健康で文化的な魔法使いの生活   作:冒涜的な茄子

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受験の息抜きに、はじめて二次創作なるものを執筆しました。
見切り発車で完結できるかどうかはモチベーション次第です。
原作小説と映画を主軸に置いています。
矛盾点等ありましたら伝えてくれるとありがたいです。
治せる部分は治します。

評価、感想いただけると幸いです。
多分執筆スピードが上がります。




原作開始前
1989年09月01日(金) 入学


 

 

「坊っちゃま、出発の時間です!」

 

 

母が死んで早6年、今年はホグワーツだ。

まだ幼かった僕に残されたのは、だだっ広い家に莫大な財産、いわく付きの魔道具に老いたハウスエルフが1匹と母の飼っていた黒猫だけ。

母は純血名家の末娘だった。年の離れた兄が1人いて、大層甘やかされて育ったらしい。魂の研究をするため、家を飛び出したそうだ。幸い母は研究者としては一流だったようで、身一つで出奔したとは思えない財産を築き上げた。父親は知らない。

残された母の手紙には「社交界にでるな。本家はあなたの存在を知らない」とある。

ハウスエルフのビリーに聞いても、「坊ちゃまはこの家から出ては行けません」としか言わない。

たっぷり1年母の死を悲しみ、残ったのは時間だった。

暇を持て余した僕は家中の蔵書を読み尽くす事を目標にした。(危険な書物はビリーに取り上げられてしまったが)

 

ビリーは本家に2つ下の嫡男がいると言っていた。いつかホグワーツで会うだろう。

つまり、僕はなんの責任もなく、自由に人生を謳歌できるということだ。素晴らしい。ホグワーツの蔵書を読み尽くす野望は諦めなくて良さそうである。

ホグワーツはペットを連れていくことが許可されている。母の愛した賢い黒猫、レジーはきっと役に立つだろう。彼は僕よりも外の世界に詳しい。

 

 

「坊っちゃま!!お聞きしていらっしゃいますか?もう出発の時間でございます!」

 

「聞こえてるよ。もう準備はできてる。」

 

「早くお部屋からお出にいらっしゃってください!ビリーは坊っちゃまが特急に乗り遅れられてしまうのではいらっしゃらないか、心配で死んでしまいそうです!」

 

「わかったわかった。ほら、もう行くよ」

 

 

ビリーの付き添い姿くらましでキングス・クロスに着いた僕は、なんの問題もなくホグワーツ特急に乗れた。

人生初の外出だ。せっかくならダイアゴン横丁にも行ってみたかったがそれは許されなかった。

でも、これも今年までだ。母のいいつけはホグワーツに入るまで、とあった。ホリデーは旅行に行こうかな、とついに手に入れた自由に思いを馳せる。

 

ちょうど空室があったので、一人でコンパートメントを占領する。暇なので変身術の教科書に目を通したが、もう知っている内容だった。これが最も難しい科目のひとつらしい。少なくとも1年生のうちは楽に過ごせそうである。首席でも目指して見ようか。

レジーはホグワーツ特急に興味を持ったのかじっと廊下を観察していた。

 

 

「すまない、ここに座ってもいいかな。」

 

 

緩いウェーブが波打つキャラメル色の髪に、すっと通った鼻筋。真っ直ぐな青い目は、彼に悪い印象を与えなかった。ローブは黒。まだ組み分けられていない証拠だ。

 

 

「ああどうぞ。君も新入生かい。」

 

「うん。あー、僕はセドリック・ディゴリー。君は?」

 

「僕はアンタレス。アンタレス・ノットだ。」

 

「ノット?ノットって言えば…」

 

「そのノットであってる。まあ絶縁してるだろうけれど。」

 

「絶縁って、」

 

「母が出奔したらしい。本家は私の存在すら知らないだろう」

 

 

この話をしたのは失敗だっただろうか。正面に座る彼は困った顔をしていた。

 

 

「あー、ウン。この話はやめよう。そうだな……ノットはどの寮に入りたいんだい?」

 

 

気を使って話題を変えてくれた。生まれて11年、家族以外と言葉を交わしたのはこれがはじめてだ。コミュニケーション能力はこれから磨く必要がありそうである。

 

それにしても寮の話題とは。さっぱり考えていなかったが、まずスリザリン以外は確定だ。身の上が複雑すぎる。グリフィンドールは暑苦しそうだしどちらかと言うと体力自慢の奴が多そう。恐らく性にあわない。

ハッフルパフは…可もなく不可もなく。メリットはないが特段デメリットもない。レイブンクローは個人主義だという。自由を謳歌するのにはこれ以上ない選択肢のように思えた。

 

 

「レイブンクローだな。次点でハッフルパフ。スリザリンに入ったら面倒なことになりそうだし、グリフィンドールは性にあわなさそうだ。君は?」

 

 

「うーん、スリザリン以外ならどこでもいいかも。」

 

 

ホグワーツ特急に興味を失ったのか、レジーは丸まっていた。何かを訴えかけるかのように、目だけはじっとこちらを見つめている。

 

 

「ふむ。なぜスリザリンを除く?」

 

「父がね。」

 

 

ディゴリー家はダンブルドア派だったか。終わったこととは言え息子がスリザリンは複雑だろう。

 

 

「君も色々大変そうなこった。」

 

「君ほどじゃないさ。」

 

「それほどでも。」

 

 

本当にそれほどでもないことは黙っておこう。

抗議するかのように、レジーは鳴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディゴリーはハッフルパフに組み分けられた。

よく劣等生の寮だと見下されがちだが、あそこは死喰い人が1人も出ていない。少し話しただけだが彼は間違いなく善良だったし、上手くやって行けるだろう。

問題は僕だ。組み分けは大声で名を呼ばれる。もちろんファミリーネームも呼ばれるのだ。

どの寮に入っても純血貴族はいるだろうから、質問攻めをされるか距離を置かれるかのふたつにひとつ。

個人主義のレイブンクローに、より一層行きたくなった。ハッフルパフも良さそうだ。ディゴリーのような人が大半なら深くは聞かれないだろう。

それはそうとして、先程から誰かにものすごく見られている気がする。まだ誰も私を知らないはずだ。分かりやすい母との共通点は艶やかな黒髪くらい。ありふれたものだ。母の知人ではないだろう。一体だれが____

 

 

「ノット・アンタレス!」

 

 

スリザリンテーブルの時が止まり、他寮の一部生徒にも動揺が走る。想像よりもずっと、ノットの名は重大だった。痛いほど突き刺さる視線。どうかレイブンクローに組み分けられることを願いながら、組み分け帽子を深く被った。

 

 

「スリザリン!」

 

 

スリザリン、スリザリンだ。所属したくない寮堂々の1位、スリザリン。ものの2秒で決まってしまった。もう少し悩んでくれたっていいのに、よりにも寄ってスリザリンだなんて。

家名だけを見れば相応しいかもしれないが、私は存在しないはずの男だ。おまけに父親は不明、本家の嫡男より2つ年上。厄介この上ない。さて、どうするべきか。他寮の生徒も異変に気づいたのか、ざわめいていた。

 

 

「君がアンタレス・ノットであっているだろうか。」

 

 

いつの間にか対面の人物は入れ替わっていた。黒々とした髪は神経質そうに撫で付けられている。細い銀縁のフレームの奥は何も写していなかった。胸元には"PREFECT"のバッジがきらりと輝いている。

 

 

「はい。僕がアンタレス・ノットです。えー、ミスター…」

 

「おっと失礼、先に名乗るべきだったね。私はディリス・ロジエール、スリザリン7年の監督生だ。」

 

 

ロジエール。聖28一族のひとつで、先の大戦では"例のあの人"の忠実な僕だった。(もっともスリザリン出身の純血名家でそうでない方が珍しい)本家の嫡男は戦死したはずだ。彼は分家筋の者なのだろう。

なるほど、バッジは監督生を示すものだったらしい。そういえば"ホグワーツの歴史"に書いてあったはずだ。確かあれは4章だったか。見たところ"HEAD BOY"のバッジはなかった。主席は他寮の生徒らしい。

 

 

「ありがとうございます、ミスター・ロジエール。」

 

「ああ。単刀直入に聞かせてもらおう。君は何者だ?」

 

 

そっと周囲を見渡す。皆耳をそば立てていた。ここは大広間で、まだ組み分けの最中である。今話せばあっという間に噂になり、明日からの生活は壊滅的なものになるだろう。寮にはそれぞれ談話室があったはずだ。そこで話したってなんの問題もないだろう。

 

 

「そうですね、皆様の想像とそう変わらないでしょうが……祝いの場で話すことでもありません。」

 

「それもそうだ。後ほど聞かせてもらうことにしよう。ならばかける言葉はひとつのみ。」

 

 

納得してもらえたらしい。ロジエールは機械的に手を差し伸べる。骨ばった手には、くっきりとペンだこが刻まれていた。恐る恐る手を重ねる。

 

 

「入学おめでとう。我らは同胞を裏切らない。君がスリザリンである限り、愛と歴史を持って受け入れよう。」

 

 

用は済んだと言わんばかりに席を立つ。彼以外の生徒は遠巻きに眺めるだけで、歓迎しているようには見えなかった。

対面の席は空席のまま組み分けが終わる。校長や管理人の言葉はあまり入ってこなかった。

ぼうっと教員席を眺めると、全身を黒で固めた、蝙蝠のような男と目があう。憎しみと悲哀の混ざった目で僕を見つめていた。組み分け前に感じた視線の正体は彼なのだろう。母がまだ生きていたら、あのくらいの年だろうか。じっと見つめていたら視線を外された。残されたのは、チラチラとこちらを盗み見る他寮の生徒と困った顔をした寮生たち。僕は自由に過ごしたかっただけで、腫れ物を触るような対応は求めていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____さて、大まかな生い立ちは明かした。今頃ふくろう小屋は大繁盛だろう。ノットは聖28一族だ。出奔した末娘の息子が見つかるも娘は6年も前に他界していて、父親は何処の馬の骨とも知れない。いわぬる厄ネタと言うやつだ。腫れ物扱いはまちがいないだろう。

振り分けられた寝室に行くと、もう既にルームメイトはくつろいでいた。

 

 

「よぉ、俺はビクター・セルヴィン。まさか同室が話題の人とはね。まあうちはガチガチの純血至上主義じゃあない。7年間同室なんだ、仲良くしようじゃないか。」

 

「はじめまして、ミスター・セルヴィン。」

 

 

我が物顔でベットを占領するレジーを尻目に挨拶をかわす。セルヴィン家と言えば、同じく聖28一族だ。一人息子がいると認識していたが、同学年とは知らなかった。

 

 

「ビクターでいい。それとその敬語も。堅苦しいったらありゃしない。せっかくのホグワーツなんだ、ちょっぴり羽を伸ばしたくらいじゃあ怒られないさ。」

 

「アー、うん。そうだな。僕のこともアルデバランと。2年後は“本物”のノットが入学するからね。少しばかり面倒な身の上だが気は使わなくていい。純血の父親が見つかることを祈っていてくれ。」

 

 

彼は直系の男児で長子だ、次期当主と見て間違い無い。言葉はやや荒いが、きっとのびのびと育てられたのだろう。

くるくると舞う赤みがかった栗毛に、目が覚めるほど美しい深緑のアーモンドアイ。左のえくぼはチャーミングだが、どこか不誠実な印象を与える。

僕の"ちょっとした"ジョークは彼のお気に召したようで、皮肉げな笑みを浮かべた。

 

 

「もちろんだ。それに、見たところ父親は間違いなく純血だと思うぞ。」

 

「なぜそう確信を持てるんだ?君はまだ僕を、それほど知らない。」

 

 

残念ながら、彼はジョークセンスに恵まれなかったらしい。彼もまた他の寮生と同じ"心遣い"をしてくれた。たった一人の同室に恵まれなかったことを恨む。

 

 

「たった今知り合ったばかりでも知り得る情報があるだろう。」

 

 

どうやら本気でそう思っているらしい。

ビクター・セルヴィンはじっと僕を見つめて、言った。

 

 

「顔だよ。君はブラックの血が濃すぎる。」

 

 

 

 

レジーは冒険に出たらしい。僕のベットは空っぽだった。

 

 

 

 

 






【ディリス・ロジエール】
1970年11月05日生まれ
ホグワーツミステリーに登場するフェリックス・ロジエールの弟。
ロジエール分家の次男でスリザリン寮7年生の監督生。
黒目黒髪で銀縁の細い眼鏡をかけている。
首席にはなれなかったようだ。





年上のスリザリン生があまりに少ない!

レガシーやホグミス、呪いの子など本筋以外の作品群の設定は把握しきれないので基本的には無視します。
今後もほとんど登場しません。

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