞いてそこへ向かってる途中で会ったけど、なんというかぶっきらぼうな人だったなって印象。

 

「それで最終日にやっとまた会えたんだけど、その時の幽希君は傷一つなくて、疲れてる様子すら・・・って、しのぶ聞いてる?」

 

「・・・ちゃんと聞いてる。 その話ももう七回目」

 

 帰路についてから姉さんはずっとこの調子。 まるで恋する乙女みたいにハイテンションで“幽希君”の話ばかりし続けてる。

 

(次に会ったら文句を言ってやろう)

 

 姉さんを助けてくれた感謝がないわけではない。 ただ、それ以上に姉さんが面倒臭くなったことへの恨みの方が勝る。

 まぁでも、鬼殺隊は殉職率の高い仕事。 次に会うこともなく殉職してるなんてこともあり得る。

 ただ、そうなったら多分姉さんは悲しむだろう。 そう考えると、どうか無事であってほしいものだ。 ・・・彼より遥かに弱い私がそう思うのは少し烏滸がましいかもしれないけれど。

 

「でも、本当に無事でよかった。 はぐれてからずっと心配してたのよ?」

 

「・・・もう、姉さんってば。 私だって、いつまでも守られるほど弱くないのよ?」

 

「それはわかってるけれど、姉としては心配せずにはいられないの。 しのぶはこーんなにもかわいいんですもの」

 

 そう言って姉さんは私に抱きついて頭をわしゃわしゃと撫でてくる。

 

「ね、姉さん! くすぐったいからやめて!」

 

「あら、照れてるの? しのぶはかわいいわね~♪」

 

 さらに抱きつく力が強くなった。 こうなった姉さんは何を言っても聞かないので、諦めて受け入れるしかない。

 

(・・・はぁ)

 

 真面目に、これからどうするかを考えなきゃ。 ()()()()()()私が鬼を殺す術をどうにかして見つけないと、いつまで経っても守られるだけの存在から変われない。

 鬼を殺すために鬼殺隊に入ったのに、鬼を殺せず敵前逃亡するようじゃ意味がない。

 私でもできることを───

 

「考え事してるしのぶもかわいいわ~~~♪」

 

「ちょ、姉さん!?」

 

 姉さんの撫でる手が早くなったことで思考を中断させられた。

 ・・・まぁ、せっかく最終選別を突破したのだから、今くらいは肩の力を抜いてもいいのかもしれない。

 この平和が、ずっと続けばいいのにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、鱗滝さん!」

 

「・・・! あぁ、お帰り、真菰」

 

 狭霧山から真菰を送り出してから一週間と少し、最終選別を終えた真菰が無事に帰ってきた。

 送り出した子供が帰ってきたのは二年前の義勇に続き二人目だ。

 

 正直、半ば諦めかけていた。 当然だが、自身が鍛え岩をも斬った教え子のことは心の底から信頼している。

 だが、あの錆兎ですら突破することはかなわなかったという事実がまた帰ってこないのではないかという疑心を加速させた。 させていた。

 

 だが、真菰はその疑心を振り払いこうして帰ってきてくれた。 今はただ、それが何よりも喜ばしい。

 感極まり思わずその小さくも大きい身体を抱き締める。 そこにいることを確かめるように強く、強く抱き締める。

 

「・・・鱗滝さん、錆兎達のことなんだけど───」

 

 少しの間そうしていると、真菰がそう話を切り出した。

 そして聞いた、藤襲山にいた異形の鬼のこと。 かつて捕えた鬼が異形の鬼にまで成長し、儂への怨みから送り出した教え子を必ず喰うようにしていたと。

 薄々察してはいたが、やはりか・・・。

 

「・・・そうか。 ついに討ち倒したか」

 

「私だけじゃ勝てなかった。 アイツに鱗滝さんの想いを踏み躙られて頭に血が上って、それで呼吸が乱れて殺されかけたの」

 

 そうして聞いたのは、夜帳幽希という少年の話。 その少年は風の呼吸と独自の呼吸の使い手で、真菰をも圧倒する実力を持っていたと。

 ・・・しかし、“幽希”か。 最近どこかで聞いたような・・・。

 

「鱗滝さん、どうかしたの?」

 

「・・・いや、大したことではない。 最終選別で疲れたろう、今日はもう休みなさい」

 

「はーい!」

 

 そう告げると素直に布団に入り、すぐに寝息を立てはじめた。 真菰の頭を軽く撫でながら、記憶の引き出しを漁る。

 

(・・・ふむ、誰からの手紙だったか)

 

 ここ数日間ずっと気が気じゃなかったせいか、思い出すのに少し時間がかかっている。 儂ももう歳か・・・。

 

 そうして少しの時間が経った頃、内容を思い出した。 その手紙はかつて弟子だった者から届いた物で、彼の弟子をそれはもう褒めちぎった内容だったと思い出す。

 それに対抗して真菰のことを褒めちぎった手紙を送り返したのは内緒である。

 

 ・・・コホン、その弟子の名は“南雲(なぐも) 風叢(かざむら)”。 かつて“柱”に次ぐ最高位である“甲”の地位にまで上り詰めた剣士であり、柱に任命されたとて誰も異を唱えることのない実力者であった。

 尤も、その当時は柱が定員だったため柱に就任することはなかったが。

 

 風叢は水の呼吸への適正が高いとは言えなかった。 そして本人もそれを自覚していたが故に他の呼吸を学びたいと儂の元を離れて行った。

 しかし、そうして風の呼吸の育手の所に預けたらそれはもう化けた。

 あっさりと最終選別を突破すると、次々に鬼を殺し破竹の勢いで階級を上げ二ヶ月半ほどで甲にまで上り詰めた。

 

 ただ、彼は少々人間性に難がある。 常に飄々としていて掴み所がないためどこか胡散臭く、あまり信用されない。

 本人は至って善良なのだから不憫である。

 

 しかし、手紙でもそんな飄々とした言い回しをする風叢が、幽希のことは直接的に絶賛していた。 これは儂が知る限り初めてのことだ。

 曰く、まだ経験こそ足りないものの、既に階級で上から三番目に値する“丙”に相当するだけの実力があるとか。

 

(・・・夜帳幽希、もしかすると彼は近い未来、柱になるやもしれんな)

 

 真菰に幽希、さらに真菰から聞いた胡蝶という姉妹。 今年の新人からは多くの大物が生まれるだろう。

 若者が鬼殺の道を歩み命を危険に晒すことに思うところがないわけではない。

 だが、年長者としては彼らの未来が楽しみだと、そう思わずにはいられない。

 

 

 

 

 





 そういえば幽希以外の年齢とか時系列とか書いてなかったのを思い出しました。
 幽希→14歳 カナエ→15歳 しのぶ→12歳 真菰→13歳
 時系列としては原作開始の6年前になります。

ぶっちゃけ鬼の仲間化ってアリ?(オリ鬼、原作鬼問わず)

  • 好きにしろ
  • 鬼だって救われるべきだ
  • 悪鬼滅殺、慈悲はない
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