転生者剣士はハッピーエンドを迎えたい   作:虚構歴史学者(自称)

8 / 11



 前書きと後書きの欄をTwitterと同じノリで使ってる節があります。

 ところで死別エンドっていいですよね。 あ、他意はないですよ?



7話 偽りの神

 

 

 

 

 

虚の呼吸・壱ノ型 亜空切断

 

術式・陰陽(おんみょう)構成

 

 先手必勝と亜空切断で斬り込んだ攻撃が、謎の物体により防がれた。 その物体は勢いをつけて俺を弾き飛ばし、廛閑の周囲に滞空する。

 

(・・・陰陽玉、数は六か)

 

 浮遊する陰陽玉は、そのどれもが淡い光を放っている。

 一度術を展開された以上、闇雲に仕掛けるのは自殺行為。 慎重に立ち回る方が得策だな。 どういう術なのかわからない。

 

 これは下弦共通の問題点で、血鬼術の内容がわからない分慎重な立ち回りを強要される。

 向こうで戦いを見た下弦は累と厭夢、それと外伝の姑獲鳥と佩狼の計四人。

 それ以外の下弦は鬼舞辻無惨(作中最も十二鬼月を殺した男)によって死に様だけを放送され、お茶の間の笑い者となった。

 そうして下弦は血鬼術の内容すら不明のまま全滅、上弦との戦いを繰り広げる遊郭編へと続く。

 

 と、もう見返すことのできない本編を抜きにしても、下弦は入れ替わりが頻発する不安定な地位・・・。 向こうで描かれなかった下弦だって沢山いるだろう。

 コイツもその一人ということになる。

 

 少しでも情報を得ようと、改めて廛閑の姿を観察してみる。 陰陽師、あるいは神官・・・いや、宮司と言った方が適切か? いわゆる神職の人間が身に纏う服装。

 黒髪に紅眼、後ろの首元で髪を束ねている。

 

「神を軽んずる不敬、裁きを受けるがいい。 陽玉(ようぎょく)来光(らいこう)

 

 その言葉と共に腕を振ると、四つの陰陽玉が動き出し光弾を放ってくる。

 

「・・・早いな。 ほい、ほい、ほいっと! 参ノ型 虚影・冥月霧切───うぐっ」

 

 うーん、想像よりも弾幕が濃かったな。 虚影で回避しきれなかった。

 ただ、思ったほどではないな。 熱線で灼かれるような痛みはあるが隊服を貫通する程の威力はないようだ。

 なら、ある程度喰らっても許容できそうだ。

 

弐ノ型 晦冥新月

 

「凡人が。 身の程を弁えよ。 陽玉・陽壁(ようへき)

 

「ほう・・・ッ」

 

 光弾を放つ合間を縫って晦冥新月で肉薄したものの、正方形に配置された四つの陰陽玉が展開した障壁に阻まれる。

 

(強硬突破・・・いや、一番衝撃力のある晦冥新月が防がれたことを考えると難しいな)

 

「・・・ふむ。 ───破ッ!」

 

「なっ!? かは・・・っ! ───黒、穴・・・!」

 

 廛閑は陽壁越しに指先で刀の先をくるくると弄ぶと、徐に陽壁を解き、刀を手の甲で弾いてよろめいた俺の鳩尾に拳を放つ。

 そのまま追撃の回し蹴りで吹っ飛ばされる。 間髪入れずに飛来する光弾を、無理やり黒穴を展開しなんとか防ぎきる。

 

 ・・・さて、立ち上がったところでひとまず現状の分析から行こうか。

 まず、廛閑の血鬼術はあの陰陽玉に依存している。 権能は光弾と障壁、他にもある可能性はある。

 加えて、フィジカルも強い。 蹴りの威力ヤバかった、風叢さんの初列風斬りを納刀したまま喰らったアレを味わってなかったらかなり効いてた。 さすがにアレの方が痛い。

 ・・・ホントに何者なのあの人『元“甲”の一般隊士だぜ』・・・なんか聞こえたような。

 

 まぁいい。 陰陽玉は完全に廛閑が操作している、追尾機能とかはないと見ていいだろう。 腕振って動かしてたし。

 ブラフってる可能性もあるが・・・感知されなければどうということはない。

 

虚の呼吸・陸ノ型 虚空(こくう)

 

「・・・消えた?」

 

 虚空、文字通り虚空に姿を消す技。 というワケではない、流石に。 限りなく気配を希薄にさせ、虚空に消えたと錯覚させる技である。

 攻撃性能は一切ないが、隠密性能が突出しており継続させている限り誰にも認識されることなく行動することができる。

 見えないモノは捉えられない。

 

虚の呼吸・漆ノ型 幽冥閃(ゆうめいせん)

 

「ぐぅッ・・・!」

 

 当たった。 予想通り探知機能は搭載されてないらしい。

 幽冥閃、虚の呼吸最速の技。 単体だと霹靂一閃の下位互換に過ぎないが、虚空と併用することで真価を発揮する。

 幽冥閃単体だと、霹靂一閃と比較して速度が落ち、代わりに負担が減り、音がしない三連斬。

 虚空を維持したまま放てる唯一の技で、斬撃を放つ瞬間に少しだけ虚空が解けるが、その一瞬しか相手は俺を認識できない。

 

漆ノ型 幽冥閃

 

「そこか・・・!」

 

「ざーんねん、ハズレ♪」

 

 と、このように。 ただコイツも結構やり手だな、陰陽玉を即座に防御できるよう配置して待ちの態勢に入っている。 陰陽玉に防がれて頚にまで刃が届かない。

 陰陽玉を壊したい所だが・・・亜空切断ですら斬れなかったことを考えると現実的ではない。

 

 どこから攻撃が飛んでくるか分からない以上、廛閑は一方向しか防げない陽壁を使うことはできない。

 あの硬い陽壁を封じられるだけ儲け物と考えよう、次だ。

 

 虚空中に技を撃つのは存外負担が大きい、三回幽冥閃を撃つと虚空が解ける。

 ただ、他の技だと一回で解けることを考えると三回使える幽冥閃はだいぶやってる。

 なんなら虚空を解除しながら放つ幽冥閃は虚空を維持する必要がない分斬撃の鋭さが増す。

 

(───取った!)

 

「幽冥、急しゅ───」

 

陰玉・陰星赤波(いんせいしゃくは)

 

「───う、・・・ぇ?」

 

 身体が、動かない・・・?

 

「痛っ!?」

 

 体勢を乱した背中に陰陽玉が叩きつけられ、境内を転がり鳥居に身体が打ち付けられる。

 

「ククッ・・・無様に地に転がる姿、実に滑稽よな。 沙月もそう思うだろう?」

 

「左様ですね。 しかし、天観神様が陰玉を使うとは、幽希様はこれまでにいらした方々とは違うようで」

 

「であるな」

 

 何やら二人の話し声が聴こえてくるが、耳には入らない。 立ち上がって廛閑を見ると、二つの陰陽玉に禍々しい血管のような模様が浮き出ている。

 

「・・・ははっ」

 

「む?」

 

「神、神ねぇ・・・あーおっかしぃ」

 

「・・・何?」

 

「所詮は下弦の弐、上から数えて八番目。 下弦の中ですら二番手止まりに過ぎないようなヤツが神を騙るだなんて、片腹痛い」

 

 見た目の変化した陰陽玉に、“()星赤()”という名・・・。 なるほど、大体の絡繰りは読めた。

 

・・・貴様、今なんと言った?

 

「・・・あはっ、図星かな? 始祖の言いなりに過ぎない“駒”風情がさぁ。 “唯一神”、だなんて笑えるよね~」

 

「黙れ! 神を愚弄する痴れ者がァ!!」

陽玉・来光

 

「そう感情を顕にするなよ。 見苦しいぞ?」

虚の呼吸・肆ノ型 黒穴

 

 来光はただのビーム、物理的な当たり判定を持っているから黒穴で容易く無力化できる。 加えて今の廛閑は冷静さを失っている状態、シンプルな光弾が更に単調になっているせいでその場から動くことすら必要ない。

 

貴様は必ずこの手で殺す!!

 

 と思っていたら廛閑の方から突撃してきた。 正面から突っ込んで来てくれるなら好都合。

 

虚の呼吸・参ノ型 虚影・冥月霧切

 

 残像を残して死角に潜み、攻撃が空振った廛閑の両腕を残像ごと斬り捨てる。

 

虚の呼吸・陸ノ型 虚空

虚の呼吸・漆ノ型 幽冥閃

虚の呼吸・漆ノ型 幽冥閃

虚の呼吸・漆ノ型 幽冥閃

 

 そのまま虚空に消え、陰陽玉が合流する前に幽冥閃を三回叩き込んで脚、肩と順にバラバラにし、最後に頸を半ばまで断ち切ったところで止めた。

 

「・・・さて、どうだ? お前が言う“凡人”の手でカラダをバラバラに刻まれる感覚は。 無様に地に転がる屈辱は」

 

「ぐぅ・・・ッ! 貴様・・・!!」

 

「はははっ、そんな恨めしそうなカオすんなって。 所詮お前は神を騙る不届き者なんだ。 偽りの神は、こうして凡人に斃されるのがお似合いだよ」

 

 廛閑は憎悪に満ちた目でこちらを見上げてくる。 こんだけ切り刻んで頚にもダメージを与えたんだ、いくら十二鬼月でも再生に少し時間を要するハズ。

 陰星赤波は厄介な血鬼術だが、発動のトリガーがある以上使わせなくする方法ならある。

 鬼は大体のヤツが煽り耐性のないレスバ雑魚、ああやってコンプレックスを刺激してやればすぐ激昂して殴りかかってきてくれる。

 とはいえ、ここまで上手く行くとは思ってなかったけど。

 

 あくまで推測だが、陰星赤波はおそらく浴びた相手の神経回路を狂わす“波”を放つ血鬼術。 それも“脳”の波長に干渉するタイプのモノ。

 あの赤い模様の浮かんだ陰陽玉。 アレがその波を生み出していて、近付くことで波を浴びて神経回路が乱れる。

 常時発動しているワケではなく、廛閑が任意で発動しなければいけない、と思う。

 

 で、つまり廛閑は幽冥閃を放つ一瞬、こちらを知覚した瞬間に赤波を放っていたと思われる。 まだ幽冥閃の精度が甘いと言うのは大前提として、それは今の状況においてどうでもいい。

 幽冥閃を放つ一秒にすら満たない一瞬、廛閑が俺を認識したその一瞬で即座に発動できるくらいに陰陽玉のレスポンスは早い。

 

 これは一度浴びた感覚からの推察だが、赤波を何度も食らうのはマズい。 アレが脳に影響を及ぼすモノであるとすると、繰り返し影響を受けることで脳に負担がかかり思考力の低下や意識障害に陥る可能性がある。

 ・・・が、それはあくまで“浴びたら”の話だ。

 

 ブチギレ廛閑は来光でこちらの動きを抑制してぶん殴ろうとしていたのだろうが、そもそもコイツの陰陽玉は“守り”に特化した性能。 そんなヤツが“待ち”の体制をやめて“攻め”に転じたとして、スタイルに合ってない戦い方ではこうしてワンサイドゲームに持ち込まれるだけだ。

 

 ・・・というか、冷静に考えてみると鬼に守り寄りの血鬼術っておかしいな。 どうせ再生するんだからわざわざ攻撃を防ぐ必要がない。

 ・・・コイツは、()()守りたかったんだ?

 

 守りたかったモノを守れなかった弱い己を憎み、強者としてのチカラを求め修羅になった男がいた。

 鬼とはそういうモノだ。 生前の心や執念をなぞり己の在り方を形成する。

 服装から推測するに、人間時代の廛閑はこの神社の宮司をやっていたのだろう。

 コイツは何を思って“神”になろうとした? 人間だった在りし日、コイツは“神”に何を祈り、願い、縋ろうとした?

 

「・・・なぁ、殺す前にに一つ聞かせてくれ」

 

「断る。 貴様のような不敬虔な者に貸してやる耳はない」

 

 うわっ、なんで死にかけでこんな喧嘩腰なんだコイツ。

 

「そう言うな、そっちだって再生の時間稼ぎしたいだろ? 悪いが、少しだけおしゃべりに付き合ってもらうぜ?」

 

「・・・ふん」

 

「・・・さて、と。 お前が言う“神”ってのは何なんだ? 一言に“神”と言っても様々だ。 創世神、豊穣神、厄神、死神、付喪神・・・はちょっと違うか。 太陽神、造形神、土着神、禍津神などなど、多岐に渡る」

 

「・・・そうだな。 それがどうした?」

 

「お前は何だ? 何故“神”などという分不相応な立場を求めた? “神”を騙ってまで、何を()()()()()()? お前は“神”に、何を求めてる」

 

「ふん、何を聞くかと思えば分かりきったことを。 我は・・・、我、は・・・・・・」

 

 自身の根源たる核心を突かれた廛閑の表情が凍り付いた。 目は見開かれ、口は声にならない音を発するのみ。

 

「我は・・・何を・・・? 神は、そうだ、神は絶対の存在・・・! 我は、われは・・・。 ()は、神になりたかった・・・? ぐっ・・・!?」

 

 再生を終えた廛閑の肩に刀を突き刺し、引き抜いて頚に刃を当てる。

 皮膚を切り裂く鋭い刃、刀の冷たい感覚が鮮明に感じるように、静かに、けれどしっかりと首筋に添える。

 “死”が目の前にあるのだと、実感できるように。

 

 ・・・“死”を前にして人の脳を駆け巡る走馬灯。 神を騙る不届き者・・・いや、神を志し、人の道を踏み外した愚か者の眼には、何が映っている?

 

 

 

 

 







 廛閑、下弦の弐だが下弦の壱なら余裕でなれる。 神様ごっこが忙しくて入れ替わりの血戦をやる時間が取れないとかなんとか。

 陰陽玉の強度に関しては猗窩座クラスでやっと壊せるレベル。 火力が足りてないから強度が活きる場面があまりない。
 陽壁もなんだかんだ妓夫太郎の攻撃を余裕耐えできる程度には硬い。 本人の防いでカウンターする戦闘スタイルに合ってるが、如何せん肝心の攻撃力が低いからどうにも。
 武神じゃないから仕方ないね。
 仮に上弦並みのフィジカルがあったら陰陽玉の防御性能と神経回路デバフも相まってとんでもボスになってた。

※裏話、最初廛閑にオートガード付けようと思ってたけど強すぎるからやめた。

ぶっちゃけ鬼の仲間化ってアリ?(オリ鬼、原作鬼問わず)

  • 好きにしろ
  • 鬼だって救われるべきだ
  • 悪鬼滅殺、慈悲はない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。