師匠から託された概念を書いてみました。
解釈違いは受け付けません!!!
窓から差し込む春の光が、病室の白いシーツをそっと照らしていた。
トリニティ総合学園の医療棟の奥、静かな一室。消毒液の匂いの中で、鷲見セリナはそっと椅子に腰掛け、眠る幼馴染のタスニくんを見つめていた。
小さな寝返りを打った彼の額に、汗がにじむ。セリナは柔らかく手を添え、そっと拭った。救護騎士団として数えきれない生徒を診てきたけれど、目の前のタスニくんにはどうしても手が届かない。原因も分からない病に、体力だけが少しずつ削られていくのだ。
「……起きてますか、タスニくん〜?」
ゆっくりまぶたを開けた彼は、薄く微笑む。
「セリナ……来てくれたんだね」
「はい、すぐ来ましたよ。仕事の合間にね」
彼女は笑顔を作る。手の中の小さな手は冷たく、触れるだけで胸がぎゅっとなる。でも、弱い声で冗談を言うタスニくんに、少し安心もする。
「大げさだよ、そんなに心配しなくても」
「心配しますよ。だって、タスニくんは私にとって特別なんですから……」
思わず口にした言葉に、タスニくんは一瞬目を見開き、照れくさそうに笑った。
「特別……子どものころ以来だな」
ふたりの記憶が、ゆるやかに蘇る。小さな教会の庭で遊んだ日々。タスニくんが転んで泣いたとき、セリナは真剣な顔で包帯を巻いた。あのとき彼が笑った言葉、「セリナは天使だな」が、今も胸に残っている。
「覚えてますよ。膝をすりむいたことまで、ちゃんと」
「やめろよ……恥ずかしいな〜」
弱く咳き込むタスニくんの背中を、セリナはそっと支えた。呼吸は少し荒く、心拍も不規則だ。モニターの数字を見ると胸が痛む。
「今日の検査でも、原因は分からなかったんです……」
小声で告げると、彼はゆっくりと目を閉じ、頷いた。
「うん、分かってたよ。困った顔の先生を見れば、僕にも分かるから」
「私……もっと何かできるはずなのに」
声が震える。救護騎士団として無力さを味わうことはあったけれど、好きな人を救えないのは初めてだった。
「セリナ」
小さく呼ぶ声。目を開けたタスニくんは、真っ直ぐに彼女を見つめる。
「そんな顔しないで〜。君がそばにいてくれるだけで、僕は十分だから」
「でも……」
「覚えてる?小さいころ、約束したよね。どんなことがあっても、笑顔で一緒にいるって」
セリナは目を伏せて、そっと手を握り直す。あの約束。幼い彼を守るために笑った自分。今度は自分が試されているのだと、静かに思った。
「はい、覚えてます……だから、今も笑顔でいます」
両手で彼の手を包み込む。涙はこぼれそうだけれど、見せるわけにはいかない。救えなくても、そばにいることはできる。
窓の外、白い花びらがそよ風に揺れ、ふたりの時間をそっと包み込むようだった。